特別企画
〈ルンバがある暮らし〉~ルンバ4台と暮らす家電のプロの場合
(2014/12/4 07:00)
自動で室内を掃除してくれるロボット掃除機「ルンバ」。今や、掃除機の1つのジャンルとして立派に認められている製品だが、発売当初は「こんなおもちゃみたいなものがきちんと掃除してくれるわけがない」など、否定的な意見も多かったという。
それから10年、今やルンバの累計販売台数は100万台を突破しており、長く愛用している人も多い。それに伴い、数多くのライバルメーカーも参入し、これまで掃除機の主役であったキャニスター掃除機を追いやり、ロボット掃除機は掃除機の主役の座を奪おうとするほどの一大市場を形成するまでに至った。
そんなロボット掃除機のトップを走り続けるルンバを愛用している方に実際の使い方や、生活がどう変わったのかなどを、今回から2回に渡って、詳しくレポートしてもらう。既にロボット掃除機を使っている人も、やっぱりロボット掃除機は信用できないと思っている人も、ルンバのある生活はどういうものなのか、使い始めて生活がどう変わったのか、参考にしていただけると幸いだ。
1回目の今日は、モノ雑誌の編集に長く携わり、現在は家電スペシャリストとして様々な媒体で執筆を続ける「家電のプロ」滝田勝紀さんの暮らしを覗いてみよう。
すべての家電の最終型はロボットである!
我が家には現在4台のルンバが住んでいる。
リビングには最新の「ルンバ 880」、寝室には「ルンバ 780」、書斎から玄関フロアまでは「ルンバ 577」、将来子供部屋にしようとしている納戸には「ルンバ 630」。いくら複数フロアが掃除できるルンバとはいえ、我が家は3階建ての一戸建て。ルンバは1台で複数の部屋を掃除できるが、さすがに階段の上り下りはできない。仕事柄、最新の家電製品に触れる機会は多いが、これだけルンバを使っているのは、ルンバの機能に惚れ込んでいるから。こんなに多くのルンバが住み着いている家は、日本中探してもおそらくないだろう。
ルンバとの出会いは、某モノ系雑誌でシロモノ家電の担当をしている2007年頃に遡る。日本でも大ヒットしたモデル「ルンバ 500シリーズ」が発表になった時だ。当時、ルンバを見た瞬間、「これで人間が床掃除する時代が終わる!」と思い、すぐに撮影用に製品を借り、そのまま家で使わせてもらって、その後、即導入を決めた。
自分はもともと、実用系ロボットが好き(アニメのロボットではなく)だったので、その決断は早かった。今でこそ、「すべての家電の最終型はロボットである!」とたびたび発言するが、ルンバの近年の世界的大ヒットを見ていると、その考えは間違いないと確信している。
ルンバを使い始めて、キレイ好きに!
さて、そんな“ルンバー”(Youtuberならぬ)な自分が、ルンバと暮らし初めて一番変わったこと、それは床を散らかさなくなったことだ。
かつて、自分の部屋だけでなく、リビングでも、机の上だけでなく、手近なところにモノを置いて、そのまま放置するクセがあった。
まあ、特に男性だったら珍しくないかもしれないが、洋服とかもなんとなく脱いで、そのままゴロゴロ寝っ転がって、テレビを見ているうちにその存在を忘れ、フロアに置きっぱなしに。さらにその体勢のまま、うとうと寝てしまったりして、リモコンやら眼鏡がさらに置きっぱなし……そうこうしているうちに、コップやらケータイやら、あらゆるものが床に散乱しているという、絵に描いたような“だらしなスタイル”で生活をしていた。
ルンバは床を掃除してくれるものであって、部屋を掃除してくれるものではない。モノが部屋に散乱している状態では掃除できない。それはもちろん普通のキャニスターやスティック型でも同じだが、掃除を任せるためにはある程度「事前の準備」が必要だ。洋服をタンスにしまったり、リモコンを所定の位置へは戻してくれないし、それが床にあると押しのけてしまう。押しのけるだけならまだしも、洋服などは万が一ブラシで巻き込んでしまうと、その場で動けなくなってしまう。
ルンバを使い始めてからは、そういったものを自ら片付けるようになった。最初はルンバを起動させる前に、床に散らばっていたものを片付けていたのだが、毎日のことだと結構面倒くさい。どうせなら最初から散らかさなければいい。親やら先生に言われ続け、小学生でも分かるような基本中の基本が、ルンバとの共同生活で初めて身に付いた。
よく「ルンバを使ってなにが一番良かったですか?」とコメントを求められるが、その時はいつも、ルンバが部屋をきれいにしてくれると同時に、一緒に住む人が床にモノを置かなくなったり、ひいてはきれい好きになる! と答えるようにしている。それが紛れもない事実だと自ら体感しているからだ。
ルンバのために生活が変わる?
たしか「ルンバ 700シリーズ」が発表された時だっただろうか。発表会で来日したアイロボットのCEOコリン・アングル氏にインタビューした際に、こんな質問をしたことがある。
「ルンバは使えば使うほど、部屋をより効率的に掃除できるようになる気がするのだけど、やっぱり部屋の構造を覚えていたりするんですか?」
コリン氏の答えはノーだった。
「ルンバは部屋の構造などをメモリーすることはない。それはルンバと暮らすことで、あなた自身がルンバが掃除しやすいように、家具の位置に気を使ったり、電源コードなどを床にそのまま這わせなくなったりしているだけ。あなた自身どんどんルンバのために変わっていっているんだよ」と。
仕上がりに感動
2012年に娘が生まれるまで、夫婦だけで生活していたので、2人とも外出する際には、必ずルンバを動かしていた。それだけで、帰宅した時の室内がとてもきれいになっている。リビングのラグマットをみると、ルンバが一生懸命に何度も何度も、右から左から斜めからラグマットの上を通ったタイヤ痕のようなものがついている。
それを見るたびに、「ああ、今日も部屋をきれいにしてくれたんだな」と安心するし、それ以外のフローリング部分にしても、驚くほどきれいになっている。
毎日掃除機がけをするという人はいるかもしれない。しかし、ラグマットを何往復もしているだろうか。ルンバの仕上がりのレベルはかなり高く、自分など到底かなわない。
いくらきれい好きな人だって、毎日掃除だけをしていればいいというわけではない。掃除以外にもやることはいっぱいある。毎日、このきれいさをキープし続けることは難しい。
それに対し、ルンバは当たり前だがロボットだ。床の掃除をする目的だけに存在する。ボタンを押すだけで、あとはサボることなく、徹底的に部屋中を掃除し続けてくれる。疲れただの休みたいだの、不平不満を口にすることはない。1回の掃除で、すべてのゴミやホコリを100%完璧にとは言わないが、90%以上のフロアは本当にきれいにしてくれる。それを日々動かし続けるということは、部屋のきれいさは100%へどんどん近づいていく。感情があり、気分によって動きが変わる人間が毎日やるより、確実にきれいになる。
子供が産まれてからはスティック掃除機やブラーバとの併用で
ただ、娘が生まれてからは、少しルンバとの距離が遠くなったのは事実だ。生まれたばかりの娘が寝ている時などは、なかなか音が大きいし、動かせない時期もあったからだ。また、娘がつかまり立ちから歩き出すとともに、おもちゃや本などをその辺で無軌道に散らかしてしまい、ルンバを毎日動かすこともできなくなってしまった。
しかし、娘が成長して、外に連れ出すことができるようになってからは、前以上にルンバの恩恵を受けているように感じる。子供がいると、丁寧に掃除機をかけることもままならないが、ルンバならば娘を連れて公園に行っている間に部屋をピカピカに仕上げてくれる。散らかったおもちゃや本は、ひとまずソファやテーブルの上などに置いて、また定期的にルンバを使うようになった。
また、今気に入っているのは、今年の夏に発売された同じアイロボットの自動床拭きロボット「ブラーバ380j」との併用だ。外出中にルンバを動かして、帰ってきてから、ブラーバで床拭き掃除をする。ブラーバは動いていても静かなので、テレビを見ている時に使っても、音が一切気にならないし、フローリングがビックリするほどツルツルに光り輝いている。特に夏の間はラグを敷かず、親子で靴下も履かずに過ごすことが多かったため、そのきれいさの違いは足裏で歴然と感じられた。ルンバとブラーバの両方を導入することは難しいかもしれないが、可能ならぜひおすすめしたい。
また、筆者宅のように子育て家庭におすすめしたいのがスティッククリーナーとの併用だ。メインとして使うのはもちろんロボット掃除機だが、例えばピンポイントで汚れているところを掃除したい場合は、ルンバのスポットモードではなく、スティック型掃除機でその部分だけさっときれいにしたほうが早いし、楽だ。
このようにルンバとの暮らしで得たことはこれまでたくさんあったが、今後はもっともっと増えるだろう。この先、ロボットとの共生が強く叫ばれる時代がやってきて、一家に一台ロボットがいるのは当たり前になるかもしれない。ルンバやその他の新しいロボット家電が各部屋に一台ずついて、家のスマート化がさらに進めば、コンシェルジュロボットが各部屋の状態を判断して、「リビングのルンバ、掃除して!」と指示を出す。そんな暮らしがきっと現実になる。
そんな時代が訪れ、ロボットとの暮らしが当たり前になっても、きっとルンバは今と同じように、しつこく、同じところを4回も5回も通って、部屋の隅々まできれいに掃除していることだろう。不平不満を言うこともなく、涼しい顔をしながら。
協力:セールス・オンデマンド