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イオンを空気中に発生する空気清浄機(写真はシャープ「KC-W65」)
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空気清浄機を中心とした空調家電製品には、電気を帯びた原子――つまり「イオン」を空気中に放出する機能を持った製品が多くなっています。しかし、室内にイオンを放出するといっても、イオンは目に見えるものではありません。イオン機能を使うことで、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。
● 「OHラジカル」がウイルスやニオイ分子と反応し、除菌・脱臭する
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シャープのプラズマクラスターイオンがウイルスに反応する模式図。ウイルスの表面でプラスイオンとマイナスイオンが反応することで、「OHラジカル」に変化。水素分子を抜き取って、ウイルスを破壊、無力化する
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現在市販されているイオン機能の効果としては、まず「ウイルスやカビ菌、アレル物質を抑制する」点が挙げられます。
イオン機能は、基本的に「OHラジカル」と呼ばれる物質の利用をベースとしています。OHラジカルは酸化力の強い物質で、活性酸素と呼ばれる物質のひとつです。プラスとマイナスに帯電したイオンを空気中に放出し、ウイルスや花粉などのアレル物質に付着すると、イオンはOHラジカルに変化。ウイルスやアレル物質表面のタンパク質から水素原子を奪い取り、不活性化するという仕組みになっています。
また、このOHラジカルが空気中のニオイ分子やウイルス、花粉などアレル物質などと反応することで、強い消臭効果やウイルス・アレル物質を不活性化する効果があるとされています。
このOHラジカルを使ったイオン機能のラインナップが拡充しているのが、シャープの「プラズマクラスターイオン」です。空気清浄機やエアコン、加湿器・除湿器といった空調機器はもちろん、掃除機や冷蔵庫、洗濯機にもイオン機能が搭載されています。また、空気清浄機能を省いた、イオン放出だけに特化した「プラズマクラスターイオン発生器」という製品も発売しており、自動車や新幹線、ビルのエアコンなど、他社の業務用の空調機器にもプラズマクラスターイオンの発生装置を供給しています。
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プラズマクラスターイオンでは、プラスとマイナスのイオンを空気中の水分子から精製作り出す
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シャープでは、イオンを発生する機能に特化した「プラズマクラスターイオン発生器 IG-A100」も発売している
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一方、パナソニックのイオン機能「ナノイーイオン」は、イオンを水分子でくるんで放出するため水分量が多く、髪や肌に浸透して水分量を保持し、キメを整える効果があると謳われています。そのため、空気清浄機はもちろん、ドライヤーや美顔器といった理美容家電に搭載されるケースが多くなっています。
三洋電機が同社の空気清浄機に採用している「ウイルスウォッシャー」機能も、OHラジカルを利用して空気を除菌・脱臭する点では、これらのイオン機能とほぼ同様の効果があります。しかし三洋電機は、水を電気分解してOHラジカルを生成する機構から、ウイルスウォッシャーをイオンではなく「電解水技術」として扱っています。
技術の名称は各社とも異なりますが、一方で「OHラジカル」を使って除菌・脱臭している点は共通のため、パンフレットなどの説明を見比べても、各メーカー間のイオン機能の違いは分かりづらいのが現状です。
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ナノイーイオンは水分量が多く、髪や肌に潤いを与える効果がある。そのため、ドライヤーや美顔器などの理美容家電に使用されるケースが多い
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三洋電機では、水を電気分解してOHラジカルを作り出す「電解水技術」を採用する
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「電解水技術」の仕組み
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● メーカーが第三者機関による評価を受ける理由
その一方で、各メーカーはイオン機能の効果について、第三者機関と共同で検証を行ない、その結果を公表するケースが増えています。
例えば、シャープの除菌イオンについては、日本の研究機関だけでなく、イギリスやドイツなど国外の第三者機関でも検証が行われ、その効果が実証されたことを公表しています(http://www.sharp.co.jp/ion/clusterion/effect.html)。三洋電機の電解水技術(http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0712news-j/1212-1.html)、パナソニックのナノイーイオン(http://panasonic.jp/nanoe/ 「ナノイーにできること」→「検証機関」をクリック)も、ウイルス・アレル物質の抑制、たばこ臭の脱臭効果などの効果を第三者機関より評価を受けています。特にシャープと三洋電機では、実験時の測定条件も明らかにしています。
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各メーカーとも、第三者機関による効果の実証をアピールしている(写真は三洋電機の電解水技術の効果検証一覧。2008年12月9日撮影)
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実際の実験状況を公開しているケースもある。写真は三洋電機の電解水技術がホルムアルデヒドに効果があることの実証に使用された実験状況
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ところで、このようにメーカーが第三者評価を受けている理由は何故でしょうか? それは、これらのOHラジカルを利用したイオン機能の前に流行した「マイナスイオン」の影響があるからです。
このマイナスイオン、空気中に存在するマイナスに荷電した極小の物質、と紹介されることが多いようですが、実際には科学的、また物理的に定義されている用語ではなく、特定の物質を指すものでもありません。
2000年前後に登場したマイナスイオン搭載の家電は、一時期大流行したものの、その後効果に対する科学的根拠が乏しく、客観的に実証されているものでもないという指摘が多くなりました。2006年には行政による景品表示法に基づく指導も受けてしまいました(参考資料:東京都 生活文化局の報道発表資料)。
イオンは目に見えないため、なにやらよくわからない機能という印象を受けてしまいがちです。空気清浄機や冷蔵庫、ドライヤーなど、イオン機能を搭載した家電は幅広く存在しますので、消費者に混乱を与えないために、このような第三者機関による検証を公表しているというわけです。
【イオン機能】の、ここだけは押さえたいポイント
・「OHラジカル」の作用により、除菌・脱臭効果がある ・各社とも「OHラジカル」を使用しているため、メーカー毎の機能の違いは分かりづらい ・空気清浄機だけでなく、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、美容機器などの家電製品に採用されている ・大手メーカーでは、第三者機関による効果の実証を受けている
2009年2月6日 初版
■URL
現代家電の基礎用語 バックナンバー
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/
シャープ プラズマクラスターイオン(除菌イオン)
http://www.sharp.co.jp/ion/clusterion/
パナソニック ナノイーワールド
http://panasonic.jp/nanoe/
三洋電機 電解水技術(ウイルスウォッシャー)
http://www.sanyo.co.jp/vw/
2009/02/06 13:23
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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