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スギ花粉がピーク、でも換気はどうする? 花粉シーズンの換気方法や洗濯物の干し方を聞いた

スギ花粉の飛散量がピークを迎えている

2022年も花粉のシーズンがやってきた。日本気象協会によると、すでにスギ花粉の飛散はピークに突入しており、東海/北陸/関東甲信/北海道などでは前シーズンと比べて飛散量が増える見込みだという。

今回は花粉の飛散傾向や、感染対策の面でも気になるシーズン中の換気方法、家の中でできる対策などをご紹介する。花粉症の季節を快適に過ごす一助になれば幸いだ。

関東甲信地方などでは前シーズンと比べて飛散量が増える見込み
福岡では飛散量が「非常に多い」予想

花粉が爆発? より細かな粒子となって飛んでくる

ダイソンがプレス向けに行なった「花粉対策セミナー」で、埼玉大学 大学院 理工学研究科の王青躍教授が教えてくれたのは「花粉症が通年性のものになりつつある」ということ。

近年、温暖化の影響により花粉の飛散開始時期が早まっている一方で、一部の成熟しきらなかったスギ花粉が夏から秋にかけて遅れて飛んでくる。加えて、秋からブタクサなどの花粉が飛び始め、日本ではほとんど1年中花粉が飛散している状態だという。

温暖化などの影響により、ほとんど1年中花粉が飛んでいるという(資料提供:埼玉大学大学院 王青躍教授)

王教授は、花粉対策となるマスクや空気清浄機の選び方にもポイントがあるとしている。同教授によると、スギ花粉の粒子は20~30μm程度のサイズ。PM2.5と比べるとおよそ10倍ほど大きく、本来は飛んできても重さで落ちるため、遠くまで再飛散するような影響は少ないという。

しかしPM2.5などに含まれる硫酸塩、硝酸塩などの有害物質が花粉の表面を傷つけたのち、大気中の水分が付着すると、花粉が膨張して爆発。この花粉の破裂により、アレルゲン物質がPM1.0以下の大きさに微粒子化してしまうため、マスクや空気清浄機を選ぶ際はPM1.0以下の微粒子に対応するものを選ぶと効果的としている。

花粉が破裂してPM1.0以下の微粒子に(資料提供:埼玉大学大学院 王青躍教授)

ダイソンの加湿空気清浄機「Dyson Purifier Humidify+Cool Formaldehyde」は、PM0.1レベルの微粒子も99.95%除去するHEPAフィルターを搭載。空気清浄機能だけでなく冬は加湿器、夏は扇風機としても使えるため、収納場所が限られている住宅でも導入しやすいという。

王教授はこのほか、花粉対策として可能な限り外出を避け、室内にいる場合は花粉の侵入を防ぐために極力換気をしないようにすすめている。どうしても換気したい場合は、交通量が多く花粉が舞い上がりやすい朝や夕方のラッシュ時を避け、大通りや交差点に面した窓の開閉は最小限にすることを推奨している。

可能な限り換気はしないようにすすめている(資料提供:埼玉大学大学院 王青躍教授)

花粉症でも換気したい場合はどうすればいい?

上述の通り、花粉シーズンは換気をしないほうがいいとわかっていても、空気のよどみが気になったり、昨今は新型コロナウイルスの感染対策としても換気が推奨されている。どうにか花粉を気にせず換気する方法はないものか。

三菱電機が2021年12月に発表した実験結果によると、住宅の24時間換気システムとキッチンのレンジフードファンにより、窓を開けなくても効果的に換気できるそうだ。そこで、三菱電機に花粉シーズンの換気について聞いてみた。

普段の生活をするうえで、なんとなく「換気をしたほうがいい」という認識があるが、そもそも換気はどんな家でも窓を開けて行なう必要があるのだろうか?

三菱電機によれば、今の24時間換気システムが備わった住宅であれば、窓を閉め切った状態でも日常生活をする上で必要な換気量は確保されるという。(人の出入りなどがあって)ウイルス対策したい時や、空気のよどみが気になるとき以外は、無理に追加で換気をする必要はないとのことだ。

三菱電機の24時間換気システムの給気口「P-18QR」

それでは、24時間換気システムを使うことで窓を開けなければ、室内に花粉が入ってくる心配もないのだろうか?

「換気の性質上、24時間換気システムであっても外気を取り入れることになりますので、ある程度の花粉流入はあります。ただし給気口側に花粉除去性能の高いフィルターなどを貼ることで、花粉の侵入を減らすことができます」(三菱電機)

給気口によってはフィルターが取り付けられない場合もあるため、事前に確認が必要だ。また、フィルターは適切に清掃/交換をしないと、目詰まりによって給気量が低下するため、新鮮な外気を取り込むという換気の本来の目的が損なわれないように、適宜メンテナンスを行なう必要があるとしている。

外気をきちんと取り込むために定期的なメンテナンスが必要

同社は室内の温度を保ちながら、花粉や汚れを取り除いた新鮮な空気を取り入れられる換気システム「ロスナイ」や、室内の空気を循環清浄する「ヘルスエアー機能」を搭載したファンなどを展開している。

換気システム「ロスナイ」の仕組み

「換気(空気の入れ換え)は、人間の呼吸や燃焼に必要な酸素の供給と二酸化炭素の排出の視点でも重要です。24時間換気システムを適切に利用することに加え、キッチンや浴室、トイレなどの換気扇も適宜活用してください」(三菱電機)

花粉シーズンの洗濯はどうする? 空気清浄機の置き場所にもポイントが

24時間換気システムを使うと、窓を開けずに必要な換気量を確保できることがわかった。それでは同システムがない場合はどのように換気すればいいのだろうか。このほか具体的な花粉症対策として、花粉シーズンの洗濯物の干し方や空気清浄機の置き場所などのポイントをダイキン工業に聞いてみた。

同社は「花粉を部屋に入れない工夫」と「室内の花粉を減らす工夫」を併せて実践することを推奨している。花粉はおもに「窓開け換気時」「外出からの帰宅時」「洗濯物を取り込むとき」に室内に侵入するため、これらの対策が重要だという。

窓開け換気時にはレースカーテンをしたままにして、窓を開ける幅を10cm程度にすることで、窓からの花粉の流入を4分の1に減らせるという。また、午前10時頃までの時間帯は昼以降と比べて花粉の飛散量が少ないため、それまではしっかりと窓を開けて換気する一方で、飛散量が増える昼以降は窓を開ける幅を抑えてレースカーテンを引き、できるだけ花粉の侵入を抑えることを推奨している。

花粉を室内に入れないために注意が必要なシーン

帰宅時の花粉の持ち込みを抑えるには、家に入る前に、衣服や髪の毛に付いた花粉を玄関先でしっかり落とすようにする。さらに玄関から屋内に持ち込んでしまった花粉をできるだけ撒き散らさないように、例えば花粉が付きやすい上着などは玄関近くに収納するようにしたり、玄関から洗面所に直行して、手洗い、うがい、洗顔をしたり、帰宅したらできるだけ早くシャワーを浴びて身体や髪に付着した花粉を洗い落としたりすることもおすすめだという。洗濯物を取り込む際も、帰宅時と同じように洗濯物に付いた花粉をしっかり落とすことを心掛けたい。

花粉シーズンに外で洗濯物を干す場合は、花粉の飛散量が比較的少ない午前10時頃までの間や、雨の日を選ぶことを推奨。また、部屋干しは洗濯物への花粉の付着が防げるうえ、室内の湿度も保たれるため、エアコン暖房を使っている家庭では花粉対策と湿度対策の一石二鳥だとする。

しかし、このように室内に花粉を持ち込まない工夫をしても、どうしても花粉は室内に侵入してしまう。室内に侵入した花粉の多くは床に落ちて溜まるため、こまめに掃除機や濡れタオルを使って取り除くのがいいという。

空気清浄機の最適な置き場所

室内の花粉を減らす工夫として、空気清浄機で花粉を吸い込むことも有効な方法の一つ。ダイキン工業が実施したシミュレーションでは、空気清浄機の置き場所や風量によって、空気清浄機が吸い込む花粉の量に変化があることがわかったという。

シミュレーションによると、窓開け換気によって室内に侵入した花粉の多くは「床の壁際付近」に溜まる。さらに、窓から入ってくる花粉に対してより多くの花粉を吸い込む設置場所は、「空気が入ってくる窓の正面の隅」という結果になった。また運転時の風量について、「標準(3.5m3/分)」と比べて「ターボ(7m3/分)」は吸い込む花粉の量が1.9倍となった。

窓開け換気時のシミュレーション

このことから、空気清浄機は窓の正面の隅に設置し、花粉が気になる場合は風量の多いターボモードなどに設定するのがおすすめだという。なお、空気清浄機の吹出口と吸込口の付近に障害物があると空気の流れの妨げになるため、注意が必要だ。

同社はこのほかにも、公式サイトにて「花粉の困りごとと解決法」を公開している。これらの情報を活用しながら、つらい花粉症シーズンを乗り切ろう。

鄭 恵慶