三洋、上期は減収減益。「電機からエネルギーへ」鮮明に

東京では衛星中継で大阪の模様を流した

 三洋電機は、2009年上期連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比22.1%減の7,840億円、営業利益は86.0%減の33億円、当期純損益は前年同期の326億円の黒字から、マイナス374億円の赤字に転落した。最終損益が700億円もの減少となったのは、前年同期に携帯電話事業の売却に伴って、308億円の損失を計上したことが影響している。

減収減益となった上期決算すべての部門で前年を下回った第1四半期比較では改善している

 三洋電機の佐野精一郎社長は、「部品を中心にした底入れ感がある。営業利益においても、一定の改善を見ることができた。上期は当初赤字の見通しに対して、33億円の営業黒字で着地した」と総括した。

 原価低減活動や構造改革の成果が発揮できたことを自己評価。また、第2四半期実績は、第1四半期に比べて、すべての部門で増益となっていることを示した。構造改革などで470億円程度の成果が出ているという。

 セグメント別では、コンシューマ部門の売上高は前年同期比18.4%減の3,057億円、営業損益は62億円改善の59億円。

 デジタルカメラが堅調に推移したほか、電化製品においては構造改革の成果や商品ラインアップの見直しによって上期は黒字化。「炊飯器や電動自転車などが好調だ」とした。

 コマーシャル部門は売上高が18.5%減の1,050億円、営業損益は8億円増加の34億円。企業の投資抑制の影響があったほか、大型エアコンが減少。ショーケースやメディアコムは増加した。コンポーネント部門は、半導体や海外を中心とした二次電池の売り上げ減少などにより、売上高が25.2%減の3619億円、営業損益は250億円悪化の112億円となった。

 2009年度の業績見通しは、9月25日の修正値を踏襲。売上高は前年比6.3%減の1兆6,600億円、営業利益は167億円増の250億円、税引前損益は220億円の赤字、当期純損益は300億円の赤字とした。

「まだ下期の状況は不透明。社内には景気が回復するのは、来年下期以降だといっている。250億円の営業利益の目標は変えずに、そこに上積みできように努力したい」(佐野社長)とした。

 一方、同社では、エナジーソリューション事業への参入を発表した。

 佐野社長は、「当社を取り巻く環境は日々競争が激化している。さらなる成長に向けて、新たな価値を生むビジネスモデルを構築することが必要」とし、その切り札として、エナジーソリューション事業を位置づけた。

 同社では、これまで世界トップクラスの変換効率を誇る太陽電池による創エネ、民生用から業務用まで幅広い用途で活用されている二次電池による蓄エネ、冷熱技術などを生かした業務用機器による省エネの3つの観点から製品を提供してきたが、これらを活用し、CO2排出量の削減やランニングコストの削減を提案するソリューション提案を「活エネ」と位置づけ、これにより、2015年度には新たな1,000億円規模の事業を創出するという。

 具体的には、太陽電池で発電した電力や、割安な深夜電力を二次電池に蓄電し、蓄えた電力を最も効率的に利用たできるように、コントローラ(パワコン)で管理。ショーケースや空調、照明などにエネルギーを供給することで、大幅なCO2排出量の削減と、省エネによるランニングコストの削減を図るのが狙い。

エネルギー関連事業へ軸足を移す

 これを「スマートエナジーシステム(SES)」とし、三洋電機の技術、製品をさらに生かすことができるとした。

 本格的な事業化は来年春を目指しているが、早期の事業化に向けて、2010年3月の製品化に向けて、1kWh以上の大容量・高電圧リチウムイオン電池システムを開発し、HIT太陽電池の蓄電池システムとして活用するほか、同社のHEV用二次電池の新工場である兵庫県の加西事業所にスマートエンジーシステムを導入し、実証実験による商品開発を加速する。同事業所は、スマートエナジーシステムの導入のために50億円の投資し、2010年7月に同社のエネルギー技術を活用するショールームとしても位置づけ、年間2,500トンのCO2削減を見込むという。

創エネ分野の実証実験にも投資するエネルギー事業、特に電池事業を中心に据える

 また、商品特性に応じた他社とのコラボレーションを展開し、店舗、学校、工場、マンション、高層ビルなどに提案する体制を構築。商船三井とは、船舶の甲板上の太陽電池で発電し、蓄電池システムで動作させる共同プロジェクトを展開。ローソンとは、店舗のCO2排出量削減を目指して、太陽光発電システム、蓄電池システム、空調システム、冷蔵、冷凍ショーケースと連動したソリューションを提案。深夜電力を昼間のピーク時に活用するといった取り組みを、ローソン呉広公園店に機器を導入して実証実験を進めている。

 さらに、徳島県庁には、駐輪場の屋根に太陽電池パネルを設置し、ソーラーチャージングシステムとして、電動自転車に充電できるサービスを開始し、今後、他の自治体にも展開していくという。

 三洋電機では、社長直轄部門として、エナジーソリューション事業統括部を70人規模で11月1日付けで新設。技術開発や、マーケティング・営業戦略、エンジニアリングを含むサービス開発機能、施工管理、品質保証などを行なう。

「太陽電池は2004年には日本のメーカーが41%のシェアを持っていたが、参入企業が増え、欧米や中国メーカーの参入によって、日本のメーカーのシェアは14%にまで縮小している。成長率も鈍化している。また、二次電池は、低価格の韓国メーカー、コストダウンに優れた中国メーカーの台頭によって、日本のメーカーのシェアは落ちている。当社の二次電池事業も2008年は落ち込んだ。三洋電機は、二次電池事業では、現在、グローバルナンバーワンの位置にあり、これを維持する。また、ソーラー事業では、現在、全世界10位だが、これを2015年度にはトップ3にまで高める。そのためにもエナジーソリューション事業によって三洋電機の特徴を生かす必要がある。これはパナソニックとの連携でも効果を発揮できる事業になる」とした。

中国メーカーなどの台頭で日本勢のシェアが減っている太陽電池二次電池も同様の状況エネルギー分野を今後の主軸とする




(大河原 克行)

2009年10月30日 00:00