三菱、送風と冷暖房を自動で切り替えて節電する“ハイブリッド”エアコン

~持続可能な節電を狙う「節電アシスト」も展開
霧ヶ峰ムーブアイ ZWシリーズ

 三菱電機は、送風と冷房・暖房を自動で切り替えて節電する“ハイブリッドシステム”を搭載した家庭用エアコン「霧ヶ峰ムーブアイ ZWシリーズ」を、11月上旬から順次発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は208,000円から338,000円前後。

 



送風と冷暖房を組み合わせた「ハイブリッドシステム」

夏のハイブリッドシステムは、冷房運転と送風運転を、体感温度を見ながら自動で切り替えられる点が特徴

 同社の高級エアコン「霧ヶ峰」シリーズの最新モデルで、快適さを保ちながら節電する「ハイブリッドシステム」を新たに搭載した点が特徴。ハイブリッドシステムは、冷房時は同社独自の赤外線センサー技術「エコムーブアイ」が体感温度を見張り、送風運転と冷房運転を自動で切り替えて、快適な温度を維持するというもの。これにより、快適性を保ったまま、自動で節電できるという。

 送風運転中は、エコムーブアイが人の体感温度に合わせて風量を自動で調節する。運転はファンモーターのみとなるため、消費電力は最大27Wと低く、同社では「扇風機よりも少ない」としている。

快適が維持できる28℃程度までは送風運転を行ない、28℃以上で暑さが感じられる場合には、冷房運転に切り替わるセンサー部は室内機中央に付いている送風運転の場合、扇風機よりも消費電力が少なく済むという
発表会で行なわれたデモ。写真は送風中のようす。発表会会場は空調が行き届いていたため、消費電力約11Wの送風運転のみとなっているここで、床面に熱を発する物体を設置するエコムーブアイが床の熱源を感知し、自動で冷房運転へ切り替わった。消費電力は248Wと、大きく増えている

 また、エコムーブアイは人の位置を把握すため、自動で追尾して送風する。さらに、離れた2人に向かって別々の風を届ける「3D気流フラップ」も搭載しており、エアコン1台で扇風機2台分の働きができるという。

 暖房時のハイブリッドシステムでは、熱が溜まりやすい天井の暖気をエコムーブアイが検知し、送風運転だけで部屋の空気を循環する「サーキュレーターモード」に自動で切り替わり、天井の熱を利用して足元を暖める。これまでは無駄にしていた熱を再利用することで、節電に貢献するという。

ハイブリッドシステムの節電効果。冷房と送風を切り替えることで、快適さを維持しながら節電をする風は2カ所の吹き分けも可能
冬は、天井に溜まった熱を、送風運転のみで循環する「サーキュレーター」モードに自動で切り替わるZWシリーズの宣伝パネル。プロゴルファーの宮里藍選手の写真とともに、「エアコンも、ハイブリッドにチェンジしよう。」というキャッチコピーが付けられている

 リモコンには、直感的に操作しやすいGUI(グラフィカルユーザインターフェース)を、昨年より継続して採用。現在の節電レベルを最高200までの値で表示したり、節電状況をブタのアニメーションで表示する「節電診断」も備えている。同社に拠れば、これによりどれだけ節電に貢献しているかを把握して、楽しく節電する効果があるとしている。

ブタのアニメイメージ

 リモコンにはさらに、省エネ行動をユーザーにアドバイスする「おしらせナビ」も搭載した。例えば、外気温が低下した場合にエアコンの運転停止を勧めるなど、エコムーブアイが計測したデータをもとに節電をアドバイスすることで、ユーザーが気づきにくい省エネにつながる行動がタイミング良く実行でき、省エネ効果が最大限に引き出せるという。

リモコン画面も文字も大きいグラフィックをふんだんに使い、操作がイメージしやすくしている
節電レベルを上げるためのメニューも用意される電気代の目安も表示できる「すぐに冷やしたい」「除菌脱臭したい」など、目的別のメニューもある

 内部構造では、新構造の圧縮機を採用。シリンダーを20%縮小するなど、冷媒圧縮時に発生する損失を軽減している。またインバーターには炭化ケイ素(SiC)を用いた次世代パワー半導体を採用することで、インバーター効率を向上した。定格冷房能力3.6kWの「MSZ-ZW362ST」の期間消費電力量は1,110kWhで、同社では3.6kWクラスにおいて「省エネNo.1」としている。

圧縮機は損失の少ない新型を採用インバーターには炭化ケイ素(SiC)を用いた次世代パワー半導体を採用


“扇風機だけの空調は我慢の世界”

三菱電機 静岡製作所 永友秀明所長

 三菱電機 静岡製作所の永友秀明所長は、ハイブリッドシステムを新搭載した理由について、扇風機だけの空調では、快適さが得られないことを指摘した。

 「扇風機だけの空調は、あくまでも我慢の世界。部屋の温度が上がれば、熱中症などで体調が悪くなるという心配も出てくる。ハイブリッドシステムは、エアコンを使いながら快適な節電ができることをご提案したいという思いから生まれた」(永友所長)

 また、本製品の送風機能については、「通常のエアコンの送風運転には、人が感じる温度はまったくわかっておらず、ただ風が出るだけで、快適とはほど遠いものだった。しかし本製品なら、(エコムーブアイで)温度分布から人の位置や体感温度を検知することで、快適性を高めることに成功した。消費電力も、技術の進化によって10W~27W程度と低い」とアピールした。

節電は重要だが、扇風機だけの冷房では、熱中症などで体調が悪くなるという心配も出てくるエアコンの送風運転は、圧縮機を停止しているため、消費電力は少ない。ZWシリーズの場合、10~27W程度という
三菱電機 常務取締役 リビング・デジタルメディア事業本部 梅村博之本部長

 なおZWシリーズの実売価格は、対前年1万円程度の値上げになるという。三菱電機 常務取締役 リビング・デジタルメディア事業本部の梅村博之本部長は、値上げの理由について、エアコン室外機の圧縮機モーター、送風機のファンモーターなどに使用されるネオジム、ディスプロシウムといったレアアースの価格が、前年の10倍以上に高騰しているためとした。

 「今回の価格高騰は、メーカーの自助努力だけではカバーしきれないレベルにある。(エアコンなど)家庭用空調機器においては、5~15%の値上げを実施させていただく。喫緊の対策としては、その価格を納得していただける商品価値の向上がポイントとなる」


“持続可能な節電”を実現するために、「節電アシスト」シリーズも展開

「節電アシスト」シリーズの概要。“楽しく続けられる節電”がテーマ

 三菱電機ではさらに、家電製品における快適な節電をアシストする機能を「節電アシスト」と名付け、高度な機能を簡単に使用する「らく楽アシスト」とともに、シリーズ展開していくと発表した。

 梅村本部長は、節電アシストシリーズを展開する狙いとして、持続可能な節電対策を推進していく狙いがあるという。

 「夏季ピーク時における家庭の電力需要の割合を見ると、全体の約30%と高い。今後も電力不足が続だろうが、不測の大停電を回避し、電力負担を最小限に抑えるには、企業とともに家庭部門出の取り組みが必要になる。しかし、この夏に節電意識が高まった一方で、節電行動を負担と感じている人が約3~4割おり、“我慢する節電”への不満を感じている人が増えてきた。そこで、持続可能な次なる節電対策を講じることが、家電メーカーとしての責務である」(梅村本部長)

 節電アシストシリーズに含まれる家電は、液晶テレビ「REAL」、サイクロン式掃除機「風神」、IHクッキングヒーター、冷蔵庫。冷蔵庫は9月下旬に発売予定の新製品が対象となる。

節電を意識している約3~4割の人が、節電に負担を感じているという同高度な機能を簡単に使用する「らくらくアシスト機能」とともに、シリーズ展開していく
テレビCMも放送される「節電アシスト」と「らく楽アシスト」の製品。写真左端の冷蔵庫は、9月下旬発売予定の未発表製品となる






(正藤 慶一)

2011年9月1日 16:08