長期レビュー

パナソニック「生ごみリサイクラー MS-N53」 その2

~生ごみ処理機に入れた生ごみはどうなるの!?
by すずまり

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 前回は、生ゴミ処理機の説明に終始してしまったが、今回からは実際に生ごみがどう変わっていくのかをレポートする。野菜くずは? 脂の多い肉を投入するとどうなる? 「標準モード」と「ソフト乾燥」の仕上がりの違いは? ため込んだらどうなるの? など生ゴミ処理機に関する疑問を一気に試してみた。

初めての生ごみ処理体験は「バナナの皮」

生まれて初めてのリサイクラーはバナナの皮からスタート

 使った経験がない機器だけに使い始めは少々緊張する。というわけで、まずは手始めに朝食に食べたバナナの皮を1つだけ入れてみた。放り込んだらフタをして「入」ボタンを押す。あとはおまかせだ。「ブーン」という音とともに作動したかと思ったら、しばらくの間静かになった。その後時折「ブーンブーン」という音がする。本格的に稼働している間は排気の「シュー」という音が聞こえるが、運転音は比較的静かである。

 1時間半ほど経過したところで、完全に静かになっていることに気づいた。フタを見るとランプが消えている。終了してもそれを知らせるアラーム音などはないのである。確かに真夜中に稼働させていちいち音が鳴ったら迷惑だろう。

 本体側面を触ってみたが、ほんのり温かい程度であった。完全に停止していることを確認してからフタをあけると、そこに先ほどのバナナの皮はない。見えたのは黒と茶色に変色した“カス”である。特に刻まずに投入してしまったが、乾燥してバラバラになっていた。完全に乾燥しており、これなら腐って臭いを放つ心配はないと実感した。

バナナの皮1つではこんなもの「入」ボタンを押すだけですぐにスタートする約1時間半後、処理容器の中で変わり果てたバナナの皮と対面


追加で投入した野菜くずがぎゅっと縮小

処理後のバナナの皮もそのままに、遠慮なく次の野菜くずを投入

 変わり果てたバナナの皮の残る処理容器の中へ、痛み始めたキャベツのクズ、じゃがいもの皮、玉ねぎの皮と根の部分、えのきだけの野菜くずを追加で投入してみた。キャベツはあまり細かくカットしていない。ごみの量としては200g程度である。そのままふたをして「入」ボタンを押下し「標準モード」で乾燥させてみた。

 やはり1時間半ほどするとリサイクラーは完全に無音に。しばらくしてからふたを開けると、まだ多少熱気の残る処理容器の中にはカラカラに乾いた黒い破片が確認できた。乾燥前はかくはん羽根も見えないほどあった生ごみが、乾燥後は底が見えるほどの量に減少している。もはや最初に投入したバナナがどれかもわからない状態で、手で触っても違和感がない。やや臭いはあるが、「臭い」というより「香り」といってもいい香ばしさである。これがリサイクラーの威力なのかと実感。このとき計測した電気代は14円であった。

「標準モード」で乾燥させた後の様子。すっかり量が減っている。もともとドライな玉ねぎの皮はかなり原型に近い状態これまで投入したごみに油分がないこともあり、直接触ってみるとポロポロである今回の処理にかかった電気代は14円らしい


お肉はどうなる?(脂肪分をたっぷり含んでいる場合)

 リサイクラーの使用を開始する直前に挽肉を腐らせてしまった。せっかく購入したのにすっかり失念し、気がついたら一部腐敗が始まってしまったのだ。賞味期限ギリギリの値下げ品などをまとめて買い込むと起こりやすい失敗だ。

 このような場合、いつもならごみを出すギリギリまでパックを開けずにそっとしておくか、そのまま冷凍庫に入れて凍らせ、ごみ出しの直前に他のごみと一緒にするなどして、腐敗の進行と悪臭の防止に努める。今回もそうしていたが冷凍した腐敗肉を入れてみることにした。

 先に溜めていた野菜くずの残骸はごみ袋へサラサラと捨てさり、凍った状態の挽肉をビニール袋の中で砕いて処理容器の中へ入れた。たまたま生じたバナナの皮もついでに入れ、て「標準モード」で処理してみた。

冷蔵中に存在を忘れてしまい、うっかり腐らせてしまった挽肉。ごみの日に捨てようと思い、冷凍していた処理しやすいようにビニール袋の中で砕いておく砕いた肉は他の生ごみと一緒に処理容器の中へ

 処理時間は野菜くずのときとほとんど同じである。処理中の臭いも全くなかった。違うのはふたを開けたときの状態だ。野菜だけのときとは異なり、溶け出した脂が水のように溜まっていた。腐敗が始まっていた肉は調理されたかのような色をしており、ちょっとおいしそうな臭いまでさせている。一瞬つまんでみたい衝動にも駆られたが我慢。一部をお皿に取り出してみると黒くて大きめの破片が見られたが、これはバナナであろう。

 あまりの脂にギョッとしたが、取扱説明書を見ると確かに脂が溜まることがあると書かれているので問題なさそうである。ただこの状態では取り出して捨てるのは大変だ。処理容器を洗うのも手間がかかりそうである。せっかくなのでこのままごみを追加投入し続けたらどうなるのか試してみることにした。

処理後の様子。挽肉から脂がタップリ出て水たまりのようになっている取り出したごみ。肉は炒めすぎて焦がしたような感じ。調理済みの肉の臭いがする肉以外の破片はバナナの皮と思われる


標準モードで1カ月間ため込んでみた

 挽肉の脂がこの先どうなるのか気になったこともあり、毎日さりげなく使いつつ、生ごみを処理し続けてみた。主に出るのは野菜や果物のくず。1人なので一度に出る量は少ないが、頻繁にジューサーを使用しているので、繊維質も含めかなりの量が排出されたはずである。通常は2週間程度で一杯になるらしいが、排出量が多くないこともあり、気がついたら1カ月が経過していた。

ある日のごみの例。バナナ、アボカド、トマトなどある日のごみの例。グレープフルーツの皮、セロリ、ニンジンのクズなどある日のごみの例。卵の殻、野菜クズ類

 毎日開けては溜め、気が向いたときに「標準モード」で乾燥させた。1週間もするとすっかり体が慣れてしまい手放せない存在になっていた。室内に設置したため生活にも素早く溶け込み始め、まな板の上のごみから流しの網に溜まったカスまで、無意識のうちに放り込むようになっていた。量をみてそのままスイッチを入れることもあれば、夜間に処理されるよう3時間または6時間タイマーを作動させることもあった。

 タイミングとしては2日か3日に一度の頻度だったので十数回乾燥させたと記憶する。最初はメモしていたのだが、無意識の動作がプラスされはじめるとメモが追いつかないのだ。

 1カ月後、そこにできたのは黒っぽい土のような残骸だった。処理容器からすべて取り出してみるとあり得ない程コンパクト! しかも肉の脂が消えている。もちろん他のごみに吸収されてしまったわけだが、思ったほどひどいベトつきもなく気にならない状態だ。

1カ月が経過した日の処理後の容器「標準モード」での乾燥直後だったため、一応温度を測ってみたところ77℃だった冷めたところで処理容器から中身を取り出してみる。あいにく外が雨だったので室内で行なうことにした

 固形物として残っているのはグレープフルーツの皮、ニンニクの皮、煮込みに使った月桂樹の葉など。取扱説明書の投入できない物の中に「多量の柑橘類(みかん、オレンジなど)の皮」とあったが、グレープフルーツも苦手かもしれない。白い破片は卵の殻だ。これはすごい。毎日見ていたが、改めて広げて見るとこれらがあの生ごみだったとはとても思えない。“土に還る”というより、土そのものになってしまったように見える。

1カ月乾燥させ続けた生ごみの姿ほとんどは小さく砕けているが、中には炭化した竹にも似た破片が見られる確かに土に混ぜればいい栄養になりそうだ
白い破片は卵の殻大きな破片のほとんどがグレープフルーツの皮だったカレーの煮込みに使った月桂樹の葉もそのままでてきた
これはおそらくニンニクの表面を覆っていた皮だろうこちらはもしかすると小松菜の葉かもしれない溜まっていた脂もなくなっている

 使用中、何が嬉しかったかといえば、処理せずとも入れておくだけでもメリットが感じられたことだ。ビニール袋に捨てるごみとは違い、しっかりふたをしておけば臭いがあたりに残ることもないし、虫がやってくる心配もない。ゆえに量が少ないなと思ったときは処理せずにいても大丈夫なのだ。仮に処理容器の中で質が変わってきたとしても、スイッチを1回押すだけで即処理できる。リサイクラーを使い始めてからは、ゴミ箱の周りを小バエが飛ぶ――なんて姿は全く見られなくなった。

 なお、ごみをビニール袋に移したところで銀色の不思議なものがでてきたことに気づいた。チューブの薬味の口を覆っていたフィルムらしい。おそらく流しの網に引っかかっていたのを気づかずに入れてしまったのだろう。このように知らないうちに有機物以外のものが混入する恐れもある。流しのごみを投入する前はよく確認しよう。

ごみ袋に移したところで、銀色の物体発見チューブの薬味についているフタだと判明。流しの網から入ったと思われる1カ月分なのだが、1人分のせいか、全部集めてもこれだけだった


「標準モード」と「ソフト乾燥モード」では仕上がりがどう違うか比較してみよう

 リサイクラーには「入」でスタートする「標準モード」のほかに「ソフト乾燥モード」がある。ここで気になるのが仕上がりの違いだ。「まさか半生状態なんてことはないよね?」という疑問が沸いてきた。そこで「標準モード」と「ソフト乾燥モード」用にほぼ同じ内容の生ごみを用意し、それぞれのモードで乾燥させて並べてみることにした。

今回最もそのまま置いておきたくない嫌な感じの生ごみをあえて集めて実験。どちらもほぼ同じ構成だが、「標準モード」用にはアボカドの種が1つ入っている

 用意したごみは秋刀魚6匹分(頭、内臓、しっぽ)、ブラックタイガー10匹分(カラ、尾)、アボカド1個分の皮と種、トマト1個分のヘタ、キャベツ少々、オクラのヘタ6個、じゃがいもの皮2個分、痛んだニンジン1本、ニンジンの皮1本分、生姜のカス、傷んだゴボウの切れ端少々、腐りかけの長ネギの切れ端など。これらをほぼ均等に半分ずつにわけて計量。それぞれは約335g程度となった。秋刀魚の頭、内臓、しっぽ、向いたばかりのエビの皮が混入しているため、臭い、見た目ともどもかなりイヤな感じである。普通は翌日で限界だ。

 まず「標準モード」に要した時間は約1時間25分。フタをあけると秋刀魚の香ばしい臭いが漂ってきた。完全には脱臭できなかったようだ。全体的にドライで真っ黒でバリバリである。実はこちらにだけアボカドの種が混ざっていただのが、跡形もなく消えていた。秋刀魚はもちろん跡形もない。焼き魚っぽい臭いだけがその存在を物語る程度だ。かかった電気代は15円だった。

そのまま外に放置すればいろんな生物が寄ってきそうな生ごみ約1時間25分後の様子
跡形もなく粉砕されており、どれが何だったかは分からない状態唯一アボカドの種とおぼしき皮が見つかった

 「標準モード」が終わった後、リサイクラーが冷えるのを待って再びごみを投入し、「ソフト乾燥モード」を作動させた。今回のごみの量に対する所要時間は約1時間50分。「標準モード」より30分ほど長くかかった。電気代は17円であった。

 「標準モード」がかなりパリパリのドライになるのに対して、「ソフト乾燥モード」は生ではないが「標準モード」よりは水分を残しており、ややしっとり感がある。ごみはほんの少し形が大きめに残る傾向にあり、「標準モード」より繊維質が多い印象を受けた。臭いの程度に差はないようだった。(ただし完全に脱臭してから試したわけではない)

標準モードと同じ量、同じ内容の生ゴミを投入1時間50分後。電気代は標準モードよりやや高い17円標準モードに比べるとしっとりした仕上がり。ただ、ニオイは気にならなかった
左が「標準モード」、右が「ソフト乾燥」

 両者を並べて比べてみると、一見大きな違いは見られない。ただ、確かに「ソフト乾燥モード」のほうが土なじみはよさそうなしっとり感がある。あいにくプランターを用意して家庭菜園を作る余裕はなかったのでその効果までは未確認だが、自家製の肥料で野菜を作り、残りを再び土に戻すというエコシステムができたらすばらしい。自分や家族の口に入るものだけに、こだわりたい方にはうってつけといえよう。

 ただし生成した処理物を「肥料」として販売することは禁じられているので覚えておいていただきたい。

 最終回となる次回は、使用感のまとめと、購入を検討される方にうれしい情報をレポートする予定だ。



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2009年10月15日 00:00