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行ってみてビックリ! こんなに違う! 韓国と日本の家電事情~LG Stylerレポート後編

 韓国の家電メーカー、LG Electronicsの“ホームクリーニング機”「LG Styler」の取材で、韓国に行ってきた。タバコや焼き肉のニオイが付いたしわしわのジャケットも一晩入れておくだけで、高温スチームと振動で、シワやニオイをスッキリなくしてくれるというこれまでにない製品だ。

独自のスチーム機構と自動でスウィングするハンガーラックが搭載された「LG Styler」。衣類をかけておくだけで、シワやニオイを取ることができる

 前回は、LG Stylerの開発までの経緯、さらに、新ジャンルの製品ならではのPRの難しさについて話を聞いた。今回は、実際にLG Stylerを自宅で使っているという、LG Electronicsの社員の方に話しを聞いた。

 さらに、LG Electronicsのショールームに行って驚いた、韓国の家電事情についても触れるので、最後までお見逃しなく!

LG Styler愛用者に聞く! 実際、どう使っているの?

 LG Stylerは既に世界各国で販売されており、日本はLG Stylerを売る10番目の国となる。これまで、アメリカやドイツ、オランダ、台湾などで製品を展開してきたが、最もヒットしたのは、本国である韓国だったという。実際、LGエレクトロニクスで働く人の中でも、LG Stylerを愛用している人は多い。今回はそういった社員の方にお話を聞いた。

 まずお話を伺ったのは、2人の子供の母親であるナ・ジュヨンさん(LG Electronics コーポレート・H&A広報チーム 部長)。5歳になる息子のユンソくんは、LG Electronics本社に併設される社員の子供専用の幼稚園に通っている。

2人の子供の母親であるナ・ジュヨンさん(LG Electronics コーポレート・H&A広報チーム 部長)
5歳になる息子のユンソくんは、LG Electronics本社に併設される社員の子供専用の幼稚園に通う

 「LG Stylerは、夫が唯一、自分から欲しいと言い出した家電製品なんです。彼は、営業職なので、毎日のように会食や接待があります。LG Stylerがあることで毎日、フレッシュな気分でスーツを着こなすことができます。

 また、5歳になる息子は最近、自我が芽生えてきました。お気に入りの洋服があり、毎日のようにそれを着たがるのですが、洗濯がとても大変です。Stylerには乾燥モードがあるので、夜洗濯した衣類も朝にはしっかり乾いています。ポカポカとして、良い匂いのする洋服に息子は大喜びです。またまだ小さい3歳の息子のぬいぐるみや抱っこ紐など、洗濯が難しいものも、Stylerの中に入れておけば、しっかり除菌できて安心です」

 一方、LG SIGNATUREタスクチーム 課長のキム・ジェウォンさんも、Stylerを愛用する1人だ。3人の父親である彼はStylerを使い始めて3年ほど経つという。

LG SIGNATUREタスクチーム 課長のキム・ジェウォンさん

 「仕事柄、毎日スーツを着ていますが、子供が小さいため、自宅でアイロンがけをするのは大変な作業です。スーツを家で管理するのは、ほぼ不可能だったので、週に一度はスーツをクリーニングに出していました。お金も1回1,000円ほどかかるし、時間と手間がかかります。しかし、Stylerを使い始めてから、クリーニングに出す頻度が1/4程度に減りました」

 便利なのは理解できたが、本体はかなりの大きさ。自宅ではどこに設置しているのだろうか。

 課長のキム・ジェウォンさんは、「運転中、振動音がするので、寝室ではなくリビングに設置している」とし、2児の母であるナ・ジュヨンさんさんは「玄関の横に配置されているクローゼットルームに置いている。工事などの必要がないので、置き場所に困ることはない」と話す。

 一方、スマートフォンを使っての操作は、両名ともあまり活用していないという。

 「本体に搭載されている基本のコースだけで十分、アプリを使ってのコース追加の必要性は感じていない」という。

 今回、話しを伺ったのは、LG Electronicsの社員の皆さんなので、もちろん、製品については悪くはいえないだろうが(笑)、一般家庭でも十分使いこなせる、便利な製品だということは理解できた。

こんなに違う! 韓国と日本の家電事情

 今回の韓国取材では、LG Electronicsのショールームにも伺った。とはいえ、日本のショールームとは異なり、韓国のショールームでは実際に製品も購入できる。ビル一棟丸ごと、LG Electronicsの製品だけが置いてある家電ショップのようなものなのだ。

ソウルのカンナムという場所にあるLG Electronicsのショールーム
様々な間取りが用意されたブースが設けられ、訪れたカップルはここのブースで、実際の間取りを見ながら、購入する製品を決めていく

 利用の仕方も異なる。韓国では、例えば、結婚や引っ越しが決まった時、パート-ナーと2人でこのようなショールームに訪れるのが一般的なのだという。ショールームの一画には様々な間取りが用意されたブースが設けられ、訪れたカップルはここのブースで、実際の間取りを見ながら、購入する製品を決めていく。家にある全ての家電製品が1つのメーカーで統一されているというのも珍しいことではないのだという。

容量800L以上の大型冷蔵庫に、キムチ専用の冷蔵庫も

 冷蔵庫は、サイドバイサイドと呼ばれる2ドアスタイルが主流で、庫内容量も本体サイズも日本市場にあるものに比べると圧倒的に大きい。店頭に並んでいたものも、容量800L以上はごく普通で、中には900L以上のものもあった。

 容量905Lの大型冷蔵庫のサイズは、912×929×1,784mm(幅×奥行き×高さ)と相当大きく、日本のキッチンではなかなか置けないサイズだ。

 本体機能に関しても、日本よりもラグジュアリーで、高機能なものが目立つ。扉部分に製氷機や給水機能を備えたものや、二重構造の扉で、ドアポケットに入っているものだけを取り出すことができるモデルなどがラインナップされる。

日本ではなかなか見かけない大型の冷蔵庫。韓国では一般的だという
扉に給水機を搭載したモデル

 韓国ならではの特徴が、キムチ専用の「キムチ冷蔵庫」が用意されているということ。若い世代では、キムチ離れもあるそうだが、今だに多くの家庭では、キムチを自宅で手作りし、作ったキムチを保存するための、冷蔵庫も各家庭にあるという。

 キムチ冷蔵庫は、メインの冷蔵庫に比べて容量は小さいものの、それでも容量500Lなど十分な大きさ。韓国では野菜の保存はキムチ冷蔵庫でするのが一般的なのだそう。

韓国では一般的なキムチ冷蔵庫
ニオイなどが気にならないように密閉性の高い容器が付属する

洗濯機も“超”大型!

 大きいのは冷蔵庫だけではない。洗濯乾燥機もすごく大きい。ドラム式が主流で、洗濯容量20kg以上、乾燥容量9kg以上の大型モデルが並ぶ。

 中にはドラムが2つ搭載されているモデルもある。ツインウォッシュというこのモデルは、上部と下部にドラムが搭載されているため、昔の二槽式洗濯機同様、色物などの分け洗いに便利だという。一番、大きいモデルは、洗濯容量24.5kgで、本体サイズは700×835×990mm(幅×奥行き×高さ)。

2つのドラムが搭載されたツインウォッシュというドラム式洗濯機
引き出し式のドラムが搭載されおり、色物などの分け洗いが可能

 日本の感覚では「こんな大きい洗濯機おけない!」と感じるが、韓国の家では普通におけるらしいのだ。というのも韓国では洗濯機を外に置くというのが一般的で、集合住宅などでは、ベランダと廊下の間のようなスペースが設けられており、そこに置いているのだという。

 一方、日本のトレンドと共通する部分があったのは、掃除機だ。コードレスやロボット掃除機のほか、吸引力が強力なサイクロン式掃除機なども展開している。

強力な吸引力をウリにしたサイクロン式掃除機
ロボット掃除機も展開する

 また、空気清浄機は上部にサーキュレーターを搭載したモデルも展開。日本でも、空気清浄機の上部にファンを搭載したモデルはあるが、LGの製品はサーキュレーターの方向を調整できる点がユニークだ。

上部にサーキュレーターを搭載した空気清浄機。360度方向から空気を吸い込む
サーキュレーターは向きを調整できる

 お隣の国ではありながら、家電製品を見ていると日本よりは合理的で、欧米に近い生活スタイルを送っているように感じた。

今後10年で必須家電として認められる可能性を持っている

 最後に、LG StylerのBtoB部門の責任者であり、LG Electronicsの役員を務めるイム・サンム氏に、今後の展開についてお話を伺った。LG Stylerは、家庭向けはもちろん、ホテルや飲食店など店舗向けの展開も積極的に進める。

 ソウル市内の「GLAD HOTEL」では、LG Stylerを設置した部屋も用意する。

ソウル市内の「GLAD HOTEL」では、LG Stylerを設置した部屋を用意
奥で青く光っているのがLG Styler。ドアを開けた状態

 「LG Stylerはランドリー製品として、これまでにないライフスタイルを提案、100%以上の力を発揮できる製品であり、今後10年で必須家電として認められる可能性を持っている」(イム・サンム氏)

LG StylerのBtoB部門の責任者であり、LG Electronicsの役員を務めるイム・サンム氏

 また日本での展開については、「難しいところもあるが、自信がある」と話す。

 「日本市場は、国内メーカーが非常に強く、難しい一面があるのは確か。しかし、今の日本市場にはないLG Stylerを紹介することで、カテゴリーリーダーを目指し、ブランド認知度を向上させていきたい。LG Stylerは、韓国よりもむしろ日本に合う製品だと考えている。居酒屋などでは屋内でもタバコを吸っているし(韓国では屋内は完全禁煙となっている)、焼き鳥屋など、室内で炭を使う料理もある。ファブリーズなどの消臭剤が爆発的な人気を得ていることからも日本での勝機はある」と語った。

 前回触れたように韓国国内でも、LG StylerのPRについてかなり苦戦してきたという経緯がある。ライフスタイルそのものを提案できるようなポテンシャルを秘めた製品であることは、本国の成功で証明されているが、日本でそれをどう伝えるのか。LG Electronicsの挑戦はまだ始まったばかりだ。