チャレンジ、地震計を搭載した地震速報システム「EQガード II」

~独自のネットワークで大地震の大きさを正確に判定

 チャレンジは、業務用の地震速報システム「EQガード II」の予約販売を11月25日に開始する。価格はオープンプライスで、データ配信料が毎月5,000円。実勢価格は取付工事費込みで30万円前後の見込み。使用時には、PCおよびインターネットと接続する必要がある。

EQガード II。PCとネットワーク接続は必須操作部はシンプルで、ほとんどの操作はPC上から行なうカラーバリエーションは、設置箇所に合わせて2色用意される
緊急地震速報に加え、オリジナルのネットワークによる情報で警告を行なう3社が共同でシステム開発を行なった前モデルのEQガードシリーズ。右は業務用モデル

 「EQガード II」は、同社が販売中の地震速報システム「EQガード」の新モデル。従来のEQガードは、気象庁の緊急地震速報を基にして、地震への警戒警報を発していた。しかし、東日本大震災の反省として、大地震の際には震度が小さく伝えられ、その後、大きめに修正される「マグニチュード飽和」の問題により、警報が発生できない場合があったという。

 これは、緊急地震速報が、マグニチュードを低く見積もってしまうことにより、実際の震度も約1.7ぐらい低く見積もってしまうために起こる。従来のEQガードでは、警報を発するレベルを調整できるため、震度4以上で警報と設定していた場合に、想定される震度が4未満なので警報が出ないが、実際の震度は4以上になったという事例があった。

 実際に、東日本大震災では、当初はマグニチュードが7.9とされ、その後9.0へと修正された。スマトラ沖地震でも同様に8.0から9.0へと修正されている。

堀内茂木氏

 この対策として、岩手大学工学部の堀内茂木客員教授が代表を務めるホームサイスモメータと提携し、「EQガード II」を開発した。堀内氏は、防災科学技術研究所勤務時代に、緊急地震速報システムの開発にも携わった経験を持つ。また、ネットワーク機能の開発には、マクロネットワークスが協力している。

 EQガード IIは、本体内に半導体加速度センサー(MEMS)を内蔵し、単体でS波の測定を行なう。多数のEQガード IIがセンターサーバーを中心にネットワークされると、個々のEQガードIIが実測した震度を基にして、より正確な地震の把握ができるという。マグニチュードが7.7より大きく、実測震度が理論震度より大きい場合には、「大きな地震が来る可能性があります」、「巨大地震発生中」などの警告を発する。また、巨大地震の場合は、断層面の大きさをリアルタイムで推定して表示する機能も備える。

 堀内氏は、「大きい地震は大きい地震だと、瞬時に判断できることが、避難に繋がる。地震の大きさが過小に伝えられることで、避難が遅れる例が見られた。同じ過ちを繰り返さぬことを目指して開発を行なった」と述べた。

 また、発生が心配されている東海/東南海地震についても「(警報から)30~40秒程度の余裕が取れる場所が多い。きちんと警告されれば、避難できる余地は大きい」とした。

堀内氏によるプレゼンテーション。「現状の緊急地震速報の課題」左の理論震度は、右の実測震度よりも低かったマグニチュード8前後より大きい地震は、低めに見積もられやすい、これを「マグニチュード飽和」という
東日本大震災でも、当初は過小評価となったより正確な情報が発信されれば、死傷者数などが減少する可能性があるマグニチュード7.7を越える巨大地震の様子をリアルタイムで推測する機能を持つ
断層の広がりのリアルタイム推定方法今回の方法による東日本大震災の震源域巨大地震のリアルタイム震度の推定方法
将来は独自の情報を携帯端末などに流すことを検討している安価なセンサーでも震度2以上であれば、正確に計測できるハンマーで叩いた震動など人為的な震動と地震は区別できる。500Hzでサンプルリングを行ない、ノイズの特徴で地震を見分ける
EQガード IIに組み込まれた機能東海/東南海地震でも有効に働くとしている「2度と同じ過ちを繰り返さぬよう、研究開発を行なっている」

 会場では東日本大震災時のデータを利用したデモンストレーションが行なわれ、地震発生時直後から、刻々と情報が変化していく様子が画面に表示された。

デモンストレーション時の画面。発生当初は震度2と予測設置されているEQガード IIの震度情報により、震度3と修正画面下に注目「巨大地震発生中」とし、「外挿震度4.1」と表示している。外挿震度は、独自に計算した震度で、気象庁の震度と区別するための用語

 なお、EQガードIIのネットワークが機能するためには、最低でも500台以上の設置が必要とされ、気象庁の緊急地震速報システムの23km間隔に相当するシステムとするには、1,000台以上の設置が必要になる。チャレンジでは、EQガードIIの販売目標を3年間で3万台としている。

 チャレンジの執行役員社長 佐々木和男氏は、「今回の震災では、せっかくEQガードを設置していただいたのに、お役に立てない例があった。技術を持つ他社と協力することで、効果的で役に立つシステムが開発できた」と製品への自信を示した。

 なお、EQガードは発表時はサンシャインから発売されていたが、会社分割により新設されたチャレンジが包括継承している。

佐々木社長販売ターゲットは自治体、大規模商業施設、工場などとくに学校への販売を重視している





(伊達 浩二)

2011年11月22日 00:00