大河原克行の「白物家電 業界展望」

「本当に役立つスマート家電を提案」2013年度は本格参入

~東芝ホームアプライアンス石渡社長に事業方針を聞く

東芝ホームアプライアンス 石渡敏郎社長

 2013年度のテーマはイノベーション。その取り組みのひとつとして、本格的にスマート家電を展開していく――

 東芝ホームアプライアンスの石渡敏郎社長は、2013年度の東芝の生活家電事業の方針をこう語る。2011年度にはタイの洪水被害の影響を受け、タイの生産拠点が停止。その影響が2012年度前半まで響いたが、2012年度後半からは回復。ASEAN向けを中心に二槽式洗濯機を生産するインドネシアでの生産拠点が新たに稼働するなど、海外比率50%に向けた体制が整ってきた。

 国内においても、高級扇風機や、業界で唯一PM2.5に対応したエアコンなど、東芝ならではの商品展開が功を奏している。そうしたなか、石渡社長は、次のターゲットとして「スマート家電」を切り口に、新たなステージへと挑もうとしている。石渡社長に2013年度の同社ホームアプライアンス事業の取り組みについて聞いた。

タイ洪水被害からの完全回復を遂げた2012年度

――東芝ホームアプライアンスにとって、2012年度はどんな1年でしたか。

 一般社団法人日本電機工業会(JEMA)が発表した2012年度の国内家電市場の出荷額は、前年比0.5%増となりました。2月まではマイナス成長になると見られていたものの、これが結果として前年実績を上回ったわけですから、3月に一気に巻き返したといえます。エアコンや空気清浄機など季節商品の実売増や、大型冷蔵庫の出荷の動きが良かったのが要因ではないでしょうか。こうしたなか、東芝ホームアプライアンスは、前年比6%増となり、業界全体の伸びを上回る結果となりました。

 ただ、東芝の場合、2011年度には、タイの洪水被害によって製造拠点に影響がありましたので、その反動で伸び率が高かったという要素があります。その点で、2012年度は、被害を受けたタイの生産拠点を復活させ、同時に、海外事業強化のためにインドネシアに新たに生産拠点を作り、2012年12月から稼働させたというのが、東芝にとって大きなトピックスです。インドネシアの工場では二槽式洗濯機を生産し、インドネシアをはじめとするASEAN地域を中心に出荷を開始しています。タイの洪水影響があるとはいえ、洗濯機は、前年比2倍の成長を記録していますし、2013年度下期には洪水前の状況にまで業績が回復しています。

――2012年度の東芝の生活家電商品は、どんな点が評価を受けたと自己評価していますか。

 やはり、イノベーティブ(革新的)な商品に対する評価が高かったといえます。新たな消費者、新たな市場を作るという意味でうまくいったと。例えば、高級扇風機として発売した「SIENT+(サイエントプラス) F-DLP300」ですね。これは扇風機という枯れた商品分野で、新たな需要を創出した商品です。もともと1万円を超えるものは売れないという市場において、4万円という価格で販売。7枚羽根による快適性と、DCインバーターモーターを使用することで消費電力を2分の1以下にまで抑えたという点が評価されたもので、これまでにはない新たな市場を創出できたといえます。

 また、掃除機でも、フィルターレスのサイクロンクリーナーとして、「TORNEO(トルネオ) Vシリーズ」を発売し、これも高い評価を受けました。基本性能の高さに加えて、本体が2.5kg、ホースが1.4kg。合計で3.9kgと、前モデルに比べて30%もの軽量化を実現した点が大きな差異化になりました。

 さらに、米からパンを作れるホームベーカリーの「SuiPanDa(スイパンダ)」も、音が静かで、もちもち感のあるパンが作れる点が評価されています。東芝が持つホームベーカリーのノウハウと、餅つき機の「もちっ子」の実績を組み合わせて、ご飯を炊くところから作ったらどうかという発想で生まれたものです。

高級扇風機「SIENT+(サイエントプラス) F-DLR300X」。写真は4月25日に発売されたばかりの最新モデル
「TORNEO V(トルネオ ヴイ) VC-SG512」
白米からパンを焼き上げるホームベーカリー「SuiPanDa ABP-R100」

 また、デザイン性にこだわった商品を投入し、これが高い評価を受けた点も2012年度の成果のひとつです。ドイツの「iFプロダクトデサイン賞2013」では、コードレスアイロンの「TA-FVX610/TA-FV410が、最高賞である金賞を受賞したほか、ドラム式洗濯乾燥機やアジア市場向け二槽式洗濯機が入賞。日本でもエアコンのEDRシリーズがグッドザイン賞を受賞。そのほかにも当社商品が、海外のデザイン賞などで表彰されています。

ドイツの「iFプロダクトデサイン賞2013」で金賞を受賞したコードレスアイロン「TA-FVX610」
同じく金賞を受賞した「TA-FV410」

 一方で、日本のお客様にとって、大きな関心は省エネです。東芝では、省エネに対する取り組みを強化し、東芝の家電商品のほぼすべてに、ecoモードを搭載しています。エコという観点で商品の充実を図ったことも、2012年度の成果だといえます。

――イノベーティブな商品を投入したという点では合格点ですか。

 東芝の企業スローガンは、「Leading Innovation」であり、そのスローガンは、社員のすべての名刺に刷り込んでありますから(笑)。東芝は、常に、イノベーティブな商品を出し続けなくてはならない。とりわけ、2012年度は、付加価値型、市場創造型の商品の投入を心がけてきた1年であったといえます。ただ、この姿勢は、常に心がけていかなくてはなりませんから、合格点に達したという評価はなかなかできないですね。すべての商品において、もっとイノベーションを起こさなくてはならないということを考えると、まだまだやることはたくさんあります。

海外売上比率を50%に高める

――一方で、2012年度における課題は何でしたか。

 今年に入ってからの円安傾向は、白物家電業界全体に響くことになりますが、こうした環境変化に対する備えが弱かったという反省はあります。それを打開するためにも、海外売上比率をもっとあげていく必要がある。現在、ホームアプライスンス事業における海外売上比率は約30%ですが、これを早い時期に50%にまであげていきたい。時期は明確にはできませんが、イメージとしては3年ぐらいを目途に、ここまで引き上げたいと思っています。

 海外売上比率は、他社に比べてまだ低いですし、国内ビジネスを主軸にしていると為替の影響を受けやすくなる。実は、海外ビジネスは一昨年から拡大する計画でしたが、タイの洪水の影響があり、本来、加速すべきところで、海外生産体制のリカバーをしなくてはならず、ステップバックしたという経緯があります。その点で、当初計画よりも遅れが生じています。

――海外売上比率50%に向けては、なにがポイントになりますか。

 ひとことでいうと、「地産地消」です。2012年12月から生産を開始したインドネシアの洗濯機工場はそのいい例です。インドネシアには約2億4,000万人の人口がいますが、洗濯機や冷蔵庫の普及率が低い。洗濯機は、まだ10%程度の普及率です。こうした成長が期待できるマーケットに工場を作り、地産地消をやっていくことは、海外売上比率の上昇に、非常に有効な手段となります。ASEAN、中国が成長のポイントであり、こうした市場に向けた展開を強化していくことになります。

 また、掃除機、炊飯器、電子レンジといった小型家電の分野でもビジネスチャンスがあります。これに向けて、中国、タイの工場の生産能力を強化していきたいですね。

 さらに重要なのが、現地マーケティングの強化です。東芝では、マーケティングセンターを中国およびシンガポールに設置しています。また、東芝が各国に持つ販売会社に、商品企画やマーケティングの人材を配置し、これをシンガポールのマーケティングセンターで取りまとめるといった体制を作り上げました。ここには、日本からも支援を行う体制を取ります。

 マーケティングセンターでは、各国において、現地の家庭を調査し、どんな環境で、どのように生活家電商品を使用しているのかを調査し、現地のライフスタイルや文化を知り、それを商品企画に生かしています。

 たとえば、1ドア冷蔵庫が主流であるタイ市場向けに、デザインを重視し、カラーバリエーションを揃えた商品展開をしています。この冷蔵庫は、タイにある大学との共同開発による「TWISTシリーズ」という商品で、日本での発想にはない、カラーバリエーションを実現しています。タイの人は色に敏感ですから、そうした需要にあわせたものです。東芝のタイの工場でも、曜日によって違う色のポロシャツのユニフォームを着るといったようなことをしていますからね。同製品は、現地マーケティングによって実現したローカルフィット型商品として成功を収めたもので、2013年初めには、2ドアにもラインアップを広げました。こうした現地の趣味趣向を反映した商品づくりは、ますます重要になってくるでしょう。

2013年1月末から発売された2ドアシリーズ
現地マーケティングを基に開発された1ドア冷蔵庫「TWISTシリーズ」

 2013年度以降は、中国、シンガポールのマーケティングセンターの増員を図りたいと考えていますし、グローバル社員の採用も積極化したいと思っています。とくにアジアでのグローバル社員の強化を加速し、海外の大学を卒業した外国人社員を採用することにも取り組みます。これは、これは日本人社員にとって刺激にもなると考えています。

 私自身、16年間、海外に駐在していましたから、育てた部下が他社に引き抜かれているということも何度も経験しています。だからといって人を育てないというのでは、企業としての成長が止まりますし、東芝としてのカラーが醸成できない。東芝は、これからも人の採用と教育を同時にやっていく姿勢には変わりがありません。

 一方で、ここにきて、「ローカルフィット・リバーシング」という取り組みを開始しています。

――「ローカルフィット・リバーシング」とはなんですか。

 これまでの商品企画は、日本で作ったものを海外に輸出するという仕組みでした。しかし、いまは、海外でヒットする商品が、海外で生まれるようになっている。それを、今度は、逆に日本に輸入するといった動きです。例えば、TWISTシリーズも、デザインに特化した1ドアの小型冷蔵庫として、日本の単身赴任や小世帯向けの商品として提案できないか、ということも考えています。2013年度中にどこまで形にできるかはわかりませんが、前向きに検討しています。今年は、ローカルフィット・リバーシングの取り組みを一歩前に進めていきたいですね。

2013年度も引き続き「ママゴコロ家電」を提案

東芝のホームアプライアンス事業の基本として掲げる「ママゴコロ家電」。このコンセプトのベースは「エコ! らく! かしこい!」で構成されるという

――東芝の2013年度のホームアプライアンス事業への取り組みはどうなりますか。

 東芝のホームアプライアンス事業の基本にあるのは、「ママゴコロ家電」です。この考え方のベースは、「エコ! らく! かしこい!」で構成されます。まずエコを押さえる。この姿勢は変わりません。国内においては、引き続き電力供給に余力があるわけではありませんし、電気料金上昇の懸念もあります。日本のお客様は、家電の消費電力に対して、非常にセンシティブになっている。つまり、「エコ」は基本であり、モノづくりはここからスタートしなくてはならいない。省エネは生活家電製品にとって、やって当たり前という取り組みだといえます。そのなかで、当然のことながら、東芝は、省エネナンバーワンを全商品で狙っていきます。

 また、環境はグローバルの課題ですから、これにあわせて省エネ機能が注目されている点も見逃せません。各国政府が環境に対する規制を強化し、省電力や節水が重要なテーマになっています。日本で開発したエコ技術が海外向け商品にも生きることになるでしょう。

 2番目の「らく」というのは、お客様が優れた性能を意識せずに使いこなすことができるという意味です。そして、3番目の「かしこい」という意味は、基本性能をあげること。冷蔵庫であればきちんと冷える、洗濯機であればきちんと汚れが落ちるといったことを改めて訴求していきたいですね。「エコ」は当たり前、そして進化させるのは「らく」と「かしこい」。2013年の商品企画の肝は、引き続き、「エコ!らく!かしこい!」ということになります。

 もうひとつの重要なテーマが「健康」です。東芝が発売する「大清快シリーズ」のピコイオン空清だけが、エアコンでは唯一PM2.5対応を打ち出すことが出来ています。これにはお客様も非常に敏感で、量販店からも高い評価を受けています。エアコンも4月は前年比3割増という実績です。一方で、空気清浄機も丸いユニークなデザインを採用した「ULOS(ウルオス)」が高い評価を得ています。まだシェアが低いので他社とは直接比較はできないのですが、昨年の4倍ぐらいの売れ行きになっています。今後、エコとともに、健康は外せない要素だといえます。

空気清浄機能を搭載したエアコン「大清快VOiCE EDRシリーズ」
ファンを外して丸洗いできる加湿空気清浄機「uLos(ウルオス) CAF-KP40X」

――エコ! らく! かしこい!に、健康を加えるのが、日本市場での展開になるわけですね。

 日本の市場は、どんどん変化しています。日本は人口減少と高齢化が進んでいますが、その一方で、約5,200万世帯という世帯数は減っていない。むしろ、若干増加傾向にある。つまり、世帯の中身が変わってきているのです。1人暮らしと、2人暮らしの世帯数が全体の60%を超え、3人まで含めると80%に達している。世帯数は同じでも、構成する家族の数が減っている。また、圧倒的にシニア世代が増えている現実もあります。その人たちのため商品企画をやっていかなくてはならないというわけです。ただ単身世帯ひとつをとっても、単身世帯、新社会人、学生といった新たな生活をはじめる人たちの需要は違いますし、2人暮らしといっても、新婚早々の家庭と、子供が巣立っていったあとの世代とは商品提案が違ってくる。それぞれに向けたものを作らなくてはいけません。

石渡氏の母親は1人暮らしでも容量500Lの大型冷蔵庫を使っているという

 また、商品ごとにも戦略の違いがあります。例えば、子供が巣立って、2人になったから、電気釜は5合炊きはいらない、むしろ、美味しいご飯が炊ける三合炊きが欲しいということになるかもしれない。あるいは洗濯機は、7kg、9kgといったものだったが、家族が少なくなれば、4kg、5kgでいいということもある。しかし、一方で、冷蔵庫はいままで使っていた500Lの冷蔵庫を買い替えて、400Lにしようと思うかというと、そうでもない。消費電力が下がれば、容量はそのままに、家における限り大きな冷蔵庫を置きたいという要望もある。私の母も1人暮らしですが、500Lの大きな冷蔵庫を使っています(笑)。

 むしろ、シニア層は、買い物に頻繁にいけなくなりますから、大型冷蔵庫が欲しい。できれば、野菜の鮮度を長持ちさせられるような冷蔵庫が欲しいというように、付加価値型の大型冷蔵庫を選ぶ傾向も出てくる。こうした日本ならではの環境変化を捉えたローカルフィットにも取り組んでいかなくてはならないと考えています。

消費税率引き上げ前の需要にも安定供給目指す

――市場全体としてはどんな動きを見込んでいますか。

 今年の年末から来年前半にかけて、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が見込まれますから、それをチャンスと捉え、きちんと商品供給を行なえる体制を整えていきます。かつての消費税5%への引き上げ時には、冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった高価格商品が中心に売れており、今回もほぼ同様の傾向になるでしょう。ただ、冷蔵庫はエコポイントですでに買い替えが進んだという見方もできますし、エアコンは夏場に需要が集中しますから、冬場の需要期にどの程度の伸びになるのかが読みにくいところがありますが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって、市場全体を2~5%程度押しあげることになると想定しています。とにかく、モノを切らさない体制が必要ですね。中国、タイの生産拠点の強化もそれにあわせて進めていきたいと考えています。

 もうひとつ、2013年度は、スマート家電について、東芝として、ある一定の答えをだしていかなくてはならないと考えおり、具体的なスマート家電商品を今年中に投入する予定です。

――東芝では、これまでにも「フェミニティ」シリーズとしてネット家電の提案をしてきました。一方で、2012年10月に開催されたCEATECでは、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)やスマート家電などによってもたらされる「スマートホーム」のあるべき姿や、スマート家電を通じた近未来の生活の姿、東芝の考える未来のスマート家電を参考展示しました。また、2013年1月に米ラスベガスで開催されたInternational CESでも、AV機器や生活家電、エネルギーマネジメントシステムが連携したホームクラウドサービスを提案していました。こうしたものが現実になってくるということですか。

 スマート家電は、ネット接続が前提となるのは明らかです。ただ、クラウド連携といったところまでは、2013年度の商品では実現しにくいですね。クラウド連携したときに、どんなメリットを提供できるのかが、いまの時点ではなかなか見いだせない。電子レンジであれば、レシピを提供するといったメリットがあるものの、洗濯機ではどんな提案ができるのかという点では、まだ検討が必要です。2013年度は、ECHONET Liteを軸にしていくことになります。重要なのは、お客様がメリットを実感できるようなものを出していくということです。

東芝が実現するスマート家電の姿とは?

ユーザーの経済的な負担なしで、メリットを享受できるようなスマート家電を考えているという

――東芝が実現するスマート家電とはどんなものになりますか。

 お客様が実際に使うという観点で捉えれば、「スマート家電だから、これだけ価格が高い」という提案は絶対に受け入れられない。初期投資を大きくせずに、スマート家電を導入できるということは重要な要素です。最初に高い費用を払ったが、使われないのでは意味がない。お客様が経済的な負担をしなくても、スマート家電のメリットを享受できるものにしたいと考えています。

 では、そのためにはどうするか。

 私は、ハードウェアでお金を請求するのでなく、サービスに対してお金を払っていただくことがスマート家電だと考えています。スマート家電で提供されるサービスに魅力を感じてもらい、それに対価を支払っていただく、ソリューション型ビジネスこそが、スマート家電市場における事業スタイルではないでしょうか。

 すでに、テレビやPCの世界は、そうした仕組みが開始されており、付加価値に対してお金を支払っていただくものになっています。

 東芝は、スマート家電というハードウェアを出すと同時に、ソリューションという形でサービスメニューを揃えていきたいと考えています。

 ただ、お客様によって、必要なサービスと不要なサービスがあります。電力の見える化だけでいいというお客様や、見える化だけでなく制御までやりたいという方もいる。スマホに慣れている方は、それを利用して外から家電商品をコントロールしたいといったことも考えるはずです。個人個人のライフスタイルや、なにを求めるかによって、ソリューションの内容が変わってきますから、それぞれのお客様に向けて、様々なパッケージを用意し、お客様にフィットするものを選択してもらうという提案をしていきたい。

 スマート家電におけるキーワードは、ソリューションをパッケージとして売ること。東芝は、電気を作るところから、貯めて、見える化して、制御するところまでの提案ができます。この強みをソリューションとして生かしたい。

 もうひとつ、東芝のスマート家電の特徴は、HEMSのなかの構成要素のひとつとして、やっていくものであり、独立したスマート家電ではないという点です。東芝グループとして、どのようにHEMSを構成するか、というなかで、スマート家電を展開していくことになります。

 2012年度は、エアコンをスマート家電対応にしました。2013年度は、エアコンに続き、冷蔵庫、洗濯機というところにまで幅を広げたい。東芝グループとしては、LED照明やエコキュートなどにも、つながっていくことにもなります。

――具体的にはどんなサービスが利用できますか。

 いろいろなことを考えていますから(笑)、詳細は、時期がきましたら、また改めては話ししたいと思っています。ただ、スマート家電で重要なのは、ネットに接続されることで、情報を双方向化できるという点です。冷蔵庫の情報をみて、使用状態から故障予知をするといったこともできますし、スマートフォンを使って外から制御することもできる。東芝の冷蔵庫には、旅行などで長期間自宅を空ける際などに便利な「おでかけ」モードを搭載しています。これは頻繁にドアが開閉されないということを前提として運転する一種のecoモードなのですが、外出する際に、この設定を忘れたと思ったら、スマホを利用して外から設定するといったことも可能になるでしょう。使用方法の提案に、フレキシビリティが増してくるのです。

 まずは、生活家電がネットにつながり、お客様のライフスタイルに基づいて、ソリューションを選べるようになるベースを作りたいというのが2013年度の取り組みになります。パッケージを用意して、お客様にあわせた形でソリューションを提供したい。なかにはスマート家電は必要ないという人もいるでしょうし、スマート家電で提供されるサービスもすべては必要がなく、一部でいいという人もいる。こうしたことにも柔軟に対応するメニューづくりをしていきたいですね。消費者のデマンドからかけはなれたことをしても駄目です。それでは、結局使われず、価値が認められない。いらないものを提案しても仕方がない。お客様目線で、「本当にこれは役に立つよね」というスマート家電を提案したいと思っています。

――スマート家電において、東芝はどんなイメージづくりを考えていますか。

 具体的なアイデアはこれからですね。ただ、スマート家電は東芝がリードしていくというメッセージはお伝えしたい。本当は、昨年の段階でもう少し、スマート家電に踏み出したかったのが本音ですが、東芝として、お客様目線に合致したところまで、提案を醸成できなかった反省がある。ただ、お客様に喜んでいただけるものを考えるには、この1年が必要だったともいえます。今年は、お客様に喜んでいただくということに、どこまで応えられるかが試されることになる。それにぜひ期待していただきたい。

――時期はいつ頃になりますか。

 スマート家電については、8~9月にかけて、商品を投入できるかと思います。

イノベーションを続ける東芝の生活家電事業

――2013年度の東芝ホームアプライアンスのキーワードはなんですか。

 やはり、「イノベーション」ですね。これは、持続的に取り組まなくてはならない課題です。お客様の生活に生かせるようなイノベーションを持った商品を投入しなくてはならない。ただ、イノベーションは、単に商品のイノベーションだけでなく、ビシネスプロセスや、ビジネスモデルも対象になる。円安という動きに対しては、ビジネスプロセスも変えていかないと生き残れない。そのためには、製・販・技が一体化した形で、スピード感を持って事業に取り組まなくてはならない。東芝の体制をみると、製造現場は海外にあり、開発現場は日本とそれぞれの製造拠点に置いている。マーケティング部門は、海外にも、日本にもある。こうした地理的に離れているものを、ひとつの組織として、ボーダレスに、スピード感をもってまとめていけるかが課題です。開発、製造が一体化できるような形でコミュニケーションを高め、グローバル戦略を加速できるようにしなくてはなりません。

 2013年度は、厳しい変化の年になるのは明らかです。後から振り返ったときに、あそこでいろいろと変えたから今につながっている、といえる1年にしたいと考えています。

【お詫びと訂正】初出時に一部キャプションが入れ替わっていました。お詫びして訂正させていただきます。

大河原 克行