家電製品レビュー
置き方も使い方も色々と選べる! ダイキン「アシストサーキュレータ」は画期的な空調家電だった
2018年6月22日 07:00
本格的な夏が到来する前に用意しておきたいのが、サーキュレーター。テレビやWeb、雑誌などでもおなじみで、エアコンと併用すると電気代の節約にもなるので、ぜひ夏に使いたい家電のひとつ。
もちろん「サーキュレーター」と銘打っているものを使ってもいいし、「扇風機」をサーキュレーター代わりに使ってもいい。あら、いい加減(笑)。要は、部屋の空気をかき回せる送風機はみなサーキュレーターとして使える。
でも、意外とかさばるのが扇風機置き場。とくにロボット掃除機を使っていると、扇風機が出ているシーズンは、これに乗り上げて掃除が中断してしまうなんてことも頻発しちゃう。
メーカー名 | ダイキン工業 |
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製品名 | アシストサーキュレータ「MPF07VS-W」 |
価格(編集部調べ) | 42,984円 |
そんなお悩みを持っている方にオススメしたいのが、エアコンメーカーとしておなじみのダイキンから発売されている「アシストサーキュレータ」。その名の通りエアコンから吹き出す涼しい(温かい)風を部屋全体に広がるよう「アシスト」するのが特徴。とくにダイキンのエアコンをお使いの場合は、エアコンの電源を入れるとサーキュレーターの電源も自動でONになるといった連動も可能だ。
これまでのサーキュレーターと違って、機能色々、置き方色々と七変化する本製品。どのように使えるかを、実際に設置して調べてみた。
縦置きにしてスリムファン、部屋干し乾燥のアシストとして
一番カンタンな利用法のひとつが、縦型扇風機のスリムファンとしての使い方だ。本体の片側に、ドライバーで土台を取り付けるだけで使える。ただし、本体が重いので腕力に自身のない女性は、誰かに手伝ってもらったほうがいいだろう。
ファンの直径は、およそ20cmで、一般的なスリムファンに比べると風量が多くて涼しい。でも大きい分、ファンの運転音(風切り音)も大きいのが難点。
大きさは、適した比較対象とはいえないがウチにあった一般的なスリムファンと比べると、次の写真のような感じだ。
さて一般的なスリムファンと大きく異なる点は、首振り機構。通常は棒状のファン全体が左右にまわるのだが、アシストサーキュレータは、本体内部にエアコン同様の羽が内蔵されているので、本体は回転しないが風向を変えられる。振り幅は約50度で、一般的な扇風機と比べると狭い。
またエアコンと同様で、角度を10度刻みに5段階で切り替えられるほか、その範囲全体をスウィングすることも可能。風量は5段階で調整できるのに加えて、リズムをつけた風が選べるようになっている。このあたりは最近の扇風機と同じ機能だ。
これらの操作は、専用リモコン(別売)で行なえるほか、本体に標準でWi-Fi機能を内蔵しているので、自宅の無線LANに接続すると、無償のアプリを使ってスマートフォンからも操作可能だ。
またダイキンのマニュアルには掲載されていなかったが、エアコンと向き合わせるように配置して、梅雨時の「部屋干し乾燥」のアシスタントにも使えそうだ。おそらくエアコンだけを回すより、たくさんの洗濯モノを早く乾燥できるだろう。
丸太のように床に転がし部屋の空気を循環
これまでのサーキュレーターにはない斬新! な置き方が、土台を外して床に転がしておく方法だ(笑)。使い方としては、床に溜まった冷気を壁伝いに天井に送るのがメインになるだろう。先につけた土台を外し、付属のカバーを着け、まるで丸太の木を転がすように部屋の端に転がしておけばいい。すばらしい大胆さ!
空気の吸い込み口は、本体スイッチの反対側、吹き出し口はスイッチ側になるが、ファンと本体にはすき間があるので、吸い込み口が完全に床を向いてしまっても、吸気できるようだ。
これまで何十、何百というサーキュレーターを見てきたが、地上高1cm未満の空気を吸って循環できるのは「アシストサーキュレータ」以外に見たことがない!
ただ気になるのはホコリの巻上げだ。フィルターなど装備していないので、床に落ちたホコリをそのまま吸い込んで、部屋に巻き散らしてしまうという問題が残る。
置き方を逆にすれば、床付近の空気を横に送風もできる。部屋の端や足元までエアコン暖房で温まらないという場合に使うといい。ただし風を伴うので体感温度は少し冷たくなってしまうかも知れない。
また床暖房を入れているご家庭では、リビングの床暖房の熱を廊下に送風したりということにも使えそうだ。
注意点は、床に転がしておくだけなので、もし踏んづけてしまった場合などは転倒する恐れがある。そんなときは、別途購入した三角形のゴムを使い車止めのようにするといい。左右それぞれを、▲のゴムで本体を挟み込むようにするといい。
小さな子ども、ペットがいる家庭(とくに猫は絶対に乗るはず!)では、注意した方がイイ。
本命の壁面取り付けサキュレーターは腕があれば自分で工事OK
このサーキュレーターの一番の魅力は、壁面取り付けだ。つまりエアコンのように、壁の高いところに引っ掛けて使えるというもの。
ただしこの場合は、家の構造に関する知識と道具が必要になるので注意して欲しい。マニュアルでも、業者に取り付けを依頼することを推奨している。
基本的には床に転がしておくのと同じだが、壁取り付け用のステーを左右にはめ込むのが少し違う。
いっぽう壁には、取り付けの金属ステーとカバーをつける。アシストサーキュレータ本体は5.5kgあるので、石膏壁やベニア壁では、金属ステーを梁にネジ止めできるよう、梁探しからはじめる。
ここでは電子式の梁探索工具を使っているが、針を押し込んで探す安いツールもある。また水準器は、スマホのアプリ(ただし分解能が1度単位)でもあるので、家の構造を少し把握していれば道具に困ることはないはず。
なおコンクリート壁の場合は、特殊なドリルも必要になるので、業者にお任せするのがいいだろう。おそらく家電量販店などで、購入時に相談できるはずだ。
なおどうしても梁がない場所に設置する場合は、アンカーネジなどを使って、本体の荷重を分散させること。また金属ステーを水平に取り付けないと、荷重に偏りがでてしまうので注意。
壁掛けサーキュレーターは、天井付近の空気を下から吸い込んで、天井を這わせるようにして循環できる。
またエアコンの風の左右の振りが足りないという場合は、エアコンの横に設置する。こうすると、エアコンの冷気(暖気)が、サーキュレーターの風に引き寄せられて、左右幅広い間取りの部屋にも冷気を効率よく循環できるようになる。
人の出入りが多い場所やペットのトイレの経路にエアカーテン
壁面サーキュレーターのもうひとつの使い方がある。それはドアなど上部に設置して、吹き出し口を下に向けるとエアカーテンとして使えるところだ。
「エアカーテン」とは、スーパーやデパートの、開放された出入り口で、上部から強い風を送っているアレのこと。「おお涼しい! ウェルカム冷房か!」と思った方もいるかもしれないが、開口部で強い風を上から吹きつけることで、擬似的な空気のカーテンを作っているのだ。
これによってデバート内部のエアコンの冷気を(ドアが開いているのに)漏らさなかったり、外からの排ガスをデバート内部に入れないようにガードしていたりする。
本当はエアコンを運転して、冷気が外に漏れないかを実験したかったが、ご存知の通り2018年6月中旬はエアコンを付けたら風邪を引きそうな寒さ。そこで今回は、コンサートや結婚式用のスモークを炊いて、遮蔽できるかの実験をしてみた。難易度高いけど、大丈夫かなー??
風向と風量のバランスがむずかしく、ここではちょっと風量が強すぎて少し部屋の中にスモークが入ってしまった。
こうすることでドアを閉めなくても、内部の冷気が外に漏れにくくなる。このように人が多く出入りする場合にも有効だが、ペットのいる家庭にも有効。
多くの家庭では、ペットがいつでもトイレに行けるように、ペットドアをつけているご家庭が多いだろう。しかしウチの「定吉」のように、どうにもペットドアが怖くてダメという子もいる。
そんなときは、ペット用にリビングのドアを少し透かしてあげているという方も多いだろう。でもエアカーテンを使えば、リビングのドアを開けておいても、冷気を外に逃さず、ワンちゃんやニャンコも自由に居間に出入りできるようになる。
運転音と風量や風向はどのぐらい?
さてラインフローファンは、静かなようでエアコンと同じ。電源を消すと、常にゴーっという音が鳴ってたんだな! と分かるほど。そこで、風量やノイズを調べてみた。
まずは風向のチェック。
このように風向は15度+45度で、およそ60度(いかないかな?)という感じだ。
次に測定したのは、風の強さ。価格はまったく違うが、一般的なラインフローファンと比べてみた。
結果は次のグラフになった。
スリムファンは、空気をゆっくり循環させるものなので、扇風機に比べると圧倒的に風速が遅く、涼しいものじゃない。ただアシストサーキュレータは、ファンの直径が大きい分、細いスリム扇風機よりは強い風が送れる。
さらに運転をまとめたが次のグラフ。
本体から1m離れた場所で測定した値だが、アシストサーキュレータの運転音は、扇風機なみに静かだ。細いラインフローファンを高速回転させるスリムファンに比べると、ずっと静かなようだ。
こうしてみると、アシストサーキュレータは、エアコンの補助機能でもある一面、スリムファンよりも静かだが、スリムファンより少し涼しく過ごせる扇風機としての機能を合わせ持っている。
用途や設置場所に応じて七変化するサーキュレーター
これまでにない色々な使い方ができるダイキンのアシストサーキュレータ。これまでのサーキュレーターは扇風機の延長線から発達したものが多かった。
しかしエアコンで採用されている、ラインフローファン(ファンの種類)から発展させたアシストサーキュレータは、壁掛けという革新的な変化をもたらした。また床放置式という斬新なアイディアも。
しかしやや気になるのは、ラインフローファン独特の連続的なゴーというノイズ。風量が必要になる大きな部屋では、どうしても耳についてしまうだろう。これについては、ネイチャーテクノロジーなどで、だんだん静かになっていくことが予測できる。
またファンの形式としては、もうひとつシロッコファン形式がある。台所などで多様され、ラインフローファンよりも風量を稼げるファンだけに、より大きな部屋のサーキュレーターとして今後登場するかも知れない(やはり、うるさいのが難点だが)。
ここ1年のエアコンのトレンドは、暑がりさんと寒がりさんの共存、そして高度な気流管理だ。ダイキンは、そのひとつの解決策として、エアコンから独立させ応用範囲を広げたところにある。
まだ登場したばかりのジャンルなので、改良点もいくつがあるが、今後のエアコンの気流制御に大きく影響を与える、そんなターニングポイントになる製品であることに間違いない。