家電は共働き家庭を救うか!?

水拭きもできるヤンキー気質の「ロボット掃除機」はルンバのライバルになり得るか

息子が中1のときに初めて結婚した著者が、家電偏差値35ながらに、時短家電を使いこなす日々を綴ったコーナーです

 時短家電の筆頭格と言えばロボット掃除機、ですが私はこれまでニーズを感じたことがありません。なぜなら、私は掃除機を使うのは何か(だいたいはコーヒー粉)をこぼした時の証拠隠滅のみ。ドン引きされそうですが、独身時代はクイックルワイパーとコロコロだけでしのぎ、掃除機を持っていませんでした。また結婚後は夫が週末にクイックルワイパーでホコリを取り、掃除機をかけていました。

 ところが昨秋、それまでより1.5倍以上広い2階建ての戸建てに引っ越したのを機に、夫が「一人で掃除するのは大変だから、自分の生活エリアは自分で責任を持ってきれいにしよう」と言い出したのです。たしかに、この広さだと分業しないときつい。自分がやらないといけない、できるだけ楽に、となると選択肢はロボット掃除機しかありません。

吸引と水拭きを1台でできるロボット掃除機

 掃除機をかけない私でも、ルンバくらいは知っています。だけど、ルンバしか知りません。家電 Watchの編集長に聞いてみると、ルンバにも複数の機種があるし、最近はルンバのライバルも多数あるとのこと。

 いくつか商品名と特徴を紹介してもらった中から、今回選んだのは「吸引と水拭きを1台でやれる」というAnkerの「RoboVac L70 Hybrid」

 水拭きなんて大掃除で年に1回するかしないかですが、正直に言うと、掃除機を知らない私が既に有名すぎるルンバをレビューしても、新たな知見を提供できる自信がないのです。なので2019年9月に発売されたばかりで、ルンバとの差別化を打ち出そうと頑張っている新商品をレビューすることにしました。

Anker「RoboVac L70 Hybrid」
メーカー名Anker
製品名RoboVac L70 Hybrid
実売価格54,800円

段差にガチの戦いを挑む「ヤンキー」な気質

 家電 Watch編集長によると、Ankerのロボット掃除機のすごいところはマッピング機能とのこと。動きながら部屋の形状、障害物の位置を記憶し、効率的に掃除ができるのです。

 スイッチを入れると、掃除機は部屋の探検を始めます。あっちに行ったりこっちに行ったり……、そして部屋の形状を覚えると、本当に目がついているかのような動きになります。私のように家電の進化に無頓着な人間は本当にびっくりします。

 ただし、マッピング途中の掃除機は、ほとんど“ヤンキー”です。入れそうなすき間を見つけると、「おらおらおら~」という勢いで突っ込んでいきます。我が家には、「ロボット掃除機付きのウォーターサーバー」なるものがあり、ウォーターサーバーの最下部に付属の掃除機が収納されているのですが、そこにも遠慮なく侵入し、先住掃除機と激しくぶつかり合います。

 超えられない段差に対してもなかなか諦めません。「やんのか、こらぁ」「お前なめてんのかぁ」って調子でがつんがつんとバトルを繰り広げ、最終的にエラーで停止してしまいます。

ウォーターサーバーに付属している掃除機の収納コーナーにも果敢に攻め込んでいく。確かにちょうどいいすき間
見てるとヒヤヒヤしますが、階段は絶対に落ちない。けど段差はだめなんだなあ……

マッピング機能を無力化する築56年の戸建て

 なぜこんなことが起こるのか、というと、我が家(賃貸です)が建てられたのは1964年、前回の東京オリンピックの年です。新築時はダイニング以外全部和室だったのでしょう。きれいにリフォームされているものの、1階のあちこちに段差が存在します。リビングとダイニングの間にすら、掃除機が超えられない段差があるのです。

 バリアフリーのマンションなら、掃除機のスイッチを押すだけで全ての部屋の形状を覚えて掃除を完遂してくれるのでしょうが、我が家ではそれができません。

 使い始めた当初は、掃除機が段差に近づくと自分の足で「来るな~、来るな~」とブロックしていたのですが、今はダイニングテーブルの椅子やミニテーブルを段差のところに置いて、バリケードを作って対応しています。

 こうすると、掃除機は一定のエリアを掃除し終えると、「掃除が完了しました。充電ステーションに戻ります」とアナウンスするので、私は掃除機を持ち上げて、次の掃除場所に移動。「充電ステーションに戻ります」と言うたびに、「まだまだよ」とリビング、玄関、寝室と次のミッションを与えていくわけです。

段差を無理に越えようとしないように、手近な家具でバリケードを作る
当初は自分たちの足でブロックしていました

 掃除機側から見れば、移動するたびに「あれ? 知らないところに来た」となり、マッピングの作り直しが始まります。1階の掃除が一通り終わると、抱きかかえて2階に移動して、再びスイッチオン。2階は3部屋あるのですが、段差が少ないのでスムーズに掃除をして、自分で充電ステーション(2階にあります)に帰ってくれます。

 メーカーの関係者がこのレビューを読んだら、「そんな非効率な使い方は想定してない!」と絶句しそうですが。

 ちなみにこの掃除機は最近流行りの「IoT家電」。アプリをダウンロードしてWi-Fi接続すると、スマートフォンから進入禁止の場所や水拭き禁止の場所を設定できるなど、より細やかな使い方が可能になります。

 もっとも、我が家は段差のせいで全体のマッピングができないという事情があり、アプリは使用しませんでした。

スマホ連携で進入禁止エリアなどを設定できますが、我が家は全体マッピングができないので使いませんでした

うたた寝できる静かさに感動

 そんなわけで、掃除機のスイッチを押してそのまま外出する、なんてことはできません。それでも、自分で掃除機をかけることに比べたらものすごく楽です。自分でやったら、掃除機をかけている間は他の作業はできません。せいぜい洗濯機を回すくらいですよね。

 ロボット掃除機だと、何かに引っかかったり、一つのスペースの掃除が終わったときに、ちょっと動かしてあげるだけでいいので、並行して料理や洗濯干し、仕事など色々な作業ができます。

 そしてもう一つ、素晴らしい点があります。音がとても静かなんです。最近の掃除機ってこんなに静かなのでしょうか? ある日、2階の寝室で掃除機のスイッチを入れ、本を読んでたらそのままうたたねしてしまったのですが、目が覚めたら掃除機は充電ステーションに収まっていました。びっくりです。

肝心の吸引力と水拭き機能もチェック

 そうそう、この掃除機は「吸引」と「水拭き」を同時にできることが売りでした。掃除機の内部に設置されたウォータータンクに水を入れると、吸引後に水がちょっとずつ出て床を拭いていきます。ただ、見た目にはほとんど分かりません。掃除機が通った後に床を触ったらちょっと湿ってる。あ、拭いたんだな、という程度です。べちゃべちゃになったらそれはそれで困りますけどね。

 それより私は、「ウォータータンクがそらになりました」というアナウンスが気になりました(私だけでなく、家族全員が気になっていた)。本当は「空(から)」と言いたいんだと思います。中国で長く仕事をしてきた夫は、「この詰めの甘さが中国っぽい」と笑ってましたが、私はわざとボケてくれているんだと信じています。

タンクとモップを備え、吸引と同時に水拭きができます

 終盤に取ってつけたように書いている時点で、私がそれを重視していないのは見え見えですが、掃除機レビューに欠かせない吸引機能もチェックしました。家電 Watch編集長いわく、「Ankerのマッピング機能は業界随一だと思うけど、吸引力はルンバの方が上と言われている」そうです。

 とは言え、掃除機がやるべき仕事はこなしている、というのが私の印象。掃除を終えるとダストボックスはいっぱいになっているし、床のごみや髪の毛もほぼ吸い取ります。コーヒー粉こぼした時にしか掃除機をかけない私の感想なので、あまり説得力ないですけどね、はい。

 結論から言うと、掃除嫌いの人にとってロボット掃除機は救世主です。ただ、これも過去レビューで言いつくされていますが、床に物をたくさん置く人は論外です。私は掃除が苦手だと自覚しており、かつ2年おきに引っ越しているので、意識して物を減らしています。そういう意味では、ロボット掃除機とは相思相愛のようです。

リビング・ダイニングを掃除した後のダストボックス。結構取れます
ロボット掃除機を使い始めて分かったのですが、我が家のソファやテレビボードは、掃除機が下を通れるように作られていました
ぎりぎり入るくらいのスペースでも、一度学習すると猫のようにスムーズに通り抜けます

つい話しかけてしまう「動く家電」

 ロボット掃除機とこれまでレビューした家電との最大の違い。それは、「自分で動く」ということです。そして「動く家電」には愛着が湧くことが今回よく分かりました。

 そういえば15年ほど前、日本に上陸したばかりのルンバを持っていた先輩がいました。当時ルンバは、自動で充電ステーションに帰ることができなかったので、先輩は「ルンバを起動したまま外出したときは、帰ったら見つけてあげないといけないんだよねえ」と、ペットか子どものことを話すようにルンバを語っていました。

 今なら私も、その先輩の気持ちが分かります。掃除機が段差を超えようとしていると、「あー、そこはだめだから」と話しかけてしまいます。ダストタンクがごみでいっぱいになっているとき」は「よく頑張ったね」となでたくなる。

 ロボット掃除機もそのうち吸引力や使い勝手の良さでは差別化できなくなってくるでしょうから、あと数年したらAIスピーカーやペットロボットなどと融合が見られるかもしれないですね。

スペックと同じくらい大事な「相性」

 さて、連載で3つの時短家電をレビューして、気づいたことが2つあります。

 まず、ハイテク家電の力を最大限に引き出すには、家電ファーストな環境をつくらなければなりません。私は広い戸建てに引っ越して、「これからは家電の力で乗り切るぞ~」と思っていたのですが、古い建物は、コンセントの位置や段差の存在など、ハイテク家電の障害が思った以上に多いです。最近ソファを買ったのですが、商品説明に「ロボット掃除機が下を通れます」と説明があり、インテリア用品には既にそういう視点が入っていることも知りました。家電以外のこともアップデートする必要があるのです。

 次に、家電情報はスペックや機能が強調されますが、機能が複雑になると「持ち主との相性」が結構重要です。「有名メーカーで、高スペックで、レビューも高評価」、だけど私のライフスタイルには合わない、というケースもあるでしょう(もちろんその逆も)。何だか婚活のようです。

 私は段差とガチンコ勝負して、掃除機本来の音より大きな衝突音を立てて怒り狂っている掃除機に対し、自分のしっぽを追いかけてぐるぐる回る犬や猫を見ているようなほっこりした気持ちになるのですが、人によってはいら立ちしか感じないかもしれません。高校生の息子は、「ロボット掃除機は言うこと聞かないから好かん。俺専用のスティック掃除機買ってくれ」と言い出しました。自分の部屋くらいだと、そうなるのも理解できます。

 最新機種や新品でなくていいので、家電メーカーとか量販店が、使わなくなるリスクのある家電を、「月額〇〇円で1カ月お試し」のようなサービスをやってくれると、ミスマッチも防げるのではと思うこの頃です。

浦上 早苗

新聞記者歴12年。2010年に小1の息子を連れ中国に博士留学。その後現地での大学教員を経て2016年に帰国。息子が中1のときに初めて結婚し、シングルマザー生活に終止符を打つ。フリーランスで経済ジャーナリスト、翻訳、MBA教員など。公私ともに何でも一人でやってきたので、効率化とマルチタスクは得意分野ですが、家電偏差値は35くらい。取扱説明書を読む時間ももったいないので、直感で動かせる電気製品、デバイスであるかは購入の重要な決め手。 息子に、「公式戦のユニフォームと練習用のズボンとはだしで超ダサい」と言われた写真。