長期レビュー

パナソニック「生ごみリサイクラー MS-N53」 第1回

~家庭用生ごみ処理機って何?
by すずまり

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



生ごみは1年を通して悩みのタネ!

パナソニック「生ごみリサイクラー MS-N53」。やわらかく清潔感のあるフォルムだ

 生ごみが最も変質しやすい暑い季節が過ぎたが、まだまだ油断は禁物だ。内食ブームに乗って自宅で鍋パーティでもしようものなら、大量の生ごみが生じるのは目に見えている。片付けるのは、そう、アナタだ。

 タイミング良く翌日が生ごみを出せる日ならいいが、数日待たねばならないとなると臭いや虫を防ぐなど管理が大変だ。無事ごみ出しの当日を迎えても、今度はカラスや猫、などの襲撃に気をつけなくてはいけない。調理と生ごみは切り離せない存在ゆえに、台所を預かるものは苦労が絶えないのだ。

 そんなご家庭の事情もさることながら、もっと広い視点で見た場合、焼却炉や埋め立て処分地が限界だったり、環境問題があったりとごみを取り巻く問題も深刻化している。「臭い生ごみ出してスッキリ!」でおしまいではないのだ。

 そこで注目され始めているのが、生ごみを分解したり乾燥したりすることで、普通のごみとして処分できる「家庭用生ごみ処理機」である。生ごみに悩む方なら一度は「この臭い生ごみ、すぐなんとかできたらいいのに」と思ったことがあるに違いないが、「家庭用生ごみ処理機」はその願いを叶えてくれる夢の機械というわけだ。

 しかも処理された生ごみは窒素やリン、カリウムが豊富な有機質肥料としてリサイクルが可能。家庭菜園などの肥料として活用すれば、肥料まで手作りでしかもおいしい野菜が採れるようになるという、まさに一石二鳥の製品なのである。

 そんなわけで密かに気になっている方も多いのではないかと推測。そこで今回は1カ月間家庭用生ごみ処理機を使った使用感などをレポートしてみようと思う。


生ごみ処理機のタイプと、メリットとデメリットを知っておこう

 一口に家庭用生ごみ処理機といっても、実は「バイオ式」「乾燥式」「ハイブリッド式」3つのタイプが存在する。まずはその違いを押さえておこう。

<バイオ式>

 ごみ処理機の中で、数種類のバクテリアに生ごみを分解してもらう方法が「バイオ式」だ。おがくずとバクテリアを混ぜて「基材」にし、その中に生ごみを入れる。攪拌すると空気が送られて発酵し、ごみは水と炭酸ガスに分解されて堆肥状になり、約1/10まで減少させることができるのである。

 微生物が繁殖しやすいようにヒーターで中の温度は35~45℃に保たれているのが一般的だが、高温好気性菌を使用して60~80℃で分解する高温バイオ式製品もある。ごみはいつ投入してもよく、電気代もあまりかからないが、基材の交換が必要な場合や処理に数日かかったり、一度に処理できる容量が少ないといったデメリットもある。

<乾燥式>

 約130℃の熱風を吹き付けて生ごみを乾燥させ、減量、減容する方式が「乾燥式」。触媒により臭いを分解、消臭する脱臭機能もそなえており、生ごみの容量は約1/7になる。ごみの追加投入が可能で処理容量も多く、処理時間も数時間と短いのが特徴。バイオ式が利用しにくいような寒冷地にも対応でき、一番手間もかからないが、処理のたびに電気代がかかるのがネックだ。

<ハイブリッド式>

 バイオ式と乾燥式両方のいいところを併せ持つタイプが「ハイブリッド式」。熱風で生ごみを乾燥させてから微生物で分解処理するため、約1/10~1/20まで減容させることが可能。ごみはいつでも投入でき、電気代も安いが、微生物を使う分だけ処理時間は1日ほどかかる。また一度の処理容量も多くない。


家庭用生ごみ処理機には処理できるごみと、できないごみがある

 タイプの違いが分かったところで、家庭用生ごみ処理機には処理できるごみと、処理できないごみがあることも知っておこう。

 投入できるのは、ご飯、麺類、野菜や果物のくず、魚の骨や皮、鶏の骨、卵の殻、エビやカニの殻、肉類、味噌汁やジュースなどの液体(少量)など。

 逆に投入できないものは、貝殻、大きな骨、梅干しや桃などの固い種、タケノコの皮、ビニール袋、プラスチック、紙、金属、繊維、木片、陶器類など食品以外のものだ。特にバイオ式の場合、微生物が死滅してしまうような大量の油、たばこ、アルコール、ペットのふん、灯油やガソリン、洗剤、薬品などは不可となっている。

 「家庭用生ごみ処理機」を導入したからといって、自宅がごみ処理場になるわけではないのである。


温風乾燥式で大容量の家庭用生ごみ処理機「MS-N53-S」

 ここでいよいよ今回試したパナソニックの「生ごみリサイクラー MS-N53」をご紹介しよう。温風乾燥式でサイズは268×365×550mm(幅×奥行き×高さ)。ふたを開けたときの高さは770mm、重さは12kgとなっている。屋内はもちろん、雨ざらしにならず、防水型のコンセントが用意できる場所なら屋外でも設置可能な製品だ。

正面から見た様子真横から見た様子背面から見た様子
実際に設置してみたところ

 2~6人用のごみをまとめて処理できる大容量設計で、1回の最大処理量は約2.0kg(約6.0L)。もう1ランク下の単身者用「N23」(2~4人用)は約1.0kg(約3.0L)なので、倍の処理能力を有する。

 初めて箱から出したときはかなり大きく感じて正直驚きと戸惑いが生じた。しかし実際に設置してみると、凹凸がほとんどない縦型であることや、シルバーという色合いから威圧感は感じず、意外にもスリムでコンパクトな印象を持った。ちょっと大きめのごみ箱といった雰囲気である。

 構造は本体と、本体内にセットするプラスチック製の処理容器の2つ。本体のふたを開けるとふたの裏にヒーターとそれを保護するヒーターカバーが確認できる。処理容器には「固定刃」と「かくはん羽根」がついており、お手入れの際は処理容器ごと水またはお湯で水洗いが可能になっている。

背面についている排気口ふたには「ふたロックつまみ」がついているふたを上から見た様子。押すだけの「操作パネル」がついている
開けるには「ふた開きボタン」を手で押すすぐに処理容器が姿を現す「ふた開きボタン」をおしてふたをあけた状態。容器の口が広いので、まな板の上からでも捨てやすい
ふたの裏側。ヒーターやヒーターカバーが見られる本体から処理容器を取り外したところ手さげが付いており、一見普通のバケツに見える
中には「固定刃」と「かくはん羽根」が付いている本体に戻すときは、△マークを合わせる仕組み付属品は取扱説明書とアース線


生ごみを入れてスイッチを押すだけの簡単操作

 使い方も至って簡単だ。ふたをあけ、処理容器に生ごみを入れ、ふたをしたら「入」ボタンを押すだけ。すると処理容器内部の「かくはん羽根」が回転し、ヒーターから生じる約135℃の温風で生ごみを乾燥させる。処理中はプラチナパラジウム触媒の効果により臭いを分解するため、高い脱臭能力を持つという点も屋内利用では見逃せないところ。処理後はごみを取り出して、その他の可燃ごみとともに捨ててもよいし、有機質の肥料として利用してもよい。

 処理方法は「標準モード」と「ソフト乾燥モード」の2種類が用意されており、スピーディに処理したいときや、肥料としての効き目を持続させたいときは「標準モード」を選択。臭いの強いものを処理する場合や、肥料としての効き目を早く出したいときは「ソフト乾燥モード」を選択するとよい。「ソフト乾燥モード」はタンパク質の熱変性が抑えられるため、即効性のある有機質肥料を作ることができるのだそうだ。

即作動させるなら「入」ボタンを押すだけ「ソフト乾燥」させるには、一旦「入」ボタンを押してから「ソフト乾燥」ボタンを押す

 処理タイミングは「入」ボタンを押して即乾燥を開始するほかに、3時間後または6時間後のいずれかに処理を開始する「予約運転」も選択できる。予約時間と処理モードの組み合わせも可能なので、「6時間後にソフト乾燥モードで処理」といった予約もできる。深夜電力を使って電気代を浮かせたいときや、寝ている間に処理したいときには便利だ。ただし予約中にふたを開けてしまうと解除されてしまうので、生ごみの追加投入をしたら再度セットしておこう。残念ながら時間指定はできない。

3時間後に自動スタートさせるには「入」を押してから「予約」を押し、「3」を点灯させる3時間後に自動スタートさせるには「入」を押してから「予約」を押し、「6」を点灯させる

 処理時間は生ごみの種類や量、含有水分によって変わるが、約400g分を「標準モード」で乾燥させると約1時間40分(1回約16円)、ソフト乾燥なら2時間10分。生ごみを約2,000gとフルに詰め込んだ場合は「標準モード」で約5時間40分(1回約66円)、「ソフト乾燥モード」で約8時間30分となっている(標準モードとソフト乾燥モードのいずれも処理時間の最後約15分に冷却時間が含まれる)。

 水分量が非常に多い場合は最長約15時間までは稼働し、自動停止する。やけどの恐れがあるため運転中にふたを開けてはいけないが、万が一、開けたときは運転が停止する。お子さんがいるご家庭はいたずら防止のために忘れずにふたをロックしておこう。

 「処理したごみは毎回取り出して捨てなくてはいけないのか?」と疑問に思われる方もいるようだが、さらに上から追加できるので安心していただきたい。1回の処理量が処理容器内の「生ごみ投入量目盛り線」を超えなければ大丈夫だ。1日約400gの生ごみであれば、約2週間は追加投入し、連続して処理できる容量なのである。

 また、生ごみはまな板から直接処理容器に放り込めるので、流しの定番品「三角コーナー」が不要になる。ということは、流しの衛生面にも大きく貢献できるというメリットもある。


「MS-N53-S」で処理できるもの、できないもの

 「MS-N53-S」に投入できるのは、ご飯・麺類、肉類・魚類、野菜くず、茶がら、果物くずなど家庭で発生する生ごみのほか、一般的に人が食べられる食材・調理物などである。繊維質の多いものは5cm以下にカットするなどしておくと、かくはん羽根に負担がかからなくて済む。

 投入できないのは、スプレー缶及び缶類、電池類、石油類、花火、アルコール・酒類、アルコール分を含むもの(酒かす、アルコール漬けの果実、薬草など)多量の柑橘類(みかん、オレンジなど)の皮、となっている。

 生ごみの一部でも、牛、豚、鶏などの骨、多量の卵の殻、貝類などの硬いものはNGだ。さらに、何かのついでにうっかり一緒に捨ててしまいそうな輪ゴム、スチロールトレイ、ポリ袋・ラップなどのシート類、紙類、爪楊枝、カップ麺などのふたや容器、アルミホイル、割り箸、紙ケース、シール、中ぶた、野菜を束ねている針金や袋のほか、ガラス、陶磁器、金属類、動物の糞なども入れてはいけない。

 基本的に利用する製品の説明書に従えばいいのだが、迷ったら「処理後のごみは土に混ぜて有機肥料として利用できる」、つまり再び自分の口に入る可能性があるという点や、著しく固いものは容器を壊してしまう恐れはないか、などを考えれば判断しやすいかもしれない。

 次回は実際に生ごみを使った使用例をお届けする予定だ。




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2009年10月7日 00:00