家電製品ミニレビュー
Dシェイプで隅々まで掃除する「ネイト Botvac85」
by 滝田 勝紀(2014/12/12 07:00)
北米市場では2位のシェアを持つロボット掃除機メーカー、「ネイト ロボティクス」。スタンフォード大学の起業家支援制度を利用した3名の学生が、女性が使える家庭用ロボットの開発を目的として2005年にシリコンバレーで創業した。その日本初上陸のロボット掃除機が、Botvacシリーズだ。
今回試したのは、10月に発売されたBotvacシリーズの日本最上位モデル「ネイト Botvac85」(以下、ボットバック)だ。
メーカー名 | ネイト ロボティクス |
---|---|
製品名 | ネイト Botvac85 |
購入場所 | kojima.net |
購入価格 | 69,984円 |
Botvacシリーズは、Dシェイプデザインを採用し、本体前方にはワイドブラシを配置。Googleの無人走行カーでも使われている技術「SLAM」(Simultaneous Localization and Mapping:同時に位置確認と地図化)を活用した人工知能「ボットビジョン」を搭載し、規則性のある直線的なパターンでシステマティックに掃除する。
従来のロボット掃除機をしっかりと研究し、弱点を解消することで、ユーザーが求めたい性能が網羅されている印象。具体的には、部屋の隅まで掃除したいというニーズを反映し、サイドブラシと外側10㎜まで伸びるセンターブラシを組み合わせたりしている。
マッピングは、上部にある円形の部分「タレット」に設けられたレーザーセンサーで行ない、合計1800/秒のスキャニングで部屋の形や家具のレイアウトを把握する。壁ぎわ約1cmのところに沿って移動しながら、規則性のある直線的なパターン(システムナビゲーション)で掃除できる。センサーから送られてくる情報に基づき、瞬時に判断しながら移動する。シリコンバレーならではの最先端なプログラミングを搭載した1台だ。
ダストボックスは大容量の0.7L。複数の部屋を一気に掃除しても、たくさんのゴミを集塵できる。上面から取り出せるので、ゴミを捨てやすい。さらに絨毯用のブレードブラシと、フローリング用の二重コンボブラシを同梱。ブレードブラシは、ゴミを叩いて浮かせたところを吸い取る。このあたりはシンプルな考え方だが、非常に好感が持てる。
ランダムタイプに動く代表的なロボット掃除機に比べ、省エネで効率的なスタイルで広いエリアも掃除できる。具体的には1部屋あたりを約1/4ほどの時間で掃除でき、2LDK程度の間取りであれば、15~20分で完了するイメージとのこと。
次々に部屋を移動していくので、広い面積を掃除することも可能だ。オートスケジュール機能で毎日の掃除を設定しておけば、ドアを開けておくだけで自動的に廊下に出て、次の部屋を掃除していく。段差も2㎝程度なら乗り越えるほか、廊下も1つの部屋と捉えて同様に掃除する仕組み。最高3回までの連続掃除が可能な自動再開機能も搭載され、広めのマンションにはうれしい機能だ。
2歳の娘が派手に散らかすハードルの高い環境でチェック
それでは、実際に動かしてみよう。現在、我が家は2歳の娘が安全に遊べるよう、18畳のLDKの4畳ぐらいにプレイマット(保護マット)を敷きつめている。床面はフローリング、プレイマット、さらには大きめのラグマットが配置され、種類が多彩。段差や隙間も数多く存在する。
なおかつ、娘が張り切って散らかすため、予想外の小物が予想外の場所に散在するなど、ロボット掃除機にとっては非常にハードルが高い環境だ。
とはいえ、SLAMを搭載したBotvacはさすがに賢いのか、フロント部のタレットを回転させながら、ソファやダイニングテーブル、さらにはチェストなAVラックなどをしっかりと把握している様子。マッピング機能を搭載していないランダムモデルと比較した場合、かなり短時間で広いエリアを1回ずつ通りながら掃除していた。
だが、さすがにそれで、すべてのゴミを取れていたかというと、正直、期待通りに取れていない場所もあった。そのあたりは、ルンバの方が優秀。今回のモデルは日本初上陸のモデルということで、今後の進化にも期待したい。
その後、連続して何度か動かしてみると、環境が変わらないにも関わらず、1回目とは明らかに違う軌跡で動いているのが分かった。具体的には1回目は、部屋を東西方向にジグザクに動いていたのに、2回目は南北方向にジグザグに動くようなイメージだ。これについて、正しく動いているのか、自信がなかったので、実際にその点についてメーカー側に確認したところ、以下のような返答があった。
「まったく同じレイアウトの部屋でも、掃除する方向を縦と横に分けて意図的に変更し、前日に取りきれなかったゴミも方向を変えて取りきれるように調整しています」
たしかに、1回目と2回目ではそれぞれ通る場所が微妙に違っていて、1回目には行き着いたのに2回目にはそこに行かなかった、逆に1回目は行かなかったのに、2回目はそちらに行ったみたいな動きにばらつきが感じられた。これは、複数回でフロア全体をキレイにするという動作パターンに基づくものだったのだ。
我が家のキッチンには袋小路のように行き止まりなのだが、そこに果敢に入り込み、掃除しながらも、迷わず出てくるところなどは、人工知能の精度や潜在能力の高さが感じられた。
Dシェイプでスムーズに動き、角までしっかり掃除
他のロボット掃除機にはない、Dシェイプという形も有効だと感じた。部屋の隅っこだけでなく、リビングテーブルの下で、イスの脚がたくさん並ぶような空間でも、スムーズに動き続けるように見えたのだ。とはいえ、部屋全体を完全に網羅することはなかった。日々生活する中で、家具の位置などが変わっていることも関係あるかもしれない。
また、ブラシについては、我が家の場合はフローリング用の二重コンボブラシが向いていた。というのもフローリング上で、じゅうたん用のブレードブラシが回ると、かなりうるさく、せっかくの静音性の高さが台無しに。しかも、ゴミを取るという意味でもこの二重コンボブラシの方が優秀だ。
さらに、例えば、床にペットの飲み水用の皿が置いてあったり、大切なフィギュアなど、掃除をされたくない場所は、磁気テープで区切ることで、そちらには決して進まないのは安心だ。ユーザーにとっては、赤外線などにより見えない壁を作るタイプもあるが、やはり視覚的に線がみえるほうが、より安心度が高い。しかも、磁気テープはカットできて、複数箇所を遮蔽することができるほか、別売りで買い足せる。
ゴミ捨てについても、大容量であることはもちろん、本体上からダストボックスだけ取り出せて、そのままゴミ箱へ捨てられるのは便利だ。
本体のデザインについては、モードなどを変更する液晶モニターの、漢字のフォントなどがやや安っぽく見えた。あと、タッチ式のボタンの反応がやや悪いのが気になった。
ボットバックシリーズは、家でほかの家事をしている時に、ついでにロボット掃除機を動かしてフロア掃除をしたいという人向けかもしれない。音も静かで、なおかつ時短で掃除をしてくれるのでおすすめだ。
また、Googleの無人走行カーで使われているなど、新たなテクノロジーに興味がある人もぜひどうぞ。