e-bike試乗レビュー

トレックのグラベルロードe-bikeでイルサイを50km走ってみた

トレックの「Checkpoint+ SL 5」を試乗しました

トレック・ジャパンから発売されたグラベルロードe-bike「Checkpoint+ SL 5(チェックポイントプラス エスエル 5)」。トレック(TREK)ブランドからは「初のグラベルロードタイプのe-bike」となります。試乗する機会を得ましたのでレビューをお届けします。

Checkpoint+ SL 5はグラベルロードタイプのe-bikeです。サイズはXS、S、M、ML、Lの5種類でフルサイズの展開です。価格は850,000円
カラーは写真のFjord Blue/Cobalt Blueのみ
グラベルロードということでフレアタイプのドロップハンドルを装備。トップチューブ前方にディスプレイを内蔵しています
「グラベルロード(Gravel Road)」とは、舗装路から未舗装路(砂利道=グラベル)まで走れるスポーツ自転車で、ロードバイクの効率の良い走行性能とマウンテンバイク(MTB)のような悪路走破性を兼ね備えています

主な仕様としては、まずドライブユニットとして「Domane+(ドマーネプラス)」に搭載されているドイツのTQ社製最新ユニットを採用しています。ロードバイクタイプe-bike「Domane+」のドライブユニットよりも出力が高まっており、最大トルクは60Nmとなっています。

ドライブユニットはドイツTQ社製最新ユニットを採用。モーターは「TQ-HPR60」を搭載し、最大60Nmを発揮し、連続最大250W/最大350Wという出力があります

バッテリーはフレーム内蔵式で容量360Wh。バッテリーをもっとも節約して走行できるEcoモードでの最大走行距離は約80kmとなっています。

Checkpoint+ SL 5の詳細をチェック

e-bikeとしての主なスペックをご紹介しましたが、さらに詳細な仕様をチェックしていきましょう。

フレームは500シリーズOCLVカーボン、フォークはCheckpointフルカーボンで構成されています。なお、車体重量は13.81kg(MLサイズ/TLRシーラント仕様/チューブなし)で、e-bikeとしては非常に軽い部類です。バイクの重量制限は125kg(バイク本体/ライダー/装備含む)

カーボンフレームで車体は軽量
サーモンピンクのような差し色が特徴的
ドライブトレインのコンポーネンツはシマノ「GRX」。グラベルロードバイク専用に開発されたスポーツ自転車コンポーネンツです
ドライブユニットはドイツTQ社製最新ユニット(TQ-HPR60モーター/最大60Nm/連続最大250W/最大350W出力)。コンパクトで非常に静かに動作するモーターです
カセットスプロケットはシマノ XT M8200で歯数10-51Tの12速です。チェーンリングは44T
バッテリー容量は360Wh。バッテリーはダウンチューブに内蔵されています(ユーザーによる取り出しはできません)
ダウンチューブ下端上側のラバーキャップを開いて充電します
ホイールは前後ともBontrager Paradigm Comp 25(チューブレスレディ)で、チューブレスで販売されます。タイヤは700×42cが装着されていました。幅42mmでエアボリュームがあり、チューブレスですので、快適なグラベル走行ができそうです
フレアタイプのドロップハンドル。ハンドル下側が外側にやや広がっており、悪路でも両手でホールドしやすくなっています
電源スイッチおよびディスプレイはトップチューブ前方上側に埋め込まれています
ドライブユニットの出力調節(アシストモード変更)はハンドルのブラケット内側のボタンで行います。右側のボタン(写真左)で出力アップ、左側のボタン(写真右)で出力ダウン~出力カット(長押し)となります。ブラケットを握った状態では薬指で押しやすく、下ハンドルを握った状態では親指で押しやすいボタン位置です
シートポストもカーボン製(ボントレガーカーボン/27.2mm径)。トレック独自の緩衝技術「IsoSpeed」を搭載しています
IsoSpeedは路面からの振動を吸収するトレック独自の技術。シートチューブをトップチューブから独立させた構造で、シートチューブがサスペンションのようにしなって振動を吸収し、ライダーの疲労を大幅に軽減します。そのような構造でもフレーム剛性が損なわれないため、ペダリングのロスも抑えられています
サドルはVerse Short Comp。Bontragerの多用途サドルで、内腿や骨盤の動きに応じて側端がしなるWing Flexが特徴的です
フレーム各所にネジ穴があり、さまざまなアクセサリーの取り付けに対応しています。フォークのサイドにはトリプルラックマウントがあります
フォークのトップ手前にはフェンダーマウントがあります
フレームにもネジ穴が多く、ボトルケージやレンジエクステンダー(追加バッテリー)をマウントできます
トップチューブ下側には、トレック アドベンチャートライアングルフレームバッグを始めとするバッグを装着できるネジ穴があります。工具不要で取り付けられるフレームバッグです
シートステーにもフェンダーマウントがあります。サイドのネジ穴にはキャリアを固定できます
リアエンド部にもネジ穴があり、シートステーのサイドのネジ穴とあわせてキャリアを固定できます
リアエンド部でスルーアクスルから伸びるL型のレバーはBontrager Switch Lever Pro Toolで、スルーアクスルの締め緩めに使えるほか、4mmの六角レンチとして利用できます
たとえばシートポストを上下させるときに使う4mm六角レンチとして利用できます
スッキリとした外観のグラベルロードe-bikeです。バッテリーもドライブユニットもコンパクトに収まっているので、パッと見では「普通のロードバイク?」といった印象かもしれません

川沿いサイクリングロードを50km少々走ってみると?

Checkpoint+ SL 5で試走してみます。メーカー公称ではバッテリーをもっとも節約して走行できるEcoモードでの最大走行距離は約80kmとなっています。しかし、このe-bikeの車体重量は13.81kg(MLサイズ/TLRシーラント仕様/チューブなし)と、e-bikeにしては軽量級。バッテリー容量は360Whで、今どきのe-bikeとしてはやや抑えめという印象がありますが、それでも十分な容量があると思います。

なので、「80km? もっと走るんじゃないの?」という興味が出てきます。またフルカーボンでチューブレスのグラベルロードということもあり、乗り心地にも興味津々。それらを含め、川沿いのサイクリングロード約50kmを走ってみることにしました。

走るのは「入間川サイクリングロード(正式名称:埼玉県道157号川越狭山自転車道線)」。全長約22kmの自転車歩行者専用道路で、往路はわずかに下り、復路はわずかな上り。筆者宅からの距離まで含めて約52kmの試走です。

5月の晴天のある日、Checkpoint+ SL 5で約50kmの試走をしてみることにしました
入間川サイクリングロードを走りました
入間川沿いをずーっと走るのどかなサイクリングロード(全ルートほぼ舗装路・信号ほとんどナシ)です
入間川サイクリングロードは一部の人から「イルサイ」と呼ばれています。「イルサイあるある」はこの「OZAK」の建物。サイクリストは「あの建物を見るとお腹がすく」と。でもこの「OZAK」はポテトチップではなく「オザック精工株式会社」で、リニアベアリングで国内トップシェアを持つと言われている老舗優良企業です
入間川サイクリングロードの入間市~狭山市間は歩行者が多いですが、それ以外はわりと閑散としています。この日の試走は平日の朝でしたので、ほとんど人影がありませんでした

走り出してまず感じたのは「走りの軽快さ」です。車体が軽くドライブユニットのトルクも十分ありますので、走り出しが軽く、走行中のハンドリングも軽やかです。

個人的には「トレックのロードバイクはよく曲がる」という認識がありますが、Checkpoint+ SL 5も取り回しが軽快です。入間川サイクリングロードは、道路を迂回する(橋をくぐる)Z字のような小さな「つづら折れ」があり、そのカーブは急なUターンカーブです。そんな箇所でもスイッと危なげなく曲がってくれます。

そんな走行感に加え、乗り心地の良さ。これは特筆すべきCheckpoint+ SL 5の美点です。

入間川サイクリングロードは、悪路ではなく舗装もされていますが、割れ目や凸凹が少なくありません。筆者はこのサイクリングロードを普通のロードバイクで何度も往復していますが、「舗装が荒れているエリア」では路面から伝わる強めの振動で体が疲れることに辟易していました。

しかしCheckpoint+ SL 5だと全然そんな疲れを感じません。「え? 入間川サイクリングロード、再舗装したの?」と思うほど滑らかに走れます。おそらくフルカーボンフレームのグラベルロードであることと、それに加えてタイヤが太めでチューブレスであること、さらには路面からの振動を吸収する独自の技術IsoSpeedを採用しているからだと思います。

実はCheckpoint+ SL 5の非e-bike版である「Checkpoint SL 5」に乗っていました。これもカーボンフレームでIsoSpeedを採用したグラベルロードバイクでした。このバイクについても「あぁ~カーボンでグラベル(タイヤ太め)だとこんなに乗り心地がいいのか~」と感動していましたが、Checkpoint+ SL 5はさらに上をいく乗り心地の良さです。試走中その乗り心地の良さに何度も「すっげ~」「ナニコレ~」と独り言を漏らしたほどです。

自宅から約10km先にある「安比奈親水公園」。試走中の写真を撮らなくちゃと思いつつ、乗り心地の良さと走りの軽快さに「ついつい走り続けて」しまいました
さらに7kmくらい先で車体の撮影などをするために停車。自宅から18kmくらいの場所で路面が少々荒れ始めていますが、体は全然疲れてきません。Checkpoint+ SL 5はライダーの疲れを呼びにくいe-bikeかもしれません。後方に見えるのは「平塚橋」
そのままどんどん走って「入間大橋」に着いてしまいました。これまでの間、ずっと「すっげ~」「乗り心地いい~」「ナニコレ~」「サイコー!」と独り言を言い続けていたような記憶があります
「入間大橋」は、入間川サイクリングロードの川越側折り返し地点です。拙宅からは約26kmの距離です
満充電から約26kmをEcoモードで走ってきて、バッテリーは12%しか消費していません。非常に緩やかな下り基調ではありますが、やはりCheckpoint+ SL 5の車体の軽さが効いているようです。ちなみに筆者の体重は100kg。平均的な体重の方ならもっとバッテリー消費量が少ないことでしょう

バッテリーが全然減らないという印象のCheckpoint+ SL 5。思い返してみると、このe-bike、基本的に速いんです。走り出しこそアシストパワーを使いますが、それ以降はだいたい22km/h以上の速度が出ていて、平坦な道だと24km以上の速度が出ていることが多い。ほとんどアシストを使っていない状態ですね。

ただ、走り出しやちょっとした上りはアシストを使用。またそんなシチュエーションではギアを軽くしますが、高いギア比があるCheckpoint+ SL 5はシフトチェンジでより軽快に坂を上れます。車体の軽さ、ギア比、速度の出やすさなどがあり、あまりバッテリーを消費しないe-bikeになっているのだと思います。

それから砂利道など「グラベルロード」での走行感。筆者的な結論から申しますと「MTBほどではないにしてもロードとは思えない走破性能がある」という感じです。これもやはり、タイヤの太さがあり、チューブレスであり、さらにカーボンフレーム+IsoSpeedだからだと思います。

単なるグラベルロードバイクと比べると、Checkpoint+ SL 5はe-bikeでアシストがあるという点も有利だと感じます。ある程度ギアを軽くし、速度もやや落として悪路を走って、車体が不安定になりかけたときに「とっさのトラクションをかけられる」というのが大きなメリットです。車体が不安定になっても即立て直せる。ので、「一瞬滑ることはあるけどすぐ戻せる」というコントロール性の良さが大きな安心感につながっていると感じました。

グラベルロードe-bikeということで砂利道も走ってみました。以前に普通のロードバイクでも走ったことがありますが、「もう二度とロードでココ来ない!」ってほど危なっかしい走行感でした。

Checkpoint+ SL 5で砂利道も走ってみると……!?
浮いた砂利が満載の道ですが、Checkpoint+ SL 5で走ると安定感とともに走破できてしまいました。「砂利道楽しい~♪」と思ったりも。MTBとはまた違って「安心しながら軽やかに砂利道を通り抜ける」ということができて非常に楽しいです

ほか、試走を通して感じたのはドライブユニットの「静かさ」です。アシストモードはEco、Mid、Highの3段階ですが、今回の試走ではほとんどEcoを使いました。そうして走っていると、走行中にアシストが働いてもモーター音はほぼ無音。あえて「どうするとアシスト音が聞こえるのかな?」と、やや急坂の手前で速度を落としてアシストモードをMidやHighにすると「ようやく少し聞こえてきた」というレベルのモーター音です。タイヤが出すロードノイズなどに打ち消されるような小さな騒音といった感じ。

音といえば、走行中にペダリングを止めたときのラチェット音が独特だと感じられました。速度にもよりますが「カカカカカカ~」というより「カァァァァァ~」という、起伏の少ない滑らかなラチェット音です。これはたぶん、ラチェットの「ノッチ数(かみ合わせ段階の数)」が多いのだと思います。

ノッチ数が多いと足を止めた状態からペダリングを始めた瞬間、踏み込み時の「遊び」が少なくなります。加速時のタイムラグが減るので競技においては小さくないメリットだといいます。

ですが、素人の筆者がこの細かなラチェットを体験すると、「なるほど疲れにくいんだな」と実感できました。ペダルの踏み始めとか、急に踏む必要があっても、踏んだ瞬間にその踏力が加速力につながる感じ。踏んだ瞬間に「カン!」なんて音がすることもほぼなく、踏んだら即、ほぼ無音で加速力が生まれている、みたいな感じ。なので、脚に衝撃を感じることがなく、「いきなり踏むと膝に刺激が来る」ということもない。「とてもラクに踏めるe-bike」という印象があります。

朝から試走を始めましたが、撮影や検証に時間がかかってそろそろ日が高くなってきたので一休み。Checkpoint+ SL 5は軽いので、ロードバイクをちょっとしたところに立てかけるのと同じ感覚で自立させられます。写真は前後タイヤをベンチに触れさせての自立。軽いバイクだとこうしても不安定になりにくくてイイですね~
休憩していたら地域猫ちゃん出現。e-bikeに興味が……?
さらに進んで自宅まで数kmの地点。この日は真夏日になる予報で午前中から暑く、人が全然いませんでした
Checkpoint+ SL 5に対する不満点は……強いて挙げればサドル。筆者にはいまひとつ合わないサドルで、ライド終盤は少しお尻が痛くなってきました
そして帰宅。往復約52kmのライドでしたが、バッテリーは70%も残っていました

意外なことに52km走ってバッテリーを30%使っただけ。半分以上は使うんだろうと思っていましたが、まだまだたっぷり。100km走行でも結構余裕がありそうです。

なお「頑張ってペダリングしてバッテリーを節約した」ということはしておりません。フツーにサイクリングを楽しんで、橋をくぐって上がる箇所ではアシストに頼って、というよくあるe-bikeの使い方をしただけ。ですが、やはりCheckpoint+ SL 5の場合、その軽さと走りの良さが、バッテリーライフ的にも大きなメリットをもたらしているようです。

「TREK Central」アプリを使うとスマートフォンとCheckpoint+ SL 5を接続して走行ログやドライブユニット出力カスタマイズを行なえます。走り出したら自動でログを記録するというモードもあります
日本国内のマップも無料でダウンロードできます。細道や裏道もしっかり載っていて、ナビゲーションをさせることも可能

余談ですが、筆者が入間川サイクリングロードを往復したのは久しぶり。記録では2018年6月(筆者は54歳)が最後で、バイクは非アシストのCheckpoint SL 5です。記録には「脚力と持久力なくなってる感じ」「徐々にトレーニングしないと」「秋にロングライドしたい」などとも書かれていました。が、その後は入間川サイクリングロードの往復はしていません。たぶん「入間川サイクリングロード往復はもう楽しめない」と感じたのだと思います。

ところが今回、Checkpoint+ SL 5で入間川サイクリングロードを往復してみて感じたのは、「こんなに楽しく入間川サイクリングロードを往復できたのは初めてかも!」ということ。「もう楽しめない」と思ってから8年も経っているのに、「今まででいちばん楽しかったかも」なーんて実感してしまいました。

やっぱりe-bikeって凄いですね。これまで何度もe-bikeに驚かされ感動してきましたが、またもや。グラベルロードe-bikeでは、舗装路を走る楽しさも、悪路を走るおもしろさも、両方容易に体験できるから当然かもしれませんが、Checkpoint+ SL 5はどこをどう走っても楽しくて、凄いっ!」と心底思いました。

素人の筆者が乗ってもその完成度の高さと楽しさを実感できる非常に優れたe-bikeなので、機会があればぜひご試乗なさってください。人力グラベルロードのCheckpointが好きな人は試乗が購入につながっちゃうかもしれませんが!

スタパ齋藤