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ホンダ、家庭用カセットガスを燃料とした耕うん機の第2弾「サ・ラ・ダCG」

~30~100坪の中規模の家庭菜園向け

 本田技研工業は、一般家庭に普及しているカセットガスを燃料とする耕うん機「サ・ラ・ダCG(カセットガス) FFV300」を、3月上旬に発売する。希望小売価格は199,500円。ホンダの特約農機店、および特約ホームセンターにて販売される。

カセットガスでガソリン機と同様のパワーを維持。手軽に入手でき長期保管も可能

サ・ラ・ダCG(カセットガス) FFV300

 サ・ラ・ダCGは、30~100坪の中規模の畑で野菜作りを楽しむ、アマチュア・兼業農家のユーザーをターゲットとした、家庭用のカセットガス(ブタンガス)を燃料とする耕うん機。同社のガソリン仕様の「FF300」をベースとしており、耕うん性能と操作性能はガソリン仕様から維持しながら、エンジンの始動や燃料の充填が簡単に行なえる点、燃料の購入がしやすい点、燃料詰まりがなく長期保管が可能な点を特徴としている。

 使用方法は、カセットガスのボンベを専用のケースに装填し、本体のエンジンスイッチをONに合わせ、本体駆動部から伸びる紐「リコイルロープ」を引くことで、エンジンが掛かる。そして、ハンドルのクラッチレバーを握ると、土を耕す本体前面のローターが回転し、本体後部のタイヤが自走する。ハンドルは使用者の体格や作業に合わせてさまざまな持ち方ができるよう、補助バー付きのループハンドルを採用。ハンドルの高さは工具なしで2段階に調節できる。

使い方。まずは専用のケースにガスボンベをセットする
本体ハンドル側の所定の位置に装填する
本体の「燃料コック」と書かれたレバーを「出」に合わせる
ハンドル部の電源スイッチをONにした後、リコイルロープ(写真の矢印の部分)を引っ張る
あとは、ハンドル部のクラッチレバーを握れば、ローターが回転し、タイヤが自走する
サ・ラ・ダCGの運転中のようす
こちらは動力源がガソリンの「FF300」。サ・ラ・ダCGとはほぼ同じ能力
FF300は燃料が切れたら、ガソリンを本体内に注ぐ必要があるが、サ・ラ・ダCGはカセットガスを交換するだけ
カセットガスを動力源とするサ・ラ・ダCG(前半)と、ガソリンを動力源とするFF300(後半)の比較。音が若干異なるが、能力にほとんど差はない

 ローター部には、ホンダ独自の「アクティブ・ロータリー・システム」を採用。これは本体前方に4枚並んだローターのうち、内側の爪が正転、外側の爪が逆転するというもの。固い土にも食い込み、畑がフカフカに耕せるという。また、ローターの前方にあるフロント車輪の高さは、5段階から選択可能。土詰まりが少なく、軽い力で前輪の高さ調整ができるという。

 エンジン部は機体中央に配置。常に機体の中心を捉えてまっすぐ運転ができるよう低重心化を図っており、左右のバランスが対称に取れるという。

土を耕すローター部
フロント車輪の高さは手作業で5段階に変えられる
エンジン部

 作業時の自走速度は2段階だが、移動時は3段階の速度が選択可能。工具なしでハンドルの折りたたみにも対応しており、コンパクトに折りたたむことで、ホンダの軽自動車「N BOX」シリーズ、乗用車「フィット」にも車載できる。

 ガスボンベ1本辺りの運転時間は、1速時で55分、2速時で50分。作業面積は1速時が48坪(157平方m)、2速時で150坪(490平方m)。耕うん能力は、作業幅は450mm、作業速度は秒速0.29m。

 本体サイズは1,465×465×1,015mm(幅×奥行き×高さ)で、折りたたみ時のサイズは1,070×465×865mm(同)重量は52g。総排気量は57.3立方cm。

自走速度は、作業中は2段階、移動時は3段階から選択可能
ハンドルは折りたたんでコンパクトにできる
「N BOX」「フィット」などホンダの自動車にも載せられるという
オプション品も用意される。写真は畝(うね)を作るための培土器
整地用のアタッチメントも用意される

旧モデル「ピアンタ」とは作業速度が違う

左が今回発売されるサ・ラ・ダCG、右は2009年に発売された「ピアンタ FV200」。カセットガスで動く点は同じ

 ホンダでは2009年より、カセットガスを燃料とする「ピアンタ FV200」を発売していた。しかしピアンタは、30坪以下の小規模の畑向けの製品ため、販売店に来た人から「もっとパワーがほしい」「作業幅の広い商品がほしい」など、より高い耕うん能力を求める声が多かったという。ユーザー満足度の調査でも、耕うん能力の満足度が低かったため、今回のサ・ラ・ダCGの開発に至った。

 なお、ピアンタのエンジン排気量は50立方cm、カセットガス1本当たりの連続運転時間は最大60分。作業幅は350mm、作業速度は秒速0.07m。

ピアンタはコンパクトではあるが、自走するタイヤがなく、ローターのみで前進するため、作業スピードが遅かった
来店者が指摘した、ピアンタに関する不満点
ピアンタのユーザーに対する調査でも、耕うん能力はあまり高い満足度ではなかった

 実際にサ・ラ・ダCGと、ガソリン仕様の「FF300」を使い比べてみたが、サ・ラ・ダCGの方が運転音が高く感じる程度で、耕うん能力に差は感じられなかった。また、ピアンタも使用してみたが、車輪がなくローター部のみのため取り回しが難しく、作業スピードはサ・ラ・ダCGの方が簡単でスピーディだった。

大型化する家庭菜園に。希望小売価格20万円は“何とか手が届く範囲”

 本田技研工業 代表取締役執行役員 汎用パワープロダクツ事業本部の志賀雄次氏は、サ・ラ・ダCGを発売する意義について、家庭菜園の愛好家が増えたこと 高齢農家の耕うん機のダウンサイジング志向を指摘した。

 「近年は食の安全や、健康志向 定年後の趣味の本格志向の高まりから、家庭菜園の大型化が進んでいる。一方で農業従事者からは、高齢化によって、従来のような大きく重い耕うん機が敬遠される傾向にある。サ・ラ・ダCGは、こうしたトレンドを先取り、新たな市場を作り出す商品と自負している。家庭菜園人口をさらに拡大し、全国の遊休地が有効活用化され、地方の活性化に役立てられれば」(志賀氏)

 また、営業開発責任者 汎用パワープロダクツ 安井真氏は、電池ではなくガスを燃料とした点について「現在の電池の実力では、購入者が求めやすい価格を目指そうとした場合、運転時間と作業能力で満足いただけない」と説明。希望小売価格は、「高いが、一般の方に手の届く範囲で、何としても20万円を切りたい」ということで、199,500円に設定されたという。

 なおホンダでは、発電機や耕うん機など、自動車・バイク以外の事業の製品を「汎用製品」と呼んでいるが、同分野の製品における2012年の世界販売台数は、発電機や除雪機の売上が伸び612万台となった。これは、リーマン・ショック前の2007年よりも多い数値という。

本田技研工業 汎用パワープロダクツ事業本部 志賀雄次 代表取締役執行役員
本田技研工業 営業開発責任者 汎用パワープロダクツ 安井真氏
家庭菜園ブームにより、市民による農園数が増加している
キャッチコピーは「しあわせを、耕そう」
ホンダの汎用機器部門の2012年販売台数は、リーマン・ショック以前の数字を取り戻したという

正藤 慶一