シャープ、冷蔵庫・洗濯機の新工場をインドネシアに建設

~需要が旺盛で生産量が不足。ASEAN市場で売上3,000億円を目指す
シャープがインドネシアに建設する、冷蔵庫・洗濯機の新工場の完成予想図

 シャープは、2013年度を目標に、インドネシアのカワラン工業団地内に、冷蔵庫、洗濯機の新工場を建設。冷蔵庫では月22万台、洗濯機で月14万台を生産する計画を明らかにした。

 新工場は、2012年7月から着工。約1兆2,000億ルピー(約107億円)を投資。ASEAN市場を中心に出荷する。


建設理由は“ASEAN市場の旺盛な需要で生産量が足りない”

インドネシア新工場の概要。この工場の稼働により、生産規模は冷蔵庫で2倍、洗濯機は2.5倍に増えるという

 同社ではタイにおいて、2010年11月から冷蔵庫の生産ラインを増強。2011年11月には洗濯機の生産ラインを新たに稼働していたが、「今後のASEAN市場における旺盛な需要を考えると生産量が足りない」(シャープ 常務執行役員アセアン本部長兼Sharp Electronics[Malaysia]SDN.BHD会長の藤本登氏)として、インドネシアに生産拠点を建設する。この新工場が稼働することにより、冷蔵庫では現在の2倍、洗濯機では2.5倍の生産規模になるという。

 一方、ASEAN市場における目標として、「2011年度で1,300億円規模のビジネスを、今後2~3年以内の早いうちに3,000億円に拡大し、ASEANにおけるシャープのプレゼンスを確立すること」を掲げた。さらに、「商品企画、生産、販売、マーケティングを含めた“地域完結型ビジネス”へ早期に移行し、スピードをあげたビジネスを行なっていくこと、韓国勢、中国勢が台頭するなかで、早期にトップブランドに持って行くこと、さらに活力ある組織体の構築を目指す」などとした。

タイの工場も稼働していたが、ASEAN市場の旺盛な需要により、生産量が足りなくなったというASEAN地域で年間3,000億円の売上高を目指す

 3,000億円の内訳は、白物家電とAV機器がそれぞれ40%、情報機器が20%。現在のASEAN市場は、白物家電が50%、AV機器が37%、情報機器は13%の売り上げ構成比になっている。

 シャープのASEAN本部は、2011年10月に新設した組織で、ASEANおよびオセアニア地域を担当する。藤本氏は、「攻めるマーケティング、オンリーワン性のある経営を通じて、スピードをあげたビジネスを展開することを考えている」などと語った。

 また今後、ASEAN本部の組織をASEAN地域に移行することを検討していることも明らかにした。現在同本部には、生産会社で8社、販売会社で9社が傘下にあり、1万5千人の社員がいるという。

シャープのASEAN本部の組織体制ASEAN本部が掲げる目標

現地に合わせた商品を開発。洗濯機は防サビ加工、エアコンはジェット気流

ASEAN市場での生産体制。「地域完結型ビジネス」への移行を目指している

 ASEAN市場におけるビジネスに関しては、「冷蔵庫、エアコン、液晶テレビについては、商品企画、開発をすでに地域完結型でスタートしている。洗濯機では、商品企画はスタートしているが、今後、開発も現地で行なっていきたい」としたほか、「中小型液晶テレビについては、ASEAN特有のローカルフィットモデルの展開を強化する」などとした。

 液晶テレビでは、放送信号に含まれるノイズを自動に検出、自動補正して高画質で映せる装置「DNR」を搭載した22型、24型、32型の製品を独自に投入。洗濯機では、屋外に置かれることが多いことを考慮し、防サビ対策で樹脂ボディーを採用した円筒型洗濯機を投入。またエアコンでは、強い冷風を直接体に当てることが快適に感じるというASEANのユーザーの嗜好にあわせて、パワフルジェット気流を搭載したエアコンを投入しているという。

 また、現地工場では、現地のニーズに応えたASEAN各国別のローカルフィットモデルとして、バティック模様を採用した冷蔵庫や液晶テレビ、ボトムタンク式のウォーターディスペンサー、ホットシャワー、ヘルメット用プラズマクラスターイオン発生機などを既に投入している。フィリピンでは、一槽洗濯機と二槽洗濯機で約4割のシェアがあるという。

地域完結型ビジネスへ移行するに当たり、企画・開発も現地で行なう体制に変えていく現地のスタッフが自ら立案することで、活気ある組織を構築するという
ASEAN諸国で開発される、ASEAN諸国向けの家電。洗濯機は防サビ加工が施されており、エアコンは風に当たれるようジェット気流を搭載する既に導入されている、ASEAN地域向けの家電。一槽・二槽洗濯機では約4割のシェアがあるという

ASEAN市場でも“オンリーワン”を訴求。インドネシアは家電の普及フェーズに突入

インドネシアでは、AKB48初の海外姉妹グループとなるJKT48をプロモーションに起用している。これも日本型の販売促進策の1つ

 マーケティング活動については、日本で培った、他社にない特徴を訴求する“オンリーワンマーケティング”の手法をASEAN市場で展開することを目的として、2012年1月、Sharp Electronics(Malaysia)の傘下に「合展・個展推進センター」を設置。ASEAN現地の販売会社とチームを組んで、日本独自の合同展示会、個別展示会を展開するほか、同社現地社員と地元販売店を対象にした商品研修会や販売技術力育成、高付加価値商品の販売支援、新規販路開拓などを行なっているという。

 「インドネシアでは、単に商品を展示しているだけというケースが多く、高付加価値商品が販売しにくい環境にあったが、日本流の販売手法を導入することで、高付加価値商品の販売が増加している」という。

 2011年度は、合同展示会を20回実施。会ではすべての商品を展示し、それぞれの商品に説明員を配置。複数の取引先を招待して、その場で商談を行なった。また、個別の店舗でも、合同展示会と同じ内容の展示会を300回開催した。2012年度は、合展を30回、個展を100回開催する予定だという。

 また、日本で展開しているATOM隊(店舗と一体に訪問販売やイベントなどを行なって、需要を作り出すシャープ独自の部隊)によるトレーニングや、インドネシアの電機業界では初となる、移動サービスステーションによる販売促進活動などを展開する。

 藤本常務執行役員は、「昨日、当社の新社長人事が発表されたが、次期社長となる奥田(奥田隆司常務執行役員)は、今後、新興国を攻めるとしている。その点でも、ASEAN本部の役割が重要になる。ASEANには約6億人の人口がいるが、そのうち約4割の人口およびGDPを占めるのがインドネシア。当社売上高でも約45%を占めている。一般的にGDPで3,000億ドルを突破すると、家電製品の普及フェーズに入ってくるといわれているが、インドネシアは2010年以降、3,000億ドルを突破している。インドネシアの洗濯機の普及率はまだ10%であり、これから拡大することになる」などとした。さらに今後については「BtoBや太陽光発電、BIG PAD(タッチディスプレイ式の電子黒板)による情報ビジネスの強化も図る」としている。

ASEAN市場の人口とGDP、経済成長率ASEAN諸国では低所得者層から中間層、富裕層の拡大が期待サれている国によってはエアコンなど普及していない家電ジャンルも多く、伸長が見込めるという





(大河原 克行)

2012年3月15日 16:45