時短、心のゆとりを求める人に! 個性豊かな2011年のオーブンレンジたち


 「神原サリーの家電HOT TOPICS」は、家電コンシェルジュとしてご活躍の神原サリーさんが気になった白物家電の情報をまとめてお伝えしていくコーナーです。


 景気低迷が続く中での“巣ごもり”、安全・安心・健康を求めての“内食ブーム”ということが言われて久しい。また、東日本大震災直後は、節約・倹約志向が顕著だったが、今、求められているのは“内食”から一歩先に進んだ「心のゆとり」。絆というキーワードを元に、家族や親しい仲間とのふれあいを大切にしつつも、ちょっとした贅沢感を味わえるような食事を自宅で楽しみたいという人が増えている。

 そんな“家でちょっと贅沢ごはん”を目指す人たちに人気を集めているのが高級オーブンレンジだ。2011年のオーブンレンジについて最上位機種を中心にメーカー各社の特徴をおさらいしてみよう。

編集部注:それぞれの製品の実勢価格はヨドバシカメラのネットストア「ヨドバシ.com」の価格を掲載しています。

独自提案の焼き蒸し調理で点心やお菓子作りを楽しむ~日立「ヘルシーシェフ」MRO-JV300

 日立アプライアンスの「ヘルシーシェフ MRO-JV300」は、焼き蒸し調理ができるのが特長。専用の両面グリル皿と焼き蒸しふたが同梱されており、焼きながら蒸したり、焼き目をつけたり、セイロで蒸すような蒸し料理がオーブンレンジでできてしまう。

日立アプライアンス「ヘルシーシェフ」MRO-JV300。カラーはパールレッドとパールホワイト。実勢価格129,800円

 この焼き蒸し調理ができるようになったのは、2010年モデルからだが、今年のモデルはそれがさらにバージョンアップし、高温の“過熱水蒸気”を焼き蒸し調理に利用できるようになったため、餃子やショウロンポウ、中華ちまきなどの点心のほか、白身魚の姿蒸しなど蒸し加減の難しい料理もおまかせで仕上げる。

 また、マカロンや蒸しドーナツ、カステラなどスイーツメニューを拡充。レシピ数をこれまでの405から478に増やして調理の幅を広げている。同社独自の「トリプル重量センサー」の搭載で食品の重さや位置をはかり、火力と調理時間を自動調整してくれる機能も心強い。

 「家で作るのは難しそうな料理やお菓子に挑戦して家族の喜ぶ顔が見たい!」そんな“ちょっと贅沢ごはん”や“プロ並みのスイーツ”づくりの夢をかなえるオーブンレンジだ。画面に傾斜をつけた液晶タッチパネルも使いやすく、直感的な操作を可能にしている。

「焼き蒸しふた」と「はかって両面グリル皿」。庫内にセットして使うしゃがみ込まずに操作できるように傾斜のつけられたタッチパネル。フラットなので清掃もしやすい両面グリル皿の下で煮込み料理をするなど、2品同時調理もできる
「簡単レンジ」ボタンを押すと、よく使われる「600W」と「500W」の表示が大きな文字で表示され、手動でのレンジ調理も設定がしやすい2010年モデルで一躍注目を浴びた「焼き蒸し調理」での餃子の調理。皮に焦げ目をつけつつ、中はジューシー。並べ方次第で20個程度の餃子を焼くことも可能だ2011年モデル、イチオシの「ショウロンポウ」調理。家で作るのは手間がかかるが、出来上がったときの感激はひとしお

・日立アプライアンス
http://www.hitachi-ap.co.jp/
・製品情報
http://kadenfan.hitachi.co.jp/range/lineup/mro-jv300/index.html

焼き魚もごちそうメニューも短時間で仕上げる“時短調理”なら~パナソニック「「3つ星ビストロ」NE-R3400

 上段を光ヒーターで加熱し、下段をレンジ加熱するという同時調理による合わせ技セットを提唱しているのがパナソニックの「3つ星ビストロ」だ。たとえば上段で肉団子を焼き、下段で野菜入りの甘酢あんを作ることで、肉団子の甘酢あんかけが手間いらずでできる。

パナソニック「3つ星ビストロ NE-R3400」。カラーはルージュブラックとホワイト。実勢価格86,200円

 2011年モデルでは、同社独自の「光ヒーターシステム」を強化。マイクロ波の吸収による発熱量が約50%アップした「グリル皿」と、遠赤外線放射率を高めた「遠赤ブラックヒーター」を採用したことで、焼き物メニューが10分で出来る「こんがり10分」自動メニューを新たに搭載している。こうした自動メニューも含め、手動のグリルやレンジ機能を使って10分以内で調理が出来る「10分でちゃんとごちそうレシピ集」を同梱。時短調理を積極的に提案している。

 そのほか、下味を付けてホームフリージングしておいた肉や切り身魚も、凍ったまま一気に焼き上げる「凍ったままグリル」機能も引き続き搭載。魚の干物なども大火力のグリル皿を使ってひっくり返さずに短時間でこんがり焼き上げる。

通常のレシピブックの他に同梱される「10分でちゃんとごちそう100レシピ集」新開発の発熱体を搭載し、スピーディに立ちあがる「大火力ビストログリル皿」で調理したチーズカツレツ。発熱量が約50%とアップし、軽量化も図っている従来のオーブンレンジでは難しかった食パンのトーストも、しっかり焦げ目がつくまで焼ける

・パナソニック
http://panasonic.co.jp/
・製品情報
http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=NE-R3400

ヘルシー調理を究める8代目「ヘルシオ」はスロークッキングの提案も~シャープ「ヘルシオ」PX2

 “水で焼く”という過熱水蒸気による健康調理を生みだしたシャープのヘルシオも8代目に。脂分や塩分が落ち、栄養素を破壊しにくい調理方法という点は初代から変わらないが、今年のモデルには“骨までやわらか”機能がつき、サンマやイワシを缶詰のようにホロッとやわらかく煮る機能がついた。調理時間はサンマ4匹で2時間50分ほどかかるが、時短が叫ばれる中、「空いた時間で健康調理を」というスロークッキングの提案をしているところが新しい。

シャープ「ヘルシオ」PX2。カラーはレッドとホワイト。昨年から登場したホワイトの人気が高いという。実勢価格133,800円

 そのほか、70~95℃の温度帯に蒸気を自動設定して作る「ソフト蒸し」機能にも注目。例えば鶏胸肉を使って調理する鶏のやわらかハムでは、疲労回復に効果があると言われているイミダゾールジペプチドの流失を防ぎ、蒸し器での調理よりも、ぐんとやわらかな食感に仕上げる。

 薄型エンジンの開発によって過熱水蒸気の発生効率を高め、2011年モデルでは調理時間を10%程度短縮したヘルシオだが、「『健康調理や美味しさ』と『時短』は両立しない」というのが同社の開発チームの基本的な考え方だ。電子レンジ調理と比べると確かにヘルシオの調理時は時間がかかるが、たとえば鶏の照り焼きのやわらかさや美味しさ、余分な脂の落ち具合などは、さすがヘルシオ! と言える出来上がりだ。

 また、骨までやわらか機能など、使っていない時間帯を有意義に活用してほしいというのもヘルシオならでは。短時間での調理をのぞまずにじっくりとおいしい料理を作りたいという向きにはおすすめの機種といえるだろう。

ヘルシオが提案する「調理の合理化」。マカロニサラダを作る場合、卵、鶏ささみ、マカロニ、野菜を個々にゆでる必要がなく、すべての材料を一度に過熱でき、野菜や肉のうま味も逃がさない20分ほどのヘルシオ調理で作ったマカロニサラダサンマの骨までやわらか煮。庫内上段で骨まで魚を調理し、下段で黒豆を煮ることも可能。つきっきりでないと火加減の調整が難しい煮豆もおまかせでOK
ヘルシオが新しく提案する「今晩&翌朝おかずセット」メニューの一例。鶏のゆずこしょう焼きは夕飯に、加熱後に調味料であえた大根は翌朝の一品になる焦げ目もついて香ばしい「鶏のユズこしょう焼き」と「大根のごまびたし」最上位機種にはカラー液晶のタッチパネルが搭載され、「ヘルシオ便利ナビ」で調理のコツやポイントを教えてくれる機能も

・シャープ
http://www.sharp.co.jp/
・製品情報
http://healsio.jp/index.html

高温のオーブン機能で肉料理やパンの焼き上げに~東芝ホームアプライアンス「石窯ドーム」ER-JD510

 東芝ホームアプライアンスの「石窯ドーム」はその名の通り、石窯をかたどった庫内で上下左右から熱風で包み焼く“高温のオーブン機能”が特長で、350℃までの高温が可能になっている。肉料理を香ばしく中はジューシーに焼き上げ、パンの膨らみもバッチリなので、本格オーブン料理を目指す人向きだ。

東芝ホームアプライアンス「石窯ドーム」ER-JD510。カラーはレッドとレディッシュゴールド。実勢価格108,000円

 スチーム調理では35℃の低温から400℃の過熱水蒸気まできめ細かく温度調整ができるため、余分な脂を落として焼き上げるヘルシー調理から、せいろのような蒸し調理、“す”のたたない茶わん蒸しなど幅広いメニューの対応できる。

 角皿と庫内を汚れがつきにくいようにコーティングしてあり、手入れのしやすさやオーブンシート不要の便利さも魅力だ。

 また、昨年秋の店頭プロモーションで好評だったABCクッキング監修のレシピ集「カンタン・おいしい家族ごはん」をバージョンアップ。今回のモデルに合わせたレシピ集とし、通常のレジピブックと一緒に同梱している。

豚肉をカリッと焼き上げる「豚肉のピッツァ焼き」「鮭とレモンのジェノベーゼグリル」写真左が今回のモデルに同梱される「カンタン・おいしい家族ごはん」。

・東芝ホームアプライアンス
http://www.toshiba.co.jp/tha/
・製品情報
http://www.toshiba.co.jp/living/microwave/er_jd510/index_j.htm

レンジ並みの使いやすさと時短調理、省エネ性を追求した“レンジグリル”~三菱電機「ジタング」RG-FS1

 他社のオーブンレンジと異なり、独自路線を歩むのが、三菱電機が4年ぶりに投入した「ジタング」。レンジ→グリルの連動調理によって超スピーディかつ、簡単に調理ができる。“毎日使える利便性”を持った新しい調理家電といえる。

三菱電機「ジタング」RG-FS1。カラーはレッドとブラック。実勢価格67,300円

 レンジ→グリル調理の場合、センサーによって加熱具合を見ながらレンジ調理し、自動でグリルに切り替わって焦げ目をつけるので、食材の分量や調理時間を気にする必要がない。「レンジグリル」モードを選び、スタートボタンを押せばOKという手軽さが画期的だ。

 オーブントースターでは直焦げし、電子レンジではカリッとせず、オーブンレンジでは時間のかかっていた揚げものの温め直しも、レンジで温めた後、そのままグリルで焼き上げるために驚くほど速くおいしくできる。庫内をコンパクトにしているために、オーブンでケーキやパンを焼く際にも予熱の必要がない。

 忙しい毎日を送る働く主婦はもちろんのこと、単身者や高齢者にも使いこなしやすい調理家電といえるだろう。

「レンジ→グリル」で調理したタンドリーチキン。だいたい14分程度で焼き上がる焼きそばも自動調理でOK。そのまま食卓に出せる白いセラミックプレートに麺、野菜、肉の順に広げていき、レンジ→グリルで調理する。2人前に12分程度予熱なしで焼き上げたスペアリブ。庫内の高さが低く、容量をコンパクトにしているために予熱がいらず、焦げ目もしっかりついてジューシー
焼き上げに時間のかかるミートローフも予熱なしで30分弱。その間にスープやサラダなどのサイドメニューを仕上げることができるお惣菜屋さんで購入した揚げ物も短時間でカリッと温められるのも便利

・三菱電機
http://www.mitsubishielectric.co.jp/
・製品情報
http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/rangegrill/

使ってみたいと思わせる“ごちそうづくりの助っ人”に

 オーブンレンジというと、これまでは「高機能なオーブンレンジを買ってもレンジの温め機能以外に使うのは1か月に2~3回」「子どもの誕生日のためにケーキを焼きたくて買ったけれど、ケーキを焼くのは年に数回だし、何だかもったいない」という声が多かった。また、ヘルシー志向などの影響で、家電メーカー各社が同じ方向性の製品を作っていたために、「どれを選んでよいのかわからない」という声も聞かれた。

 ところがここに来て、使い勝手が改良され、各社の個性がはっきりと出る製品づくりへと変化してきたことで、ぐんと選びやすくなり、「使ってみたい!」というわくわく感を喚起させる魅力ある製品になってきているのが2011年のオーブンレンジ事情だ。時間のかかるイメージだったオーブン料理が短時間でできるように改良されていたり、一度に2品同時調理ができる提案がされていたりと“時短”に役立つ調理家電という一面も注目をあつめている理由だろう。

 “家でちょっと贅沢ごはんを”という世の中の風潮にぴたりとはまったオーブンレンジ。わが家のごちそう作りをサポートしてくれる強力な助っ人として、上手に役立てたい。

 






神原サリー
新聞社勤務、フリーランスライターを経て顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆やコンサルティングの仕事をしている。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、現場の声を聞くことを大切にしながら、マーケティングの観点を踏まえて分析。モノから入り、コトへとつなげる執筆・提案を得意とする。テレビ、ラジオ、新聞等、メディアへの出演も多数。


2011年10月11日 00:00