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コーヒーメーカーの「ハイブリッド式」って何? 同じ粉でも違う味わいを体験

コーヒーメーカー HYBRID BREW ADF-A060

タイガー魔法瓶が10月1日に発売する「コーヒーメーカー HYBRID BREW ADF-A060」(オープンプライス/直販価格33,000円)。一般的な透過式(ドリップ式)と、サイフォン式やフレンチプレスに代表される浸漬(しんし)式の2つの“ハイブリッド抽出”という新しい提案だが、いったい何がこれまでと違って、どんな味のコーヒーが楽しめるのだろうか? 発売前に体験してきた。

ハイブリッド抽出は、透過式と浸漬式の2つの抽出方法を組み合わせて、それぞれの良さを融合し、豆の風味や旨味など元来豆が持っている個性を余すことなくしっかりと引き出すとのこと。

本体外観はドリップ式コーヒーメーカーに近い印象だが、大きな違いは、フィルター下部にある制御弁の開閉によってDRIP(透過式)とHOLD(浸漬式)を繰り返すこと。蒸らし工程では、挽いた豆全体にお湯をしっかりとなじませる「浸漬蒸らし」を採用する。一度に淹れられる量は最大6杯。

透過式と浸漬式の違い
ハイブリッド抽出の特徴

抽出メニューは3種類で、ドリップとホールドを繰り返し豆全体から成分をしっかりと引き出す「Rich(ホット/ハイブリッド抽出)」、高温で香りと苦味などしっかりした味わいを引き出す「Strong(ホット/ドリップ抽出)」、アイスコーヒーに適した濃さで抽出する「Iced(アイス/ハイブリッド抽出)」から選べる。

天面の操作ボタンで抽出メニューや杯数を選択
3つの抽出メニューの基本的な違い
ハイブリッド式の抽出の方法

Richでは、最初に弁を閉じた状態で粉全体をしっかり蒸らして、苦味や酸味、香りを引き出して抽出。蒸らしが終わると弁を開いてサーバーへコーヒーを落とし、フィルター内のお湯が少なくなると再度、弁を閉じてお湯をため、コーヒー粉の全体から味を引き出す。一方のStrongでは弁を閉じずにドリップを続けるため、これが味の違いとなって表れるわけだ。

コロナ禍などでコーヒーの消費増が注目される中、ここ数年は若年層などもターゲットに“クリアで雑味の少ないコーヒーの実現”が家電メーカーの一つの争点になっている。新しいHYBRID BREWで雑味を抑える仕組みについてタイガー魔法瓶 カフェマシン商品企画担当の久木野景介さんは「雑味が出てきやすいのは抽出の後半がメイン。従来のドリップ式では効率がいい抽出になるものの最後に雑味を引き出す要因になってしまっている。このマシンでは、雑味を引き出しにくい浸漬式を使っていることと、後半で抽出の温度自体を少し下げて、雑味を極力抑えている」と説明する。

3メニューの抽出工程の違い

ハンドドリップとマシンの違いについては「コーヒーマシンでは、これまでハンドリップのような“回しがけ”が難しいのが課題だった。その解決策として浸漬式により均一して安定した抽出を行なえるようになった」とのこと。

タイガー魔法瓶 カフェマシン商品企画担当の久木野景介さん
サーバーはガラス製で、抽出の過程を目でも楽しめるようなデザインに
毎日使いやすいように、手入れのしやすさも特徴。サーバーやフィルターは食洗機に対応する
タイガー魔法瓶の金丸等カフェマシンブランドマネージャーは、企画背景について、コーヒーメーカーやコーヒー豆の単価上昇が続く中で「自宅でも本格的な味わいを堪能できるコーヒーメーカーが求められている。成熟市場の中でも着実な成長が期待されている」とした。HYBRID BREWは日米同時発売でグローバル展開も

同じ粉でも大きく違う味わいに。コーヒー抽出のプロも納得

実際に「Rich」と「Strong」「Iced」の3つを試飲してみると、一般的なドリップ式に近いStrongは、香りやコクがストレートに出て、苦味や酸味などコーヒー好きな人にとって満足度の高そうな味わい。好きな豆の特徴をしっかり楽しめそうだ。

一方でハイブリッドの特徴であるRichは甘味がしっかり感じられて、Strongに比べて香りもフワっと優しく広がるイメージ。見た目の色の濃さもRichの方が淡めで、同じコーヒー粉とは思えないほど違いが出ているのが分かった。どちらのモードも違った良さがあるが、Richの方が、より幅広い人に受け入れやすそうだ。今回はスーパーに売っているような一般的な粉で飲んでみたが、飲みなれた種類(粉)でもモードによって変化が楽しめるだろう。Icedもハイブリッド抽出によって雑味が少なくクリアな味わいが印象的だった。

左からRich、Strong、Icedのコーヒー。写真ではわかりづらいが、左のRichはStrongに比べて色が淡く(赤っぽく)見えた

コーヒー抽出の国内競技会である「ジャパン ブリューワーズ カップ2023」で優勝し、世界でも2位になった飯髙 亘さんもHYBRID BREWを体験。自らも競技会においてハイブリッド式でコーヒーを淹れるという飯髙さんは「ドリップでは、味の強度やコクがしっかり出るメリットがある一方、酸味や苦味が強く出過ぎる場合があるなどコントロールの難しい点が課題だった。浸漬式は柔らかい味わいになり、甘さなどが感じやすく、バランスを整えやすい。ハイブリッド式は両方のいいところを掛け合わせて、透過でしか出せない酸味や甘み、苦味の部分を出しながら浸漬でバランスを整えられる、理にかなった方法」と高く評価している。

飯髙 亘さん