そこが知りたい家電の新技術
空気清浄機を選ぶポイントは通風量と運転音、そして省エネ性能
~中国でシェアNo.1を誇る高級空気清浄機ブルーエアの開発者インタビュー
by 阿部 夏子(2013/5/2 00:00)
空気清浄機への関心が高まっている。中国の大気汚染問題や、例年の倍以上の量が飛散した花粉対策としてなど、購入動機は様々あるものの、全体的な傾向としては、高額でも、確かな性能を実感できるような製品に人気が集中している。今回は、現在中国での販売シェア(金額ベースにおいて)No.1を誇るスウェーデンの空気清浄機メーカー、ブルーエアの開発者に空気清浄機を選ぶ時のポイントについて聞いた。
インタビューに応じてくれたのは、ブルーエアで新製品の開発を担当しているJoakim Nigren氏(ヨアキム・ナイグレン)。同氏はブルーエア本社があるスウェーデンのストックホルムで勤務しており、今回日本に初来日した。
製品が高額なのには理由がある
――最初にブルーエアという製品の特徴、強みを教えてください。
空気清浄という機能に特化したシンプルな製品ながら、素晴らしい性能を持っているということです。ほかの製品に比べて、短い時間で室内の空気をきれいにできるだけでなく、ユーザーがわかりやすいシンプルな操作性やデザインも大きな特徴だといえると思います。
――日本の製品に比べて御社の製品は、製品価格、ランニングコストいずれも高額ですが、それはなぜでしょう。
何に重きをおくかだと思います。確かに価格やランニングコストだけを見れば割高に感じるかもしれません。しかし、それにはきちんと理由があるということを理解していただきたい。
たとえば、ブルーエアの本体はほかの多くの空気清浄機が採用しているプラスチックではなく、金属を用いています。プラスチックを用いた本体では、2~3年使うと経年劣化が進み、使用時に本体が揺れるということがありますが、金属で作っている我々の製品はそのようなことがありません。実際、先日も使用開始から15年経った製品が修理に持ち込まれましたが、問題箇所だけを直して再び製品を使えるようになりました。
フィルターに関してもこだわりがあります。多くの空気清浄機では既製品のHEPAフィルターを搭載していますが、ブルーエアでは自社開発のフィルターにこだわっています。ユーザーが何を求めているのか、どういった製品がユーザーの生活にフィットするのかといった“ユーザーベネフィット”にこだわった製品作りをしているからこその製品価格であり、ランニングコストだと思っています。
特許技術を駆使して、小さなファンでも十分な集じん性能を確保
――では、自社開発されているというフィルターはどのような特徴があるのでしょう。
フィルターで最も大切なことは風がきちんと通ることだと思います。フィルターの網目が細かければ確かに微細なホコリまでキャッチすることができますが、フィルターに付着した埃は何もしなければそこにずっとあるわけで、そうすると風がうまく通り抜けることができない。
ブルーエアのフィルターは、目の大きさが異なる3枚のフィルターを重ねています。フィルターの目は奥に行くほど細かくなっていて、最初のフィルターで大きなゴミを、最後のフィルターで細かいゴミを集じんしているので、目詰まりしにくい構造になっています。フィルターは約17mのフィルターを折り込むようにして作っています。
また、取り込んだ空気に含まれるゴミを帯電させ、フィルターに吸着させやすくすることで、フィルターの目を通り抜けるような微細な粒子もキャッチしています。これらの技術は「HEPA Silent(ヘパサイレント)」と呼ばれる特許技術で、私たちの製品の要となっています。集じん率の高い優れたシステムを導入することで、必要以上に大きなファンを搭載しなくても、十分な空気清浄を行なうことができます。これは、必要以上の動作音を出さないという意味でとても大切なことです。
――フィルターの技術を検証するために行なっている試験があれば教えてください。
基本的には米国家電製品協会(AHAM)が定める「CADR(Clean Air Delivery Rate:クリーンエア供給率)」に基づいた試験を行なっています。ただ、先ほども言ったように我々はフィルターそのものの性能というよりも、通風量を重視しているため、フィルターそのものの性能ではなく、空気清浄機としての機能を重視しています。
いかに細かい物質を除去できるかということも大切ではありますが、我々は基本的に空気清浄機は24時間365日使うものだと考えているので、小さい物質を除去するというよりは、通風量の維持や省エネ性能、運転音を重視するべきだと思うのです。
もちろん除去性能も十分なものを備えているのが前提ですが。ブルーエアのHEPA Silentシステムでは、0.1μmというごく細かい物質も99.97%除去することができます。
――やはり半年スパンでのフィルター交換は必要なわけですね。
私たちは、(空気のきれいな)富士山に住んでいるわけではないですよね。人が多く住んでいる都市部に住んでいる以上、空気の汚れというのは避けて通れない問題です。たとえば、私たちのスタッフが駐在している中国・北京では、もともと真っ白なブルーエアのフィルターが約半年で真っ黒になってしまいます。これは、人口密度が高い東京においても、同じことがいえると思います。
フィルター表面には、汚染物質がすべて吸着されているので、そのままにしていると、その汚染物質が蓄積されて、そのまま外に出されてしまう。定期的な交換というのは不可欠だと考えています。
――確かに東京や北京では、人口密度も高く、排ガスなども蔓延しています。しかし、ブルーエア誕生の地、スウェーデンは日本では「森と湖の国」として知られ、空気が汚いというイメージは全くありません。そういった場所で専業メーカーを始めたのはなぜですか。
私は、創業者ではないので、詳しいことはわかりませんが、ブルーエアCEOのBengt Rittiriが、優れた空気清浄機がないと感じたからだと聞いています。
確かにスウェーデンは、東京や北京に比べて空気がきれいですが、人が住んでいる限り、空気が汚れる要素があるのは確かです。室内にいれば、ホコリはあるし、ダニやカビ、タバコなど、空気清浄機が必要なシーンは必ずあります。とはいっても、中国や日本に比べて空気清浄機の所有率が低いのは確かですね。
中国で販売シェアトップを獲得
――最近では、世界的に中国の大気汚染が問題になっていますが、今回の問題によって空気清浄機の売り上げは変わりましたか。
もちろん変わりました。PM2.5は、空気清浄機への見方を変えるきっかけになったと思います。実際、中国での我々の売上はトップを占めています。
――日本の空気清浄機の多くが、定期的な手入れをすることで、数年間連続してフィルターを使い続けられるとしていますが、それについてはどうお考えですか。
数年間同じフィルターを使い続けられるというのはすごい製品ですね(笑)。その製品のことをよく知らないので、ここではなんともいえないですが。私達はすべてはユーザーの利便性のために、製品作りを進めています。常に良い状態で製品を使ってもらうには、定期的なフィルター交換が必ず必要です。フィルターを交換しなければ、ただのファンになってしまう。
――日本の空気清浄機とブルーエアの大きな違いといえば、加湿機能の有無も挙げられます。現時点では、加湿機能を搭載した製品はありませんが、今後搭載する可能性はありますか。
現時点では全く考えていません。我々は、あくまでも製品のシンプルさ追求しています。本来、必要な機能を犠牲にしてまて、新しい機能を追求しようとは思いません。今後一切、搭載しないと、断言はできませんが。
――日本の空気清浄機はどのような印象をお持ちでしょう。
一番驚いたのが、カラーバリエーションが豊富な点ですね。ブラウンやピンクなど、豊富な色があるのは、世界的に見ても珍しいと思います。ただ、それが日本の伝統的なインテリアにあうのかは疑問ですが。アメリカや中国では空気清浄機といえば、全てホワイトというのが一般的です。
――最後に今後の展開について教えてください。ブルーエアは、現在家庭向けの空気清浄機だけを扱っていますが、今後業務用に展開することは考えているのでしょうか。
はい。もちろん、それも視野に入れています。ただ、現在の製品ラインナップにおいても、約65平方m(39畳)までカバーできる製品(ブルーエア 650E)も扱っていますので、それをオフィスや病院などで導入されているという事例もあります。
――空気清浄機以外の製品を出すという可能性は?
今のところそれは考えていません。あくまでも、空気清浄機の専業メーカーとして今後も展開していきます。
――今日はありがとうございました。