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ソニーの賢い照明、マルチファンクションライトが超進化! 充実機能がもっと手軽に使える

ソニーのマルチファンクションライト「MFL-2100S」

ちょうど去年の今ごろ、「読者よりまず俺が欲しい!!!!」と記事で紹介した、ソニーの「マルチファンクションライト」。

一般向けに使いやすいスマート照明という羊の皮を被っているが、実はその中身はLinuxのベアボーンPCに各種センサーを内蔵したオオカミ! テクノロジー好きの皆さんが狂喜乱舞するデジタルガジェットだったのだ! その全貌は次の通り。

  • 色温度と明るさ、常夜灯をスマートフォンで制御できる
  • Bluetoothスピーカー内蔵で音が天井から降り注ぐ
  • テレビの音声でも口パクと声が合う低遅延aptX LL搭載
  • ライトの内側に付いている8つの赤外線リモコンで家電を制御
  • 温度/湿度/照度センサー内蔵
  • 上記のセンサーをトリガーに、照明などをプログラマブル制御
  • 起床時にだんだん明るくなるモーニング照明
  • スマートスピーカーと連携し「OK,Google」や「Alexa」が使える

そんなマルチファンクションライトの最新モデルが11月6日に登場。さらなる進化を遂げた「MFL-1100S」(27,000円)と、その上位モデル「MFL-2100S」(43,200円)で、同日より予約受付開始される。

ソニーのマルチファンクションライトに新モデルが登場

以前のマルチファンクションライトでは法人向け機能として個人利用には封印されていた、人感センサーやSDカードスロットなどが(1世代前の8月発売モデルと同様に)公開されている。さらに今回のモデル「マルチファンクションライト2」は、照明のコントロールだけでなくスピーカーの音などよく使う機能を、スマホだけでなく専用の物理リモコン「スマートコントローラー」からも操作できるようになった。結果として、使い勝手に一段と磨きが掛かったシーリングライトに超進化したのだ!

アップグレードしたらフツーに戻った? その真相は

新しいマルチファンクションライトで進化した大きなポイントは、一般的なシーリングライトのように「物理リモコンで操作できる」点だ。えっ!?

マルチファンクションライトに付属するリモコン「スマートコントローラー」

「従来モデルのようにスマホで操作できなくなった?」いやいや、そうじゃない。スマホからも操作できるけど、リモコンでもスマート機能を操作できるようになったということだ(従来も照明機能用のリモコンは付属していた)。

さすがは「It's a SONY」。多くの会社ならリモコン付きのシーリングライトを製品化してから、IoT対応の製品を出すところ。しかしソニーのアプローチは違う! まずバリバリIoTのマルチファンクションライトありきで、お客さんからの「リモコンでも多くの機能を操作したいよね」という要望に対応したというわけだ。この、お客さんの期待をポーン! と超えちゃうぐらいの尖り方がソニーだ。

手持ちのソニー製テレビのリモコンより長さが3cmほど短かった
専用ホルダーも付属していて、壁にかけてもなじむホワイト
もちろんスマホからも操作できる

結果として、リモコンが付属したフツーのシーリングライトになったように思うかもしれないが、実は中身も大きくアップグレードしている。主な特徴を簡単にまとめると下の通りだ。

  • Bluetoothのペアリングや、スピーカー機能の音量調整、ミュートがリモコンからも行なえる
  • みまもりモード(後述)への切り替えがすぐできる
  • さらに隠し機能を追加した!?

こうしてスペシャリストからゼネラリストになったシーリングライトは、「より多くの人が使いやすい」ファンクションを追加したマルチファンクションライトへと進化したのだ。それだけでなく、よく見るとさらに隠しファンクションを備えているようなので、それについても後ほど説明したい。

【コラム】ソフトウェアエンジニアの森本氏がぶっちゃける!

ソニーネットワークコミュニケーションズ IoT事業部門 事業推進部 L-Gadget課 シニアソフトエンジニアの森本真一氏

便利な機能を体験する前に、ここで製品を開発したエンジニアへの取材で聞いた少々マニアックな話をしたい。

リモコンとシーリングライト間の通信は、Bluetoothではなく赤外線を使っている。今まで、エアコンやテレビを操作するための「赤外線送信器」は搭載していた。しかし今回リモコン操作を受け付けるために「赤外線受信器」を追加した。大手電機メーカーのエンジニア全員が「今まで受信器持ってなかったんか~い!」とツッコミを入れるところだ。

森本さんは、ぶっちゃけた話をしてくださる気さくなエンジニアで、普通なら聞けなそうな話もいろいろうかがえました!

一方、スマホとマルチファンクションライトは、Bluetoothを経由して通信する。そのためペアリングが必要だが、天井につけるシーリングライトにペアリングボタンをつけるのはナンセンス。そこで、先代では壁コンセントのスイッチを入れなおす(シーリングライトが再起動する)とペアリングモードになっていた。奇想天外な仕様だが「だよねー」というエンジニアの声が聞こえてくる(笑)。

しかし今回リモコンが付属したことで、「BT」ボタンを押すだけでペアリングモードに切り替わるようになった。便利! だから再起動しなくてもスマホを登録できるように、ソフトウェア的に根っこを改良しているのだ。

隠し機能だった人感センサーとSDカードスロットが使えるように!

初代のマルチファンクションライトでは、法人向けの隠し機能として搭載されていた人感センサーとSDカードスロット。本機は、その機能がバッチリ公開され、一段と便利になっている。

みまもり機能の利用イメージ(スマートフォンからの設定)
スマートコントローラーからでも、みまもり機能を設定できる

その人感センサーを活かした機能の一つが「みまもり」だ(MFL-2100Sのみ)。付属スマートコントローラーの「盾」型のアイコンを押したり、スマホからみまもり機能をONにすると、人感センサーが部屋を監視。不審者が侵入してきた場合、人感センサーが反応すると警告メッセージを流す。

それと同時に部屋の音を30秒間SDカードに録音し、スマートフォンにその音声ファイルを送信して、部屋に異常があったことを通知。さらに、大きな警報音を鳴らすというものだ。誤動作防止のために警報まで30秒間の猶予があり、この間にモード解除できれば発報しない。

この体験がスマートコントローラーからもできるようになったのが新モデルで大きな注目ポイントの一つだ。これまでは、例えばスマホを持たない子供が帰宅した際にみまもりモードを解除できないという課題があった。しかし、新モデルのスマートコントローラーを使えば、スマホを持たない子供でも解除ができて、解除後も裏側の動作としては異常と判断し、30秒間の録音は行なうという安心の仕組み。

他にも、マルチファンクションライトが目覚ましの音楽をかけ、人感センサーに人の反応があったら目覚ましを自動で止めるといった使い方も可能になる。

今回の新モデル製品化にあたり、アプリを刷新している。

アプリのホーム画面
ぱっと見で分かりやすいようにリビング風にビジュアライズ

部屋の状況が、よりビジュアライズされたメイン画面になっている。人がいる場合はソファーに腰掛けた人のシルエットが表示され、不在の場合は表示されない。またテレビやエアコンを操作する場合は、画面の機器の画像にタッチすると、それぞれの操作画面に切り替わるようになっている。もちろん従来式のインターフェイスも残されていて、使いなれたメイン画面で操作ができる。

なお、MFL-1100Sから赤外線でテレビやエアコンを制御するためには、別途ライセンス料が必要。初期セットアップ後、2週間はお試しができて、継続利用したい場合はライセンスを購入するという仕組み。11月6日~11月26日の期間中は、テレビ/エアコンの両ライセンスが無料になるとのことなので、試してみてもよさそうだ。

アプリでのテレビ操作画面
照明の操作画面。写真はあらかじめプリセットされた照明環境を呼び出す画面。電球色や昼光色、明暗を手動で決める画面もある
従来モデルの使用イメージ
新モデルでは様々な面で機能強化した
新モデル2機種の主な機能比較
型番MFL-2100SMFL-1100S
照明(明るさ/色)操作アプリアプリ
Bluetoothで音楽を再生アプリ/リモコンアプリ/リモコン
時刻/人の動き/温度で機器操作アプリアプリ
Amazon Echo/Google Home連携アプリアプリ
温度/湿度/照度の24時間の変化を確認アプリアプリ
テレビ操作アプリアプリ(オプション)
エアコン操作アプリアプリ(オプション)
センサーで部屋をみまもり、異常を録音アプリ/リモコン-
ボイスメッセージを出すアプリ-
宅内でスマホから呼びかけるアプリ-
価格43,200円27,000円

注目は音質の改善! 中音域のクリアなサウンドが低遅延で楽しめる

新モデル2100Sと1100S共通の改良点は、内蔵するスピーカーの音質にも及んでいる。重低音を強化するバスレフ型で、バスレフポートを床面に配置することにより、天井への振動を出さず、天井に取り付けてもビリビリと機器や天井が響くビビリ音もなし。今回手が入ったのは、中音域の音質改善だ。1~2kHz帯の中音域がクリアに聞こえるようにチューニングされた。

これによりピアノやバイオリンなどの音がクリアに聞こえ、ボーカル(とくに女性ボーカル)も澄んだ音に。またニュースなどの音声もはっきり聞こえる。かねてから搭載している、低遅延(Lowレイテンシー)のBluetooth音声コーデック(aptX LL/アプトエックス エルエル)もサポート。送信側がaptX LLに対応していれば、テレビの音を再生しても、画面の口パクとスピーカーから聞こえる声がズレない(遅延が40ms未満なので、テレビの音と同時再生すると、擬似サラウンド効果をもたらす)。つまり、この照明がaptX LL対応のBluetoothスピーカーとしても便利に使えるわけだ。もしテレビ側がaptX LLの音声送信に対応していない場合は、別売のトランスミッターを購入してテレビに接続することをオススメする。

新モデルのスマートコンローラーにより、テレビと接続した際の音声も、スマホを使わずにコンロールできるようになったのも大きな特徴。「テレビを見ているときにスマホのアプリを立ち上げて音量調整するのは手間」という声に応えて改善された形だ。

リモコンに隠し機能!? 今後のアップデートも楽しみ

マルチファンクションライトは冒頭でも説明した通り、中身はLinuxベアボーンPC。いうなれば、スマホのアプリがどんどんアップデートして使いやすくなるように、アップデートでマルチファンクションライトもどんどん使いやすくなる。こんな機能が欲しい! あんな機能が欲しい! とソニーに送られた要望が、製品として実現されてきたわけだ。歴代の改良はVOC(Voice of Customer/ユーザーからの声)をとり入れたもの。今回のリモコン付属も、人感センサーの個人使用向け公開も、そうした声を受けたものだという。

ただ、今回の新モデル発売時点では公開されていない機能が、実はあるようだ。それがわかるのはリモコンのボタン。

リモコンに「マイク」「プレイ」「指」を思わせる3つのボタン(赤く丸で囲った部分)。今後のアップデートで機能追加される?

照明の制御ボタンやボリュームボタン、盾のマークのセキュリティボタンは説明したとおり。だが! プレイボタンらしきもの、マイクボタンらしきもの、指アイコンらしきものは、ソニーから何の説明もない。つーか、インタビューした筆者にも内緒と!

まー、だいたいの機能はボタンから想像できるが、今後アップデートが行なわれれば、この3つのボタンの詳細も明らかになるはずで、かなり楽しみ。リモコンはMFL-1100SとMFL-2100Sで共通のため、おそらくアップデートも両方で行なわれるのだろう。

蛍光灯式の室内灯の買い替えに! 一人暮らしや自室にも

マルチファンクションライトをオススメしたいのは、こんな人だ。

・一人暮らしや、新婚さんの二人暮らしのダイニングキッチン用
・自室用のシーリングライトとして
・テレビを見るリビングのシーリングに

対応畳数が10畳程度なので、最近のマンションや戸建ての14畳以上あるLDKをこれ1台でまかなうのは少し物足りないかもしれない。例えばリビングとダイニングキッチンにそれぞれ照明用のシーリングコンセントがある場合、リビングにマルチファンクションライト、ダイニングキッチンに補助のシーリングライトを入れるのがいいだろう。

このような間取りならテレビのあるリビングにマルチファンクションライト、奥のダイニングキッチンにサブのシーリングライトを入れるといい

なお2020年をもって「水銀を使った製品の製造・販売が中止」になる。蛍光灯に使う水銀の量はごくわずかなので、来年以降の発売中止製品に蛍光灯は該当しない。しかし国産の大手メーカーは蛍光灯式の照明からほぼ撤退済み。交換用の蛍光管を作るメーカーも半減した。このため蛍光管はジワリ、ジワリと値上がりしているようで、買い替えはLED式シーリングライト一択になっている。

もはや流通残が残るのみという感じになった、蛍光灯式のシーリングライト。電気代も蛍光灯にくらべLED式は半額程度になる

しかも省エネ性を考えると10畳用の蛍光灯だと年間の電気代はおよそ6,300円(1日8時間点灯を想定)。しかしマルチファンクションライトに買い替えると、年間の電気代は3,300円と、3,000円経済的という計算だ。しかも、蛍光灯だと数年に1回は買い替える必要がある。

そう考えると、シーリングライトながら、気温・湿度計にもなり、ほとんど遅延のないBluetoothスピーカーがついて27,000円(MFL-1100S)は破格値といえる。

今まで蛍光灯を使っていた人も、今年はLEDシーリングライトへの買い替えにちょうどいいタイミング。便利な機能が、スマホだけでなくわかりやすいリモコンでも操作でき、今後も長く使い続けられそうな照明が、このマルチファンクションライトなのだ。