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シャープ、話しかけると家電を操作してくれる「ホームアシスタント」を2017年に発売

 シャープは、同社が取り組む「AIoT スマートホーム」について発表。家電製品とつないでスマートホームを実現する「ホームアシスタント」を、2017年前半にも発売することを明らかにした。価格は数万円になる見通しだという。

 同製品は、10月4日~10月7日に幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2016」で展示されるにあたり、開催前日の3日に行なった記者会見で詳細を発表した。

ホームアシスタント

既にある家電をAIoTに対応させスマートホームを実現

 ホームアシスタントは、家電のリモコンに使用されている赤外線や、Wi-Fiを通じて、既に自宅にある家電や住設機器と接続。シャープ製以外の家電や住設機器とも接続できるように、関連技術を公開していくという。

 「スマートホームの実現における最大の課題は、家電製品や住設機器の使用年数が長く、AIoT対応機器に移行しにくいという点。それを解決するには、現在、所有している家電でも、AIoTを体験できるようにする必要がある。スマートホームにおける最大の課題を解決するのが、ホームアシスタントになる。家の真ん中で、音声によって様々な家電を連携させられ、家電の新たなカタチとしてのスマートホームを実現する新規カテゴリーの製品」だと位置づける。

 また、ホームアシスタントはクラウドによって、シャープのAIoTサービスに接続。シャープAIoTクラウドで提供されているビッグデータ解析、シナリオ対話、機械学習、音声認識、音声発話などの機能を活用して、音声によるコミュニケーションを実現する。

赤外線やWi-Fiを通じて家電と連携するホームアシスタント。音声でコミュニケーションを図る

 ホームアシスタントを利用すると、「エアコンをつけて」と言わなくても、「ただいま、今日はとても暑かったよ」と言えば、ホームアシスタントがその言葉を理解して、「わかりました。いつもより強めに冷やしますね」と自然な対話でエアコンを操作。さらに、クラウドを活用することで入手できる様々な情報をもとに、「夕方からにわか雨のようなので、傘をお持ちください」といったアドバイスもしてくれる。

 シャープ 取締役専務兼IoT通信事業 本部長・長谷川 祥典氏は、「コミュニケーションを通じて愛着を持ってもらえる製品に進化することができる」とする。

「今日は暑かったよ」とホームアシスタントに話しかければ、エアコンを操作する
シャープ 取締役専務兼IoT通信事業 本部長・長谷川 祥典氏

 価格設定については、「家の状況によっては複数台のホームアシスタントが必要な場合もあるかもしれない。なるべく購入しやすい価格設定とし、複数の部屋にも設置しやすくしたい」(シャープ IoT通信事業本部IoTクラウド事業推進センタープロダクトマーケティング部・阪本実雄部長)とした。

 また、「まずは住設機器メーカーやハウスメーカーとのアライアンスを推進し、それらの企業にクッションになってもらうことで、家電メーカーと連携していくことも考えている」という。

シャープ IoT通信事業本部 IoTクラウド事業推進センター プロダクトマーケティング部・阪本 実雄部長

クラウド連携で家電に人工知能を搭載した「COCORO+(ココロプラス)」

 生産については、親会社である鴻海精密工業を活用することになるという。

 同社では、モノの人工知能化を目指し、AIとIoTを加えた「AIoT」を2015年9月に発表。家電をクラウドに接続して人工知能化を図り、もっと人に寄り添う存在に進化させることを標榜する。家電が学習したり、音声対話を通じて愛着を醸成することで、「賢く学習して、“わが家流”に快適に成長し、その場ですぐにサービスが利用できる家電」の実現を目指してきた。

 具体的な活動として、「COCORO+(ココロプラス)」と呼ぶプロジェクトをスタート。「家電を道具から暮らしのパートナーに成長させたい」(長谷川取締役専務)として、オーブンレンジに音声対話機能を搭載し、レシピを相談できる「クッキングパートナー HEALSIO」や、そのときその場所に最適な環境で運転し、わが家オリジナルの運転ができるエアコンによる「COCORO AIR」を提供。

 さらに、対話をしながら使用者とコミュニケーションを図るモバイル型ロボット電話「ロボホン」や、人が近づくだけでAIが番組やVODの内容を声で教えてくれる「AQUOSココロビジョン」などのサービスを開始してきた。今回の「ホームアシスタント」も、COCORO+プロジェクトの製品のひとつに位置づけている。

音声対話でレシピを相談できるオーブンレンジ
最適な環境で運転するエアコン「COCORO AIR」

家電とリアルなサービスを連携してスマートホームのステップアップを目指す

 シャープの長谷川祥典取締役専務兼IoT通信事業本部長は、「AIoTを発表してから1年が経過した。今後、AIoTの対象を、家電からスマートホームへとステップアップし、家中のモノとリアルなサービスが連携し、快適な暮らしをを提供するものにしたい」と語る。

 具体的な例として、キッチンソリューションでは、献立相談、買い物おすすめ、作り方指南、食材調達において、家電同士やホームアシスタントが連携。「オーブンレンジや冷蔵庫が連携し、わが家の好みやその日の気分にぴったりの献立提案から、食材購入までをサポートすることができる」という。

 空間フィットソリューションでは、エアコンや空気清浄機が、窓の開閉状況や、家族の好みの温度や、その場での行動を理解し、「その場の空気を読んで、最適な環境を創り出す」とする。リビングでヨガを始めたら、エアコンが少し温度を下げたり、空気清浄機が自然に強運転を開始し、快適にヨガができる環境を実現するという。

オーブンレンジや冷蔵庫が連携して献立提案から食材購入までサポートする「キッチンソリューション」のイメージ

 元気ケアソリューションでは、電子錠やドアホン、家電が連携することで、遠くに住んでいる両親の様子などを確認。生活の変化を察知して、さりげなく家電が声がけをしたり、家族に伝えたりといったことを行なうという。

 こうした環境の実現においては、他社との連携も重要な鍵になる。

 「COCORO+商品で培ったAIoTクラウド関連技術においては、他社と連携することで、魅力的なソリューションとして拡充を図りたい」(長谷川取締役専務)と、今後、他社との連携強化も積極化させる姿勢を示した。

離れて暮らす両親の様子などを確認できる「元気ケアソリューション」

 なお、AIoT スマートホームは、10月4日から、千葉県幕張の幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN 2016」の同社ブースにも展示。「AIoTを、家電からスマートホームへ」をテーマに、クッキング、エンタメ&リラックス、アライアンスの3つのソリューションから展示。

 「使う人をもっと理解し、もっと寄り添う新しい価値をホームにまで展開する」とした。

ホームアシスタントを手にする長谷川取締役専務

ロボット電話「ロボホン」の法人導入

 また、モバイル型ロボット電話「ロボホン」では、法人導入を本格化。それにあわせて、法人の受付や接客、観光案内、見守りなどのビジネスシーンで活用できるアプリをまとめた「お仕事パック」を提供。さらに、ロボホン専用アプリを開発し、販売する企業を対象にした「認定開発パートナー制度」を開始する。

ロボット電話「ロボホン」の法人導入を本格化する

 お仕事パックは、来客の質問などに答える「受付・接客アプリ」、企業が設定した内容をプロジェクターで映し出す「プレゼンアプリ」、自宅の高齢者や子供などメッセージを送り、受信者がメッセージを確認したことを通知する「遠隔アプリ」で構成する。今後、アプリの追加やアップデートを行なうほか、カバーできない用途のカスタマイズ対応も行なう。また、2016年度中には、お仕事パックにおける英語、中国語の音声認識、発話にも対応するという。

 お仕事パックの価格は4万8,000円。別途、ビジネス無制限プランが、年額12万3,000円の契約が必要となる(いずれも税抜)。

 認定開発パートナーは、開発環境の先行公開や見込み客の紹介、定期的な認定開発パートナーミーティングを実施し、ロボホン向けアプリの開発や販売を促進するという。