家電製品レビュー
ふっくら美味しい土鍋炊きごはんが、ボタン1つで味わえる「かまどさん電気」
2018年6月5日 07:00
大手メーカーの高級炊飯器を凌ぐほど美味しいと評判の、伊賀焼窯元・長谷園(ながたにえん)の炊飯土鍋「かまどさん」は、今も入荷待ちになるほど人気が高い。その長谷園と、家電メーカーのシロカが一丸となって開発した土鍋電気炊飯器、長谷園×シロカの「かまどさん電気」を紹介しよう。
メーカー名 | 長谷園・シロカ |
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製品名 | かまどさん電気 SR-E111 |
実売価格 | 86,184円 |
最大の特徴は、火力の強いガスコンロと土鍋で炊いた、昔ながらの美味しいごはんが、スイッチひとつで簡単に味わえる点。
開発に4年、試作500個を経て、「かまどさん」のごはんを知り尽くした長谷園の7代目当主の長谷 優磁氏が、「ガス炊きの土鍋ごはんと同じ味を再現する」と、太鼓判を押すほどの電気炊飯器だ。
土鍋をそのまま活かした炊飯器
一般的な電気炊飯器と違い「かまどさん電気」の鍋は、土鍋がそのまま使われている。専用のヒーターに乗せた全体の大きさは300x300×261mm(幅×奥行×高さ)で、合計質量は約7.6kg(土鍋3.5kg)と、3合炊きにしてはかなり大きい。だが、一般的な炊飯台やカウンターに乗せ、目に触れるところに置きたくなるような、落ち着いたデザインに仕上げられている。
かまどさん電気の土鍋は、炊飯土鍋・かまどさんと同様、多孔質な伊賀の土による蓄熱と吸水性が特徴的な、伝統工芸品とも言えるものがそのまま使われている。肉厚成型に加え、遠赤外線効果が得られる独自の釉薬で仕上げられている。
ふたは二重で、圧力釜の機能を果たし吹きこぼれも防ぐ。工業製品である電気ヒーターを繋ぐため、温度センサーが鍋底に埋め込まれているのが、炊飯土鍋・かまどさんと違う点だ。
金属成分のない土鍋をそのまま使うため、専用ヒーターはIHではなく、あえてシーズヒーターが採用されている。ステンレス製のヒーターにセラミック塗装がコーティングしてあり、キズや錆びに強い。
土鍋炊飯に必要な質の高い付属品も充実している。専用の米カップ、水カップ、しゃもじ、しゃもじ置き、専用の鍋しき、米粒を模したドット柄の手ぬぐいの他、毎日ごはんを楽しむ献立集に、作り手の想いをまとめた冊子も同梱されている。
タッチ式スイッチで操作は簡単
かまどさん電気の操作は直感的にできる。炊飯していない時は本体の表示・操作パネルに時計が表示されているが、パネルの右下にタッチすると操作ボタンが浮かび上がる。ここで米の種類(米)、調理方法(メニュー)、量(炊飯量)、食感(仕上り)を設定する。設定中、他の設定内容が常に表示されるので迷わずにできる。
設定が済んだら「炊飯」ボタンに触れれば炊飯がスタートする。あとは蒸らしまですべておまかせだ。
炊飯がスタートすると、炊きあがりまでの残り時間がカウントダウンで表示されるので、炊きあがりに合わせて他の料理に取りかかりやすい。設定は記憶されるので、前回と同じ炊飯スタイルならば、次は「炊飯」ボタンに触れるだけで済む。
その他、10分刻みの予約炊飯は2つ設定でき、ヒーターを使った土鍋の乾燥もここで操作できる。
炊飯にあたり、今回は白米に「青天の霹靂」、玄米は「新潟コシヒカリ」を、いずれも近所のスーパーで選んで手に入れた。雑穀米専用のモードもあるが、炊きあがり時間が白米と変わらない点と、雑穀米は様々な種類と組み合わせがあるため、割愛をご了承願います。
これぞふっくら、土鍋ごはん!
まず一般的な「ごはん」として、米は「白米」、メニューは「炊飯」、炊飯量は「2合」、仕上がりは「ふつう」に設定して炊飯した(以後、表記は設定に応じ[白米・炊飯・2合・ふつう]と記す)。
炊飯の準備として、説明書通りに米を手持ちのボウルとザルで洗う。水気を切った米と、付属の水カップで正確に計った水を土鍋に入れ、2つのふたをする。この時、中ふた・上ふたの孔の位置が直角になるようにセットする。2合なら炊きあがり予測時間は58分だ。
炊飯をスタートすると、すぐさま吸水のために加熱が始まる(消費電力は485W前後)。6分過ぎには一度加熱が収まり(1W前後)、18分過ぎに886Wで炊飯が始まった。水温が上昇するとともに土鍋からの音が、コトコトからグツグツとたぎるように変化した。音の変化に伴い火力も徐々に下がる(886→879Wへ)。
炊飯スタートから29分過ぎには強い加熱が停止し、本体底にあるファンの回転に切り替わる(4.5W)。強い加熱が終わったにもかかわらず、31分を過ぎてから鍋からブクブク・ゴトゴトという音が聞こえ始め、上ふたの孔から蒸気が勢いよく吹き出し始める。土鍋に蓄えられた熱が米へ伝わっているようだ。
33分過ぎには甘い香りが漂い始め、35分あたりでファンが停止(1W前後)する。その後2回(39分、47分)ファンの運転と停止が繰り返され、57分45秒で炊きあがった。トータルの消費電力量は0.21kwhだった。
土鍋を本体から取り出してテーブルの上へ移動。ふたをアチチと開けると、ごはんはキラキラと輝き、湯気と甘い香りが盛大に立ち上る。待ちに待った瞬間だ。見た目も香りもすでに美味しい。
茶碗に装って改めて輝くごはんの香りを楽しんで口にすると、ふっくらと炊きあがったごはんが、口の中でホロリとほぐれる。もちっとした噛みごたえがあり、甘みがふわりと広がる。うん、美味しい!以前いただいた事のある土鍋ごはんの記憶が蘇る。期待通りのごはんが再現され、思わず、そうそう、これこれと頷いてしまった。
1合、3合と炊飯量も変えたが、見た目、香りとも違いがほとんどわからないぐらい、いずれも美味しく炊きあがった。消費電力は、3合時の加熱中が1,200W前後で最も大きく、電力消費量はそれぞれ0.17kwh(1合)、0.30kwh(3合)だった。
かため、やわらかめ、おこげも自在。玄米もおかゆも美味しい
ここからは、「仕上がり」「メニュー」の設定を変えたときの、炊きあがりの様子をお伝えしていこう。
「仕上り」の設定を変えれば、水量を加減せずに炊き分けもできる
【やわらか】白米・炊飯・2合・やわらか
一切ベチャベチャにはならず、もっちり感よりもふっくら感が強く仕上がった。お粥のような甘い香りが加わり、口当たりがより柔らかい優しいごはんだ。
【かため】白米・炊飯・2合・かため
ごはん粒の輪郭が、ふつう仕上げよりもハッキリとする。モッチリ感が強調され噛みごたえが増す印象だった。丼ものやお寿司を作る時に選びたい仕上りだった。
「メニュー」の設定を変えると、おこげも楽しめる
【おこげ】白米・おこげ・2合・ふつう
今回はおこげの濃さを、中間の「ふつう」で炊いてみたが、白ごはん部分は変わらずにもっちりふっくらで美味しい。特筆すべきは、そのおこげの質。おこげモードのある別の炊飯器ではガッチガチに硬く食べづらい事がままあるが、かまどさん電気のおこげはパリパリッ! とした食感で香ばしく美味しくいただける。
しかも、土鍋にはテフロン加工など施されていないにもかかわらず、釜離れも良い。おこげモードでないごはんはもちろん、しっかり焦げ目がついたごはんも、鍋底から簡単に離れる。
[白米・おこげ・2合・ふつう]は、[白米・炊飯・2合・ふつう]と同じ時間で炊き上がるが、消費電力量は0.30kwh。より強い火力で炊き上げている。
玄米もふっくらもっちり
玄米は一般的な炊飯器で炊くよりも、土鍋で炊いた方が美味しいと言われている。だが、玄米は糠層に覆われているので、土鍋だけで炊く場合は6~7時間の浸水が必要だ。ところが、かまどさん電気なら洗米した玄米と水をセットすれば、1時間半以内に美味しく炊き上がる。ただし、玄米の炊飯量は最大2合までとなっている。
【玄米】玄米・炊飯・2合・ふつう
玄米は白米と違い、硬い表面に傷をつけるようにゴシゴシと洗米する。鍋に洗った玄米と正確に計った水を入れ、スイッチを入れるだけで89分で炊きあがった(0.33kwh)。
炊きあがりは玄米なのにツヤがあり、青臭さの無い白米とは違った甘い香りが立ち上る。固さは微塵もなく玄米の中心までもっちりでふっくら! ふつう仕上げでも、やわらかく食べやすい。時折プチっと弾けるような殻や胚芽の食感さえも美味しい。この仕上がりならば、玄米があまり好きでない人でも美味しくいただけるのではないだろうか。
滋味深いおかゆ
土鍋で炊き上げたおかゆの美味しさはひとしお。だが、土鍋だけで調理するとなると、しゃもじで混ぜたり吹きこぼれを気にかけたりと、火のそばから離れられない。
ところがかまどさん電気なら、白米、玄米のおかゆもふつうの炊飯と同じようにスイッチポンで、美味しい”土鍋おかゆ”が簡単にできあがる。最大炊飯量は、いずれも1合までで、「やわらか」、「ふつう」の2つの仕上がりが選べる。
【おかゆ・白米】白米・おかゆ・0.5合・ふつう
炊飯時間は表示通り69分で炊きあがった(0.25kwh)。吹きこぼれもしなかった。炊きあがったおかゆは香りもよく、お米の甘さがしっかりと引き出されたふくよかな味わい。適度な粘りがまた美味しい。体調がすぐれない時に限らず、朝食にもいただきたくなるほど手軽にできた。
【おかゆ・玄米】玄米・おかゆ・0.5合・ふつう
炊きあがりまで白米よりも20分長い、89分(0.39kwh)で炊きあがった。玄米とは思えないやわらかな食感で食べやすく、青臭さ無く美味しくいただけた。白米よりも噛みごたえがあるおかゆで、食感も楽しめた。
高い保温性。時間を置いても食感はそのまま
かまどさん電気は保温機能が省略されているが、多孔質な伊賀の土を使った肉厚成型の土鍋は、保温性も優れており、1時間は温かいごはんが味わえる。
白米を2合炊いて2膳分を装ってから蓋をし、テーブルの上に放置して温度変化を確認した(室温は26℃で湿度は35%)。炊きあがり直後の温度は80℃で、10分後は73℃、30分後は62℃、1時間後でも53℃と、十分温かいごはんがいただけた。
伊賀焼の土鍋は木製のお櫃と同じように呼吸するため、時間を置いてもごはんが一切ベタつかないのも大きな特徴だろう。2時間経過してもごはんはふっくら、もっちりを変わらずにキープ。
鍋肌付近や鍋底のごはん粒でさえ、水を吸って膨らんだ形跡が無く、最後の一粒まで美味しくいただける。それでいて、時間が経過してもごはんは鍋にこびりつかず、ごはん粒を潰さずにしゃもじですくえる。
したがって、土鍋のお手入れも簡単だ。土鍋内側についたネバネバは、10分程度水にさらしておけば、スポンジで拭うようにするだけでスルリと簡単に落ちた。
土鍋を洗う際、釉薬のかかっていない底面は水を含みやすいので、次に使う前に底面を上にして置き、風通しの良い場所でしっかり自然乾燥させておく。急ぐ時は、本体の乾燥モードを利用するといいだろう。
値段が一緒……かまどさん電気? それともバーミキュラライスポット?
話が少々脱線してしまうが、このかまどさん電気と、2017年家電大賞の部門賞を受賞した「バーミキュラ ライスポット」の価格は、奇しくも全く同じだ。両方を食べている身としては、甲乙つける比較ではなく、それぞれの差についてやはり述べておきたい。
どちらも香り良く、とても美味しい。ハッキリとした違いは、バーミキュラ ライスポットはごはん粒の輪郭が立ち、もっちりとした弾力とともに主張が強い。一方、かまどさん電気のごはんは、粒は崩れていないのに、しっとりホロリと口の中でほぐれる優しさがある。各家庭の主菜の傾向、ごはんの好みに合わせて選ぶと良いだろう。
いずれにしても、土鍋ごはんを好んで味わっている方なら、今回紹介した「かまどさん電気」はきっと満足いくだろう。オール電化のご家庭でも土鍋ごはんが味わえ、スイッチひとつで、面倒な火加減から開放されるメリットも大きい。
毎日の食事をより手軽に一層美味しく、楽しく味わえる電気炊飯器として、検討してはいかがだろうか。