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第15回:炊飯器の加熱方式「マイコン式/IH式」とは



家電量販店では、マイコン式とIH式の違いが分かるように陳列されているケースがよく見られる(ビックカメラ新横浜店。中央の棚がIH式で、左がマイコン式)
 家電量販店の炊飯器コーナーには様々なメーカーの製品が多数並んでいますが、よく見ると、5千円~1万円程度の製品が並ぶ棚と、それよりも価格が比較的高く、中には10万円を超えるような高価な製品が並ぶ棚に分かれていることに気づくことでしょう。

 これは、現在市販されている炊飯器において、ごはんを炊く際の2つの加熱方式があることを表しています。その2つの加熱方式とは、電熱ヒーターを利用する「マイコン式」と、電磁力を用いて釜全体を加熱する「IH式」のことです。前者の方が比較的安価ですが、後者は高価格・高付加価値製品がラインナップに並ぶ高級タイプとなっています。

 今回はこの2種類の加熱方式について解説しますが、その違いを簡単に述べると、マイコン式は炊飯時に釜の底面だけを加熱しますが、IH式は釜全体を熱するという違いがあります。そのためIH式の方が、より熱が釜に均一に伝わりやすくなるため、加熱ムラのないおいしいごはんが炊ける仕組みと言えるでしょう。


電熱ヒーターで釜底を加熱するマイコン式

松下電器産業が1979年に発売した「SR-6180FM」が、日本で最初のマイコン式炊飯器(画像提供:松下電器産業)
 まずはマイコン式について見ていきましょう。炊飯器底部に取り付けられている電熱ヒーターで内釜を加熱し、炊飯・または保温を行ないます。電気コンロの上に金属製の釜を置いて、ごはんを炊くような構造と考えていいでしょう。

 しかし、なぜ電熱ヒーターを使う電気炊飯器をマイコン式炊飯器と呼ぶのでしょうか。

 実は、マイコン式以前の電気炊飯器は、炊飯中に内釜が特定の温度に達すると、電熱ヒーターに供給される電気をストップするという、単純な制御によって炊飯を行なっていました。しかし、その方法では正確な温度制御が難しく、炊きムラの発生が避けられませんでした。

 この欠点を解消するために取り入れられたのがマイコンです。マイコンが炊飯時間と温度をコントロールすることで、炊きムラを抑制でき、さらには保温も可能になりました。

 日本で初めてマイコン制御を搭載した電気炊飯器は、1979年に松下電器産業が発売した「SR-6180FM」という製品です。それ以降、各社ともマイコン制御を採用するようになと、マイコン式炊飯器という呼び名も一般化され、現在でも受け継がれているというわけです。


以前家電製品レビューにて取り上げた三洋電気「ECJ-AP30」はマイコン式 炊飯器の底部にヒーターが備えられており、ここで発生した熱でごはんを炊くのがマイコン式(写真は三洋電気「ECJ-AP30」)

電磁誘導加熱で釜全体を直接加熱、大火力でムラなく――IH式

業界初のIH式炊飯器「SR-IH」シリーズ。これも松下電器産業が発売した
 IH式の電気炊飯器は、電磁誘導加熱(Induction Heating、略してIH)という仕組みを利用して炊飯や保温を行なっています。この仕組みはIHクッキングヒーターの解説で説明しているとおり、電磁力によって金属自体を発熱させるという加熱方式です。

 IHクッキングヒーターでは、この電磁誘導で金属製の鍋を直接加熱するという仕組みでしたが、IH式炊飯器では内釜自体を直接加熱し、炊飯・保温を行ないます。そのためIH式炊飯器の内釜は、素材に金属などIHと相性の良い素材を使用しています。

 ごはんをおいしく炊くポイントは「強い火力で一気に加熱すること」ですが、マイコン式は釜底から伝ってくるヒーターの熱を使っているため、直火に匹敵する火力を得るのはなかなか難しいのが現実です。しかしIHならば、炊飯器の底面だけでなく側面や上部(フタ)にも設置することで、電熱ヒーターよりも遥かに大きな火力を得やすなります。これにより、マイコン式よりもさらに加熱ムラのない炊きあがりが実現できるというわけです。

 またIHでは、発熱量の調節が容易なことから温度管理がしやすいという利点もあり、これは玄米や麦、雑穀の炊飯や、保温にも活用できます。IHの採用は、電気炊飯器の炊飯能力の向上だけでなく、機能面の向上にも貢献しているのです。

 初めてIHを採用した炊飯器は、1988年に松下電器産業が発売した「SR-IHシリーズ」という製品です。


写真はIH式の松下「大火力竈釜(かまどがま) SR-SV101」。Amazon.co.jpでの販売価格は84,235円という高級器だ IH式はマイコン式のようにヒーターは存在しないが…… 本体内に張り巡らされたIHコイルが、釜を直接加熱する


少量炊きならマイコン式でもおいしく炊ける

少量の炊飯なら、マイコン式でも十分においしく炊ける(写真は東芝「RC-5NS」)
 現在では、マイコン式に代わってこのIH式が主流となっています。この理由は、やはりマイコン式炊飯器に比べておいしいご飯が炊けるからです。特に、5合から1升ほどと多くのご飯を炊く場合には、大火力が得られるIH式電気炊飯器を利用した方が、ムラのないおいしいご飯が炊けるのは間違いありません。

 しかし、3合以下の少量炊きの場合には、IH式にこだわる必要は少ないと言っていいでしょう。というのも、ごはんを炊く量が少なければ、マイコン式の火力でもムラなく加熱できますので、IH式と比べても遜色のないおいしいご飯が炊けます。

 また、コスト面でもマイコン式が優れています。同じ容量で比較した場合、IH式よりもマイコン式の方が消費電力が少なく、また初期購入費も安価な傾向にあります。3合以上のご飯を炊くことがほとんどない少人数の家庭なら、マイコン式も選択肢として十分魅力があると考えて良いでしょう。




「マイコン式/IH式電気炊飯器」の、ここだけは押さえたいポイント

・マイコン式は電熱ヒーターで鍋底、IH式はIHヒーターで内釜全体を加熱し炊飯する
・IH式の方が高価だが、おいしいごはんが炊ける
・マイコン式でも少量炊きなら十分おいしい。省電力性にも優れる

2008年8月27日 初版




URL
  炊飯器 関連記事リンク集
  http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/rice.htm

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2008/08/27 00:02
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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