藤山哲人の実践! 家電ラボ
第19回
LEDシーリングライトのノイズは大丈夫?
by 藤山 哲人(2013/7/29 00:00)
2011年、一部報道で、商店街でLEDを大量導入した結果、そこから発生する電気的なノイズでラジオやテレビの受信障害が起きるというニュースががあった。それを受けて当コーナーでは2年前、本当にLED電球がノイズを出すものなのかを確かめる実験を行なったところ、確かに電球からは少なからずノイズが発生しているものの、離れてしまえば大した悪影響は受けないことが分かった。 [過去記事は→こちら]
そこで気になったのが、「LEDシーリングライトは、ノイズの心配はしなくて良いのか?」という点だ。最近は部屋の天井に取り付けるシーリングライトにも、蛍光灯から省エネ光源のLEDへ置き換わりが進んでいる。しかし、LED電球の中にはLEDは1個、多くても数個程度しか入っていないが、シーリングライトになるとLEDが何十個、何百個と内蔵されている。これだけ多くのLEDが内蔵されていると、もしかするとノイズが発生しているのではないか、と心配になってくる。
LEDシーリングライトを使うと、どれだけのノイズが発生しているのか? そしてそれは、何かしらの悪影響を心配する必要があるのか? それとも、まったく心配のないレベルなのか?
分からんことは、自分で調べる! やってみる!
Do it oneself!
今回はLEDシーリングライトのノイズについて、実際に使ってみて答えを出していこう。
受信機とオシロスコープでノイズを可視化しよう
まずは今回の実験で、どうやってノイズを測定するのかを紹介しよう。
電子機器が発生するノイズには、コンセントなどの電線を経由するものと、ラジオの受信障害を起こすように空中に放出されるものがある。いずれのノイズも正しく測るには、電波暗室という電波が遮蔽された空間で、専用の機器を用いて測定する必要があるが、さすがにそんなものは持っていないので(笑)、かなり簡易的な測定をした。
使ったのは「ワイドバンドレシーバ」という、市販のラジオよりも受信できる周波数が広い特殊なラジオ(受信機)と、電気信号を可視化する機械「オシロスコープ」だ。実験の様子は写真の通りで、ワイドバンドレシーバをシーリングライトに近づけたときと1m離したときの音を、オシロスコープで調べている。ノイズはたいてい周期的に発生するため、ラジオで聞くと「ピー!」や「ガー!」といった音になる。これをオシロスコープで見れば、目に見えないノイズを、音ではなく画像として可視化できるというわけだ。
まずは比較のため、蛍光灯のシーリングライトのノイズをチェック
さっそくLEDシーリングライトにノイズが出ているのか出ていないのか調べていきたいが、まずは比較として、蛍光灯式のシーリングライトのノイズを見てみよう。
このシーリングライトは、チラつきを抑える「インバーター方式」のシーリングライトで、2008年製ものだ。部屋のシーリングライトはそうそう買い換えるものではないので、標準的なシーリングライトと言ってもいいだろう。
オシロスコープで見ると、周期的な山と谷があり、この波形の高さ(谷)が、ノイズの大きさとなる。普段生活する分には何の悪影響もないが、LED電球で調査したような、それなりにはノイズが出ているようだ。
それではここから、LEDシーリングライトのノイズを見てみよう。
日立アプライアンス「LEC-BH510(8畳用)」
ノイズはかなり少ない。「サー」というホワイトノイズ(CDなどを再生していないときにスピーカーなどから聞こえる音)の中に、辛うじてノイズっぽい音が聞こえる程度だった。
そのためオシロスコープの波形にも、同じパターンがはっきりと現れていない。ただワイドバンドレシーバをシーリングライトから1m離すと、波形の高さが少し変化するので、何らかのノイズがわずかに出ていることが分かる。
これは日立に限らず、今回調べたシーリングライトすべてに言えることだが、LEDシーリングライトは、2年前のテストでLED電球から出ていた虫の羽音のようにはっきりとした「ブーン」というノイズ音は聞こえない。
NEC「LIFELED'S LEDシーリングライト クリアパネル HLDC90802(6~10畳用)」
今回試した中では、最もノイズが少なかった。とはいえ、LEDシーリングライトはもともとノイズの少ないものが多いため、「他に比べて」というレベルだ。
アイリスオーヤマ「ECOLUX(エコルクス) CL12DL-CSL1(~12畳用)」
LED電球もLEDシーリングライトも、かなり早い段階から製品化していたアイリスオーヤマのシーリングライトは、ケンコー・トキナーと同レベル。これも大した問題ではなかった。
LEDシーリングライトは省電力だけでなくノイズもない
というわけで、今回試した4製品では、これといった大きなノイズは発見されなかった。
以前にLED電球のノイズを測定したときは、明らかに同じパターンの波形が繰り返し見られ、ひと目でソレと分かるノイズの波形が出ていた。それもそのはず、当時のLED電球は、ノイズの規制対象外製品であり、あやしい海外製のLEDを持つ電球がいくつも発売されていたのだ。
その大きな違いは、数年間の技術の進歩にもあるが、電球とシーリングライトの大きさにあるだろう。LED電球は、電球という小さなサイズのなかに、LEDを点灯させる回路を押し込まなくてはならない。電球サイズというより、根元のほんのわずかなスペースだ。そこにACアダプタと同等の回路を埋め込むため、ノイズが生まれやすいのだ。
しかしLEDシーリングライトは、大きさの制約がない。LEDがたくさん並んでいる基板の裏側に点灯させるための回路をいくらでもつくれる。そのためLED電球より電気的なノイズが出にくい複雑な回路を組み込めるというわけだ。
結論! LEDシーリングライトのノイズを心配する必要はナシ!
結論から言えば、ノイズを気にしてLEDシーリングライトを買い控えする必要はない。数年前にLED電球のノイズが新聞でも問題になったが、その後ノイズ規制が厳しくなりLED電球自体も低ノイズになっている。さらにLEDシーリングライトは、LED電球のように小さいスペースに回路を詰め込む必要がないうえに、しっかりノイズ対策がほどこされているようだ。
それどころか、LEDシーリングライトは蛍光灯シーリングライトよりもノイズが少なかった。この原因は恐らく、蛍光灯の点灯回路(安定器)は、ほぼ剥き出し状態でケース内の収まっているのに対し、しかしLEDシーリングライトの点灯回路は、LEDが並んでいる発光面の裏側にあり、ケースと発光面のアルミで遮蔽され、ノイズが漏れにくくなっている、という違いが大きいだろう。
なのでLEDシーリングライトは、ノイズを気にするオーディオマニアが使っても全然大丈夫。むしろ蛍光灯シーリングライトを使っているようであれば、LEDに買い換えたほうが、よりノイズの少ないオーディオルームが作れるはずだ。
もちろん一般家庭でもオススメだ。蛍光灯よりも省エネなうえ、調光や調色など、蛍光灯では実現できなかった機能を備えた機種もある。安心して買い替えて大丈夫だろう。