パナソニック、朝は白色、夜は電球色の光で“知的生産性”を維持するLEDオフィス照明

「エコサーカディアン照明制御」のデモンストレーション

 パナソニックは、省エネと知的生産性の維持を狙ったオフィス照明「エコサーカディアン照明制御」について、2012年度をめどに製品化すると発表した。導入価格は未定。

 同社がオフィス照明を新たに開発した理由には、東日本大震災以降、節電対策として照明を減灯するオフィスが増加していることがあるという。JIS規格ではオフィスの推奨照度を750lxと定めているが、減灯によって照度が下がると、覚醒感が低下し、知的生産性への悪影響が危惧されるという。

パナソニック エコソリューションズ社 松蔭邦彰副社長

 「この状態が継続することは消して好ましいことではない。一定の明るさの光を浴びていない人は、仕事中に眠くなりやすい。生産性も下がるため、(減灯は)おすすめできない」(パナソニック エコソリューションズ社 松蔭邦彰副社長)


東日本大震災以降、節電対策として照明を減灯するオフィスが増えてきているしかし、照度不足により覚醒感が落ち、知的生産性に悪影響が出る恐れがあるという

 そこでパナソニックでは、24時間周期の生体リズム「サーカディアンリズム」に配慮した、“エコ”と“知的生産性”の維持を両立を狙う照明「エコサーカディアン制御」を開発した。午前中から午後早い時間帯は、色温度を高めた白色系の光で覚醒感を維持する。午後からは徐々に色温度を下げていき、夜間は低照度・低色温度の電球色の光で、翌日のサーカディアンリズムに配慮する。

 また、同制御で使用されるLEDモジュールには、一般的なLEDよりもサーカディアンリズムへの作用量が大きくなるよう、独自の波長制御LEDモジュールを開発。高色温度の光では、同じ色温度の市販LEDモジュールよりも、サーカディアンリズムへの作用量が約12%高められているという。

「エコサーカディアン制御」では、自然界における昼夜の色温度変化を再現するエコサーカディアン制御の制御内容。朝~昼は白色の明かりだが、昼~夜にかけえて徐々に電球色へ移行。同時に減光していく
朝9時の照明のデモンストレーション(以降、写真の色温度は固定)夕方になるほど、光色は電球色に変わり、減光していく夕方6時は完全に電球色になる
LEDには、サーカディアンリズムに作用しやすい独自の波長制御技術を採用従来のLEDと比べて、サーカディアンリズムの作用量が12%高くなった

 この照明制御による効果や影響について、パナソニックは九州大学と共同研究を実施。日中の照明を「従来照明」「節電照明」「エコサーカディアン制御」として比較したところ、節電照明ではタスクのエラーの回数が増えたり、覚醒感が低下した一方で、エコサーカディアン制御では従来照明と比較し悪影響が見られなかったことが確認された。

 このほか、従来照明から変えることで、オフィス稼働時間全体で10~15%の省エネ効果があるという。

 「サーカディアンリズムを整えるには、朝の光をいかに浴びるかが一番重要。午後に光を抑えるが、この部分が(通常の照明と比べた)省エネになる。また、波長を制御するというのも、LEDだからこそできたことになる」(松蔭副社長)

パナソニックの調査による、従来のオフィス、減灯したオフィス、エコサーカディアン制御のオフィスにおける差。“節電”したオフィスでは、脳波の評価値が下がっているが、エコサーカディアン制御では従来と変わりない“節電”オフィスでは、エラーの数も増えてしまった調査は九州大学の協力のもと行なわれた

 今後は、研究と製品開発を進めることで、2012年度中の製品化を目指す。汐留の同社オフィスビルでは、実際の職場で実験されているという。

 なお、パナソニックのLED電球およびLEDシーリングライトの売上は非常に好調で、2011年10月の新製品投入以降、約4割のシェアをキープしているという。松蔭副社長は両方のシェアについて「業界トップと認識している」と語った。

松陰副社長によれば、パナソニックのLED電球・LEDシーリングライトの売上は非常に好調で、シェアは約4割というパナソニックが旧松下時代から開発してきた、サーカディアンリズムに関わる商品





(正藤 慶一)

2012年3月6日 16:50