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エアコン冷房と除湿どっちが節電? 夏を快適に過ごすには
2024年8月2日 08:05
先日、関東甲信越に梅雨明け宣言が出ました。しかし雨は減っても、ジメジメとムシムシが続くのが日本の夏。ここではエアコンの生産・販売に60年の歴史を持つ富士通ゼネラルに、エアコン除湿の素朴な疑問をたずね、上手な活用のポイントをまとめました。
湿度が高いとなぜ困る?
最近、日本の家屋における除湿の重要性が見直されてきています。雨季や夏だけでなく、一年を通じて屋内の除湿に気を配ることがQoLを高める上で大切になっています。
蒸し暑い環境に長時間滞在するメリットはほとんどありません。蒸し暑さを表す指数を「不快指数」と呼ぶほどで、疲れやすくなり、食欲不振や免疫力の低下といった体調不良を起こすこともあります。
また、湿度の高い環境ではカビが発生しやすく、湿度が60%を超えるとカビが急激に増殖してアレルギー疾患を招くこともあるなど、不快なだけでは済まない悪影響があります。
室内の湿気を取り除くには除湿機が有効ですが、エアコンのある部屋では場所を取る除湿機を改めて導入するよりも、エアコンの除湿機能を上手く活用したいところです。
しかし、エアコンの除湿運転では寒くなり過ぎるとか、電気代が高くなりそうだと心配する人もいるでしょう。そもそもエアコンの冷房と除湿はどちらのほうが速く涼しくなるのでしょうか。気になることを1つずつ聞いてみましょう。
【疑問1】冷房と除湿、どちらが速く涼しくなる?
「冷房と除湿は『達成目標』が異なります。速くしっかり涼しくしたい場合は『冷房』を使うのが正解です!」(富士通ゼネラル広報・川邊美紗さん、以下同)
涼しさを求めるなら冷房が基本
冷房は室内の空気を設定した「温度」になるよう調整する機能です。これに対して、除湿は設定した「湿度」になるよう調整する機能になっています。速く涼しくしたければ「冷房」が基本です。
猛暑日などは熱中症の心配もあります。あまり暑い日は除湿よりも冷房を優先して、まずは熱中症にならないように気を付けましょう。
帰宅して室内に熱がこもっていると感じたら、エアコンのスイッチを入れる前に換気します。風の通り具合にもよりますが、5~10分も窓を開けておけば十分です。そのあとエアコンを運転させれば、より速く涼しくなります。
除湿運転で思うように涼しくならなかったり、逆に冷え過ぎたりするのは、エアコンが空気の温度制御よりも空気中の水分の除去を優先するためです。
メーカーによって表記が異なりますが、エアコンによる除湿は「弱冷房」と「再熱除湿」の大きく2つの方法に分類されます。弱冷房は基本的にどのエアコンも搭載していますが、再熱除湿は機種によっては搭載しないものもあります。
弱冷房方式は弱めの冷房運転で空気中の湿気を取る方式。設定温度付近では、冷房よりも湿度を下げやすいというメリットがあります。ただし、すでに室温が十分に低い時に運転すると冷え過ぎる原因にもなります。
再熱除湿方式は除湿によって冷えた空気を、エアコン内部で適切な温度まで温めて送り出す機能で、冷え過ぎを防げるのがメリットです。ヒーターで温める工程が加わるため消費電力は増えてしまいますが、最新エアコンの再熱除湿は室外機の熱の一部を利用して暖かい空気を混ぜることで、消費電力を低減する方式が主流になってきています。
除湿機を使ったことがある人なら、除湿機のタンクに溜まる水の量に驚いた経験があるのではないでしょうか。タンクが水でいっぱいになればそれ以上は除湿できないため、ユーザーがいちいち水を捨てなければなりません。タンクにカビが発生しないようにお手入れも必要です。
エアコンはこうした排水に関わる手間がないのもメリットの1つです。エアコンによる除湿は、エアコン本体に取り込んだ室内の空気を熱交換器で急速に冷却して結露で水滴を作り、ドレンホース経由で室外に排出するのが基本的な仕組みになっています。
定期的なフィルター掃除などエアコンとしてのお手入れは必要ですが、除湿に関する排水周りのお手入れは一切不要。またコンプレッサーが室外機の中なので運転音が静かなのもメリットといえます。
【疑問2】冷房と除湿はどうやって使い分ければいい?
「暑い日は先に冷房が基本。湿度が気になる場合、室内が冷えるのを待って除湿に切り替えるか、それほど暑くなければ除湿運転で湿度を下げましょう。冷え過ぎるのが心配な場合は再熱除湿を利用してください。それでも迷う場合はエアコンの自動運転に任せてしまうのがオススメです!」
冷房が優先、迷う時は自動運転がベスト
明らかに暑い日は冷房が優先とは分かっていても、曖昧な気温や湿度のときは、どのように使い分ければいいか迷うものです。一般的に人が快適に感じる室温(夏季)は22~26℃、湿度(通年)は40~60%といわれています。しかし、温度計や湿度計を見ながら操作しても、室内の空気はさまざまな要因で変化するため、この温度でこの湿度ならこの設定という絶対的な答えはありません。
エアコンメーカー各社は長い年月を掛けて、冷房と除湿の性能を向上させてきました。しかし、ユーザーから見ると必ずしも冷房と除湿を使い分けしやすい形での進化にはなっていなかったといえるでしょう。近年はこれを改善するために、ユーザーが使い分けを意識しなくても快適になる「自動運転」を搭載するモデルが増えています。
自動運転は室内の空気の状態をセンサーなどで把握しながら、室内にいる人が快適な状態を保てるように、冷房や除湿の運転を自動的に制御します。冷房と除湿だけでなく暖房と送風も制御するので、ボタンひとつで年中快適な環境を実現してくれます。
【疑問3】冷房と除湿はどちらが省エネ?
「冷房と除湿はそれぞれ目的が異なる運転のため、一概にどちらが省エネとはいいきれませんが、一般的に『冷房』の方が省エネ効率が高いといえます」
省エネを意識してエアコンを運用
節電を意識する場合に気を付けたいのが、運転をオンオフするよりも設定温度を調整するほうが省エネになりやすいこと。最近は知っている人も多くなりましたが、まだまだ勘違いしてこまめにオンオフする人も少なくないようです。
十分に涼しくなったと感じたら運転をオフにするのではなく、設定温度を少し上げるのが消費電力が抑えられる上手な節電のコツになります。
もちろん、出かける時にまでつけっぱなしでは無駄になります。部屋の状況にもよりますが、空室が1時間以上続く場合は運転をオフにするのがおおざっぱな目安になりそうです。
エアコンの設定以外でも節電の工夫は可能です。窓から入ってくる太陽光をカーテンやブラインドで遮るだけでも、エアコンの負担が減って節電になります。運転を始める前に窓を開けて換気するのも有効。扇風機やサーキュレーターで室内の空気をかき混ぜるのも良い対策です。
除湿時の負担を減らす工夫としては、冷房と同じく換気や空気の循環をするほか、除湿剤を用いるのも手です。除湿運転してもなかなか湿度が下がらないと感じる場合、普段部屋の中で過ごす場所とエアコンの位置が合わない可能性もあります。こうした場合は、扇風機やサーキュレーターを併用して室内の空気をかき混ぜましょう。
また、冷房や除湿運転時に設定温度に到達すると、自動的に送風運転に切り替わることがあります。このとき、エアコン内部の水分が室内に排出されて湿度が上がってしまう現象を「湿気戻り」といいます。
富士通ゼネラルのエアコン「ノクリア」にはこれを抑える機能として「省エネファン」を備えたモデルを用意しています。省エネファンは設定温度に到達すると自動的にファンを停止して湿気戻りを抑制する機能で、停止中にリモコンのメニューからオンオフできます(除湿時は常時オン)。冷房運転時にオンにしておくと、省エネファンで無駄な運転を低減できます。
【疑問4】部屋干しは冷房と除湿のどちらが良い?
「気温がそれほど高くなければ、除湿運転を利用してください。特に衣類乾燥モードを備えたエアコンなら、その機能を使用しましょう」
除湿しながら衣類に風を当てる工夫を凝らす
ムシムシした雨の日に部屋干しをする場合、冷房と除湿のどちらで運転するか迷うことがあります。この場合も気温との兼ね合いになりますが、衣類は乾燥までに時間をかけないことが大事です。冷房であれ除湿であれ、のんびり乾かしていると生乾き臭の原因になります。
エアコンで除湿しながら、衣類には扇風機やサーキュレーターで風を当てることで、部屋干し時の衣類を素早く乾かせます。気を付けたいのは、あまりにも多くの衣類を一度に乾かさないことです。干すときは両端に丈の長いものを吊るし、内側に短いものを吊るす「アーチ干し」にすると、空気の通り道が生まれ、効率よく乾かすことができます。
エアコンによっては衣類乾燥モードを搭載しており、それを活用することで衣類をより速く乾燥できます。
例えば、ノクリアの「ランドリーモード」は、室内に干した洗濯物が乾燥しやすいように運転するモードです。外気温が20℃以上の場合、冷房の強弱を組み合わせた運転で衣類を素早く乾燥させます。外気温が20℃以下の場合は暖房運転で部屋を暖めてから、冷房の強弱を組み合わせた運転で乾燥させます。
なお、ランドリーモード中は室温調整機能が働かないので、室内に人がいない時の使用を推奨しています。
暑くてジメジメする時は冷房を優先し、涼しい時は積極的に除湿
本文で繰り返しているとおり、猛暑日は熱中症を避けることが最重要。熱中症は高気温・高湿度の環境で起こりやすくなります。暑い時は冷房、ジメジメする時は除湿、そして暑くてジメジメする時は冷房優先が原則です。
そこまで暑くなくて、雨が降った後などでジメジメしているときには、エアコンの除湿運転で積極的にジメジメを取り除きましょう。
エアコンの冷房と除湿はそれぞれ目的が異なる機能。効率よく快適な環境を実現するために、常にどちらか一方だけで運転するのではなく、状況に応じて使い分けてみてください。