三洋、消費電力が少なく除菌/脱臭効果も高い新電解水技術

~水分子を直接分解、オゾンによる酸化効果も

 

新開発の電解式オゾン生成電極
 三洋電機は、電解水の生成時に使用する、低消費電力で除菌/脱臭効果の高い「電解式オゾン生成電極」を新開発したと発表した。

 

 電解水とは、水道水を電気分解することで生成される、除菌・脱臭効果のある活性酸素を含んだ水のこと。三洋電機ではこの電解水生成技術を「virus washer(ウイルスウォッシャー)」として、空気清浄機や加湿器などに搭載。水道水に含まれる塩化物イオン(Cl-)を使用して、電気分解により「次亜塩素酸(HCIO)」と「OHラジカル」という2種類の活性酸素を生成し、室内の空気を除菌・脱臭する効果がある。

 今回新開発したオゾン生成用電極は、塩化物イオンを利用せずに水分子を直接電気分解することで、オゾン(O3)と過酸化水素(H2O2)を生成、2つを反応させてOHラジカルを生成するというもの。これまでもこのような方式のオゾン電極技術はあったが、これらと比較して省エネ性の高さ、コストの安さ、環境負荷の高い物質を使用しない点で優れているという。

三洋電機の電解水技術の系譜。近年では空気を除菌/脱臭するために、空気清浄機や加湿器などで電解水技術が使用されている同社の従来の電解水技術は、水道水中の塩化物イオンを利用したもの。次亜塩素酸とOHラジカルという2種類の活性酸素種を作り出す今回の電解式オゾン生成電極では、塩化物イオンを利用せず、水分子を直接電気分解することで、オゾンと過酸化水素を作り出し、OHラジカルを生成する

 従来のオゾン電極素材には、素材として二酸化鉛(PbO2)や白金、ダイヤモンド(BDD)が使用されてきたが、二酸化鉛は環境負荷が高く、白金とダイヤモンドは高コストで高電流といった課題があったという。しかし、新開発のオゾン電極では、酸化タンタル(TaOx)と白金(Pt)の混合物を薄膜として積層を触媒として使用。これにより、密度の低い電流でオゾンが生成できるようになり、消費電力は白金の1/4で済むとしている。また、鉛など環境負荷物質も含有しておらず、コストも安くなるという。

 除菌/脱臭能力の面では、高い酸化力を持つオゾンとOHラジカルの働きにより、次亜塩素酸では分解が難しかったタバコ臭やカビ臭といった難分解性物質の分解が可能になった。

 ちなみに、酸化タンタルは絶縁体の材料として使用される事が多く(Ta2O5)、これまで電極の材料としては不向きとされていた。新電極では、三洋電機の独自の技術により、酸化タンタルを薄膜として積層することで、電極の触媒として機能させているという。

 また、塩化物イオンを使用しないため、海水を電気分解した水を使う地域など、塩化物イオンを含まない幅広い水質でOHラジカルが生成できるようになった。

新開発のオゾン電極の触媒に使われる酸化タンタルは、絶縁体として使用されることが多く、電極には本来不向き。電極として使用するため、独自技術で薄膜化したオゾン電極の素材の比較。他には白金/ダイヤモンド/二酸化鉛などの素材があるが、消費電力、コスト、環境性の面で問題があった

新電極では、密度の低い電流でオゾンが生成できるそのため、消費電力は白金素材の1/4で済むという塩化物イオンの有無による除菌効果の比較。塩素発生タイプの電極では、塩化物イオンを含んでいないと除菌効果が著しく低くなってしまう。新電極なら、水分子からOHラジカルを生成するため、塩化物イオンがなくても高い除菌効果を発揮できる

オゾンとOHラジカルの2つの効果により、次亜塩素酸では分解が難しいタバコ臭・カビ臭も分解できるようになったタバコ臭のもととなる酢酸の分解除去能力のグラフ。従来の塩素発生タイプの電極では、次亜塩素酸ではまったく除去できていないが、新開発のオゾン電極では、4時間後に半減しているこちらはカビ臭の分解除去能力のグラフ。塩素発生タイプよりも、オゾン電極の方が能力が高くなっている

三洋電機 研究開発本部 エコロジー技術研究所 所長 米崎孝弘氏
 三洋電機の研究開発本部 エコロジー技術研究所 所長の米崎孝弘氏は、新技術の製品化について「具体的には決まっていないが、現在三洋電機取り扱っているいろいろな商品に搭載できると思っている」とした。

 なお新開発のオゾン電極は、白金やダイヤモンドと比べて耐久性が低いと評価するスライドが紹介された。これについて米崎氏は「現在市販している電極と比べると若干基準に届いていない」と説明したが、「まだ実験段階で、寿命は日々延びている」と、将来改善される可能性を示した。


着色した水に新開発の電解式オゾン生成電極を入れ、色が抜けていくようすを実演するデモ。電極からは気泡が発生しているのが見える(色の違いが分かりやすいよう、動画を一部編集している)
デモで使用された器具。省電力のため、電源は単三のeneloop(エネループ)の4本だけ新開発の電解式オゾン生成電極を横から見たところ。かなり薄いのが分かる


(本誌:正藤 慶一)

2009年3月27日 17:50