ぷーこの家電日記

第466回

夫は私の応援団長。とにかく応援された東京マラソン

先週に引き続き東京マラソンのお話。アナザーストーリーというか、我が家のもう一つの東京マラソン、夫の話である。

大会当日が近づくにつれて、不安やら何やらでどんどん気持ちが憂鬱になる私と反対に、「もう少しだね! 楽しみだねー!」と、どんどんテンション上がって、ワクワク感が隠しきれないような状態になっていく夫。

夫は元々スポーツ観戦が大好きだ。プロやトップ選手の試合や競技の観戦はもちろん大好きだけれど、休みの日に予定が入っていなければ、フラッと近所の競技場などに行き、見知らぬ中学生の試合を観戦して帰ってきたりするくらいにとにかくスポーツ観戦が大好きなのだ。

その大好きなスポーツに私が出るということで、もう全力で観戦と応援する気が溢れ出している。ありがたいけれどプレッシャーすら感じる。大会が近づいてきたら、何やら地図をプリントしたり切ったり貼ったりと工作のようなこともしていた。

そして東京マラソンの前日、私は同じく出走予定の友人と待ち合わせをして、ビッグサイトで事前受付に行ったのだけれど、その時に夫は「今日はコースの下見に行ってくる!」と自転車に乗って、コースを全て辿り、写真を撮り、プリントして、事前に用意していた地図の余白に貼り付け、自分の「応援の記録アルバム」なる物を作っていた。夫のマラソン大会は既に始まっている! 家からの往復を考えるとどれくらい自転車を漕いだのだろうか。

マラソン当日の朝、夫は私と一緒に家を出て、まずは都営地下鉄と東京メトロの共通1日乗車券(900円)を購入し、都庁前のスタートゲートの直前まで送ってくれた。別れた後はモーニングなどを食べながらのんびりと時間を潰してから自分の応援ルートを辿る予定らしい。

そういえばどこで待っているという事前情報は全く貰っていない。大勢のランナーの隙間で、街の景色や沿道の応援の人たちの顔を見ながら、いつどこで何回現れるか分からない夫も探す長い旅。

夫はランニング大会応援アプリの「応援navi」を使いながら、私が大体どこを走っているのかは把握しながら移動しているようだけれど、大きな通りを一斉に走りながら「これは出会うの無理なんじゃないか」と思った。もし出会えたとしても道の逆端にいると横切ることもできない。

だが不思議なことに、見事に出会えてしまった。知っている姿を見つけると妙にテンションが上がるし笑顔になる! 写真を数枚撮っていくつか言葉を交わして「行ってきます!」と別れてからしばらく走っていると、また夫が現れる。遠くに走っても走っても再び夫が現れるのが何だかとても不思議だ。

時には大きく手を振って呼びかけてくれて、時には私の同僚(初対面)とともに待っていてくれ、時にはマネージャーのように「水は? 食べ物は? エアサロンパスいる?」とサッと出してくれる。その姿はまさに応援のプロである。走るだけじゃなくて、こんな参加の仕方もあるんだなと感心した。

きっと私なら、地下鉄降りても交通規制だとかで上手く移動できずに間に合わないどころか、どこで乗り換えてどこへ向かえばいいかさえ分からず、ゴールで待っているくらいしかできないはずだ。下見までして完璧に追いかける応援のプロ!

さらに凄いのは、次の応援ポイントへ移動する途中でコンビニに寄り、撮った写真をプリントして、リアルタイムでアルバムを作成していたのだ。事前に2冊のスケッチブックを買っていたのは、1冊は地図やコースの写真を貼った応援の記録アルバムで、もう1冊は私の東京マラソン記念アルバムだったわけである。計画から下準備から実行までもう脱帽。ゴール後の打ち上げの際にはすでに1冊のアルバムとなっていた。

後日私が途中で撮った写真を追加したり、使用したゼッケンを貼り付けたりして仕上げ、特別なメモリアルアルバムをプレゼントしてくれた。私もなんとか完走できたけれど、この夫の応援マラソン完走こそ、メダルをかけてあげたいほどの完全燃焼っぷり! 当日翌日は走った私より疲労してた気がする(笑)。

もちろん夫だけじゃなくて、沿道の人たち、応援に来てくれた同僚や友人、応援naviで応援メッセージをくれた友人、応援の言葉とともに給水してくれるボランティアの方々、活躍の場がない方が良いのだけれどいつでも動けるようにじっと待機しているAEDを持った方々、陰で大会を支えてくれている数多くの人たち。もう全員にありがとうの気持ちでいっぱいだ。応援の力ってとにかく凄いエネルギーになることを、私はこの東京マラソンで知った。

頑張れという言葉がこんなにも元気をくれて、こんなに背中を押してくれて、不思議と疲れ切った足が前に進む。きっとあのボランティアスタッフの方々も、いつかの大会で応援の声にものすごく元気を貰った経験があるんじゃないだろうか。貰ったエールの力を知っているからこそ、今度はそれを私にくれているんじゃないだろうか。そんなことをぼんやり考えながら走っていた。

応援された人が応援する側に回っていく、エールを繋げて広げていくというのが、この大会の第2の目的じゃないだろうか。まさに「東京がひとつになる日」を肌で感じた。

大都市でマラソンをする場合、道路や交通機関の規制など、とにかく不便や影響を受ける規模が大きい。いくら素晴らしい花形選手が走ろうが、選手と観客という分断された関係性の場合、一部の人のためだけの大会になってしまう。それをいかに多くの人を巻き込み広げていくかが大会を継続していくための1番の近道で、それを見て育って憧れた人の中から、いつかトップランナーが誕生することになるかもしれない。

私もまた走る機会があればぜひ参加したいと思うけれど、それが叶わなくても、次回から全力で応援する側として参加したい! 誰かの1歩分くらいの力を声で届けられたら良いなぁと切に思っているのであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。