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極め炊き NP-LS10
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象印マホービン株式会社は、同社が9月21日より発売するIH炊飯器「極め炊き NP-LS」の説明会を、報道関係者向けに行なった。
「極め炊き NP-LS」は、同社のラインナップの最上位に当たるIH式炊飯器。希望小売価格は、5.5合炊きの「NP-LS10」が97,650円、1升炊きの「NP-LS18」が100,800円。
米のうまみを「徹底的に引き出す」ことを主題としており、そのために「パワー圧力」という炊飯方式を採用したのが特徴。
「パワー圧力」は、内釜の米が沸騰する前の“中パッパ”と呼ばれる段階において、「加圧エンジン」と呼ばれる小型のポンプで外気を取り込み、米に圧力をかけるというもの。米のα化(糊化)が始まる70℃の段階から圧力がかけられるので、米に水がより浸透し、米の甘みのもとである還元糖の量を約20%増加させるという。
ちなみに、従来までは沸騰時の蒸気を使って圧力をかけていたが、“中パッパ”行程では沸騰していないため、圧力がかけられなかった。商品企画部 マネージャーの渡利康雄氏は「これまでは加熱しないと加圧できないというジレンマがあった。本製品では、沸騰と圧力を切り離したのが特徴」とコメントした。
蒸らし段階においても、この加圧エンジンが作動。2回に分けて圧力をかけることで、余分な水分を飛ばして、米の粘り、弾力をアップさせている。
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「パワー圧力」の行程。従来では圧力がかけられなかった段階に、圧力がかけられるようになった
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「極め炊き」とスケルトンモデル
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新たに搭載した「加圧エンジン」。外気を取り込むことで、内釜の水の沸騰に関係なく、圧力がかけられる
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甘みのもととなる還元糖の量は、パワー圧力なしの状態と比べて約20%アップした
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象印マホービン株式会社 商品企画部 マネージャー 渡利康雄氏
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また、内釜にはステンレス・アルミ素材の「真空かまど釜」を採用。ステンレスで熱を受けて、熱伝導率の高いアルミニウムでその熱を伝導する役割を果たしている。側面に真空層を設けることで、魔法瓶のように熱を外側に逃がさない構造となっている。
さらに内ブタには、本物の炭と同等の高い遠赤放射率を持ったセラミックを施した。「真空かまど釜」との相乗効果により、内釜の熱を逃がさず、ご飯を全面から包み込むように炊き上げられるという。
同社の常務取締役の石田信行氏は、業界全体の炊飯器の売上台数が650万台のうち、高価なIH炊飯ジャーが60%強の割合を占め、他社でも高級機種が好調であることに触れ、「少々高くてもおいしいご飯が食べたいという声が高まっている」と、消費者の動向に触れた。
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真空かまど釜。重量は1.05kgと軽め
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側面に真空層を設けることで、魔法瓶のような保熱効果がある
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内ブタには、本物の炭と同等の遠赤放射率が特徴のセラミックコーティングを施した
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「真空かまど釜」との相乗効果で、内釜の熱を逃がさずに炊き上げられる
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セラミックコートの有無による熱の差
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内フタの内部。内釜に圧力をかけるための装置が備わっている
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象印マホービン株式会社 常務取締役 石田信行氏
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● 圧力をかけることで、米の内部まで水が浸透
説明会には、東京農業大学 応用生物科学部 生物応用科学科 食料資源理化学研究室 教授で、農学博士の高野克己氏が登場。高野氏は、米の粘りや硬さについて研究しており、これらが炊飯過程における酵素改良に大きく影響することを明らかにしている。象印では、米のおいしさを客観的なデータで表現できるように、東京農業大学に炊飯器の実験を依頼している。
高野氏は、プランジャーという機械を使って米をつぶした実験において、圧力炊飯の方が、通常の炊飯よりもやわらかく、しかも粘り気があるという調査結果や、時間がたってもおいしさが持続するという「老化耐性」もアップしたというデータも公開。高野氏は、炊飯のポイントとして米の浸水時間を挙げ、「洗米して30分~2時間は、米を水に浸しておいた方が良い。そうしないと中まで水が到達しない」とコメント。そのうえで、「米に圧力を掛けることで、米の内部まで素早く水を与えられる」と、圧力炊飯の効果を評価した。
そのほか、「パワー圧力」にて、粘りや甘みがアップしたグラフも公開。さらに、通常のIH炊飯器との実食テストにおいて、味・香り・外観において、「パワー圧力」の方がおいしいという調査結果も紹介した。
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東京農業大学 応用生物科学部 生物応用科学科 食料資源理化学研究室 教授 高野克己氏
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圧力式炊飯器と、IH式炊飯器で炊いた米の、硬さと粘りを示すグラフ。圧力式の方が優れた数値を示した
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圧力式では水分が均一に分布されるため、食感が良いという
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圧力式で炊いた米は、IH式よりも、時間の経過による劣化が少ない
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「パワー圧力」の有無による食味テストの結果、香り/外観/味/総合の4部門で、IH式よりも高い評価を得た。弾力のみ、IHと同じ結果だった
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● 「圧力式を11年前から採用」
説明会では、渡利氏による、お米をおいしく炊くための解説も行なわれた。その中で渡利氏は、「お米」「洗い方」「炊飯ジャー」の3点をポイントとして挙げた。
米は、粘り気があり弾力のあるジャポニカ米と、粘り気が少なくパサパサとしたインディカ米の2種類に分けられ、その生産量の比は1:9と、世界的にはジャポニカ米は少数派である。そのジャポニカ米の中で圧倒的シェアを占めているのが、粘りと弾力が特徴のコシヒカリ。同社でもテスト段階にてコシヒカリを使用しているとのことで、「コシヒカリをいかにおいしく炊けるかを、日々研究している」(渡部氏)とのことだ。
次に「洗い方」。米は素早く洗わないと、ヌカの匂いが米にしみてしまって、おいしくなくなるという。渡利氏は「最初の水を手早く換えてやることが大きな要素。3カップの米は2~3分で手早く洗うこと」を注意点として挙げた。また、炊飯に使う水にミネラルウォーターや浄水器など、水道水以外の水を用いている人が、全体の4割を占めるという傾向も指摘された。
「炊飯ジャー」は、「かまどで炊いていたご飯をどう再現するか」(石田氏)が大きなテーマとのことで、ポイントとしてさらに「炊飯方式」「内釜」「炊飯メニュー」の3点に細分化されるという。炊飯方式は2種類があり、釜全体が発熱するIH式と、内釜の底だけを熱して、全体を加熱するヒーター式の2つ。IH式は、釜全体が加熱するため、ムラなく炊けるという特徴があり、各社とも「はじめちょろちょろ中パッパ……」という、おいしいご飯を炊くためのわらべ歌の手順に乗っ取って作られているものが多いという。
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米をおいしく食べるためのポイントは、「お米」「洗い方」「炊飯ジャー」の3点
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「いかにコシヒカリをおいしく炊くか」(渡利氏)を目標としているという
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圧力式の炊飯器は、象印では11年前から販売しているという
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内釜については、焦げを防ぐ「厚釜」から、内部の対流を起こして炊きムラをなくす「丸釜」へと移り変わり、現在では各社独自の釜を採用した「多様化」の時代を迎えているとのこと。渡利氏によると、内釜のポイントは「熱を逃がさない」「熱伝導率が良い」の2つにまとめられるという。
渡利氏は、高価格帯の炊飯器の宣伝コピーについて、トップコピーに、内釜を扱っているのが4社、炊飯方式を掲げるメーカーが象印を含む3社あることを挙げ、高級炊飯器の訴求ポイントが、釜と炊飯方式の2点に絞られている傾向を示した。
同氏は、「極め炊き」でも採用されている、圧力式の炊飯方式が市場に増えてきたことを指摘。現在では象印をはじめ、三洋・東芝・日立・三菱の5社が、圧力式を採用しているが、「もともとは当社と三洋が先行して販売してきた」(渡利氏)として、11年前より圧力炊飯を採用してきた歴史をアピールした。
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内釜は、厚釜→丸底釜と変遷し、現在は多様化の時代を迎えている
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ポイントは「熱を逃がさない」「熱伝導率が良い」の2つにまとめられるという
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各社の高級炊飯器では、「内釜」と「炊飯方式」を訴求する2つのグループに分けられるという
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会場では、「極め炊き」とIH式の炊飯器を食べ比べるプロモーションも行なわれた
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左が「極め炊き」、右がIH式の炊飯器で炊いた米
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通常時の操作パネルは、炊飯/機能/取消キーの3つのボタンのみ
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「機能」ボタンを押すと、各機能を操作するバックライト付きのタッチパネルが姿を見せる
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調理メニュー一覧。ケーキやヨーグルト、とうふも作れる
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■URL
象印マホービン株式会社
http://www.zojirushi.co.jp/
製品情報
http://www.zojirushi.co.jp/syohin/ricecooker/NPFT.html
ニュースリリース
http://www.zojirushi.co.jp/corp/news/2007/070808/NPLS.html
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・ 象印、沸騰前の加圧で米の甘みを引き出す高級炊飯器(2007/08/08)
( 本誌:正藤 慶一 )
2007/08/29 00:05
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