ニュース

エアコン2027年問題、価格やサイズは変わるの? パナソニックの取り組みを聞いた

エアコン価格は省エネ基準の改正で新基準対応モデルは価格が上がる傾向。しかし一部メディアが騒ぐほどではなかった?
写真は売り場のイメージであり、特定の店舗とは関係ありません

2026年6月は「エアコン2027年問題」の影響でエアコンの駆け込み需要が増え、エアコン価格は一時高騰する事態にもなった。設置工事に時間がかかるケースもあったという。

省エネ基準の見直しが十数年ぶりに実施されたことに関連して起きた、エアコン2027年問題。この駆け込み需要は、一部では「6畳向けの10万円を切るような安いエアコンがなくなる」との噂も広まってしまったことも一因だった。

たしかに6畳用のエアコンの価格は数万円上がったものの、一部報道のように倍になったり10万円以上も値上がりしたものはない。しかも新基準を達成した製品で10万円を切るものもある。

新基準を達成するためにメーカーはどんな改良や変更を行なったのか? なぜ報道よりも安価に達成することができたのか? 今回はパナソニックによる取り組みを聞いた。

安価な機種は室外機の大型化で「省エネ基準」をクリア

パナソニックのエアコン「エオリア」は、この夏のモデルを発売。ハイエンドモデルの「X」や「LV」シリーズ(換気・加湿機能付き)、「UXシリーズ」(寒冷地仕様)は、2027年の省エネ基準を達成している。

※記事執筆の2026年7月時点では「X」「UX」シリーズの一部は、2027年基準に達成していないモデルもある

世間をお騒がせしている「エアコン2027年問題」は、記事執筆の2026年7月時点では、ハイエンドモデルを2027年基準を達成させるメーカーが多く、スタンダードモデルは未達成が多い。しかしパナソニックはスタンダードモデルも省エネモデルとして、いち早く2027年基準を達成している。

一部の報道では「10万円以下のモデルが25万円に値上がりする」「価格が10万円高くなる」といわれていたが、真相についてパナソニック HVAC & CC株式会社のエアコン事業部 商品企画部の山本弘志部長は次のように答える。

「一概にいくら価格が上がるかとは申し上げられません。なぜなら、省エネ性能以外の自動お掃除機能などの付加機能、銅やアルミなどの素材価格。最近はナフサもあります。製造・輸送コスト、メーカーや販売店様の戦略、需要と供給のバランスなど、価格が上がる要因はさまざまあるからです」

画像はFシリーズになっているが2026年モデルで新しく、2027年省エネ年基準達成モデルのCシリーズがラインナップに加わっている

確かにハイエンドとスタンダードモデルでは、機能や部品数も異なるので、一概にいくら高くなるかは断言できないだろう。そこで2027年基準達成モデルとして新たに追加されたエオリア「C」シリーズについて、どのような点を改良・変更して省エネ基準を達成したかを聞いた。

「おもに熱交換器の大型化で新基準を達成しています。室内機はあまり大きくできないので、室外機の熱交換器を大型化しています」(山本部長)

省エネ性能を改善するにはいろいろな手段があるようだが、室外機や室内機の中に入っている、アルミ板がたくさん並んだ熱交換器の大型化も2027年省エネ向上の手段の1つになっているようだ。

6畳用の室外機は体積比で1.7倍に!買い替え時に注意

2027年省エネ基準を達成しているエオリア「C」シリーズは、6畳から10畳の3モデルがある。これとは別に、機能は「C」シリーズとほぼ同じで、省エネ基準未達成の「J」シリーズも併売している。両モデルの細かな違いはあるかもしれないが、筆者がカタログを見る限り「J」シリーズの新基準達成版が「C」シリーズと見てもよさそうだ。

そこで非達成(達成率87%)の「J」シリーズと、達成版(達成率100%)の「C」シリーズを同じ6畳用で比較してみた。

室内機のサイズは同じ、室外機は新基準対応で大型化?

サイズは両シリーズともに780×229×290mm(幅×奥行き×高さ)で同じだったが、室外機は違いがあるようだ。

左は新基準未達成のエオリアJシリーズ。右は新基準達成版のCシリーズ。室内機の大きさは変わらない

【室外機のサイズ】
Jシリーズ(非達成):675×240×539mm(幅×奥行き×高さ)
Cシリーズ(達成):799×299×630mm(幅×奥行き×高さ)
(サイズ差:幅 +124mm、奥行き +59mm、 高さ +91mm)

奥行きは新基準達成版で6cm近く大きくなっている。しかし背面は一般的に5~10cmスペースを開けて設置しているため、実物を見てもどれほど大きくなったかはわかりにくいだろう。一方、幅が12.4cm、高さが9.1cm大きくなっている点は、一般の方が見ても違いがわかるかもしれない。

左は新基準未達成のJシリーズで従来の室外機サイズ。右は新基準達成版のCシリーズの室外機。Jに比べるとかなり大きい。買い替えだと違和感があるかもしれない
新省エネ基準達成のCシリーズの6畳用エアコンの室外機は、未達成Jシリーズの18畳モデルと同サイズの室外機になっている

室外機をサッシにかからないように、あるいはベランダにピッタリ寄せて置いてあると、12cm増はより大きく感じる。また高さも9.1cm高くなり、室外機に日光や雪避けの屋根を付けている場合は、屋根下に収まらない可能性もある。

体積比で見ると、新基準達成モデルは1.7倍。新基準達成エアコンに買い替える場合は、室外機の設置スペースに注意した方がいいだろう。とくに雪国の場合は屋根付き架台に室外機を乗せていることが多いので注意したい。

2027年省エネ基準の達成による価格差

筆者調べでは、2026年7月1日時点で2027年の省エネ新基準達成モデルは、非達成モデルに比べ価格が4万円強も上がっていた。だが一部の報道のように、倍以上や10万円以上の値上がりすることはなく、少なくとも6畳モデルの場合は4~5万円の値上げに収まっていた。

筆者の計算した電気代は、新基準達成は未達成モデルに比べ(ともに6畳用で省エネ達成率を100%、寿命を10年間とした)32,000円ほど安くなる。したがって新基準達成モデルに買い替えたとしても、実質8,000~18,000円程度の値上がりだ。省エネ達成率が1%ポイントでも高ければ、さらに差が詰まる。しかも2026年夏は、エアコンの駆け込み需要が多かったため値引き率が低く、このような計算結果になった。筆者の予測では、秋の新製品ではもっと価格差が縮まると見ている。特に故障していないなら、エアコンを購入するタイミングは2026年秋以降をオススメする。

インバーター制御と高効率コンプレッサーのコンボで省エネ

新基準達成の手段は、室外機の大型化以外にもさまざまあるようだ。先の山本部長によれば、その代表がエアコンの心臓部にあたるコンプレッサーの改良だという。

「最近はエアコンの24時間運転の割合が高くなっているため、設定温度を維持する運転ON/OFFの繰り返し(間欠運転)が多く発生して、電力のムダが増えています。そこでON/OFFを繰り返すのではなく、よりゆっくり回転せるようにしています。そのために低速回転でも高い圧縮率を維持できる“エコロータリーコンプレッサー”を採用しています」

コンプレッサーは冷気を作る心臓部で、モーターで回転させて冷媒と呼ばれるガスを圧縮し冷気を作る。室温が高ければフル回転でコンプレッサーを回し、最大限冷たい冷気を作り出す。しかし室温が設定温度に近づくとコンプレッサーの回転を止めて、室温が冷えすぎないようにする。しばらく回転を止めていると、また室温が上昇するので、再度コンプレッサーを少し回して室温を下げては、また回転を止める。このように設定温度近くの運転では、コンプレッサーの回転を制御するモーターを頻繁にON/OFFするため、電力に無駄が生じてしまう。

省エネ化するには、モーターをゆっくりと回転(技術的に非常に難しい)させ、低回転でも効率的にガスを圧縮するコンプレッサー(一般に低回転にすると圧縮効率が悪くなる)が必要になる。

そこでパナソニックは、モーターをOFFしないが限界までゆっくり回せるインバーターと、ゆっくり回転させてもガスが抜けずにしっかり圧縮できるエコロータリーコンプレッサーを使い省エネ性能を向上させている。

コンプレッサーを回転させるモーターを頻繁にON/OFFするのではなく、モーターが止まらないギリギリでゆっくり回転させる

ロータリーコンプレッサーは、中央の軸に固定されているローラー(ピストン)が、中心軸からズレているので外側の枠との隙間が広くなったり狭くなったりする。これを利用して隙間が広いときにガスを吸い込み、狭くなったところでガスを排出して、ガスを連続的に圧縮している。

このように低圧のガスと高圧のガスを仕切るために、一般的なロータリーコンプレッサーは「ベーン」と呼ばれる仕切り板をローラーに押しつけて密閉している。しかし回転数がゆっくりになると、ローラーとベーンの間からガスが漏れやすくなり、高回転時に比べ圧縮率が下がってしまう。そこでガスが漏れないように、ローラーにベーンの一部を食い込ませることで、より密閉性を高めている。これでゆっくり回転させても、ベーンとローラーの間からガス漏れしづらくなり、高回転時と同様の高い圧力のガスを排出できるようになる。

ハイグレードモデルでは、室外機の大型化だけに頼らず、モーターを低回転できるインバーターで省エネ化し、さらにエコロータリーコンプレッサーで低回転でも高圧ガスを作って省エネ化しているのだ。

一般的なロータリーコンプレッサ―とパナソニックのエコロータリー コンプレッサーの違い

2029年には事業用エアコンの省エネ基準の改正

2011年から十年以上ぶりの省エネ基準改定で混乱した「エアコン2027年問題」。「2027年省エネ基準に達していないエアコンが使えなくなる」「10万円以下のモデルが20万円以上になる」などの噂で、6月の駆け込み需要につながった。

しかし落ち着いて店頭でしっかり説明を聞いて、実際の価格を見てみれば、テレビや新聞で騒がれていた事情と少し違う。経済産業大臣から「旧型エアコンが使えなくなるわけではなく、すぐに買い替えを喚起しているわけではない」と急遽発表する一幕もあった。

2029年には業務用のエアコンの省エネ基準改正も予定されている

今回は家庭用エアコンの省エネ基準の改定だったが、2029年には事業用エアコンの省エネ基準の見直しも行なわれる予定だ。そのほか、家電の他のカテゴリーでは、2027年12月をもって、すべての蛍光灯の製造と輸出入が原則禁止となる。

エアコンに関する一連の騒動を見て、まずは報道をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分の目で販売店の状況を確認することがいちばん大切というのが分かった。ご家族など詳しくない人がまわりにいたら、アドバイスしてあげて欲しい。