大河原克行の「白物家電 業界展望」

白物家電の欧州展開はこれからが本番~パナソニック 津賀社長 インタビュー

 パナソニックの津賀 一宏社長は、ドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2015の会場においてインタビューに応じ、「今回のIFAは、驚きがない展示会だった」と語る一方、「会場全体が、価値を訴求する正常系へと戻りつつある」と総括した。

 欧州の白物家電事業については、「洗濯機や冷蔵庫はまだまだ。ゴレーネとの協業の成果を生かしたい」などと述べた。また、新たに発表したコンシューマ向け有機ELテレビは、「パナソニックのブランドが、よりお客様に向いた形に変化してきた証」などと表現した。

 IFA 2015を軸に、パナソニックの現状と今後を聞いた。

コンシューマの実績がBtoBにつながる

パナソニック 津賀 一宏社長

――今回のIFA 2015を見てどう感じましたか。

 津賀:各社の展示を見てみましたが、ほとんど「驚き」というものがないという印象を持ちました。その一方で、しっかりと商品を作っていこうという姿勢に変わってきたメーカーが増えた感じを受けました。ソニーでも、サムスンでも同じです。この背景にあるのは、メインとなるテレビで利益が出ないということ。

 どんぶり的な経営ではなく、きっちりとした経営をしないと各社ともに厳しい状況になっている。価格だけの競争ではなく、価値訴求をしていくような正常系へと戻りつつある。そうしたことを感じたイベントでした。

 そして、パナソニックは、従来はコンシューマの展示とともに、同時にBtoB関連の展示も行なってきましたが、今年のIFAでは、コンシューマ1本に絞り、そのなかで、どんな価値を訴求できるのかということに力を注ぎました

――BtoBシフトを鮮明に打ち出してきたパナソニックにとって、これは戦略転換にあたるのですか。

 津賀:いえ、戦略はまったく変わっていません。BtoB事業を拡大していくという姿勢はそのままですが、その一方で、家電事業がパナソニックの中核事業のひとつである、という考えも変わりません。パナソニックというブランドを捉えた場合、エモーショナルな価値、ワクワクするような価値を訴求するのは、やはりBtoCの製品になります。

 BtoBのお客様にとっても、BtoCの価値があるからこそ、パナソニックとBtoBの領域で手を組みたいという声をいただいています。とくに自動車業界は、我々が家電で培ってきた技術、お客様に対する接し方といったものを一番欲しがります。お客様に近い感覚を持ちながら尖ったことをやっている経験を生かして、ユーザーインタフェースやパネル、電子ミラーといった、人と接するところで、どれだけ力を発揮してくれるのか。そうしたことが求められています。

 そして、2番目に欲しがるのがテクノロジーです。たとえば、電池の進化はどうなるのか、テクノロジーパートナーとしての期待がそこに集まっています。

 我々はコンシューマ事業の実績が、BtoB事業に生きるようにしていますし、お客様の見方もそうなっています。コンシューマの実績が、BtoB事業の源泉になる。IFAでの展示内容を、コンシューマに思い切って振ったのは、BtoCの提案内容が、BtoBの事業拡大にもつながるという確信を持ったからです。

自社生産パネルにこだわらず、協業しながら成果を出す

――IFAの展示に「驚きがない」ということは、業界にとって、いいことなのでしょうか。それとも悪いことなのでしょうか。

 津賀:それは両面あります。しかし、いずれにしても、正常系に戻ったという点はいいことだと思います。これまでは、テクノロジーの進化が速すぎて、テクノロジー訴求が先行していた嫌いがありました。たとえば、有機ELは、新たなテクノロジーとして注目を集めますが、これによってテレビがどう変わるのかという視点がなければお客様に受け入れられないし、続かない。

有機ELテレビ「CZ950」を発表した

 津賀:今回、パナソニックブースでは、有機ELテレビを展示しましたが、これは自社のパネルではないにも関わらず、他社以上の画質を実現しています。これまでは最先端のパネル技術は、自社開発、自社生産のものでやっていくというのがパナソニックの姿勢でした。プラズマパネルでも、液晶パネルでもそうでした。

 しかし、今回は、他社のパネルを使って、協業しながらも、他社以上のものを出すという新たなビジネススタイルを打ち出しました。これは、パナソニックのブランドが、よりお客様に向いた形に変化してきた証かなと思っています。こうした動きも正常系のひとつであると認識しています。技術の先進性を打ち出すというのは、ある意味、誰でもできることです。

 むしろ、お客様目線に立って、新たな製品や新たなサービスとはどういうものなのかということを深堀りしていくことの方が大切であり、我々にとっても関心が高い部分です。

――有機ELテレビは、パナソニックのテレビ事業において、どんな位置づけを担うことになりますか。

 津賀:プラズマテレビからの撤退後、パナソニックが、ハイエンドテレビをどういった形で出すのか、という点は大きなテーマでしたが、今回、その回答を提示できたと思っています。また、パネル部分の協業を通じてハイエンドテレビを実現していくことは、新たなチャレンジとしても意味があり、前向きに捉えています。

 もちろん、たくさん売りたいのですが(笑)、実際にどれぐらい売れるのかは、やってみないとわかりませんね。価格が高い製品になりますから、まずは事業を継続できるだけの台数を販売できればいいと考えています。プラズマ撤退によって落としてきたテレビの市場シェアを、なんとか、あるところで維持したい。これは我々の努力だけでなく、市場での価格競争の推移も影響してきます。価格競争の世界に入っていくつもりはないからです。

 ただ、これからテレビ市場が成長するというわけではありませんから、価格競争の動きも落ち着いてくると考えています。テレビ事業を下支えするボリュームゾーンのテレビを一定数量販売して、その上で、白物家電や理美容家電、ホームネットワークなどを伸ばす領域に位置づけるというのが、家電事業の基本的な考え方です。家電事業は、「売り」がずっと落ちていましたが、今年あたりで歯止めをかけ、来年からは伸ばしていくというイメージを描いています。

――パネル事業についての基本姿勢を教えてください。

 津賀:いま、兵庫県姫路市に、液晶パネルを生産する姫路工場を自前で持っていますが、ここに大きな投資をして、世界のパネルメーカーに真っ向から挑んでいくというつもりはありません。小さい形であっても、どうやって特徴を出していくのかということを追求していきます。建物や設備の償却がかなり進んできていますから、その点では、軽く、小さな形で、特徴を出しやすい体質へと変わってきました。

 日立製作所から異動してきた技術者たちは非常に優秀ですし、特徴あるパネルを開発してくれています。営業利益も黒字転換しており、短期的な心配はない。顧客も増えていますし、どこかと手を組むのではなく、しばらくは1社でやっていくつもりです。しかし、問題は、この事業でこれから何10年も、どうやって生き残っていくのかという点です。その点では、まだ十分に考えられていないというのも事実です。

 円安の成果もあり、液晶パネルで利益が出せるいまのうちに、しっかりと「転地」を進め、医療用や車載用など、様々な分野で小回りを効かせられるようにしたいですね。一方で、有機ELに関しては、日本連合のような形で、ジャパンディスプレイやソニーと一緒になってやっており、これはうまくいっています。ここでは、中小型のパネルが対象となり、各社の技術を持ち寄り、そのなかでパナソニックは印刷技術によって製造する方法を提案しています。

 今回の有機ELテレビでもわかるように、我々はすべての技術や製品を自前で作るという、無理なことはやらないと決めている。そこで、有機ELパネルはLG電子から調達して、本家本元以上のテレビを作ることに挑んだわけです。

白物家電はゴレーネとの協業で欧州市場に浸透

――パナソニックは、2009年から、欧州市場向けに冷蔵庫や洗濯機を投入し、白物家電事業に参入したわけですが、これまでの成果をどう評価していますか。

 津賀:正直なところ、欧州市場における冷蔵庫や洗濯機などの大型家電事業は、まだまだの状況であるといえます。ただ、この分野については、ゴレーネとの協業がスタートし、その姿がようやく形になってきました。今回のIFAでは、ゴレーネのブースを訪れ、CEOをはじめとする同社幹部と意見交換を行なってきました。この協業の成果をうまく生み出さないと、欧州における家電ビジネスは難しいと考えています。

 とくに東欧地域についてはゴレーネの強みを生かせる。我々が持つ黒物家電の強みと組み合わせるといったこともやっていきたいですね。もともと欧州には長い歴史を持った家電メーカーが数多くあります。そうした市場に参入していくには、パナソニック1社だけの力では限界があると考えています。

 また、ブランド力だけでは語れない、その国のお客様の暮らしに寄り添う生活密着型の提案力が必要です。欧州の家電事業は、日本を除く海外では最大規模であり、パナソニックのブランド力も高い。とくにドイツや英国では強い。これをもっと生かしていきたいですね。

今後はゴレーネとの連携強化が鍵になる

――欧州で、ゴレーネ以外の白物家電メーカーと手を組む可能性はありますか。

 津賀:小さな試みはいろいろとあるでしょうが、大きな企業と手を組むといった動きはあまり見いだせていません。欧州市場は保守的ですから、なかなか動き出さないところもある。そのなかでどんな手を打つのか、ということをよく考えないといけない。

――パナソニックのデザインについては、どう考えていますか。

 津賀:パナソニックのデザインが、他社に比べて劣っているという認識はありません。ただ、日本テイストのデザインであったのは確かだと思います。日本では、軽い商品、軽い操作感が好まれます。そのため、見た感じ、あるいは触った感じが軽いものを実現するデザインが優先されます。

 その一方で、欧州市場ではプレミアムゾーンに踏みだそうとすると、軽さとは真逆のものが求められます。欧州では、高級感があるメタル系が好まれるという傾向がありますね。そうした意味では、日本テイストのデザインが、欧州市場では受け入れられにくいという傾向があったのは事実です。

 そこで考えているのが、ゴレーネが持つ欧州テイストを取り入れながら、日本が持つ、やさしさや、技術の先進性といった日本テイストのデザインの良さを組み込み、新たな世界を作っていくという手法です。欧州市場における洗濯機や冷蔵庫のラインアップは数が少ないこともありますし、とくに冷蔵庫のデザインはまだ十分ではないという自覚はあります。

 ラインアップを増やしていくなかで、欧州のテイストをどう加えるか、ということになります。しかし、冷蔵庫、洗濯機以外の領域では、デザインにおいても負けていないと思っていますよ。

欧州市場向けの洗濯機。欧州テイストのデザインを採用した

――欧州における広告投資の考え方はどうですか。

 津賀:韓国勢も湯水のように広告投資を行なえる状況ではないでしょうし、当社も馬鹿みたいに広告投資をするつもりはありません(笑)。どこも、バンバン、テレビ広告を打つことはできないということです(笑)。これからは、正常系の世界のなかで戦っていくことになります。そこで大事なのは、パナソニックのブランドイメージが高い国において、次につながる事業を展開すること。とくに、ドイツや英国は、パナソニックが強い市場ですから、そこに投資をしていきます。これらの市場で新たな事業の軸を生み出せないかが課題ですね。

 パナソニックというブランドは、社名でもあり、製品のブランドでもある。欧州市場では、AV機器のイメージがまだ強いかもしれませんが、日本でも、2008年には、白物家電のブランドとしては圧倒的な力を持っていた「ナショナル」を、パナソニックに統一した経験があります。AV機器に加えて、白物家電でもパナソニックのブランドを定着させるとともに、環境にやさしい企業であること、クルマに対して積極的にエコを提案する企業であるなど、トータルでのブランド訴求をしていくつもりです。

 そして、そのイメージは、やはり「プレミアム」なブランドということになります。たとえば、米国で、EVメーカーのテスラの電池は、パナソニック製であるということが知られています。これが企業の価値、そして白物家電の価値をあげることにもつながります。

 一方で、欧州では、ビルトイン家電に対するプレミアム感が高いですから、そうした分野にもこれから力を入れたいですね。ただ、東南アジアなどのように、ビルトイン家電が不要だという市場もありますから、これらの市場ではまた別の角度からプレミアム感を提案していくことになります。国によって提案の仕方を変えていきたいと思っています。

復活したTechnicsは2年目も順調

――昨年のIFA 2014で、Technicsの復活を宣言してから、ちょうど1年を経過しました。いまの手応えはどうですか。

 津賀:取り扱い店舗からの評価も高く、まずは狙い通りに来ているといえます。今回、新たにターンテーブルを投入することを発表しました。従来、Technicsで販売していた名機と呼ばれるターンテーブルを超えるものを、新たな技術によって作っていこう、という意欲的な取り組みも行なっていますし、順調な形で2年目に入っていけたと思っています。

 昨年のIFAでは、最上位のリファレンスシステム「R1」と、比較的リーズナブルである「C700シリーズ」を発表しましたが、これだけのラインアップでは、Technicsの復活が受け入れられても、なかなかビジネスにはつながりにくい。事業として回っていくには、年数がかかりますし、製品ラインアップの幅も必要です。いよいよ、こうしたところに入っていく段階にきたといえます。

Technicsは順調な成果をあげているという

IoTはセキュリティや見守り用途に

――今回のIFAでは、IoTに関する展示が各社で相次いでいました。パナソニックにおけるIoTの姿勢について教えてください。

 津賀:究極的には、家のなかにあるあらゆるものがインターネットやホームネットワークにつながっていくことになるのでしょうが、そういった機器をお客様に買っていただくことが難しい側面もあります。その最大の理由は、家のなかにある家電製品の買い換えサイクルがまちまちであるという点です。

 クルマは、新車に乗り換えれば、クルマのなかのシステムはまるごと新たなものに変わります。しかし、家の場合はそうはいかない。新築の場合でも、既存の家電製品をそのまま使うという場合が多いですし、リフォームでも同様です。「なんで、丸ごと家電製品を買い換えなくてはならないんだ」ということになる。いまの提案のままでは明らかに破綻する。そう考えると、断片的に個別の家電機器や端末が入っていくことは避けられません。

 我々も、冷蔵庫をネットにつないだり、エアコンをネットにつないだりといった提案もしていますが、IoTという切り口からは、決め手となるものが見いだせていないのが正直なところです。我々も提案が破綻しているところもあり(笑)、他社ブースを見ても、まだ決め手がないという感じを受けました。他社のIoTの展示内容をみても、その程度の内容であれば、やろうと思えばいくらでもできます。

 IoTという観点では、技術的な難しさよりも、どうしても単品単位での訴求になるという難しさの方が大きい。今回、パナソニックブースにおいて、大きな家や多層階の家でもネットワーク接続ができる環境を、セキュリティ、あるいは見守りという用途から提案しました。ドイツでは、アリアンツ(Allianz)という保険会社と提携して、サービス提供を行ないますし、日本でも展開をしていくことになります。これがパナソニックにおけるIoT分野の深堀り方法のひとつだといえます。

ホームネットワークの観点からIoTを提案

 パナソニックがこれから取り組んでいくのは、いかに新たな「住空間」を提案ができるのか、ということです。白物家電もAV機器も、住宅関連も持っているというメーカーはほかにはありません。また、スペースプレーヤーという空間を演出するプロジェクターは、照明ルートで販売することができる。照明ルートは特殊なルートであり、他社はなかなか入ってこられません。こうしたルートを使った製品提案も、パナソニックの強みになります。

 そして、空質や空調といった点でも我々は製品を持っている。そして、他社にはないハウジングなどのノウハウを活用して、住空間というなかに、これらの製品をビルイトインしていくことができます。技術面や商品面では他社と同じようなことをやっているように見えるかもしれませんが、それを最終的にまとめて、「ビジネスにしていく力」という点では、パナソニックが持っている力の方が強いといえます。

 単品で売って、単品の売り上げ規模を追求するのではなく、パナソニックが掲げる「クロスバリューイノベーション」によって、新たな土俵を作って、そこでブランドイメージを高めていきたい。ただ、日本ではパナソニックが扱っているものがすべて揃っていますが、欧州やアジアでは揃いきっていないところもある。地域ごとの特性を捉えて、なにを優先的に揃えていくかということも考え、土俵を広げていかなくてはなりません。欧州では、キッチンスペースがプレミアムな空間ですから、まずはそこに様々なリソースを投入していきたいですね。

パナソニック全体の成長をけん引する車載ビジネス

――欧州における車載ビジネスにはどう取り組んでいきますか。

 津賀:当社にとって、欧州における最大規模のビジネスは家電であり、次いで、車載関連、そしてBtoBソリューションという順番になります。車載ビジネスは、多くの案件を受注していますが、導入がはじまるのは2017年、2018年、2019年といったタイミングです。そして、その伸びが、パナソニック全体の成長を牽引することになるのも間違いないといえます。

 欧州においても、2017年以降は車載ビジネスが伸びていくことになるでしょう。今回のドイツ訪問にあわせて、Audiの幹部とも話をし、なぜ、Audiの型番はこうなっているのか、この番号が抜けているのはなぜか、などと親しく話をさせていただきました(笑)。自動車メーカー向けには、ミニ技術展も開催し、良好な関係を築いています。

 また、今回のIFAにあわせて、スペインのフィコサ・インターナショナルSAにも訪問しました。経営陣と話をし、工場を見せてもらいましたが、そこで感じたのは、我々とはかなり補完関係があるという点です。フィコサ側も、パナソニックが持つ技術には高い関心を持ったようで、いい関係が築けたと思っています。

 フィコサは、電子ミラーなどの絞った領域において強みを持っています。そこにパナソニックが持つ総合的なテクノロジーを組み合わせて、自動車メーカーに対して提案をしていくことができます。そのときに、フィコサが前面に立った方がいいのであればそうしますし、パナソニックが前面に立った方がいいのであれば、パナソニックが前面に立ちます。クルマの新たな技術は欧州から発信されることも多いですから、欧州における車載関連ビジネスの布石を打つことは重要だといえます。

 電子ミラーになれば、ミラーのなかにカメラを付けたり、ディスプレイ化したりといったことのほかに、サイドミラーをカメラに置き換えてしまえば、ぐっと小型化できるといった提案が可能になります。そのときに、ディスプレイは車内のどこに置いた方がいいのかということも検討していかなくてはならないですね。こうしたことをクルマメーカーを交えて考えていく必要があります。

 また、フィコサには、アンテナにおいて独自技術を持っているので、コネクティッドカーの領域でも強みが発揮できるのではないでしょうか。パナソニックは南欧系の自動車メーカーとの結びつきが弱いのですが、クライスラーがフィアットと一緒になったり、日産がルノーと共同調達を行なうというように、従来のビジネスを継続発展させるためにも、南欧の自動車メーカーとのパートナーシップが重要になります。

 そこにもフィコサとの連携の意味があります。ただ、当社の出資比率は49%であり、一部には競合する部分もありますから、そこに関しては、注意深く、情報管理をやっていく必要があります。

投資は積極的に、成長性のある自動車関連をメイン

――今年度下期に向けて動きはどうなりますか。

 津賀:2015年度第1四半期の業績は、想定よりも低い実績であったのは確かです。これには、日本での消費増税の影響により、住宅関連が低迷したり、太陽光パネルの需要が停滞したという明確な理由があります。しかし、第2四半期以降は、住宅関連が持ち直してきましていますし、しかもここは第4四半期に向けて売りが集中していく傾向にありますから、あまり心配をしていません。

 日本での業績を全体的にみれば好調です。唯一、心配なのが、中国ですね。株安による経済への影響は限定的と見ていますが、習近平政権において、緊縮政策を打ち出したことが、とくに不動産市場に影響しており、その流れで、家電消費についても、何割か縮小しているのが実態です。しかし、すべての面で中国経済が失速しているわけではありません。不動産の落ち込みをどこでカバーするのか、あるいは中国でカバーできなければ、どこのエリアでカバーするのかといったことを考えていけばいいと思います。同じ海外戦略地域においては、東南アジアは好調ですし、そこは割り切っています。

 パナソニックでは、戦略投資として2,000億円を計上していますが、第1四半期が予想を下回ったということで、戦略投資は前倒しで推進していくことを決めました。どうせ投資するならば前倒しにしようと。その結果、2,000億円からさらに上積みすることになるのか、あるいは相手がある話ですから、案件がまとまらずに2,000億円以内に留まるのかはわかりません。

 しかし、積極的に投資をしていく戦略は変えていません。投資対象の一番大きなところは自動車関連。自動車関連は技術変化が速く、業界も変化しており、成長性もありますからね。投資に値しやすいものが多い。そして、住宅関連、BtoBソリューションという順番になります。BtoBソリューションの案件は小さいものが多いので、ここで少し大きなものも狙えればと思っています。

 ちなみに、2015年度通期で目指している、4,300億円の営業利益目標については、必達で取り組んでいきますよ。

大河原 克行