ぷーこの家電日記

303回

私が一生ものの趣味を見つけて、沼に落ちていくまで

 私は昔から多趣味の無趣味と言って良い性格で、何かを始めてはのめり込み、そして移ろう季節並みに一気に熱が引く。基本、物を作ることが大好きなのでインドアが多いけれど、例えば編み物。寝る間を惜しんでというか寝るのを忘れてカーディガンを編み、終わったら燃え尽きて飽きる。再びブームが訪れた時は、手袋を片方編んで飽きた(笑)。

 編み針で遊べる編み物はまだ良い方だ。裁縫を始めると楽しくなってきて、良いミシンを買ってみたり、レザークラフトやろうと思って道具を一式買い揃えちゃったり。我ながら呆れるばかり。こんな人が家族だったらたまったもんじゃないなと思いつつ、唯一良い表現ができるとしたら「好奇心が強くて実行力が高い」と言えるくらいか!?

 そんな飽きっぽくてダメ人間の私が、40歳手前でとうとう一生の趣味を見つけたのだから不思議なもので、それはとてもラッキーだった。その趣味は、本連載でもたびたび書いている家庭菜園だ。私が家庭菜園を始めた最初のきっかけを思い出してみると、これまた不思議なもので本連載「ぷーこの家電日記」だったのだ。

 本連載が始まったのは2013年9月。(第1回:はじめまして。ぷーこと申します)「家電日記」なぁんて銘打ちながら、家電はあまり出てこない本連載だけれど、元々家電やガジェットは大好きだったこともあり、最新家電などはチェックしていたし、連載が始まってからは普段あまりチェックしない種類の家電等も追いかけるようになった。そんな時に見つけたのが、同じ年の2013年に発売されたユーイングの水耕栽培器「Green farm」だったのだ。

 サボテンさえ枯らしたことのある私なので、植物は育てられないと自分でも思っていたけれど、これだったら水やりもしなくて良いし、採れたてのレタスが食べられるとか楽しすぎるじゃない! と感動して「欲しいなー!」と言っていたら、夫がクリスマスプレゼントと言って買って帰ってきてくれたんだ。

 小さな種が「こんなに!?」と驚く大きさまで成長することに感動し、さらにレタスをもぎ取りながら巻いて食べるという焼肉にハマった(笑)。水耕栽培でほかに何が出来るだろうと考え始めて、色々な葉物野菜を作って楽しんだ。

 飽きっぽくはあるけれど凝り性の私は、葉物だけでは飽き足らず、もっといろいろ作りたい! と、ペットボトルやゴミ箱などを使って簡易的な水耕栽培器を用意し、ベランダで実の付く野菜を作り始める。ぎっしり張った根に感動し、生き生きと育って実を付ける様子に「野菜すげー!」とどんどんのめり込んでいくことになる。

 そしてそのタイミングで、同僚の友人も家庭菜園が趣味だということを知った。ベランダや庭で作れる量は限られているので種は少量欲しいのだけれど、一袋に結構な数が入っているので、友人とタネをシェアしたり一緒に買ったりするようになって、「種会議」と名付けた飲み会を開いては「次は何作る?」と、種苗会社のカタログを見ながら野菜愛を語るように。同じ野菜でも膨大にある品種の中から育てる野菜を選ぶのがもの凄く楽しいのだ。

 虫が苦手なので、土はなるべく使いたくなくて避けてきたけれど、野菜がグビグビ水を飲むもんだから、水耕栽培のお世話も追いつかなくなってきて、プランターも導入して土いじりも始めた。たくさん収穫したい欲が日増しに強くなり、畑を借りることにしたのが1年ちょっと前。そして畑と野菜への情熱は今も上がり続けている(笑)。

 好きこそ物の上手なれと言うもので、野菜の性質や特徴なども勉強し始めるし、害虫や益虫にコンパニオンプランツなど、植えるものの相性にも詳しくなり始め、肥料作りにも手を出しちゃうくらい。収穫した野菜を美味しく食べ切るために、野菜料理をたくさんするようになったし、食生活だけじゃなくて「早寝しないと明日畑に行けない!」などと、週末の生活習慣もかなり改善された。

 普段買っていた野菜に対する見方も変わり、「すごい! さすがプロの技!」なぁんて野菜売り場をうっとり尊敬の眼差しで見てしまっている。野菜が安いと、昔は「ラッキー」なぁんて思ってたのに、今は切なく悲しくなってくるほど。趣味1つでこんなにも価値観や人生までもがガラッと変わるということを体感してびっくりしている。そして、知識欲も日に日に増して、もっと体系的にちゃんと勉強したい! と思い、野菜ソムリエの資格を取ってみることにした。

 大学を卒業して以来、初めて授業なるものを受けて、「めっちゃくちゃ楽しいぃ!」とただただ感動。学生の頃の私に「勉強って楽しいんだぞ」と、説教しに行きたい(笑)。年末に試験を受けるんだけれど、マーク式のテストなんてそれこそセンター試験以来かも! あまりにも楽しいものだから、まだ課題も終わってなければ試験も終わっていないのに、さらに上のコースに進もうと決めている私。これが沼に落ちるということかと、底のない野菜沼に、気づけばどっぷり沈んでいく私なのでありましたとさ。めでたしめでたし……(笑)。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まない30代後半。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。