ニュース

クックパッドの最新スマートキッチンに漢方茶マシンも ~「スマートキッチンサミット 2019」レポート

 2019年8月8日と9日の2日間にかけて、“食&料理×テクノロジー”をテーマにキッチンの未来を描くカンファレンス「Smart Kitchen Summit Japan(スマートキッチン・サミット・ジャパン) 2019(以下、SKSJ 2019)」が開催された。会場は講演が中心だったが、スマートキッチン関連の展示デモなども行なわれていた。その中から注目のものを紹介しよう。

スマートキッチン関連の展示デモなども行なわれていた「スマートキッチン・サミット・ジャパン 2019」

キッチンの自動化で新たな“気付き”を与えるクックパッド

 SKSJ 2019の展示会場で最も注目を集めていたのが、クックパッドのブースだ。同社は2018年に開催された「SKSJ 2018」で、キッチンを自動化する「スマートキッチンレベル」と、同社に掲載されているレシピをさまざまな機器で読み込めるようにする「MRR(Machine Readable Recipe)」、加えてスマートキッチンを実現する、さまざまな企業とパートナーシップを結ぶことを発表した。

展示会場のクックパッドのブース

 今回の展示デモは、2018年5月に発表したスマートキッチンプラットフォームの「OiCy(オイシー)」をベースに、昨年のSKSJ 2018で発表した内容を具現化、実際の調理を通して「OiCy」を解説するというものだった。

 ここで、「家庭料理はスマートキッチンでどう進化するか?」という講演に登壇したクックパッド スマートキッチン事業部 部長の金子 晃久氏の話を紹介しよう。人と機器との協調で豊かな料理体験を目指すスマートキッチンの実現に向けて取り組む中で、「気付きの力」が重要なカギを握ると金子氏は話していた。

 金子氏は硬度(カルシウムとマグネシウムの含有量)の低い軟水と、硬度の高い硬水によって、水の沸騰の仕方や肉のアクの出方、カレーの味、昆布や煮干しのだしの出方が大きく違うことに気付いた。そこで硬水と軟水を混ぜ合わせて必要な硬度の水を作り出すウォーターサーバーの「OiCy Water」のプロトタイプを作り上げたという。

 硬度の違いによって味が違うのかという「気付き」から、試してみたいという「気持ち」、プロトタイプ機による「できる化」によって結果が「見える化」するというループを回すことで、ワクワクする料理の世界が広がっていくと金子氏は語っていた。

クックパッド スマートキッチン事業部 部長の金子 晃久氏
クックパッドが描くスマートキッチンの姿

 話を展示内容に戻そう。スマホアプリとスマートキッチン家電を連携して調理し、そこで得た気付きを次の料理に生かすというのが、OiCyの描くスマートキッチンの世界だ。

 展示では担当者が「調理中に自分がやった内容が自動記録され、気付きを与えてくれる。これがOiCyサービスです」と何度も話していたのが印象的だった。

参考出展だが、シャープの過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシオ」がクックパッドのOiCyと連携する形で初めて展示された
2018年5月に発表された調味料サーバー「OiCy Taste」の試作機
OiCyと連携するIHクッキングヒーターの試作機
硬度を調節して出せるウォーターサーバー「OiCy Water」の試作機

 以下、写真とともに順を追って紹介しよう。

スマホアプリから調理したいレシピ(ここでは和風オムライス)を開き、転送する
オーブンレンジにレシピが転送され、画面に表示された
調味料サーバーの「OiCy Taste」のボタンを押すだけで、必要な分量の調味料が出てくる
ウォーターサーバーの「OiCy Water」のボタンを押すと、こちらも同様に必要な分量の水が出てくる
具材に調味料を加え、オーブンレンジに入れる
レシピ通りに500W、2分30秒と表示されているが、レシピをアレンジして1,000W、1分30秒に変更する
するとレシピの「500W、2分30秒」に取り消し線が引かれ、「1,000W、1分30秒」に修正された。これが冒頭の「調理中に自分がやった内容が自動記録される」というものだ
OiCyに対応するIHクッキングヒーターで卵を焼き、調理を進めていく
ご飯と具材を混ぜたチキンライスを載せて包み、オムライスが完成した
調理後に「気づいたこと」を入力すると、そのときの料理の記録が保存された

 調理時のアレンジや、調理後の感想などを記録しておくことで、「1カ月後にまたオムライスを食べたいと思って同じレシピを開いたとき、そのときの味を思い出すきっかけになりませんか?」と担当者は問いかけていた。

 「メモがあることで自分に対して気付きを与えてくれる。OiCy Tasteを使って調味料の分量を変更してみる。そういった内容ももちろん自動で記録されます。そして今日の料理のできばえをまたメモに残す。そうやって繰り返すことでいつの間にか料理上手になっていく。そんな気がしませんか? これがOiCyサービスが目指す形です」(担当者)

約2年で6万台を販売した自動パン焼き器「Rotimatic」

 展示会場でデモや試食行なっていたのが、シンガポールのZimplisticが開発した自動パン焼き器「Rotimatic(ロティマティック)」だ。

シンガポールのZimplisticが開発した自動パン焼き器「Rotimatic」

 Rotimaticは、インドやアフリカなどで約10億人が主食として食べているという「ロティ」を焼ける自動パン焼き器。ロティは小麦粉と水、油を練り込み、薄く延ばして焼く無発酵パンの一種とのこと。

Rotimaticでロティが焼き上がったところ
Rotimaticの操作部
全粒粉の小麦粉と油、水をセットしておけば、ボタンを押すだけでロティを作ってくれる
粉をこねる部分。取り外して水洗いできるようになっているとのことだ

 起動から数分間待つものの、準備が整ったら1枚あたり約90秒で次々にロティを焼くことができる。2017年に発売したRotimaticは現在20カ国で販売しており、すでに6万台以上も売り上げたという。Facebookコミュニティも運営しており、16,000人以上のユーザーがさまざまなレシピをアップしているとのことだ。

 「ピザやラップなどを作ったり、大豆プロテインほうれん草の粉末、ジャガイモなどのデンプン質を加えたりと、さまざまな試みが行なわれています。また、焼くだけでなく、揚げたり、スイーツやデザートなどに挑戦している方もいらっしゃいます」(Zimplistic Co-founderでCEOのRishi Israni氏)

カンファレンスに登壇したZimplistic Co-founderでCEOのRishi Israni氏

漢方茶やハーブティーでウェルネスを実現する「Lify」

 もう1つ注目したい海外製品が、香港のLify Company Limitedが開発したティーマシン「Lify(ライフィー)」だ。

香港生まれのハーブティマシン「Lify」
Lifyでお茶を抽出しているところ

 ティーマシンというと、ネスレの「Special.T(スペシャルティー)」が思い浮かぶ人もいるかもしれないが、Lifyのユニークな点の一つとして「漢方」が挙げられる。

 香港の20代後半から30代の若い層、特に女性は健康に対する意識が高く、医師に処方してもらって漢方茶を飲んだりしているという。しかし漢方は水に長く浸さなければならないなど時間がかかること、漢方の生産地や品質などの情報がないといった問題があるとLify Co-founderでCEOのMazing Lee氏は語っていた。

講演でLifyについて語るLify Co-founderでCEOのMazing Lee氏

 Lifyは漢方茶だけでなく、世界中のハーブにも対応。日本の緑茶なども楽しめるという。圧力をかけて抽出することで、通常は時間のかかる漢方茶の抽出も短時間で行えるとのことだ。

 香港では2019年10月に発売するLifyだが、2020年内には日本でも発売したいとMazing Lee氏は語っていたので、楽しみにしておきたい。

Lifyは現在「ハーバルウェルネス(ハーブティー)」、「フルーツティー」、「ファンクショナルティー(機能性中国茶)」の3コレクションで、18種類のブレンドティーをラインアップしているとのこと
Lifyアプリの画面
抽出するお湯の温度や抽出量、抽出時間をカスタマイズすることもできる
Lifyで抽出されたハーブティー
茶葉を入れたディスクは2年以内にバイオマスと水、二酸化炭素に分解される素材が用いられているとのことだ