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パナソニックから役に立たないロボット? ニコボが一般販売

NICOBO(ニコボ) RW-NC1

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションは、コミュニケーションロボット「NICOBO(ニコボ) RW-NC1」の予約受付を3月7日に開始した。一般販売は5月16日。価格は本体が60,500円、月額料金(ベーシックプラン)が1,100円。

「弱いロボット」をコンセプトに開発された。人の代わりに作業を行なうといった便利さはないが、寝言を言ったりオナラをしたりすることで、癒しや笑顔をもたらしてくれるという。

ニコボは丸い本体にしっぽが生えた生き物のような見た目。撫でると喜んでしっぽを振り、人懐っこい仕草をするが、機嫌が悪いとしっぽを振らないこともあるというマイペースさも特徴とする。独自の「モコ語」に加え、カタコトの日本語を話す。

オナラしたりする“弱い”ロボット
マイペースに過ごす

本体には人を認識できるカメラ、明るさを判別する照度センサー、マイクを搭載。さらに6軸センサーで持ち上げられたり撫でられたりしたことがわかる。

音声認識向上のため、同社のノイズ除去技術も採用。ニコボの発話した音声をマイクが拾わないようにしてハウリングを防ぐエコーキャンセル、エアコンなどの定常ノイズを低減するノイズプレッサ、特定方向へマイク感度を上げるビームフォーミング、内蔵モーターのノイズを抑圧するメカノイズ抑圧技術といった特許取得済みの技術を搭載している。

カメラとセンサーを搭載
パナソニックのノイズ除去技術を採用

2021年にはクラウドファンディングサイトの「Makuake」にて応援購入プロジェクトを実施していた。今回の一般販売に伴いカラーラインナップを追加。従来のストーングレーに新色のスモークネイビー、シェルピンクを加えた計3色で展開する。いずれも公式サイトのみで購入可能。

本体の購入とは別途かかる月額料金は、ニコボが言葉を覚えたり、購入者との暮らしに適合し進化を続けるために必要としている。

左からシェルピンク、ストーングレー、スモークネイビー
ニコボ導入にかかる費用

さらに、ニコボと安心して暮らしていくためのサポートメニューとして「NICOBO CLINIC」を用意。健康診断を行なう「NICOBO ドックサービス」、ニコボが着ているニットを新品に着せ替える「NICOBO ニット交換サービス」、入院治療を行なう「NICOBO 治療サービス」の3種類を展開。

価格はドックサービスが10,000円(送料/配送箱代込み)、ニット交換サービスが13,000円(同)。治療サービスは治療内容次第で料金が変動する。なお、これらの料金が割引になる月額550円の追加オプション「ケアプラン」も用意する。

ニットが汚れたら交換できるサービスも
月額550円のケアプランはドックサービスなどがお得に利用可能

ニコボの本体サイズは228×260×200mm(幅×奥行き×高さ、突起部含む)。重さは約1.5kg。ねどこと呼ばれる充電台のサイズは、150×150×33mm(同)。駆動時間は約3.5~4.5時間で、充電時間は約4時間~7時間(眠っている時~起きている時)。

完璧じゃないから手伝ってあげたくなる

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション ニコボプロジェクトリーダーの増田陽一郎さんは、ニコボの開発背景について次のように語った。

「家電など高性能、高機能の製品で生活は便利で豊かになる一方で、高効率故に心の余白、社会の寛容性が失われつつあります。そんななかで人の心も豊かにしたいと思うメンバーが集まりプロジェクトがスタートしました」

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション ニコボプロジェクトリーダーの増田陽一郎さん

パナソニックグループのなかでもAV機器を担当する同社。最新のテレビを作るのではなく、ロボットを作ることにしたのはなぜか。それは顧客の困りごとを解決するアウトサイドインの視点にあった。増田さんたちは、1人暮らしの人の寂しさ、特に「帰ってきたときに『ただいま』と言う瞬間が寂しい」という困りごとに注目し、それを解決するためにロボットにたどり着いた。

ロボットの開発は、弱いロボットを研究する豊橋技術科学大学 岡田美智男研究室(ICD-LAB)との共同で行なわれた。岡田教授は弱いロボットについて「自己完結しようとせず、周りの人の手助けを上手に引き出して何らかの目的を達成してしまおうという、ちゃっかりした面のあるロボット」と説明する。

ロボットを手伝う人にとっては「悪い気はしない」「手伝うのもまんざらでもない」というように、優しさや思いやりが引き出され、ロボットとの関係性が作り上げられていくのだという。

豊橋技術科学大学(ICD-LAB)の岡田美智男教授
岡田教授が開発したゴミ箱ロボット。ゴミの前まで移動するがゴミは拾えないため、手伝ってあげる必要がある
弱いロボットは優しさや思いやりを引き出す

例えば飲食店で増えつつある猫型の配膳ロボットは、キッチンからテーブルまで料理を運んでくれるが、アームなどは搭載されておらず、ロボットからテーブルへの配膳は人に手伝ってもらう必要がある。ロボットとして不完全とも言えるが、岡田教授は「手伝う人も悪い気はせず、お店の中がほんわかした空気になるんです。(人とロボットが)お互いの弱いところを補って、強いところを引き出し合う。みんなでハッピーになれる関係性を作るのが面白いと思っています」と語る。

ニコボの“弱い”ポイントは、生き物らしさと言葉にあるという。ロボットと言うと最新の技術をどのように採用するかといった機能的な側面に焦点を当ててしまいがちだ。しかしコミュニケーションロボットとして感情移入や共感を引き出すには、相手が生きていることが重要で、開発当初から「生き物らしさ」については徹底的に議論したそうだ。

一緒に暮らすうちに「オハヨウ」と話すようになる

独自の「モコ語」を話すのも特徴。はっきりした言葉ではなく、柔らかい雰囲気のモコ語を話すようにしたことで、さまざまな解釈ができる余地を残した。

コミュニケーションのスタイルについてもこだわった。家庭でのコミュニケーションは、向かい合わせで議論を交わしたりする「対峙する関係」よりも、一緒にご飯を食べたりテレビを見たりする「並ぶ関係」が多いことから、ニコボも並ぶスタイルでのコミュニケーションを基本として考えられている。

またロボットとして家にインストールしやすいように工夫もされている。インテリアに馴染むようにニットを着せているほか、あえて自走しない設計にしたことでさまざまな住空間でともに暮らせるようにした。

ニコボの側面。ニットを着ている
背面
天面

2021年の応援購入で一足先にニコボと暮らしている人達からは高い評価を得ているという。「笑顔を増やすロボット」とされているニコボだが、当時はそのようなコンセプトはなかった。しかしニコボと1~2カ月暮らした人からは、「ニコボと暮らしてよく笑いました」「おもしろいことを言うんです」との声があったそうだ。

応援購入者の満足度は87%で、ニコボと暮らして「癒された」「笑顔・笑うことが増えた」との回答が多数あった。一般販売を通じて、より多くの人にニコボを届けるほか、ニコボと長く暮らしてもらえるようにしたいと増田さんは語った。

87%が満足している
「家に帰るのが楽しみになった」という回答も