藤本健のソーラーリポート
Ankerから蓄電池が登場! どんな製品か取材してたら欲しくなってきた
2025年4月11日 09:05
アンカー・ジャパンが新たに家庭用蓄電池に参入した。1月に「Anker Solix XJ」シリーズを発表。すでに出荷もスタートしており、据え置き型蓄電池と電力制御のパワーコンディショナー(パワコン)との組み合わせで、容量は5,000Wh、10,000Wh、15,000Whの3種類がある。
気になる価格は、工事費を除いた本体価格100万円台後半~300万円前後とのことだが、国内ではニチコン、パナソニック、シャープ、京セラ、オムロンなど数多くのメーカーが製品を出しているほか、テスラやファーウェイなど海外勢も日本に参入しており、競争の激しい世界でもある。
Ankerといえば、モバイルバッテリーや充電器、ポータブル電源などで勢いに乗っている印象だが、日本の蓄電池市場ではどういった点で勝ち目があるのか、どんな展開を狙っているのか、他社製品との差別化をどうするのかなど気になることもいっぱい。個人的にも蓄電池の導入をまさに検討している中だったので、アンカー・ジャパンを訪ねて話を聞いてみた。取材に対応してくれたのはアンカー・ジャパン 直営事業本部 本部長の宮本丈太郎さん。
Ankerがなぜ蓄電池を?
――Ankerが、家全体をバックアップ可能な家庭用蓄電池の世界に参入するという話を聞いて驚きました。これはどういう背景で製品化に至ったのでしょうか?
アンカー・ジャパン 宮本丈太郎 直営事業本部 本部長:防災に対する意識の高まりがある中、当社のモバイルバッテリーやポータブル電源が安心感につながるというお声をいただいておりました。そうした中、昨年は自然災害が多く発生したこともあり、改めて家全体の電力をカバーすることが非常に重要だと強く思いました。
バッテリーなどを10年以上扱ってきた当社としても、まさにやるべき事業であると考えて参入させていただきました。もちろん防災の観点以外にも大きく2つのポイントがあると考えました。まずは昨今の電気代の高騰です。蓄電池とソーラーパネルがあることで、電気代に対する削減効果が見込めるはずだという点です。そしてもう一つは、従来の家庭用蓄電池の販売方法などを見ていて、アンカー・ジャパンだからこそできることがあるはずだ、と考えた点です。こうした考えを元に実質半年で製品展開にこぎつけました。
――アンカー・ジャパンだからこそできる点とはどういうことですか?
宮本:これまで当社はお客様にD2Cの販売モデル(自社ECサイトによる販売)で直接製品を届けるということを行なってきました。Amazonなどのプラットフォームを通して、また直営店Anker Store(アンカー・ストア)などを通じて直接お客様とコミュニケーションしてお届けすることで、支持されてきたと考えています。一方で、これまでの家庭用蓄電池の訪問販売を主体とした販売方法を見ていると、果たしてお客様が納得できるプロセスなのだろうか、という疑問を感じたのです。実際、モノも見ないまま100万円以上の製品を購入するなど、これで本当にいいのだろうか、と。そこで、当社であればワンストップで、見積もりから販売、設置工事、サポートまでアンカー・ジャパンの窓口でできて、検討段階で直営店において実物を見て、納得いただいた上で購入いただくことができるのではないかと考えました。
――ハード面、ソフト/サービス面、いろいろとあると思いますが、まずはハードにおいて、他社製品とくらべてAnke Solix XJシリーズの強みはどこにあるのでしょうか?
宮本:5,000Wh、10,000Wh、15,000Whの3製品となっており、高いスペックの製品をラインナップすることができました。また他社製品を見ると、パワコンは単気筒型とハイブリッド型がありますが、やはりソーラーパネルのパワコンと蓄電池のパワコンが別々だとスペースも喰うし、効率も落ちてしまうので、ハイブリッドにするべきと考えました。また安全性も非常に重要であるため、万が一放電火災などが起きたとしても自動切断できる形にしています。一方、塩害対策もしっかりしているのも当社製品の特徴です。
――塩害地域用の特別製品を用意した、という意味ですか?
宮本:いいえ、全国どこに設置しても問題ない製品に仕上げており、塩害地域であっても、そうでない地域でも同じものを設置する形になっています。また、保証も長期間にしており、蓄電池は15年、パワーコンディショナーは20年保証です(海岸から500m以内は重塩害地域となり、保証はいずれも10年間)。さらに長くできないか検討中でもあります。
ソーラーパネルも販売。蓄電池は海外向けとは別物?
――ハイブリッドのパワコンとのことですが、ソーラーパネルも製品を出すということなのですか? また他社製品でも利用できるのでしょうか?
宮本:はい、すでにソーラーパネルの販売も開始してはおります。価格および性能の上でも他社製品と同等以上のものを出す予定で準備を進めています。しかし、現地調査の結果次第ではありますが、当社のソーラーパネル以外でも、もちろん利用可能としています。
――具体的にどのメーカーのどの機種と接続可能といった情報は出されているのでしょうか?
宮本:現時点でそうした表などはまだ公開していませんが、メーカー名や製品名、年式など互換性に関して公表を検討する必要はあると考えているところです。現在は、お客様からの見積もり依頼をいただいて現地調査をしながら、それぞれ確認作業を進めています。
――発表された製品単体の価格を見ると、他社製品と比較してそれほど大きく変わらない……という印象を受けましたが、実際の工事費を入れた導入価格というのはどの程度になるのでしょうか?
宮本:これは、それぞれ設置する環境によって変わってくるので、何とも言えないところですが、目安としては施工工事込みで150万円~500万円程度と考えております。つまり5,000Whのシステムで150万円から、15,000Whで500万円程度という形です。いずれにせよ、まずはお見積もりの依頼をいただき、現地調査を行なった上で、お答えしていく形になります。
――先ほど、パワコンはハイブリッドというお話でしたが、実際のところ注目されているのは、ソーラーパネルとのセットと、蓄電池単独のどちらで、それぞれどのくらいの比率になっているのでしょうか?
宮本:これまで多くの見積もり依頼や問い合わせをいただいていますが、そこを見ると既存の設備に蓄電池のみを設置したいという方が多く、それが8割程度ではないかと思います。やはり卒FITの方を中心に、ソーラーパネルユーザーの方が多いようです。実際に見積もりをしてから、施工完了まで1カ月半程度を見ていただきたいのですが、1月29日に発表だったこともあり、いまちょうど設置工事を始める段階のお客様が出てきています。
――そうした見積もり依頼において地域差はあるのでしょうか?
宮本:北は北海道から南は石垣島まで日本全国をカバーしていますが、やはり問い合わせが一番多いのは東京です。補助金があるといった理由もさることながら、Ankerグループとしての知名度という面で東京が強いようです。それに次いで神奈川、千葉と続きますが、北海道や九州からもかなりご連絡をいただいている状況です。
――先ほど企画から製品化まで実質半年くらいだったというお話はありましたが、海外での展開というのはされているのでしょうか?
宮本:はい、家庭用蓄電池については、Ankerグループとしてかなり以前から検討を進めてきており、アメリカ、ヨーロッパにおいては2024年から販売をスタートさせています。
――なるほど、すでにモノがあったので、それを国内に持ってきた、というわけですね?
宮本:いいえ、海外で販売しているモデルと日本のモデルはまったく別のもので、国内のものは、先ほどお話をした通り、昨年から製品展開を検討して発売しました。というのも、欧米で製造しているものを日本の規格に合わせて設計しなおし、認証を取ると何年もの時間がかかってしまいます。もちろんそうした準備もすすめてはいるのですが、今の電気代の高騰であったり、日本の卒FITなどによる状況の流れというのは何年も待っていたらニーズやタイミングを逃してしまいます。そこでなるべく早く市場投入したいということで、日本限定モデルを作った形です。
――日本限定モデルということで気になるのは、これはECHONET Lite(エコーネット ライト)には対応しているのでしょうか?
宮本:はい、もちろん日本向けの製品なので、ECHONET Liteに対応させています。また、この蓄電池、パワコン、そしてソーラーパネルの状況を見える化したり、操作するためのスマホ用アプリも用意しております。また現時点ではまだ対応できていませんが、当社のポータブル電源やモバイルバッテリーをはじめとする各種製品、さらにはサードパーティー製品も含めて連携ができないかなども検討していきたいと思っております。
蓄電池を安心して買いやすく
――実際の導入ユーザーはこれから増えていくところだと思いますが、製品発表後のいまの反響はいかがですか?
宮本:すでに数多くのメーカーがいる中での新規参入であったため、どんな反応になるのか正直なところ不安な面はありました。しかしお客様からは「安心して相談できる」「私たちの家に合っているかどうか親身に相談できるところが初めてできた」といったお声をいただいています。これまで訪問販売などが多かった業界なので、お客様に安心した購入体験と、アンカー・ジャパンだからできるワンストップでの対応を、さらに推し進めていければと思っています。
もちろん、オンラインでのやりとりができるほか、Anker Storeという全国32の直営店(※2025年4月1日時点)の中には家庭用蓄電池が展示されている店舗もありますので、ここへ気軽に来店いただき、実物をご覧いただくことも可能です。スペースの関係もあり、全店舗に家庭用蓄電池の展示ができているわけではありませんが、順次増やしていく予定です。店舗によっては相談スペースもあり、見積もりの前に、ここでご相談もできるので、安心して導入いただけるのではと考えています。
家庭用蓄電池の有力な選択肢となる?
筆者宅は1年半前に、電気自動車の蓄電池を家の電気として使うV2H(Vehicle to Home)を導入したものの、まだ問題も多く、記事にするために詳細をまとめているところだ(ちなみにAnkerはV2H対応について「開発中」とのこと)。
近いうちに据え置き型の家庭用蓄電池の導入をしようと考えていて、その意味で非常に興味深い話を聞くことができた。個人的にもぜひ一度現地調査をしてもらって、導入を検討したいと思っている。