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もし電気が止まっても、シャトルシェフとアイラップで省エネ調理できる?

使用したのは、真空保温調理器「シャトルシェフ KBJ-3002」と「アイラップ」(大/小)

災害というと多くの場合、地震を思い浮かべる人が多いが、被害が生じるものでは風水害の方が頻度は高い。また、大きな被害はなかったとしても、停電や断水などライフラインが停止する可能性はある。

災害時に、住宅は無事な場合でも、電気やガスが止まってしまうと不便が生じる。そんな時のために、たとえオール電化住宅であってもカセットコンロなどのガス器具を準備しておくと、停電で調理器具が使用できない場合でも温かい食事ができるわけだ。

カセットコンロで知られる岩谷産業のWebサイトを見ると、災害時に大人2人が1週間で必要とするカセットボンベ(カセットガス)の数は、冬場9.1本、夏場6.3本としている。3本セットで売られているカセットボンベが2~3セット必要というイメージだ。

カセットボンベの備蓄目安(岩谷産業)

そこで非常時もガスの使用量を減らすために提案したいのが、サーモスの「シャトルシェフ」を使う方法だ。これに、岩谷マテリアルの耐熱ポリ袋「アイラップ」を組み合わせると、洗い物をなるべく出さずに効率よく複数の調理が可能になる。なお、カセットコンロではなくポータブル電源とIHヒーターを使用する場合でも、省エネという意味では同様の効果が得られる。

サーモスのシャトルシェフを使った調理例

それでは実際に調理の手順を紹介していこう。

シャトルシェフって何が便利なの?

サーモスのシャトルシェフを使うメリットは、真空断熱構造による保温調理ができて、火にかける時間が一般的な調理の1/3に抑えられるという点だ。本体は真空断熱構造の保温容器とセラミック加工されたアルミ製の調理鍋で構成。ガスコンロをはじめ、IHヒーターや電気プレートなど多くの熱源に対応する。直販価格は14,300円。

サーモスでは、調理鍋に材料を入れ沸騰させたあと、ふきこぼれないように火加減を調整して加熱を続ける時間を「沸騰調理時間」、調理鍋を火からおろして保温容器に入れ保温する時間を「保温調理時間」と呼んでいる。通常は弱火で煮込むような過程を保温調理に置き換えることで、火にかける時間を減らし、その分の燃料を節約できるわけだ。

調理鍋に材料を入れて火にかけ、いったん沸騰させて味付けをしたら、付属の保温容器に鍋ごと入れてフタをし、任意の時間そのままにしておくだけ。保温調理時間が過ぎたら完成する。

スープや煮込みなどの料理で、ガスを節約しながら作れる

防災レシピとしては本来15分間沸騰させなければならないような調理において、5分間沸騰させて残りを保温調理(15分~)にすることで燃料を節約する使い方がメインとなるだろう。実際の災害を想定して、「アイラップ」(岩谷マテリアル)などの耐熱ポリ袋に食材を入れ「湯煎調理」にチャレンジしてみた。

レトロなパッケージデザインでもおなじみ「アイラップ」は普段の調理でも活躍。複数品の同時調理ができて、洗い物も減らせる。イワタニ公式オンラインショップでの直販価格は60枚入りで200円

基本のご飯と味噌汁を作ってみる

まずは、災害時も日常に近い食事をとれるように、ご飯を作ってみる。準備は米を耐熱ポリ袋に入れて水を入れるだけ。水の量は、研いだ米1合に対して同量の水(約180ml)にした。

米と水をアイラップに入れる

その次は、一緒に作るための味噌汁用に、具材を切る。今回は大根を薄いイチョウ切りにして別の耐熱ポリ袋にいれ、ダシ、味噌、水を適量(2人分想定で約350ml)入れる。

味噌汁用の具は大根

それぞれのポリ袋の口を縛る。なるべく空気を抜くのがコツだ。味噌汁の方は空気の抜きが甘く沸騰調理中に浮かんできてしまった。水に沈めながら空気を抜いて口を縛るといいだろう。

袋の中の空気を抜いて縛る

5分ほど沸騰調理の後、火からおろして保温容器に入れ、15分から20分ほど保温調理を行なった。

蓋をして保温調理中

頃合いを見て、蓋を開けて中を確認する。良さそうなら取り出し、もうちょっとかな? と思ったら蓋をしてもう少し保温しても良い。

ビニール袋を開封。ご飯はしっかり炊けていた。味噌汁の方も大丈夫そうだったので、盛り付けて食事にすることにした。

ご飯がおいしそうにできた

災害時を想定して、器にはラップを巻き、もう片方は調理用の袋を器にはめて食べる。味は普通に炊飯器で炊いた場合とあまり変わらず、味噌汁もおいしくできた。強いて言えば、味噌をこし器でといたり、再度煮立たせるなどの工程ができなかったことで、いつもと少し違う味わいになったかなというくらいだ。

アイラップの袋ごと器に盛れば、洗い物も少なく済む

パスタなどちょっとこだわりの料理にも

別な日に、別のメニューにもチャレンジした。ショートパスタは事前に30分〜1時間程度水に浸しておき、空気を入れないように口を縛る。

ショートパスタを水とともにアイラップへ

もう一つ耐熱ポリ袋を用意し、ザク切りのキャベツ、レモンペッパーフレーバーのサバ缶を入れてよく揉んでこちらも空気を入れないように縛る。

今回も5分程度沸騰調理をして、15分ほど保温調理を行なう。

キャベツとレモンペッパーフレーバーのサバ缶をアイラップに入れて揉む
シャトルシェフで湯せん
お茶を入れるために使用するお湯もその都度沸かすのではなく、保温性の高いスレンテスボトルに入れて保管しておいたものを使用する

保温している間に、カニカマと切り干し大根とカイワレ大根の和え物を作る。今回、作業のしやすさでボウルを使用したが、ポリ袋にいれて揉めば洗い物を出さずに短時間で作ることができる。

カニカマと切り干し大根とカイワレ大根の和え物

そろそろできたかというタイミングで、パスタの袋に穴を開けてお湯を切る。お湯を切ったら、具材と混ぜ合わせ、塩コショウで味を整えて完成。今回はラップを巻くのは省略して皿へ直接盛り付けた。

袋に穴を開けて湯切り

今回は、効率よく作るためにパスタと具材をボウルで混ぜ合わせた。非常時は、お湯を切ったパスタを、具材の耐熱ポリ袋に入れて袋の中で混ぜれば洗い物を減らせる。

パスタと具材を混ぜ合わせる

パスタの食感は、アルデンテとはいかないがしっかりと茹でられていた。鯖缶もフレーバー付きのものを使用したのでちょうどよい仕上がりだった。茹で汁を完全に切れないとか、水でふやかしてから保温調理など、本来の茹で方でない分、パーフェクトな味わいにはならないが、香辛料やレモンなどのフレーバーがそういった違和感を減らしてくれているように感じた。これらに作り置きのキャロットラペも添えてちょっと豪華なディナーになった。

1食分がちゃんと作れた

シャトルシェフは、普段使いでは、煮込む過程を火にかけずほったらかし調理ができるので、火の番をしなくて良いのが安心だ。通常の火にかける時間よりも保温調理時間の方が長くなることが多いが、つきっきりでなくて良いのでその時間を他の作業に充てることができる。コンロの使用時間を減らせるので、ガスや電気代がその分、節約できるのもうれしい。

時間は少しかかったとしても、非常時に貴重なガスを節約しながらほったらかしで作れる

非常食のご飯の缶詰などは、25分間沸騰したお湯で加熱する必要があるが、これらも、5分程度沸騰調理して、20〜30分ほど保温調理すれば20分加熱するためのエネルギーを節約できる。

非常食の缶詰の温めなどにも使えた

災害時は、ガスやポータブル電源などの使用時間を減らせるので、長期間の避難生活でも備蓄が枯渇する、長期間不足が生じて不便を強いられるという事態を避けられる可能性が高くなる。ほったらかしで良いという部分も、災害後の片付けなど普段よりも忙しく、ずっと火のそばにいることが難しい状況にフィットする部分だ。

災害が起きる前に、その家庭に合った準備を

過去の実績や内閣府による首都直下地震等による東京の被害想定によれば、長くても1週間もあれば電気は復旧すると考えられ、カセットボンベは10本もあれば安心というところだろう。しかし、2024年の能登半島地震においては電気の復旧に1カ月あまりかかっているケースもある。集合住宅などの場合、エリアの停電は解消しても建物設備の関係で、自室の電気が復旧しないという可能性もあり得る。

以前の記事では、ほかにもカセットガス(CB缶)が使える様々なガス器具を紹介した。

コンロや暖房など、生活環境や家族構成などによって適した器具を準備したい。選ぶ基準としては、非常時だけでなく日常遣いもできる「フェーズフリー」を意識することが挙げられる。

また、可能なら複数の方式のアイテムを備えているのが望ましい。例えばガス式ランタンだけでなく、乾電池式や充電式のLEDランタンを備えることなどだ。

そのほか、特定の機器や器具でないとダメなものを優先して、代替手段があるものはそちらを使うという工夫も必要だろう。例えばポータブル電源は、冷蔵庫、エアコンの維持のために温存して、加熱調理にはカセットこんろを使用する。スマートフォンやタブレットの充電は、モバイルバッテリーを使うようにするといった方法がある。

備えの状況や、環境によっても変わってくる。それぞれの家庭の状況に合わせて、非常時の燃料、電源の運用方法、優先度を決めておくと安心できるだろう。

戸津 弘貴