ぷーこの家電日記

第509回

私の夏は始まっている。今年は何の野菜を植えるかな

私の趣味の家庭菜園。週に1度、週末くらいしか畑に行けないけれど細々と続けている。家庭菜園を始めるきっかけは水耕栽培器で、「何これ面白そう!」と思って買ったのが10年前の冬。それまではサボテンですら枯らしてしまうほどに植物栽培は向いていないと思っていたけれど、水耕栽培器の中で小さな小さな種から大きく育つ植物の様子に、「すごい!」とめちゃくちゃ感動したのだ。要は水耕栽培器という家電に興味を持ち、そこから初めて野菜栽培に興味を持ったわけである。

マーケティング論とかで、「ドリルを買いに来る人はドリルが欲しいのではなく穴が欲しい」みたいな話があるけれど、私の場合は「うわー! ドリルかっこいいー! ドリル欲しい!」というタイプである。そこから「うぉー! 本当にこれ穴開けられるじゃん! もっと穴開けたい」みたいになる(笑)。なので、小さな水耕栽培器でちょっとした葉物野菜を育てながら、「もっと色々育ててみたい!」と思って、ペットボトルを改造したり、100円ショップでバケツやゴミ箱などを買ったりして、ベランダで水耕栽培の手を広げ、結構色々な野菜を育てた。

虫が苦手だったので(今も得意ではないが)、プランターで栽培するのに抵抗があり、しばらく水耕栽培で色々作っていたけれど、夏になるとしっかりと根を伸ばした”のんべえ野菜”たちがグビグビと水を飲み干し、朝晩ひたすらに水を入れる作業に明け暮れ、限界を感じた。大人しくプランターで栽培しようと、ホームセンターでプランターと土を買ってベランダ家庭菜園がスタート。

日当たりと風通しがあまり良くない我が家のベランダでは、病気が入ると一気に全体に広がってしまってダメになったり、そもそもそんなに広くないのであっという間に手狭になってしまい、思い切って貸し農園を申し込んだのが5年半前。もうそんなに経ったっけ? というのが正直な感想。ずっとド素人で上手くいかないことの方が多いし、毎年夏場の雑草には惨敗している気がするけれど、それでも自分なりに土を育て植物を育てどんどん成長していく姿にはいつも感動するし、とても楽しい。強いて不満を言うならば、私の趣味にも作った野菜にも夫がほぼ興味を示さないことである。三文芝居でも「うわーすごい! 美味しそう! 今夜はこれで何を作るの?」くらい言ってもらいたいものである(笑)。

そんな感じで細々と続けている家庭菜園だけれど、今年の冬はちょっとつまらなかった。なぜなら、いつものように色々植えていなかったからだ。今季は夏が猛暑のうえにとても長く、普段だったら冬野菜を植える時期に夏野菜が元気すぎて入れ替えるタイミングを完全に失ってしまった。ポコポコと実をつける茄子やピーマンを抜くには忍びなく、結局12月まで夏野菜を収穫していた。なので年明けから収穫するものが全然なくなってしまったのだ。今年の冬に採れたのは、ちょっとした隙間に植えておいた水菜と大根くらい。白菜やブロッコリーなど成長を見守るのが楽しい野菜が全然ない畑はとても寂しく、やる気も行く気も半減。やっぱりちゃんと計画を立てないといけないんだなと反省した。

そしてやっとで3月。この時期になると、気分はファッション業界人。我々の夏は2月に始まるのである。何を植えるか決めて、早いものは2月から種まきスタート。苗まで育てて春に畑に植えるのである。季節を率先して先取り。気分はもう完全に夏だ!

もちろんファッション同様、毎年流行りだってある。新品種や業界全体の流行り傾向はもちろんあるけれど、主に自分の気分という流行りである。定番の夏野菜もいいけれど、今年は果菜を少し減らして、栽培期間が長く家庭菜園レベルならそんなに手間がかからない里芋やネギなどの割合を少し増やしたい。また半年前から植えたいと思っていたものを忘れずに植えた!

今年のニューフェイスは「山わさび」である。西洋わさびとかホースラディッシュとか色んな呼び方がある山わさびは根を食べるので、虫に葉を多少食べられても大丈夫だし、そもそもそんなに虫もつかないらしい。虫だけでなく暑さにも寒さにも強く育てやすい山わさび。春に植えて冬収穫なので、ちょうどクリスマス時期に収穫してローストビーフにすりおろして添えて食べるのが最高に楽しみだ! 株分けすることで翌年から増やすこともできるらしいので「美味しかったら増やしちゃおう」と夢も膨らむ。

「山わさび植える!」と言ったら、「納豆にすりおろして混ぜると美味しいよ」と言われたので、今年は大豆も植えることにする。納豆も豆から作る完全自前の山わさび納豆ご飯だ。何かと忙しない日々を送っていて、必要なものもクリック一つで翌日に届くくらいに便利な世の中だけれど、何カ月もかけて汗水流して育てて頂くという行為は、とても贅沢な無駄だと思う。この無駄な時間こそが私の生活における深呼吸のようなもので、無駄にこそ価値があるものってあるのだなと、自分の趣味に助けられている実感がある。

家庭菜園をしていると、「買った方が安くない?」と結構な頻度で言われる。私にとって家庭菜園は節約のためではなくただの趣味である(笑)。ちょっとスローペースすぎた冬だけど、野菜も雑草も目を覚ます春に私も元気に目覚めて畑ライフを満喫するぞ! と、ちょっと遅くなった種まきにせっせと勤しむのでありました。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。