スマートスピーカー使いこなし術
Googleアシスタント搭載、音楽機能のプラスアルファが魅力なパナソニックのスマートスピーカー
2018年7月23日 06:30
2017年後半から国内で急速に広まりつつあるスマートスピーカー。GoogleやAmazon、LINEといった、自ら音声認識技術を開発しつつ対応ハードも展開するメーカーの製品が目立つ中で、隠れた注目の製品と言えるのが、サードパーティー製のスマートスピーカーだ。
Googleは「Google アシスタント」、Amazonは「Alexa」というそれぞれのAIアシスタント技術を他社向けに提供しており、サードパーティーは価格や防水、デザイン、音質といった自社ならではの色づけを加えることで、本家とは異なる魅力を持ったスマートスピーカーが生まれている。
パナソニックが5月に発売した「SC-GA10」も、こうしたサードパーティー製スマートスピーカーの1つで、「パナソニック版Google Home」とも言える製品。Google アシスタント搭載によりGoogle Home同等の音声操作や家電コントロール機能が可能なほか、音質の高さやネットワーク内の楽曲ストリーミング再生といった独自の機能を搭載した点が特徴だ。
メーカー名 | パナソニック |
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製品名 | スマートスピーカー SC-GA10 |
価格(編集部調べ) | 32,270円 |
縦長の大きめ本体サイズ、ステレオミニの音声入力も搭載
本体サイズは約100×100×284mm(幅×奥行×高さ)で、Google Homeと比べて2倍以上大きく、純正スマートスピーカーの中ではもっとも背の高いAmazon Echo Plusの235mmよりも高い。
ただし、底面積はGoogle Homeよりも一回り大きい程度のため、高ささえ気にしなければ置き場所はさほど困らない。重量は約1.7kgと、Google Homeの477gと比べて3倍以上の重さだが、頻繁に持ち歩く製品でもないため、実使用で困ることはないだろう。
本体上部には操作ボタン、本体前面と上部の角の部分にLEDを備え、スマートスピーカーの応答状況を横からも上からも確認できる。本体下部の背面には電源のほかステレオミニの音声入力を備え、スマートフォンやミュージックプレーヤー、テレビの音声などを有線で出力できる。
Bluetoothも搭載しており、スマートフォンやミュージックプレーヤーの音楽をSC-GA10でワイヤレス再生することも可能。ただし、Google HomeのようにBluetoothスピーカーへ音楽を出力することはできず、音声の再生はすべてSC-GA10で行なうことになる。
セットアップはGoogle Homeと同じ、音声認識精度は若干の違いあり
初期設定はGoogle Homeと同じで、本体の電源を投入するとGoogle Homeアプリを起動するようガイダンスが流れ、指示に従ってGoogle Homeアプリを起動すると新たな機器としてSC-GA10が表示される。あとは画面の指示に従っていくだけでセットアップは完了だ。
スマートスピーカーとしての機能もGoogle Homeとほぼ同等で、「OK Google」に続けて発声するだけ。筆者宅にはすでに2台のGoogle Homeが導入済みだが、これまで設定した内容やサービス、スマートランプ「Hue」やIFTTTといった機器の登録情報も変わらずそのまま利用できる。
ただし、音声認識の精度では若干の差があるようだ。我が家ではリビングから2m程度離れた台にスマートスピーカー置き場を設置、さらに対角線上の同じ距離にあるキッチンにGoogle Home miniを置いて運用している。Google Homeの時は設置方向に向かって声を発すればほぼ間違いなく動作していたのに対し、SC-GA10に向かって話しかけても後方にあるGoogle Home miniが反応する、という挙動がしばし見られた。
また、マイクもGoogle Homeに比べると指向性が強いようだ。設置場所は写真の通り2つの方稿に壁があるのだが、この壁のある方向から話しかけたときの反応がGoogle Homeに比べると弱く、うまく認識されないことがあった。
とはいえ、Google Home2台を1カ所から声が届く場所に設置している家庭はレアケースだろうし、認識の問題は設置場所を変えるなど工夫で十分乗り切れる範囲だろう。通常の使用範囲では音声認識でそこまで困ることもないと思われる。
Google Homeよりも圧倒的に高い音質
ここまではGoogle Homeと同じ部分を比較してきたが、こうしたサードパーティー製品で一番注目すべきは、いかにGoogle Homeと違うことができるかだ。Google Homeとまったく同じならGoogle Homeを買えばいいのであり、サードパーティーならではの味付けこそが製品の魅力と言える。
SC-GA10の特徴の1つは「高音質」だ。8cmのウーハーと2cmのツイーターによる3WAYスピーカー構成としたほか、背面にはバスレフポートの搭載で、より豊かな低音が生成されているという。
実際に音楽を聞き比べてみるとその差は圧倒的。SC-GA10では女性の高いボーカルやバンドの低音などがはっきり伝わってくる。比べるとGoogle Homeは「音楽が聴ける」というレベルで、BGMの細かな部分が伝わってこない。あまり音質にこだわるタイプではないので細かな評価は難しいが、それでも明らかにわかる音質の違いだ。
さまざまな機能を持つスマートスピーカーだが、その中でも音楽再生は主要な機能の1つとも言える。定額制の音楽配信サービスを契約しており、スマートスピーカーで音楽を聴く頻度の高い筆者にとってこの音質の高さは魅力的だ。
ネットワーク上の音楽を再生できる「サウンドリンクジャンプ」
音質の高さに加えてSC-GA10が備える特徴が、ネットワークを利用した音楽再生機能である「サウンドリンクジャンプ」。同社のレコーダ「DIGA」やPCなど別の機器に保存されている音楽を、ネットワークを介してSC-GA10で再生することができる。
サウンドリンクジャンプの利用にはiOSとAndroid両対応のアプリ「Panasonic Music Control」をインストールが必要。特別な設定は特に必要なく、利用規約にチェックを入れるだけで自動的に機器や利用できるサービスが表示される。
画面上部にはネットワーク上の機器、画面下部はSC-GA10での再生に対応した音楽アプリが表示され、画面左上から音楽を再生する端末をSC-GA10にするかスマートフォンにするかを切り替えられる。
ネットワーク再生はDLNAがベースのようで、サウンドリンクジャンプに対応したDIGAのほか、自宅で利用しているDLNA対応NAS、SIEのレコーダ「nasne」も表示された。Windows搭載PCがあればWindows Media Playerのメディアストリーミング機能を利用し、PC上の音楽をSC-GA10で再生することもできる。
今回SC-GA10と合わせて試用したDIGA「DMR-BRT530」は、番組の録画やBD/DVD再生といった機能に加え、音楽や写真を取り込んでネットワーク経由で再生できる「おうちクラウドDIGA」というコンセプトに対応しており、音楽CDのデータをDIGAのストレージに保存できる。
音楽CDを入れるとHDD取り込みか再生かを選択する画面が表示され、取り込みを選択すると楽曲の取り込み形式と、スマートフォン取り込み用のAACを作成するかを設定する。楽曲の取り込み形式はWAVまたはFLACの2種類で、AACのみという選択はできない。また、取り込み時間はCD1枚で20分弱かかり、取り込み中はほかのことができないため、取り込み枚数が多い時はPCで取り込んでネットワーク経由でDIGAに保存するほうがよさそうだ。
サウンドリンクジャンプを機能で見るならば、DLNAとChromecastに対応したミュージックプレーヤーアプリ、ということになるだろう。こうしたChromecastとDLNAに対応したアプリは他にも存在するのだが、使いやすさという点ではPanasonic Music Controlが上。DLNAを使った経験があるユーザーであれば共感してもらえるかもしれないが、DLNAは相性問題が非常に大きく、画面に表示されても再生できなかったり、そもそも対応機器なのに認識すらされない、ということも多々ある。
一方、Panasonic Music Controlは、少なくとも筆者の環境で試した限り、MP3/AAC、iTunes Storeで購入した楽曲やFLACのハイレゾも再生でき、相性問題で困ることはなかった。また、スマートフォン内に保存されている楽曲も再生できるため、iPhoneユーザーであればiTunes Storeで購入した楽曲をそのままスマートフォンから再生するということもできる。
プレイリスト機能も備えており、ネットワーク上にある楽曲をプレイリストに登録しておけば、後から再生するのも手軽だ。なお、アプリにはポッドキャストも表示されるが、残念ながらスマートフォンではそのまま再生できるもの、端末内のポッドキャストファイルをSC-GA10で再生することはできなかった。
高音質とネットワーク再生のプラスアルファが魅力な1台
Google Home同等のスマートスピーカー機能に加え、音質の高さとネットワーク再生機能を持つSC-GA10。音声認識の精度を見れば本家のGoogle Homeが上だが、それを補ってあまりある機能を備えていると感じた。
定額制音楽配信サービスの普及により、CDや過去に取り込んだ楽曲を聴く機会が減っているという人も多いだろうが、まだまだ音楽配信には提供されない楽曲も多い。自分がこれまで蓄積してきた楽曲データの資産と、新たな音楽と出会う音楽配信サービスを統合的に扱えるという点で、SC-GA10は魅力的な製品と言えるだろう。