藤山哲人の実践! 家電ラボ

第18回

1万mAhで電池切れの心配なし! 大容量モバイルバッテリーはどれが良い?【後編】

~タブレットはもちろん、ノートパソコンも充電OKの高性能バッテリー編

 タブレットや高速通信対応のスマートフォンなど、電池の消費量が多いモバイル機器が増えてきたことに伴って、最近は容量10,000mAh以上の大容量モバイルバッテリーも随分と増えてきた。

 そこで今回の家電LABOでは、「容量10,000mAh以上の大容量モバイルバッテリーはどれが良い?」と称して、合計5つの大容量モバイルバッテリーについて、実際に使ってどれが良いか、を特集している。

 前回は1万円以下で買える比較的安めのモバイルバッテリー3製品について紹介したが、今回はタブレットはもちろん、ノートパソコンの充電にも対応した、実売価格が1万円以上の大容量タイプ2製品について取り上げる。

 家電ラボのモットーとしている「分からんことは、自分で調べる!やってみる!」

 Do it oneself!

 の精神で、今回も色々実験してみよう。[前編はこちら]

後半ではノートパソコンも充電できる2製品を紹介

 今回紹介するのは、14,000mAhと18,000mAhという、前回以上に大容量なモバイルバッテリー2機種だ。冒頭で述べた通り、両方ともノートパソコンの充電に対応している。なお前編では3製品を既に紹介している

【エントリーナンバー(4)】
JTT「エナジャイザー XP-14000」容量は14,000mAh

【エントリーナンバー(4)】
・JTT「エナジャイザー XP-14000」~14,000mAh

 世界に名だたる電池メーカー「エナジャイザー」が作った、エナジャイザー XP-14000。容量は14,000mAhで、タブレット用のUSB出力とスマートフォン用USB出力、さらにノートパソコン用の出力の3系統を持つ。Amazonでは13,116円だった(1月19日時点)。

【エントリーナンバー(5)】
OTAS「MiLi King Power」。容量は18,000mAh

【エントリーナンバー(5)】
・OTAS「MiLi King Power」 ~18,000mAh

 モバイラーにはお馴染み、数多くのモバイルバッテリーを扱うOTASが販売する「MiLi King Power」。容量は18,000mAhと超大容量なのはもちろん、バッテリー残量を1%刻みで表示する機能も備えている。USB1系統(スマートフォンとタブレットの切り替え式)とノートパソコン用の出力、さらに12V出力を持つ。Amazon.co.jpでは14,800円で売られていた(1月19日時点)。

■■注意■■

・以降の実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・記事中のバッテリーは基本的に新品ですが、電池を活性化させるため、3回の充放電(リフレッシュ充電)を行なっています。リフレッシュ充電をしていない製品では、同様の実験を行なっても結果が異なる場合があります。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

スマホにタブレット、ノートPCも同時充電できる――(4)「エナジャイザー XP14000」

 まずは、エナジャイザーから見ていこう。この製品、スマートフォンとiPadの急速同時充電も可能な上に、ノートパソコンの補助電源としても使えて、これら機器の3台同時利用しても問題ないというパワフルさが特徴だ。14,000mAhと大容量なのに、2時間半でフル充電できるという急速充電機能も見逃せない。

 重さは370g、大きさは子ども向けの弁当箱サイズなので、薄型のアタッシュケースに入れ、片手で長時間持っていると、徐々に重さを感じてくるだろう。ただ、リュックサックなどに入れて背負って持ち歩くぶんにはさほど重くない。

JTT「エナジャイザー XP14000」(14,000mAh)。ノートパソコンとタブレット、スマートフォンの3台同時充電をするならコレ
本体側面のコネクタ部。左からノートパソコン用の19V出力、1.0Aと2.1A出力のUSB、充電用のコネクタとなっている

 ノートパソコンの補助電源としての性能は、その対応の幅が特徴だ。バッテリー自体の出力電圧は19Vとなっているが、別売の変圧器を使うと12V/15V/16Vのパソコンにも対応できる。また本体に同梱されているコネクタがパソコンに合わないという場合は、2個まで無償でもえらるというサービスもある。

【(4)JTT「エナジャイザー XP-14000」の概要】
購入価格Amazon.co.jp
販売価格13,116円(1月19日 時点)
サイズ(幅×奥行き×高さ)155×98×23mm
重量375g
カラー白黒のツートン
内蔵電池容量14,000mAh
充電コネクタ専用
充電器あり(19V 3.16A ワールドワイド仕様)
充電時間約2時間半(実測)
USBコネクタ数2(1.0A×1口、2.1A×1口)
USB最大電流2.1A
PC用コネクタ数1
PC出力電圧19(実測値:19.4V)
PC最大電流3.0A
同時充電iPad・スマホ:○
PC・スマホ:○
PC・iPad・スマホ:○
スマホ×2台:○
充電ケーブルDock(Apple),micro-USB,PSP,3DS/DSi
コネクタ差し替え式(カールコード)
PC用充電ケーブルコネクタ差し替え式(6タイプ)
残量インジケータ1色4灯
【(4)JTT「エナジャイザー XP-14000」の実験結果】
端末タイプ端末名内蔵バッテリーエナジャイザー
14,000mAh
で充電すると?
3G従来型REGZA IS04(実測)1,300mAh6.2回
Android系1,500mAh5.4回
LTE系Android系1,800mAh4.5回
Android系2,000mAh4.0回
Android系2,200mAh3.7回
iPhone系iPhone 3GS1,219mAh6.6回
iPhone 4S1,432mAh5.7回
iPhone 51,434mAh5.6回
iPad系iPad 26,580mAh1.2回
iPad 311,560mAh0.7回
ゲーム系PSP-30001,200mAh6.7回
ニンテンドー3DS1,300mAh6.2回
ニンテンドーDSLite1,000mAh8.1回

 実際にノートパソコンとスマートフォン、iPad(正確にはiPadと同等の出力を備えた機器)を接続したところ、本当に3台同時充電が可能だった。また、USBコネクタが2つあるので、2台同時充電できるのも便利だ。LTE系のスマートフォンだと4回ほど充電できるので、スマートフォン2台持ちや、携帯ゲームとスマートフォンを2台で使うのにちょうどいい容量と言える。

 なお、iPad2ならフル充電してなおまだスマートフォンを充電できる余裕があるが、最新のiPad第三世代だと、フル充電まで届かない。

 ちょっと使いづらさを感じたのは、バッテリー残量が4段階という点。14,000mAhが4段階表示なので1目盛り3,500mAhもあり、LTE系のスマートフォンでも1回以上充電できるほどザックリとした残量表示なのだ。ラスト1目盛りになると、いつカラになるか心配しながら使うことになる。

 ノートパソコンの補助電源として使うには、若干コネクタ数が少なく感じるが、筆者のパソコンで使えるコネクタが含まれていた。もしピッタリのものがないとしても、2個まで無料でもらえるサービスが利用できる。ただし、台湾からの送料が別途必要になる。

バッテリー残量計は大容量の割に4段階なので、残量は把握しづらい
ノートパソコン用に同梱されているコネクタ。ピッタリのものがなければ、Webで2個まで無料で注文できる。ただし、台湾からの送料はユーザー負担となる

 ノートパソコンの補助電源として使った場合、筆者のパソコンでは3時間47分利用できた。パソコンに内蔵のバッテリーも合わせればほぼ6時間使える計算となり、国内出張であれば移動中や出先でバッテリー切れになることはまずないだろう。

容量18,000mAhの超大容量をたった2時間半で充電――OTAS「MiLi Power King」

 先に触れた通り、残量が数値で表示されるという画期的な機能に目を奪われるが、18,000mAhと大容量なのに2時間半でフル充電できるという基本機能もバッチリ備わっているのが、OTASの「MiLi Power King」だ。

OTASの「MiLi Power King」は18,000mAhと大容量。結果から言えば、品質、使い勝手、価格ともにハイレベルな製品だった
付属品一覧。左から1Aと2A(iPad対応)の切り換え式USBコネクタ、充電コネクタ、12V出力コネクタ、ノートパソコン用16~20Vコネクタ

 重さは470gと小型のタブレット端末より重く、大きさは100枚入りの名刺ケース2個分ほどある。タブレット端末と一緒に持って歩くとおよそ1kg近くなるので、手提げのカバンに入らないことはないものの、重く感じるだろう。

 本製品はiPad用のモバイルバッテリーとして、ぜひオススメしたい。iPad 2であればちょうど2回、最新のiPad第三世代ではちょうど1回急速充電できるので、出先でこれらを使う人にとってベストなモバイルバッテリーとなる。ただし、USBコネクタが1つしかないので、iPadとスマートフォンや携帯ゲーム機といったUSBを使う機器の2台同時充電はできない。

 逆に、スマートフォン2台やスマートフォンとゲーム機2台という場合には、オーバースペックになってしまうかもしれない。iPadなどのタブレットもしくはノートパソコンに加えて、スマートフォンやゲーム機を充電したいという人向けの製品と言える。

 18,000mAhという大容量にも圧倒されるが、内部の回路が非常に省エネ設計されているようで、実際に充電に利用できる容量は、表示容量の72%以上あった。効率のよいモバイルバッテリーといえども、ほぼ60%台止まりなのを考えると、非常にロスの少ないモバイルバッテリーと断言できる。

【(5)OTAS「MiLi Power King」の概要】
購入店舗Amazon.co.jp
販売価格14,700円(1月19日 時点)
サイズ(幅×奥行き×高さ)209×90×21mm
重量470g
カラーブラックのみ
内蔵電池容量18,000mAh
充電コネクタ専用
充電器あり(19V 3.42A ワールドワイド仕様)
充電時間約2時間半(実測)
USBコネクタ数1(電源スイッチの長押しで出力電流切り替え)
USB最大電流2.1A
PC用コネクタ数1
PC出力電圧16-20V(実測値:18.8V)
PC最大電流3.5A
その他出力12V 2A出力コネクタ
同時充電PC・スマホ:○
PC・iPad:○
充電ケーブルDock(Apple),micro-USB,mini-USB
ソニー製デジカメ,ビクター製デジカメ
コネクタ差し替え式
PC用充電ケーブルコネクタ差し替え式(9タイプ)
残量インジケータデジタル表示式(1%単位)
【(5)OTAS「MiLi Power King」の実験結果】
端末タイプ端末名内蔵バッテリMiLi Power King
18,000mAh
で充電すると?
3G従来型REGZA IS04(実測)1,300mAh10.0回
Android系1,500mAh8.7回
LTE系Android系1,800mAh7.2回
Android系2,000mAh6.5回
Android系2,200mAh5.9回
iPhone系iPhone3GS1,219mAh10.7回
iPhone4S1,432mAh9.1回
iPhone51,434mAh9.1回
iPad系iPad26,580mAh2.0回
iPad311,560mAh1.1回
ゲーム系PSP-30001,200mAh10.8回
ニンテンドー3DS1,300mAh10.0回
ニンテンドーDSLite1,000mAh13.0回

 とにかく便利に感じたのは、0~100%の数値で表示されるバッテリー残量計だ。表示容量は18,000mAhなので、1%あたり180mAhということになる。残量がかなり細かく読み取れるうえ、数値の減る速度からバッテリー切れまでの時間も予測しやすい。さらにこの残量計は、充電時にも何%まで充電できたか、という情報も表示される。

電源スイッチを押すと容量が数値で表示されるのが便利。充電中は、電池のアイコンがアニメーションし、常に何%充電できたかが表示される。あとどれぐらいでフル充電・カラになるのかが感覚的に把握しやすい
ノートパソコン用のコネクタも充実している
スマートフォンとテザリングしてインターネットに接続するという使い方にピッタリだ

 また18,000mAhという大容量を2時間半で充電できるので、外でノートパソコンを使って仕事をする営業系の人にとっては、オフィスで書類をまとめている数時間の間に充電を済ませ、再び外回りに出かけるといったことが可能だ。

 ノートパソコンの補助電源として利用した場合は、5時間35分も利用できた。パソコンに内蔵しているバッテリーと合わせれば、8時間近くも使える計算になる。

iPadなど大容量の機器には、1万mAh台後半のモバイルバッテリーで

 以上2製品と、前回掲載した3製品が、今回の実験対象となった大容量モバイルバッテリーだ。ここで、実際の測定結果について比較してみよう。

 なおテストで使ったスマートフォンは、内蔵バッテリー容量1,300mAhの富士通東芝モバイルコミュニケーションの「REGZA Phone IS04」(au)を実際に充電した回数となる。1回の充電は、電池残量が1%の状態から100%まで充電した状態としている。

REGZA Phoneを使って、実際に充電できた回数。左から表示容量(mAh)が大きい順になっている

 容量1,300mAhのスマートフォン1台では、どれも3回以上は確実に充電できた。特にMiLi Power Kingのフル充電回数は10回。これはさすがにオーバースペックにもほどがありすぎだ(笑)。

 では最新のLTE端末では、何回ぐらい充電できるだろう? 次の表は、筆者がこれまでに行なった各種の実験結果などを元に計算で出した、Android系端末のおおよその充電回数の参考値だ。

使用機器REGZA IS04Android系Android系Android系Android系
1,300mAh1,500mAh1,800mAh2,000mAh2,200mAh
(1)Power Plus4.9回4.5回3.7回3.4回3.1回
(2)パナソニック4.5回3.9回3.2回2.9回2.6回
(3)enecycle3.7回3.2回2.7回2.4回2.2回
(4)エナジャイザー6.6回5.4回4.5回4.0回3.7回
(5)MiLi Power King10.2回8.7回7.2回6.5回5.9回

 容量18,000mAhのMili Power Kingは、2,200mAhのバッテリーを内蔵するLTE端末でも6回近く充電できる。一方14,000mAhのエナジャイザーでも、内蔵バッテリーが2,200mAhのスマートフォンを3.7回充電できる。スマートフォン2台持ちでも1日4回充電することはまずないだろうから、製品がオーバースペックだということが分かるだろう。

 次にiPadなどのタブレットが、どのぐらい充電できるかの参考値も見てみよう。

【iPhone/iPad系端末の充電回数】
使用機器iPhone 3GSiPhone 4SiPhone 5iPad 2iPad 3
(1)Power Plus5.5回4.7回4.7回1.0回0.6回
(2)パナソニック4.8回4.1回4.1回0.9回0.5回
(3)enecycle4.0回3.4回3.4回0.7回0.4回
(4)エナジャイザー6.6回5.7回5.6回1.2回0.7回
(5)MiLi Power King10.7回9.1回9.1回2.0回1.1回

 iPhoneはAndroid系LTE端末よりもバッテリー容量が少ないので、これら2製品はさらにオーバースペック。ただし、バッテリー容量が大きいiPadにはぴったり。バッテリー容量6,580mAhのiPad 2は、MiLi Power Kingでちょうど2回、エナジャイザーで1回と20%ほど充電できる。

 さらに、大容量バッテリーを持つ最新のiPad第三世代(iPad 3)では、MiLi Power Kingで1回と10%、エナジャイザーで70%充電できるようだ。前編で紹介した10,000mAhクラスのモバイルバッテリーは、最新のiPad第三世代では容量不足だったが、iPad 2ならエナジャイザー、iPad第三世代ならMiLi Power Plusがベストなモバイルバッテリーと言える。

 さて大容量モバイルバッテリーになると、複数機器での同時充電の対応も気になるところだ。次の表は、筆者独自にテストした複数台同時充電の可否の表だ。

【iPhone/iPad系端末の充電回数】
使用機器スマホ(またはゲーム機)
2台同時
スマホと
タブレット
スマホと
パソコン
タブレットと
パソコン
スマホと
タブレットと
パソコン
(4)エナジャイザー
(5)MiLi Power King×××

 MiLi Power KingはUSBコネクタが1つしかないので、せっかく大容量なのにスマートフォンとタブレットが同時充電できないのが残念。できればUSBを2分岐できるケーブルを同梱して、最大電流も3.5A程度まで上げて欲しいところだ。逆にエナジャイザーは2コネクタ用意されているため、その汎用性の高さとパワフルさがよく分かる結果となった。

 なお表中のスマートフォンは、携帯ゲーム機と読み替えても対応表は同じとなる。携帯ゲーム機を持ち歩く方は参考にして欲しい。

MiLi King Powerは、USBコネクタが1つしかないのでスマートフォンとiPadの同時充電はできない
エナジャイザーはスマートフォン用とiPad(などタブレット)用のコネクタがあるので同時充電が可能

 今回紹介した2機種が前回紹介した3機種よりも優れている点は、ノートパソコンの補助電源として使いながらスマートフォンやモバイルルーターも充電できることだろう。これならパソコンとスマートフォンを無線LAN(WiFi)などで接続し、スマートフォンを経由してインターネットに接続するテザリングにもピッタリだ。

大容量なのに約2時間半で充電できた!

 大容量のモバイルバッテリーを選ぶ際には、内蔵バッテリーの充電時間もポイントだ。前回紹介した10,000mAh台前半クラスのモバイルバッテリーはフル充電までおよそ1晩かかっていたが、今回紹介した2製品は急速充電に対応しており、どちらも約2時間半でフル充電できた(実測値)。

今回試した5つのモバイルバッテリーをフル充電するまでにかかった時間。充電時間が短い順に上から並んでいる。今回紹介した2製品は急速充電機能を備えているため、圧倒的に充電時間が短い

 なお10,000mAhクラスのモバイルバッテリーで、2時間程度の短時間でフル充電できるものはあまり見かけない。なので、ノートパソコンを持っていないスマートフォンユーザーでも、急速充電目当てにエナジャイザーやMiLi Power Kingを選ぶという手もある。

残量を50%程度にして持ち歩けば、バッテリーの劣化を最低限に抑えつつ急速充電の強みを活かせる

 ただし、モバイルバッテリーの残量を満タンに近い状態で放置してくと、バッテリーの劣化を早める恐れがある(詳細はあとで)。残り50%程度の状態で持ち歩けば、バッテリーの劣化も最低限に抑えられるため、定格通り500回以上の繰り返し利用ができるはずだ。

MiLi Power Kingのコンバーターの性能は非常に高い!

 さて前編では、モバイルバッテリーに表示されている10,000mAhという容量のうち、およそ60~70%が実際に充電に利用でき、それ以外はモバイルバッテリーに内蔵されているDC/DCコンバータという部品が消費していると紹介した。今回の2製品も前編と同じように測定して、何時間で空になるかを調べた。

モバイルバッテリーが空になるまでの時間。今回試した2製品はいずれも、前編の3製品よりも長い結果となった

 この実験結果を元に、表示容量のうち充電に使える実容量を計算してみると、エナジャイザーはおよそ8,000mAh、MiLi Power Kingは13,000mAhとなった。グラフで見てみると、エナジャイザーのDC/DCコンバータは、MiLi Power Kingに比べるとかなりバッテリーを消費してロス率が高くなっているようだ。

エナジャイザーは、表示容量のおよそ6割と言った感じに見える。一方のMiLi Powe Kingは、かなりロスが少ないように見える

 さらに表示容量を100%として、実際に充電に使える容量の割合とロスの割合をまとめると、次のグラフのようになった。

モバイルバッテリーの充電に使える実際のバッテリー容量とロス率。MiLi Power Kingは実容量が70%を超える超省エネDC/DCコンバータを採用しているようだ

 これまで数多くのモバイルバッテリーをテストしてきたが、実容量はどれも50~60%台止まりだった。その点エナジャイザーは平均的なバッテリーと言える。しかしMiLi Power Kingの実容量は70%を超えており、非常にロス率が低い。「何かの間違いか?」ともう一度データを取り直したが、同様の結果になった。これまで実容量70%超えのモバイルバッテリーを見たことがない。かなり消費電力の少ないDC/DCコンバータを搭載しているのだろう。

 試しにMiLi Power PlusのDC/DCコンバータをエナジャイザーに搭載したと仮定すると、スマートフォン1回の充電に相当する「2,032mAh」も実容量が増えるという計算だ。このように大容量のモバイルバッテリーは、DC/DCコンバータの性能によって実容量が大きく変化するというのがわかる。

 コンビニなどで売っているスマートフォンの緊急充電器の中には、表示容量以外に実容量を表示しているものがあるが、モバイルバッテリーでも同様の表示をぜひしてほしい。

ノートパソコンの充電もできるけど、プラグにご注意

 今回紹介した2機種は、前述の通りノートパソコンの充電にも対応している。ここからはノートパソコンの充電にスポットを当てて見ていこう。

 ノートパソコンの充電方法は簡単で、モバイルバッテリーのPC出力コネクタを、ノートパソコンのACアダプタの差し込みにつなぐだけ。ノートパソコンのバッテリーが少なくなったら、このモバイルバッテリーをつなげば、パソコンを使ったまま充電が可能だ。要は、ACアダプタの代わりにモバイルバッテリーをつなげているというワケだ。

今回紹介した2製品は、ノートパソコンも充電できる点が特徴だ

 ただしメーカー純正のACアダプタ以外の利用を禁止しているノートパソコンでは、当然メーカー保証外になることも留意して欲しい。さらに、補助電源として安全に使うために、次の4点に注意しておきたい。

・パソコンの入力電圧とモバイルバッテリーのPC用出力電圧が一致している
・パソコンの消費電力以上にモバイルバッテリーの出力電力がある
・グラグラしないピッタリのプラグを使う
・念のためプラグのプラス、マイナスをチェックして、パソコンとモバイルバッテリーで一致しているかを確認

 モバイルバッテリーによっては対応機種などが示されている場合があるが、表示されていない場合は上記の4点をチェックする。電圧はノートパソコンに示された入力電圧とモバイルバッテリーの出力電圧がピッタリ一致するのがベストだ。筆者が試したところでは、±1V程度であれば問題なかった。また、パソコンが求める電圧よりモバイルバッテリーの電圧3Vほど低くかったが、動作した(ただし後述の消費電力に注意)。電圧差がそれ以上にある場合、特にモバイルバッテリーの電圧が高い場合は、無理に接続しないほうがいいだろう。

ノートパソコンの入力電圧は20V。電流は2Aなので、20V×2A=40Wとなる
「エナジャイザーXP14000」の場合は、出力電圧が19V、電流が3Aなので19×3=57W。パソコンの入力電圧より1V低いが問題なく利用できた
「MiLi Power King」の場合は、出力電圧が20~16Vで最大3.5Aなので56~70W。電圧に幅があるのは、バッテリーが少なくなると電圧が下がるためのようだ。これもノートパソコンで問題なく使えた

 次にチェックするのは消費電力。ノートパソコンの底などに貼ってあるシールに「消費電力:20V 2A」と書かれている場合は、20V×2A=40Wと、消費電力が計算できる。次に、モバイルバッテリー裏のシールに書かれた出力に「出力:19V 3A」のような記述があるはず。この場合も、19V×3A=57Wと計算する。この2つのW数(電力)を比較して、モバイルバッテリーがノートパソコンの値より大きければ、接続OKだ。ただし値が大きくても、電圧が大きく異なる場合は使えない。

 逆にノートパソコンの消費電力よりも、モバイルバッテリーの値が少ない場合は、モバイルバッテリーに負担がかかるので、接続しない方がいい。

ノートパソコンの補助電源になるモバイルバッテリーには、各種プラグが同梱されている
外側の太さがピッタリでも、中央のピンや穴が大きいと接触不良を起こすので、一回り小さなサイズも必ず試してみること

 3つめの注意点は、プラグの大きさだ。パソコンに対応しているモバイルバッテリーには、パソコン用の各種プラグが同梱されているので、その中からピッタリなものを選ぶ。プラグは中央の穴やピンの太さと、外側の太さで色々なタイプがあるので、差し込んでみてグラグラせず、かつすんなり入るものを選ぶ。またプラグの大きさをチェックする場合は、必ずモバイルバッテリーを外した状態にすることも忘れずに。

 プラグ選びで間違えやすいのは、外側の太さがピッタリだが、中央のピンや穴がグラグラしてしまうこと。すんなり差し込めたとしても、中央のサイズが一回り小さいものも差し込んでみて具合を確認したい。

パソコンのプラグの極性は、本体裏などに表示されている
モバイルバッテリーの極性は表示されていないものが多いようだ。今回テストした2製品は表示がなかった
テスターで調べたところ、いずれも中央がプラスのセンタープラスタイプだった

 最後は、ACアダプタのプラグと、モバイルバッテリーのプラグの極性(プラス、マイナス)をチェックする。規格で定められているのでたいていはコネクタ中央の穴、もしくはは凸の金属がプラス、外側のリング状の金属がマイナスになっているはず。これを俗に「センタープラス」と呼ぶが、すべてがセンタープラスである保証はない。必ず極性を調べて、互いが一致していることを確認したい。

 厄介なのが「モバイルバッテリー側の極性表示がされていないものがある」ということだ。ACアダプタでは極性表示が義務付けられているので必ず表示されているが、モバイルバッテリーは義務化されていないようで、ここで紹介した2製品はいずれも表示なしだった。筆者が調べたところいずれもセンタープラスだったが、表示がない場合はテスターで調べるほかない。これはかなり面倒だ。

 前置きが長くなったが、モバイルバッテリーを実際のノートパソコンに接続し、どのぐらい駆動時間を稼げるのかを実験してみた。

 この実験は、ノートパソコンのバッテリーを外した状態でテストしたもので、独自に作ったプログラムでCPUが常にフル稼働の50~60%で処理を行なっている状態となっている。なお駆動時間は、パソコンの機種や作業内容などによって大きく変化するので、この結果は目安として欲しい。

ノートパソコンのバッテリーを外し、補助電源だけでどれだけ使えるかを調べたもの。CPUにはおよそ50~60%の負荷がかかっているので、実際の使用状況であれば、もう少し長時間使えるハズだ

 ここから言えることは、メーカー保証外となるものの、10,000mAh以上のモバイルバッテリーを補助電源として使うと、数時間単位でノートパソコンを使い続けられるということだ。しかもメーカー純正の大容量バッテリーよりもさらに大容量で、価格も安いというのが助かる。

 ただし、繰り返しになるが、純正以外のアダプターを使うことでメーカー保証外になり、自己責任になってしまう点にくれぐれも注意して欲しい。

【コラムその2】モバイルバッテリーを長持ちさせるコツは?

 大容量で信頼感満点のモバイルバッテリーも、多くの製品で「繰り返し使用回数:500回と定められている通り、基本的には消耗品。何回も繰り返し使い続けると、どうしても劣化してしまう。

 その劣化具合を確かめるために、編集部でしばらく使用されていた大容量モバイルバッテリー「QE-QL301-W」(容量10,260mAh)で、スマートフォンがどれだけ充電できるかを実験してみた。

 これは前編でも紹介した、パナソニックの「USBモバイル電源 QE-QL301-K」(容量10,260mAh)の色違い。2012年6月ごろに購入して、およそ半年間、約3日に1回くらい充電を繰り返していたものだ。だいたい60回ほど繰り返し使用した計算になる。

半年間使い込んだモバイルバッテリー。3日に一度は充電して使っていたという

 テストしてみると、前回取り上げた新品のQE-QL301と比べると、容量がスマートフォンの充電1回分に当たる1,300mAhほど少なくなっていた(約13%減)。

 このように半年使っただけでも容量が13%減ってしまった原因としては、次のようなことが考えられる。

(1)繰り返し利用による劣化
(2)経年劣化
(3)フル充電に近い(およそ75%以上)状態、または電源が0%に近い状態での放置
(4)高温(およそ40℃以上)状態での放置

 (1)は充電式のバッテリーである以上、避けることはできない。また(2)も避けようがなく、おそらく容量は毎年10%~20%ずつ減少してしまうだろう。

 しかし、使い方次第で回避できるのが(3)と(4)だ。リチウムイオン電池は、フル充電状態だったり残量が0%に近い状態で長期間置いておくと、劣化を早めてしまう性質がある。逆に、残量50%以下になると劣化が遅くなるという。それほどヘビーユーザーでもないのに大容量のモバイルバッテリーを使うと、残量75%以上の状態が長く続くので、これだと劣化を早めてしまう恐れがある。また、夏場に直射日光が当たる場所に放置しておいたり、冬場に暖房の近くに置いておくなどすると、早く電池がダメになってしまう。

 厄介なのは、この2つは互いに影響しあって劣化を急速に早めるケースもあるということ。ある電池メーカーの調べによれば、フル充電状態で45℃の部屋に半年放置すると、容量が40%も減ってしまうほど劣化してしまうという。またスマートフォンを1回充電するたびにモバイルバッテリーを継ぎ足し充電をすると、その度に充電で熱を持ち、フル充電に近い状態が長く続くので、バッテリーにとっては最悪な使われ方となる。これはリチウムイオン電池全体にいえることなので、スマートフォンの内蔵バッテリーにおいても、1回通話したらすぐに充電するというような極端な継ぎ足し充電は、劣化を早めることになる。

 さて、編集部で使っていたモバイルバッテリーの劣化の原因を分析すると、おそらくそれほど大容量ではないスマートフォンに使っていた点と、ひと夏を越した影響だと思われる。

 もしかすると、「モバイルバッテリーは容量の多少に関わらず500回使えるなら、同じ価格で買える、より大容量バッテリーの方がおトクになるのは?」と思う人がいるかも知れない。しかし1日に1回しかスマホを充電しないのに、10回充電できるモバイルバッテリを買うと、長い間モバイルバッテリーがフル充電に近い状態になり、劣化が早まってしまうことになる。大は小を兼ねないのだ

 自分が使っているスマートフォンに適したモバイルバッテリーの容量を見つけるためには、次のような計算するといいだろう。

 [スマホのバッテリ容量(mAh)]×[1日にする充電回数]×1.5=[モバイルバッテリー最大容量(mAh)]

 1日1回スマートフォンを充電する場合は[1日にする充電回数]に1を、2回する場合は2を入れて計算する。たとえば2,000mAhのスマートフォンで1日2回充電するという場合は、2,000×2×1.5で6,000mAhのモバイルバッテリがベスト、ということになる。もし1回分の余裕を持たせるなら、2,000×3×1.5で容量9,000mAhのバッテリを選べば良い、ということになる。

【まとめ】この大容量バッテリーがお勧めだ!

 以上、前後編合わせて5つの10,000mAhオーバーのモバイルバッテリーを実験した。最後はこの5つの中から、使用機器別のオススメ大容量モバイルバッテリーを紹介しよう。

・スマートフォン1台持ちは、そもそも大容量バッテリーは不要

 従来型の非LTE Android端末やiPhoneシリーズを1台のみを利用している場合は、長い間電源のない場所に行かない限り、大容量モバイルバッテリーは明らかにオーバースペック。10,000mAh以上のモバイルバッテリーは不要だ。昨年の記事で紹介した5,000mAh級の製品で事が足りるだろう。

・LTE端末1台、スマホやゲーム2台持ちなら、パナソニックかPower Plus

パナソニック「QE-QL301」かcheero「Power Plus」がオススメ

 LTE端末でバッテリーの減りが早いと感じる場合は1台だけでも、また複数台のモバイル機器を持ち歩くなら、10,000mAhクラスのモバイルバッテリーを用意したい。多少高くても品質を重視するならパナソニックのQE-QL301がオススメだ。多少の使い辛さ、500回繰り返し使えるかは賭けになるが安さを重視するならcheeroのPower Plusがいいだろう。

・iPadとスマートフォンを同時充電するならPower Plusかエナジャイザー

2台同時充電なら、1A出力と2A出力を持つPower PlusかエナジャイザーXP14000がオススメ

 iPadなど充電に2A近い電流を必要とするタブレットとスマホを同時充電する可能性がある場合は、Power Plusかエナジャイザーがいい。たとえば、スマホの充電がメインでタブレットは駆動時間を少し延ばせればいいという場合は、安くて容量10,000mAhのPower Plusがオススメ。重さも230gなので、手提げのアタッシュケースなどでも持ち運びが容易だ。タブレットもフル充電したいという場合は、エナジャイザーのXP14000まで容量をアップしたい。ただし値段は高めで、重さも375gとやや重たくなる。

・ノートパソコンの電源として使うなら、国内出張はエナジャイザー、海外出張はMiLi Power King

iPad2やパソコンの補助電源として国内出張で使うならエナジャイザーXP14000、iPad 3や海外出張ならMiLi Power Kingをオススメする

 出張などでノートパソコンの補助電源として使う場合は、移動時間に合わせてモバイルバッテリーを選ぶといい。国内移動などで5時間程度パソコンを使えればいい場合はエネジャイザーXP14000、OTASのMiLi Power Kingならもっと長い7時間ほど使える。

 iPad 2なら約1回フル充電できるエナジャイザーXP14000がベストマッチ。さらに大容量バッテリーのiPad 3なら、OTASのMiLi Power Kingで1回フル充電できる。もしiPad2とスマートフォンを持ち歩き、どちらもよく充電する場合は、MiLi Power Kingがいい。

 なお、この両製品は、いずれもワールドワイド対応の専用充電器が同梱されている。プラグ変換器さえ用意すれば世界中のコンセントで充電できる。

 今回紹介した5製品の中で、自分にピッタリのモバイルバッテリーはあっただろうか。製品のスペックもさることながら、ちょっとした使い方の工夫で、より長持ちさせて使ったり、ワンランク上の使い方ができることがお分かりいただけたら幸いだ。

 当連載では、乾電池にニッケル水素電池、モバイルバッテリーなどさまざまな「電池」を検証しているが、「電池」と名の付く買い物は、買ってみなけけりゃ分からないというバクチの部分が往々にしてある。少しでもバクチのリスクを減らすために、今後も「表示容量のうち実際に充電に使える実容量がどのぐらいあるか?」という実験を行ない、読者の皆様にお届けしていきたい。

藤山 哲人