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コンセプトを180度変えた、新たな「CEATEC」ブースレポート
2016年10月5日 07:30
「CEATEC JAPAN 2016」が、千葉県幕張の幕張メッセで開幕した。
今年で17回目を迎えるCEATEC JAPANは、昨年までの「IT・エレクトロニクス総合展示会」から、「CPS/IoT Exhibition」へと展示内容を大きく変更。「社会」、「家」、「街」、「CPS/IoTを支えるテクノロジー・ソフトウェア」の4つのエリアと、各種特別企画エリアで構成した。
出展者数は、648社/団体、1,710小間と、昨年の531社/団体、1,609小間を上回った。海外からの出展も24カ国/地域から195社/団体となり、前年の19カ国/地域から151社/団体を上回っている。さらに、ベンチャー企業や大学研究機関は前年比2.5倍となる139社/団体が出展する。
人の暮らしを豊かにするのは家電とサービスの一体化
テーマは、「つながる社会、共創する未来」。
主催は、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の3団体。主催者特別企画として「IoTタウン」を初めて設置。
多彩な分野におけるIoTの利用シーンによって、新たな街のカタチを来場者に提案するほか、会期中には、主催団体による基調講演のほか、137の各種カンファレンスが開催される。会期中には15万人の来場を見込む。
主催元のひとつである一般社団法人電子情報技術産業協会・長尾尚人代表理事は、「これまで、CEATECは一般的に家電見本市と言われていたが、CEATECの意味は、Combined Exhibition of Advanced TECnologyであり、日本語にすると先端技術複合展示会。家電製品は、高機能のものを大量に安く供給することで生活を豊かにしてきた。
だが、現在の人の暮らしを豊かにするのは、家電とサービスが一体化することであり、そこに価値が生まれ、収益が生まれる。その潮流において、コンセプトと構成内容を180度変えた。新たなCEATEC JAPANにおいては、『見せましょう、日本の底力』をメッセージとして世界に発信したい」と述べた。
会期は、2016年10月4日~7日、午前10時~午後5時。全来場者登録入場制となっており、当日登録は、入場料が一般1,000円、学生500円。学生20名以上の団体および小学生以下は入場無料。また、Web事前登録者および招待券持参による当日登録者は入場無料。
家電メーカーでは、日立、パナソニック、三菱電機、シャープなどが出展。IoTを切り口にした各社の最新技術や製品を展示している。
パナソニック、テクノロジーが変える生活空間とライフスタイル
パナソニックは、「IoTが変える暮らしやビジネス」をテーマに、商業空間、住空間においてテクノロジーが生活を変えていく姿を体感できる「空間提案エリア」、来場者との共創を目指して開発中のIoT関連技術を紹介する「技術・デバイスエリア」で構成。昨年までは別出展としていたデバイスブースとの合同出展を行なった。
空間提案エリアでは、「住空間」と「商業空間」に分けて展示。そのなかで、住空間エリアでは、「Better Living Tomorrow」をキーワードに、「少し先の暮らし提案」を展示。
「暮らしのこだわりを引き立てる、空間に調和したシンプルでインタラクティブな住空間を表現し、人の行動に合わせて空間環境を変化させることで、どこにいても快適で、思いがけない感動が生まれるくらしを提案した」という。
棚の扉や引戸に組み込まれ、普段はインテリアの一部として溶け込む透明ディスプレイのほか、SAKE&WINEセラーにも、透明ディスプレイを採用し、庫内のお酒の情報やお酒にあったレシピの提案などを行なえる様子をみせた。
また、初めて展示した「新コンセプトフラットクッカー」は、加熱調理器をテーブルにビルトインして、そのまま調理ができるというコンセプト提案。皿に食材を載せてセットするだけで、調理ができる未来をみせた。
電子レンジの技術を応用したもので、フライパンも不要で、リビングでできたてのおいしさが楽しめるという。
商業空間では、 ガラスに貼ることで映像投影を可能にする透明フィルムを活用し、ガラスに投写した映像と、その後ろにある風景やモノを重ね合わせ、新たな空間演出を実現する「ウィンドウARプロジェクション」などを展示した。
一方、技術・デバイスエリアで最も注目を集めていたのが、 メイクアップシートだ。非接触肌センサーと特殊印刷技術を応用し、一人ひとりにぴったりの肌の色を再現。シミを隠せるナノレベルの極薄シートだという。
非接触の肌センシングで隠したいシミを自動抽出。インク材料配合設計技術や高精細印刷技術といった有機ELで培った印刷技術を使って、化粧顔料インクで印刷。印刷されたシートを肌に貼ればいい。「シミ、そばかすをメイクで目立たなくするには手間がかかるが、シートを貼ればいいという手軽な利用提案ができる」という。シートを貼っていることは、なかなかわからないという。
さらに、人体通信応用デバイスのデモンストレーションでは、緑色の時計をして握手をするとコンパニオンのスカートに埋め込まれたLEDの光が緑に変わったり、青いボールを持って台に触ると電球が青く光るといったデモンストレーションを実施。
「これは電界通信技術を活用したモノとモノ、ヒトとヒト、ヒトとモノをつなぐ通信モジュールであり、自然な動作で認証、通信が可能。握手するだけで、名刺の情報をお互いに交換できたり、なにも持たずにドアを開錠したりといったことが可能になる」という。
なお、パナソニックブースでは、「Panasonic LIVE@CEATEC」として、展示の様子や最新商品、技術などを、SNSを通じて発信していく。
日立、BtoBのIoTソリューションを提案
2012年以来、4年ぶりの出展となった日立製作所は、快適な移動、生産現場の改革、安全・安心な社会を実現するIoT関連ソリューションを展示してみせた。
日立が得意とする「OT(Operational Technology)」と「IT(Information Technology)」を融合するIoTプラットフォーム「Lumada」を活用したソリューションや、接客や案内サービスを行なうヒューマノイドロボット「EMIEW3」、自律走行する次世代パーソナルモビリティ「ROPITS」のほか、日立グループのIoT関連ソリューションを紹介した。なお、家電製品の展示は行なわなかった。
三菱、スマートタウンのさらなる展開へ
三菱電機は、「つながる社会、つなげる未来~豊かな社会の実現に貢献する三菱電機の最先端技術~」をテーマに、最新の技術や製品について体感展示を取り入れたのが特徴だ。
そのなかでブース中央部に設置していたのが、街全体を対象にしたEMS(エネルギーマネジメントシステム)サービス「DIAPLANET TOWNEMS(ダイヤプラネットタウンイーエムエス)」。
各種サービスの紹介とともに、これを活用した尼崎市のスマートタウン「ZUTTOCITY」の事例を紹介していた。今回の展示を通じて自治体やデベロッパーなどにDIAPLANET TOWNEMSを訴求。これをパッケージ化してスマートタウンの横展開につなげたいという。
また、話した言葉を、指でなぞった軌跡に表示する音声認識表示技術「しゃべり描きUI」のデモンストレーションや、レーザー光を利用してPM2.5の濃度を高精度に検出する小型空気質センサーの計測デモのほか、次世代自動車運転支援技術として、3Dヘッドアップディスプレイの実機デモなどを行なった。
シャープ、AIとIoTを駆使した「AIoT家電」
BtoBへのシフトを図る電機各社が社会エリアへの出展であったのに対して、家電メーカーらしく、家エリアに出展したシャープは、「シャープのIoTで彩る新しい暮らし」をテーマに、「AIoTスマートホーム」を提案。クラウドと連携し、AIを通じて、使用者の好みやライフスタイルに合わせて、日々使いやすく、快適に進化する「AIoT家電」を通じた未来の生活を展示してみせた。
ヘルシオと冷蔵庫の連動提案では、冷蔵庫に向かって「さんまを買ってきたよ」と話しかけて冷蔵庫に収納すると、今度は、ヘルシオが「さんまを買ってきましたか」と話しかけて、さんまを使った調理メニューとレシピを示してくれる。家電同士が連携して主婦を支援する格好だ。
また、冷蔵庫は、よく購入している食材や調味料などを学習して、「そろそろ購入した方がいいのでは」と呼びかける。
一方で、VOCALOIDと連動してオリジナル曲を歌うココロボを参考展示。呼びかけると歌を歌いながら返事をしてくれる。シャープが開発したCOCORO MUSIC A.I.エンジンによって、ユーザーの気分にあわせた音楽を、音声会話の内容から把握して選択して歌ってくれるという。
ヤマハとシャープが共同開発したボーカロイド・ライブラリーを活用。キャラクターデザインは漫画家の霜月絹鯊さん、キャラクターボイスは声優の木戸衣吹さんを起用しているという。
今後、ユーザー投稿機能や音楽配信サービスに対応する予定であり、VOCALOIDで自分が作った曲を、ココロボに歌わすこともできるという。
また、同社が今回のCEATEC JAPAN 2016から、新たなブランドスローガンとして打ち出した「Be Origineギャラリーゾーン」では、シャープのモノづくりの志を示し過去の製品群を展示。RoBoHoNゾーンでは、モバイル型ロボット電話「ロボホン」の新展開として、サービス連携や法人向けの新たな展示を紹介した。
その他の電機メーカーでは、富士通が同社ロボットの「ロボピン」を展示したほか、センサーモジュールをソールに埋め込み、運動時の各種データを取得するデモンストレーションも行なった。
また、NECは、イヤホンを使用して、耳穴からの反響音特性で個人を特定する「耳音響認証技術」を参考展示。オンラインテスト時の本人認証としての利用や、位置情報と連動させることで個人を認証しながら業務を指示するといった使い方ができるようになるという。
レノボ・ジャパンのブースでは、NECパーソナルコンピュータが参考出品ながら、PCを中心として、家電製品を制御するスマートホームを展示してみせた。
NECのLAVIEシリーズに標準搭載されているインフォボードの機能を活用して、赤外線やBluetooth、Wi-Fiを搭載している家電製品を制御するもので、PCの画面上からの操作のほか、音声での操作も可能にするという。
一方、主催者特別展示の「IoTタウン」では、セコム、タカラトミー、楽天、三菱UFJフィナンシャル・グループといった異業種からの初出展企業が相次いでおり、「暮らし」、「街」、「社会」の3つのシーンを通じて、ロボット、ショッピング、仮想店舗、スポーツ・ウェアラブルなど10件の展示が行なわれた。
CEATECに初出展となった三菱UFJフィナンシャル・グループでは、IoTタウンの同社ブースに人型ロボット「NAO」を展示。三菱東京UFJ銀行成田空港支店で活躍している様子を再現するとともに、画像認識を活用して、来場者の顔が笑顔だと判断すると、「笑ってくれてありがとうございます」と答えるデモンストレーションなどを行なった。