ダイキン、新冷媒採用でワイドリビングでも省エネのエアコン「うるさら7」

~APFは最大7.0達成。快適な新除湿方式も搭載

 ダイキン工業は、新冷媒の採用で省エネ性能や環境性を高めたエアコン「うるさら7(セブン) Rシリーズ」を、11月1日に発売する。6/8/10/12/14/18/20/23畳向けに全9機種が用意され、価格はすべてオープンプライス。店頭予想価格帯は198,000円前後から338,000円前後。14畳向けの「AN40PRS-W」は258,000円前後。


地球温暖化の悪影響が少ない、高効率の新冷媒「HFC32」を世界で初めて採用

うるさら7に搭載されている7つの機能

 エアコンの構造を一から見直して作られた、新しい最高級エアコンシリーズ。特徴として、「新冷媒」「省エネ性」「気流」「自然の風」「光速ストリーマ(ダイキン独自の除菌・脱臭技術)」「除湿」「加湿」の7つの機能を持つことから、従来の「うるるとさらら」シリーズではなく、「うるさら7」という新シリーズとして販売される。

 最大の特徴は、エアコンの冷媒を、従来の代替フロン「HFC410A」から「HFC32(R32)」に変更した点。HFC32はHFC410Aと比べ、温暖化係数(地球温暖化に対する悪影響の度合いを示す数値)が約1/3と少なく、また冷暖房時のエネルギー効率が高いなど、冷媒としての性能が優れているという。HFC32をエアコンの冷媒に採用するのは、世界で初となる。また、うるさら7だけでなく、今秋から発売するダイキンの国内向け家庭用エアコンのすべての冷媒に、HFC32が採用される。

 同社の試算によると、ダイキンの家庭用エアコンの年間生産台数すべてをHFC410AからHFC32に置き換えた場合、温暖化防止効果はCO2換算で約4.6万tになるとしており、これは一般家庭の年間CO2排出量の約1万世帯分とほぼ同量になるという。

従来の代替フロン「HFC410A」と比べると、「HFC32(R32)」は温暖化係数が低く、冷媒としての効率が高いといううるさら7だけでなく、これから発売する国内向け家庭用エアコンのすべての冷媒に、HFC32が採用されるというダイキンの大阪・淀川工場で作られているHFC32

冷媒に合わせて内部構造を改良し、APF7.0を達成。ワイドリビングタイプも省エネ化

 新冷媒の採用にあたって、内部構造も大きく見直した。圧縮機や電動弁(冷媒を膨張させるための弁)などを、新冷媒に適した構造に改良。熱交換器では、新冷媒が細く長い配管でも流れやすい特性を活かし、直径4mmの細い管を内蔵した「5列高集積熱交換器」を採用。熱の伝わり易さが、従来よりも20%アップしたという。

冷媒を新しくしたことで、内部構造もHFC32に適した仕様に変更した圧縮機や電動弁も、新開発のものを採用熱交換器には、直径4mmの細い管を内蔵した「5列高集積熱交換器」を採用している
こちらがうるさら7の内部構造。フラップに水滴がつきにくいよう、空気の断熱層を設けるなど、細かい改良も施されているこちらは従来モデルの内部構造

 また、室内機の吸込み構造も改良。従来モデルは上部からのみ空気を吸い込んでいたが、うるさら7では下部からも空気を吸い込む“ダブル吸込み構造”とした。これにより、従来はあまり活用されていなかった、背面側の熱交換器も有効に使えるようになったという。

 さらに本体内部の送風ファンでは、翼の先端を従来よりも11%薄くすることで、風の経路を拡大。翼の仕切り板の数も減らし、風の抵抗を削減しているという。

 このほかインバーターでは、安定時の熱ロスを従来よりも約30%低減した、業界初の「スーパージャンクションMOSFET」を採用している。

エアコンの風の吸い込み口を、室内機下部にも設けた運転中のうるさら7の室内機。下から見ると、吸い込み口が開いている停止中は吸い込み口が閉じている
ファンとインバーターも改良した新たに採用したファンは、羽根を薄くすることで、効率をアップしている羽根の仕切り板を薄くして、風のロスをおさえた

 この結果、14畳向けのAN40PRS-WのAPF(通年エネルギー消費効率)は「7.0」と、前年モデルの「6.6」から大きく向上。省エネ達成率も142%となった。家庭用エアコンでAPF7.0を達成したのは、家庭用エアコンでは初という。

 また、18畳向け「AN56PRP-W」、20畳向け「AN63PRP-W」、23畳向け「AN71PRP-W」でも、前年モデルからAPFが向上。ワイドリビングに適した14畳以上のモデルでは、全機種で“業界トップの省エネ性能”を備えているという。なお、環境負荷低減製品の調達を推進する「グリーン購入法」についても、基準値をクリアしているという。

14畳タイプのAPFは7.0。家庭用エアコンでは初という全体的にAPF値が低かったワイドリビング向けモデルも、APFが向上してい0る

「サーキュレーションフラップ」採用で、ワイドリビングでも空気を循環

天井に沿う風を作り出す「サーキュレーションフラップ」を採用した

 気流に関する機能としては、広いリビングでも風が循環できるよう「サーキュレーションフラップ」を採用した。同フラップが風を曲げ、天井に向けて風を送り、さらに室内機の下吸込み構造と組み合わせることで、風に直接当たることなく、空気が効率良く循環できるという。同社ではサーキュレーションフラップによる空気の循環を「サーキュレーション気流」と称している。

 このサーキュレーション気流により、部屋の奥(エアコン6m先)が設定温度になるまでの時間は7分とり、従来機種の半分になるという。また、部屋の温度ムラがなくなることで、部屋のどこにいても快適に過ごしやすくなるという。

空気を循環することで、温度ムラがなくなるといううるさら7を運転中の写真。天井付近のヒラヒラが舞っており、風が届いているようだ。手をかざすと、しっかりと風が感じられる従来モデルでは、天井付近のヒラヒラはあまり揺れず、風が届いていないようだった
床に置いたヒラヒラも舞っている。風はエアコン室内機に向かっており、循環していることが分かる冷房時のフラップのようす暖房時は、フラップが下向きになって、暖気を足元に送る

冷房が苦手な人でも寒くない除湿運転ができる「新・さらら除湿」

 運転モードでは、新しい除湿モード「新・さらら除湿」が加わった。

 新・さらら除湿は、熱交換器の一部のみを冷やして除湿するモード。温かい空気も混ぜながら温度調節することで、温度はそのままに、湿度だけを下げるため、冷房が苦手な人でも、安心して寒くない除湿運転ができるという。

 また、再熱除湿のように冷やした冷気を暖めることもないため、消費電力は従来の約半分となる107Wに抑えられるという(室温28℃、湿度60%の場合)。

さらら除湿は、熱交換器の一部だけを冷やして除湿するモード温度を下げず、湿度だけを抑えるため、冷房が苦手な人に向いているという。また、再熱除湿しないため、消費電力も少ない

 加湿機能では、ダイキン独自の無給水加湿技術による「うるる加湿」も引き続き搭載される。うるる加湿では、屋外の空気中に含まれる水分を集めて加湿するため、室外機に加湿ユニットを搭載していたが、新モデルでは、加湿ユニットを室外機内部に内蔵した。これにより、室外機全体のサイズが従来より20%小型化し、出窓の下やマンションの通路側にも設置しやすくなったという。

無給水で加湿する「うるる加湿」機能ももちろん搭載6/8畳向けの室外機(左)は、従来モデルよりも20%コンパクトになった

直接当たっても不快にならない「自然な風」も採用

自然の風”を生み出すために、サーキュレーションフラップを不規則に上下させるなどで、不快になりにくい風を送っている

 運転モードではさらに、「快適エコ自動」運転も搭載する。これはボタンひとつで温度・湿度・気流をコントロールして、快適さを保ちながら節電するというモード。うるさら7における同モードでは、長時間風に当たっても気持ち良い“自然の風”を発生する技術を搭載しており、直接風に当たりたい場合や、人感センサーで人の居る場所を空調する場合でも快適に過ごせるという。

 この“自然の風”を生み出すために、うるさら7ではサーキュレーションフラップを不規則に上下させるなどで、不快になりにくい風を送っている。熊本県立大学の調査では、被験者の100%が「長時間当たっても気持ちいい」と評価されている。

 このほか、ダイキン独自の除菌・脱臭技術「光速ストリーマ」の発生装置も搭載。フィルターに補修したダニやカビ、花粉などを強力に分解し、また室内機内部にイヤなニオイが発生することも防ぐ効果があるという。

うるさら7は“最高傑作”。2013年は消費税導入前の駆け込み需要がありそう

ダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室の萩原良彦 商品企画担当部長

 ダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室の萩原良彦 商品企画担当部長は、うるさら7を開発した理由について、リビングでのエアコン使用に於いて、より省エネを推進する必要があることを指摘した。

 「意識調査を行なったところ、リビングでエアコンを常に使う人が約7割を超えていた。また量販店の調査で、高級エアコンの約6割がリビングに使われているというデータも出ている。“エアコンを使いたいけれど節約もしたい”という相反するニーズがある。特に電気代のかかる14~23畳のワイドリビング向けエアコンの省エネ化は重量。昨年は東日本大震災の影響により『節電』というキーワードがあったが、今年は『(節電要請による)節電から、節約の節電』という、電気代を意識した省エネ意識が高まると見ている」(萩原氏)

「最も節電を心がける家電」の約7割が「エアコン」。今後は“節約のための節電”へニーズが移り変わっていくという高級エアコンの約6割がリビングに使われているという
ダイキンの空調生産本部 小型RA商品グループリーダー 小泉淳 主任技師

 続けて、ダイキンの空調生産本部 小型RA商品グループリーダーの小泉淳 主任技師も登壇。小泉氏はうるさら7について「夏の環境下でも安心して使えるエアコンとして、ゼロベースから作り直したダイキンの最高傑作。お客様の高い省エネ性。快適性のニーズに満足いただける製品になった」と、製品の仕上がりに自信を見せた。 

 なお萩原氏によると、2012年度のエアコンの推定年間需要は、対前年比4%減となる790~800万台とのこと。上半期は猛暑により対前年2%増となったが、下半期は2011年冬の節電ムードの反動で、前年割れになるという。

 さらに小泉氏は2013年度について、「14年の春から消費税が上がるため、駆け込み需要もあると思われる」と見通した。

2012年度のエアコンの推定年間需要は、対前年比4%減となる790~800万台こちらはうるさら7のリモコンうるさら7は、東京・新宿のショウルーム「フーハ東京」にて体験できる

ダイキン工業
http://www.daikin.co.jp/
ニュースリリース
http://www.daikin.co.jp/press/2012/121003/index.html




(正藤 慶一)

2012年10月3日 16:24