家電製品ミニレビュー

象印マホービン「極め炊き NP-RB05」

~3合炊きでも“ふっくらもっちり”ごはんが味わえる炊飯器
by 正藤 慶一

「炊飯器を買いたいんだけど、何がいいかしら?」


象印「極め炊き NP-RB05」
 先日実家の母親から「炊飯器を買いたいんだけど、何がいいかしら?」という相談を受けた。なんでも長年使ってきた炊飯器が壊れてしまい、とりあえず近所の電気店で安い炊飯器を用意してはみたものの、あまりおいしくなかったとのことだった。母と同居する姉は、あまりの味の違いに、ごはんを食べるのを拒絶しているらしい。

 実家に帰ってその買い換えた炊飯器を見たところ、実売6千円程度の格安マイコン式炊飯器だった。以前使っていた炊飯器はIH式だったため、さすがに味に差が出てしまったようだ。壊れた炊飯器と同じ製品を買い換えようにも、すでに捨ててしまったためメーカーも品番も不明。このままではせっかくのコシヒカリがもったいない。

 そこで、この場合どんな炊飯器を選んだら良いのかと熟考した。まずは、利用する人数を考えてみる。実家は母と姉の2人でいることが多いため、コンパクトな3合タイプで十分だろう。次に炊飯方式。以前使っていた機種よりもランクを下げることはできないので「IH式」は絶対条件。ただし、以前よりも美味しく炊けないことがないよう、「IH式」に加えて「圧力炊飯」機能を搭載した機種を選んでおきたい。というわけで、キーワードは「3合炊き」「IH式」「圧力炊飯」だ。

 しかし、 高級機種が多い5合炊きタイプならIH式で圧力炊飯を備える機種は多くあるが、3合炊きでIH式・圧力炊飯を採用するものはほとんどない。どうしようかと思ったが、そういえばその3点を備えた炊飯器を、以前ニュース記事で取り上げたことがあった。象印マホービンの炊飯器「極め炊き NP-RB05」だ。これなら、3合炊きでIH式・圧力炊飯のすべてを備えている。さらに、「熟成炊き」という、特別な炊飯モードも搭載されている。今回はこれを実家に持っていって、母親の機嫌を取ってみようと思う。


メーカー象印マホービン
製品名極め炊き NP-RB05
希望小売価格52,500円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格30,970円

高級機種で搭載されていた「熟成炊き」モードを、3合タイプにも搭載

3合炊きのマイコン式炊飯器(右)と比較。サイズはほとんどかわらない。なお、右の炊飯器は無印良品の「ECJ-MJ30」。以前レビューで紹介した三洋の3合炊きマイコン式「ECJ-AP30」のOEM版だ
 本体サイズは230×320×195mm(幅×奥行き×高さ)で、以前レビューで取り上げた三洋の3合炊きマイコン式「ECJ-AP30」は249×312×195mm(同)とほぼ同サイズ。3合炊きとしてはまあ普通のサイズといったところか。同社の5合タイプの最上位機種「NP-LT10」は250×370×210m(同)、1升炊きの「NP-LT18」が280×400×245mm(同)なので、5合/1升炊きと比べればもちろん小型になる。

 比較的小型の3合炊きではあるが、「IH式」+ 「圧力炊飯」がともに搭載されているのは魅力だ。この2つについての詳細は、連載「現代家電の基礎用語」を確認していただきたいが、簡単に言えば、IH式は内釜全体を温めることで加熱ムラを抑える炊飯方式のこと。圧力炊飯は、炊飯中に釜の内部に圧力をかけることで、沸点を高めて米の旨味を引き出す効果があるとされている。いずれも、より米をおいしく炊くための技術であることは共通している。[用語:マイコン式/IH式とは,圧力炊飯とは]

IH式とマイコン式の炊飯器を見分けるポイントは、炊飯器の釜を取り外した内部にある。写真のように、内部にヒーターが顔を出していないのがIH式となる
圧力機能も搭載。米の仕上がりを「しゃっきり/ふつう/もちもち」に切り替えられる「3段圧力」を採用する釜内部に圧力を掛けるため、フタに搭載されている圧力ユニット。使用後は毎回洗う必要がある

 本製品ではさらに重要な機能がある。これまで同社の5合炊きクラスの高級機種で搭載されていた「熟成炊き」モードを、3合炊きで初めて搭載したのだ。このモードとは、通常よりも予熱時間を約20分することで米の芯まで吸水を促し、さらに沸騰~蒸らし時間を約5分延長することで、釜内に溶け出した糖分を、米の表面に吸着させるというもの。これにより、米のうまみ/香り/粘りをアップし、ふっくらもっちりとしたごはんに炊き上げることができるというもの。炊飯時間は長くなるが、その分おいしく炊くことができるわけだ。

 このほか、蒸らし行程で圧力をかけてごはんをしゃっきりと仕上げる「うまみ圧力蒸らし」という機能や、内釜の内部を真空構造にすることで熱を逃がしにくくし、ごはんをふっくらと炊きあげる「真空かまど釜」を用意するなど、ごはんをおいしく炊くための機能が満載されている。

釜はごはんをふっくらと炊きあげる効果のある「真空かまど釜」を採用する操作パネルと液晶部分

1時間半は長い……が、味も食感も大満足! 米本来のおいしさが味わえる


説明書の炊飯時間の説明部分。通常の炊飯は「約55分~1時間」だが、熟成炊きは「約1時間20分~1時間30分」と長い
 少し説明が長くなった。お腹が空いたので炊飯に移ろう。米を研いで水を入れ、炊飯コースを選択して「炊飯」スイッチを押す。このあたりは普通の炊飯器と同じだ。炊飯コースは期待の「熟成炊き」にセットした。

 炊飯中は基本的には静か。圧力を掛ける音や釜内部の空気を抜く音が若干するものの、あまり気にならない。しかし、それにしても長い。説明書を見ると、通常の炊飯が「約55分~1時間」であるのに対し、熟成炊きの炊飯時間は「約1時間20分~1時間30分」。わかってはいるもの待ちきれず、炊飯器の液晶の残り時間表示を、家族全員でのぞき込んでしまった。図らずも家族が一つになってしまった瞬間である。

 「きらきら星」のメロディとともに、炊飯が完了。フタを開けると、何ともおいしそうな香りが漂ってくる。ごはんの粒がひとつひとつ立っているようで、見た目も良い仕上がりとなっている。

 それでは、いただきます……うん、これはうまい! まず食感だが、ふっくらとしていながら、ごはん粒が潰れておらず、ちょうど良い弾力がある。味についても満足で、噛むごとに米の味が口の中に広がってくる。新潟の農家の娘として生まれた母親も「お米本来のおいしさがする」と絶賛。頑なにごはんを食べなかった姉も「おいしい!」と脱帽。しまいには「過不足のないふっくら感がある。今までのお米はギューッと潰れていて、例えるなら“せんべい布団”。でもコレは“羽毛布団”」という言葉まで飛び出た。どうやら満足していただけたようだ。

できあがり。炊飯時間が長かったこともあって、感慨もひとしおごはんはふっくらとしており、なおかつ米本来の甘みがある文句のない仕上がり。おいしい!ごはんをアップで撮影。一粒一粒が立っており、なおかつもっちりとした弾力がある

 さて、この後に「ふつう」モードで炊いてみたところ、これもまたおいしかった。しかし「熟成炊き」に比べると、どうも“ふっくら”感と“もっちり”感に欠ける気がする。やはり「熟成炊き」は、時間を掛けただけのおいしさが得られるようだ。

 また、以前使っていたマイコン式「ECJ-AP30」との比較でも、今回のNP-RB05の方が味も食感も確実に上だと感じた。IH式のため、しっかりと内部まで熱が通っているためかもしれない。まあ、マイコン式はその分価格が安いため、当然といえば当然だが。

 マイナス面は先ほどから強調しているとおり、「熟成炊き」の1時間20分~1時間30分という長い炊飯時間だ。ストレスなく使うためには、予約炊飯機能をうまく活用しておきたい。

 また、5合炊きのNP-LT10/18では、内釜の水が沸騰する前にも圧力を掛ける「パワー圧力」機能や、釜全体を遠赤外線で包む「真空遠赤釜」「遠赤内ぶた」といった、ごはんをさらにおいしく炊くための機能が搭載されている。家族の構成人数が多い場合や、“最高級の味”を楽しみたい場合には、大容量タイプを選ぶのが良いだろう。

味にこだわる少人数の家庭にピッタリ


 実売価格は4月8日現在で3万円前後と、5合炊きの5万円前後よりも安く、価格の面でもメリットがある。少人数の家庭でおいしいごはんを食べたいという人はもちろん、今使っている安い炊飯器の味に満足できない人、普段の食事をもうちょっと楽しくしてみたい、といった人に、自信を持ってお勧めしたい。食卓ではきっと「今までのごはんと違う!」といった会話が弾むことだろう。



2009年4月10日 00:00