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ごはんの炊き方でおいしさって変わる? AKOMEYAで「利き米」してきた

AKOMEYA(アコメヤ)の「新米祭りワークショップ~利きの会~」に参加してきた

今年も新米のシーズンが到来した。新米の値段はまだまださほど下がってはいないものの、政府の備蓄米が放出されるなど、深刻な米不足に陥った少し前の状況に比べれば、選択肢が増えたのはありがたい限り。どんなお米であっても、できるだけおいしく味わいたいものだ。

今回は、お米関連のセレクトショップ「AKOMEYA TOKYO(アコメヤ トウキョウ)」が開催した「新米祭りワークショップ~利きの会~」に参加して教わった、おいしいごはんを炊くための基礎知識を紹介したい。

「AKOMEYA TOKYO」は、お米やごはんと相性のよい調味料や食材、食器・調理道具などを扱うセレクトショップ。2013年4月に東京・銀座に出店したのを皮切りに、現在は都内を中心に全国に実店舗とオンラインショップを展開している。2025年11月7日には、36店舗目で湘南エリア初出店となる「ラスカ茅ヶ崎」店が神奈川県茅ヶ崎市にオープンする。

同店では、お米の品種や保存方法、炊き方に精通した「アコメヤお米コンシェルジュ」と呼ばれる独自の社内資格を持ったスタッフが常駐。購入のアドバイスを行なってくれるほか、今回参加した「利きの会」などのイベントも定期的に行なわれている。

講師を務めた「AKOMEYA TOKYO in la kagū」店長の渡邉さん。胸元の金のお米バッヂが「お米コンシェルジュ」の目印だ

炊飯器でお米を炊く際は、「白米」「無洗米」などまずは精米方法を選ぶのが一般的な手順だ。機種によっては、「玄米」や「米」も選択肢にあったりするが、それぞれなんとなくは知っていると思っているものの、正確にその違いや特徴を説明するのは意外に難しい。

もっとも日常的かつ一般的なのは「白米」だ。いうまでもなく、米ヌカをほぼすべて削った状態で、食べやすくした精米方法だが、同じ白米でも実は量販店等で市販されているものよりも店頭で精米したもののほうが胚芽の部分や米ヌカも残っているそうだ。米ヌカが残っているほうが栄養価はもちろん高いが、臭いや見た目が気になる場合はよく洗えば問題はないとのことだ。

これに対して「玄米」は精米をしていないお米。収穫後にもみ殻を外しただけの状態で、米ヌカを一切削っていないお米だ。炊飯すると、やや硬めでプチプチとした食感があり、米ヌカ特有の香りが強く残っているのが特徴。しかし、米ヌカに多く含まれている食物繊維、ミネラル、ビタミン群の栄養素を丸ごと摂取できるのが利点だ。

もう1つ「分づき(ぶづき)米」といわれる精米方法がある。ヌカや胚芽を残した状態で精米する、いわば白米と玄米の中間。割合に応じてそれぞれ特徴とメリットがある。

「3分づき米」は、ヌカを約3割取り除いた状態。味わいや見た目は玄米とほぼ同じだが、玄米の殻に傷が付いた状態になるため、玄米に比べると炊き上がりは柔らかくなるのが特徴だ。玄米を少し柔らかく食べたい場合にお勧めの精米方法となる。

「5分づき米」は、ヌカを半分取り除いた精米方法。3分に比べて米ヌカを大きく削っているため、炊き上がりは白米に近い柔らかさだが、米ヌカ特有の臭いや味わいは弱くなる。もっとも栄養のある胚芽の部分をほぼすべての米粒で残しているため、「玄米食を始めてみたい」という初心者に適している。

「7分づき米」はヌカを約7割取り除き、栄養価の高い胚芽の部分をやや残しつつも、米ヌカはほぼ削った状態。味わいや食感はほぼ白米だが、米ヌカが少量残っているため、香ばしさがほのかに香るのが特徴で、白米よりも少しでも栄養を摂りたい人に向いている精米方法だ。

精米方法の分類

おいしいごはんを炊くには、「計量」「洗米」「浸漬」の3工程がポイントになる。一般的に、お米の計量は炊飯器に付属している計量カップを使用し、水量は内釜の目盛りを目安にしている家庭が多いと思うが、推奨されるのはスケールを使用した計量だ。というのも、1合=150gだが、粒の大きさにバラつきがあるため、すき間ができて毎回同じ容量になるとは限らないからだ。

「日によって140gしか入っていなかったり、160g入っていたり、きっちり150gにはなりません。日によってべちゃべちゃだったり、硬かったりするのはそのため。計量カップはあてにならない」との説明。

一方、スケールを利用することで、お米の「合」という単位に縛られず、家庭にちょうどよい量を炊飯できるのも利点となる。例えば、2合(300g)だと足りないけど、3合(450g)だとちょっと残るといった場合には、400gにするなど柔軟に最適な量を炊飯できる。

お米の計量はスケールを使うことで、計量カップよりも正確に計量できる。任意の量を炊飯できるのもメリットだ

同様に、水加減も内釜の目盛りではなく、重さで量るのがよい。白米を炊飯器で炊く場合の標準水量は1.4倍、土鍋の場合は1.2倍。玄米であれば1.7倍~2倍、分づき米は1.2倍~1.7倍が目安だ。これらを基準に、硬め・柔らかめなど好みに合わせて適宜水加減をしていけばよい。

そして、洗米においてのポイントは、きれいな水をお米に吸わせること。そのため、洗米は手早く行なう。1杯目の水では洗うのではなく、表面の汚れを取るだけにしてすぐ捨てること。最初の水がもっともお米に吸収されてしまうのが理由だ。

水に浸して洗っている間はお米がどんどん水を吸ってしまう。そのため、お米を洗う際は、水を捨てた後、米粒の周りにまとわりついている水を使って、指先でシャカシャカ洗う程度がよいとのことだ。

お米にきれいな水を吸わせるために、1杯目の水はそのまま捨てることを推奨
洗米は水を捨てた後にお米の周りにまとわりついた水で行なう。お米にできるだけ汚れた水を吸わせないようにするためだ

お米の分量にもよるが、数回で研ぎ汁が無色になり、臭みもほとんどなくなってくる。回数は明確にはなく、好みによって決めればよいそう。というのも、ひと昔前に比べて精米技術は向上している。そのため、洗い過ぎは必要以上に表面を削ってしまうことになり、割れ米の原因にもなってしまうので禁物だ。以前はお米を研ぐといういい方をしていたが、現在は洗う程度で十分だそうだ。

お米を洗った後に、お米の種類や炊飯方法によって適切な量の水を足す。洗米後のお米をスケールに容器ごと載せると既に重量は増えているが、容器自体の重さ+お米の量+必要な水の量になるように水を足していくとよい。こうすることで、洗米後のお米は必ずしもザルに上げる必要もないそうだ

浸漬過程においては、お米のヒビから水を浸み込ませることで、中からふっくらと炊き上げられるようになる。浸漬時間は水温(季節)や分つきによって調整する。

具体的には、白米の推奨浸漬時間は30分~1時間。夏は30分以上、冬は60分以上が目安だ。白米の場合は60分でほぼ満水になり、それ以上漬けていてもお米がふやけたりすることはないそうだ。

分づき米の場合は1~10時間、玄米は12時間が目安。白米に比べると長時間の浸漬が必要なため、前日の夜に洗っておく場合には、洗米した内釜やボウルに入れたまま冷蔵庫で保存しておき、水の劣化を防ぎたい。

ワークショップで行なわれた炊飯の実演には、同店で販売されている「有田焼黒釉ごはん土鍋」という土鍋が使用された。土鍋で炊いたごはんがおいしいといわれる理由は、熱伝導(遠赤外線)にあるとのこと。

中でも有田焼の土鍋は、特に遠赤外線効果の高い鉱物を厳選/調合して作られており、温度をゆっくりと上げてお米に火を入れることができることから、芯までふっくらとした食感と甘みが出るそうだ。保温性にも優れており、遠赤外線効果により一段と味に深みが出せる。製造段階で長時間高温で焼き上げることで土が締まってとても硬く焼き上がり、耐久性にも優れていることが、古来より土鍋が炊飯用途として選ばれている理由だそうだ。

実演に使用された「有田焼黒釉ごはん土鍋」。1/2/3/5合用があり、3合までは炊き時間約10分、蒸らし時間10分で炊飯ができる手軽さでも人気の商品とのこと

おいしいごはんを楽しむためには、お米の正しい保管や管理方法も押さえておきたい。鮮度を保つための最大のポイントは、「米ヌカに含まれる油脂分の酸化を防ぐこと」。そこで重要なのは、空気・湿度・温度の管理となる。

空気に触れさせず、湿気に触れさせないためには密閉容器に入れて保存し、保管場所は高温の場所を避けること。最適なのは野菜室での保管だが、野菜室にスペースがなかったり、サイズの大きな密閉容器がなかったりする場合は、湿度のコントロールに優れる、桐の米びつに入れて極力涼しいところで保管しておくのがよいという。

あるいは、精米したてのお米をこまめに買うという選択肢もアリだ。最近の高価格帯の炊飯器には、銘柄を指定した炊き方ができるモデルも多い。こうしたせっかくの機能を有効に活用するために、2~3合に小分けされた真空パック米を利用すれば、便利なうえに、いろいろな銘柄のお米を気軽に楽しむことができる。

とはいえ、たくさんの銘柄米の中から好みのお米を見つけるのはハードルが高かったりもする。AKOMEYAでは、銘柄米を「味わい別 お米マトリックス」図を用いて分類している。縦軸が「もっちり」から「あっさり」で、もっちりしているほど甘みが濃くなる傾向にある。横軸は「しっかり」から「やわらか」で、しっかり度が高いほどはっきりした味わいで、噛みしめるような甘みが感じられる。一方、やわらか度が高くなるにつれて、甘みを先に感じやすく、優しく淡白な味わいになる。

AKOMEYAの「味わい別 お米マトリックス」

もっちり系の代表例は、コシヒカリ、ミルキークイーン、龍の瞳。やわらか系は、つや姫、きぬむすめ、いちほまれ。しっかり系は、青天の霹靂、ひゃくまん穀、サキホコレ。あっさり系は、ササニシキ、風さやか、ひめの凛などが挙げられる。

おかずとの相性は、もっちり系×やわらか系のお米が、漬物程度があれば十分のおかずが要らないタイプ。粘りが強く、ふっくらもちもち食感があり、冷めると弾力が増す特徴がある。

料理との一体感を引き出すお米は、しっかり系×あっさり系。一粒一粒がしっかりと感じられ、しつこくない食感で丼やカレーに合い、べたつきがないため炒飯やドリア、お茶漬けとの相性もよい。

炊き込みごはんやパエリア、ピラフに適しているのは、あっさり系×やわらか系のお米。水を吸いやすく、味が入りやすく、酢も浸みやすいため酢飯にも向いている。

おかずを引き立てるのが得意なのは、もっちり系×しっかり系のお米。食べ応えがあり、肉料理や中華料理など味が濃いめのおかずやとんかつを引き立ててくれる。

ちなみに、AKOMEYAでは好みのお米を選びやすくするために、4つの味わい別にカラーリングによるラベル分けをして販売しているとのこと。購入する際には参考にしてほしい。

AKOMEYAでは、好みの味わいのお米を見つけやすいように4つの味わい別にラベルで色分けされている

そのほか、栽培方法による違いもお米のラベルに明記されている。主要な栽培方法には、化学合成農薬や化学肥料などを必要に応じて使用している「慣行栽培」、生産された地域の慣行レベルに対して農薬の使用回数が50%以下・化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培され、登録認証機関により認証された「特別栽培」、過去3年以上、農薬・化学肥料・土壌改良剤をまったく使用していない田畑で栽培され、登録認証機関により認証された「有機栽培(正式名称は有機JAS)」がある。

栽培方法による分類
パッケージの裏面のラベルで栽培方法の詳細を確認できる。「特別栽培」の場合は、定められた条件も明記されている
「有機栽培」の場合は、写真右の「ミルキークイーン」のように有機JASマークが印刷されている

今回教わった、お米をおいしく楽しむための基礎知識は、炊飯器の種類にかかわらず共通した普遍的なものだ。自宅でさっそく実践してみたところ、いつもと同じお米を同じ炊飯器で炊いているにもかかわらず、おいしさが一段格上げされたと感じた。炊き方ひとつでこれほどまでに変わるものかと驚嘆した。

炊き上がったごはんを試食
試食会では、おすすめのごはんのお供としてフリーズドライの豚汁や、ごま和え胡麻、ピリ辛牛そぼろしぐれ、おおぶり焼きほぐし紅鮭も提供された

最近の炊飯器は驚くほど技術が進化しており、それなりの機種を選べばどれもおいしく炊くことができ、違いは既に人間の味覚の能力では判別が難しい閾値を超えているものだと思っていた。しかし今回、ほんのちょっとした手習いだけでこれほどまでに差が出ることを体験し、お米のポテンシャルはまだまだ眠っており、炊飯の世界の奥の深さを実感した。今後も炊飯器メーカーの「おいしさ」に対する飽くなき探求に期待と応援をしたい。

利き米体験として提供されたごはん。写真左上から右下の順に、いちほまれ(白米)、風さやか(白米)、ミルキークイーン(白米)、いちほまれ(5分づき)、いちほまれ(玄米)。
チャート表をもとに評価を行なってみたものの、確かに違いはわかるものの、チャートに当てはめていくのが意外に難しかった

ちなみに、AKOMEYA TOKYO ブランドマーケティング部の柘野さんによると、「弊社と契約している生産者さんからはこれまでと変わっていないと聞いている。昨年に比べると少し高くなっているが、生産者さんのおかげで弊社では市況と比べると比較的抑えられた価格で販売できており、だいたい120%の価格に抑えられている」とのことだった。