冬期の節電は、暖房器具と照明がターゲット

~エアコンの設定温度を20℃にすると7%の節電

 11月1日に、経産省から冬の節電についての方針が発表された。

 今回、需要に供給が追いつかず、節電の数値目標が設定されたのは、関西電力と九州電力の2社となった。関西電力は10%、九州電力は5%の節電が目標となっている。

 同時に、経産省から「家庭の節電メニュー」も公開された。このメニューに沿って、家庭内の節電行動を促すものだが、夏の節電メニューに比べると決定的な手段がなく、冬の節電の難しさを感じさせるものとなっている。

冬と夏の電力需要は異なる

夏と冬の電力需要の違い。東京電力による資料

 節電メニューに触れる前に、冬の電力需要パターンを見てみよう。図は東京電力の資料で、夏と冬の電力需要パターンを比べたものだ。

 日中に電力需要のピークがある夏に対し、冬の電力需要のピークは17時から19時頃となる。つまり、企業だけでなく、家庭での電気の使用方法が大きく影響する。

 また、夏期のピークの山が高いのに比べ、冬はフラットとなっている。夏のピークの大半は冷房需要であり、エアコンの使い方に配慮するだけで、かなりの程度まで節電が可能だったが、冬は小さい節電を積み重ねる必要がある。

ターゲットは暖房器具と照明

 経産省の「家庭の節電メニュー」に戻ろう。夏のメニューと異なり、冬の節電メニューは2つ用意されている。「エアコンを使用される家庭の場合」と「ガス・石油ストーブ等を使用される家庭の場合」だ。

 このメニューには、資源エネルギー庁の調査による、冬の夕方(19時頃)の消費電力例が掲載されている。

 エアコンを使う家庭では、多い順に、エアコン30%、照明13%、冷蔵庫11%、テレビ6%となっている。

 これが、ガス・石油ストーブを使う家庭では、照明19%、冷蔵庫16%、テレビ9%、電気カーペット6%だ。エアコンを使わない分、全体の消費電力が少ないので、個々の機器の比率が高くなっているのだ。

冬の夕方に使われている電気器具の比率。エアコンと照明の比率が高い

 次に節電方法を見てみよう。エアコンを使っている家庭は、比較的節電がしやすい。「重ね着などをして、室温20℃をこころがけましょう」を守るだけで7%の節電となる。次に数字が大きいのは「不要な照明をできるだけ消しましょう」で4%節電だ。

 ほかに2%以上節電できる手段は「テレビの画面の輝度を下げましょう。必要な時以外は消しましょう」しかない。これができないときは、「窓には厚手のカーテンを掛けましょう」などの1%の手段を、複数行なって節電の数字を積み重ねるしかない。

エアコンを使用する家庭の節電メニューエアコンを使用しない家庭の節電メニュー

 ガス・石油ストーブを使っている家庭は、エアコンという目標がないので、節電の方法を見つけるのが難しくなる。しかし、消費電力全体が少ないので「不要な照明できるだけ消しましょう」を守ると、こちらでは6%の節電となる。「テレビの画面の輝度を下げましょう。必要な時以外は消しましょう」も3%になる。

 しかし、ほかの手段が難しい。「冷蔵庫を弱に設定し、使い方に配慮する」とか、「炊飯器で1日分をまとめ炊きし、保温せずに冷蔵庫に入れる」などが、それぞれ2%だ。10%の節電を実現するためには、上記の手段を3つ以上組み合わせなければならない。

悪役にされがちなエアコンだが、部屋全体を暖める場合にはヒーターよりも効率的だ

関西と九州以外でも、できるだけ節電を

 繰り返しになるが、今回数値目標が設定されたのは、関西電力と九州電力の2社だ。関西電力の節電期間は、2011年12月19日から2012年3月23日の平日とされている。年末年始の12月29日から1月4日は対象外となっている。九州電力の節電期間は、2011年12月19日から2012年2月3日の平日で、関西電力よりも短い設定となっている。

 その他の電力会社の管内では、今回は数値目標は設定されていない。「無理なくご協力いただける範囲内」で節電するように呼びかけられている。






(伊達 浩二)

2011年11月2日 00:00