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ファーウェイのスマートホーム規格も ~IoT家電が目白押し「CES Asia 2019」レポート
2019年6月18日 12:43
中国・上海で6月11日より、「CES Asia 2019」が開催された。CES Asia 2019は、毎年年始に米・ラスベガスで開催されるテクノロジーショー「CES」の半年後に、中国市場を対象に開催される展示会だ。会場には様々なグローバル企業に加えて、中国での開催らしく多くのアジア圏の企業が出展していた。その中から生活家電に関連するニュースや、出展内容について紹介しよう。
中国ファーウェイによるスマート家電の取り組みとは
オープニングのキーノートには、ファーウェイのShao Yang氏(Huawei Consumer Business Group Chief Strategy Officer)が登壇。スマートフォンの歴史とスマートフォンへの取り組みについて語った。
「1999年、マイクロソフトがビーナス計画を発表しました。この計画は『すべての家電はIoT化され、繋がる』というものでした。しかし、それから20年、スマートホームはまだ概念にとどまっているのが現状です。
世の中には、テレビやロボット掃除機、照明、空気清浄機など数十のブランドの家電があります。そのIoT化としてよく見られるのは、メーカーごとに専用アプリがあり、そのメーカーのデバイスだけが操作できるというものです。そうなると、家の中に20ブランドの家電があれば、20ブランドのアプリを入れてコントロールしなければなりません。しかし不可能です」(Shao Yang氏)。
ファーウェイでは2015年12月にスマートホームのための規格「HUAWEI HiLink」を提案、推奨している。それから3年半が経過した2019年、これをさらにバージョンアップさせるという。
「ファーウェイは、家電のIoT化に対していくつかのことを行なうつもりです。まずは、たくさんのIoT家電を消費者にお届けできるよう、販売のリソースを統合します。また、『HUAWEI HiLink』の普及促進や、スマート家電の開発にも協力していきます。
この取り組みで1番特徴的なのは、ファーウェイは家電を作らないということです。その代わり、システムを構築します。また、必須ではありませんが、IoT機能のためのチップを提供する用意もあります。
そして新しい『HUAWEI HiLink』では、3つのことを実現します。まずは家電のネット接続を簡単にします。携帯端末をスマート家電に近づければ接続できるようになるのです。これで、接続で悩むことはなくなります。
また現在、スマート家電はスマートフォンからコントロールするように設計されていますが、機器同士の連携も大切です。ですから例えば、扇風機はテレビや冷蔵庫からもコントロールできるようにします。
またインタラクティブな操作も可能になります。例えば、ドアのカギを開けると玄関の照明が自動的に点いたり、ベッドルームのカギを開くとエアコンが作動します。またウェアラブル機器を着けて寝ると、心拍数から寝たことを認識してエアコンの温度を高くする、といった連携を実現します」(Shao Yang氏)。
ファーウェイでは国内外の大手家電メーカーと協議し、異なるメーカー間でもこれらの機器が動作するように提案しているという。さらに深センに800m2の開発拠点を用意。スマート家電の開発には、ソフトウエアだけでなくハードウェアも大切だが、家電メーカーはその拠点へ製品を持ち込むだけで測定、検証できるという。さらにメーカーや設備をまたいだ連携テストも可能だ。そうして開発された『HUAWEI HiLink』対応のスマート家電はファーウェイの店舗でも販売できる仕組みだという。
ハイアールや小売り大手蘇寧電器(SUNING)もスマート家電をアピール
続いて生活関連を中心に「CES Asia 2019」の会場を見て行こう。生活家電大手の中でも、最も大きなブースを出展していたのがハイアールだ。ブース全体で同社製品を使ったスマートホームを紹介していた。リビングや寝室、バスルームなど、部屋ごとにスマート家電が並び、それがハイアール製のスマートスピーカーと連携するデモを展示していた。
大型のスマート冷蔵庫はフレンチドアの左右にディスプレイを搭載。左のドアには冷蔵庫内の情報などを表示し、右のドアにはインターネットから得た情報などを表示する。このほか、上下2段式になったドラム型洗濯機や縦型エアコンなど、日本では見かけない家電が展示されていた。
ハイアールの隣には小売り大手の蘇寧(Suning)グループがブースを出展。同社は日本でラオックスを買収したことで話題になった企業だ。イタリア、セリエAのサッカーチーム・インテルのスポンサーでもある。
蘇寧は、同社独自のスマートホーム用OS「Biu OS」を搭載した自社製スマート家電として、冷蔵庫やエアコン、洗濯機などを発表・展示していた。中でも面白いのが、壁掛けスタイルの全自動洗濯機だ。中国市場では部屋のスペースの問題で洗濯機を床置きできないケースがあり、そういった家庭での導入を目しているという。エアコンのように、壁への据え付け型になっており、下には衣装ケースなどが置かれることが多いそうだ。同様の壁掛け洗濯機は、中国の家電メーカー・KONKAのブースにも展示されていた。
また、照明を兼ねた衣類乾燥システムも面白い。使用時にフレームが天井から下がり、そこに衣類が掛けられる仕組み。単に干すだけでなく、天井のユニットから送風されるほか、紫外線による殺菌機能も備えている。PM 2.5の影響で、洗濯物の外干しが難しい中国市場では支持を集めそうだ。
メインテーマである「ロボティクス」関連でロボット掃除機が多数出展
このほか会場では、日本市場では見掛けない家電や新製品も数多く見られた。とはいえ、2019年3月に同じ上海で開催されていた家電見本市「AWE 2019」に比べるとテック系企業が多く、その分生活家電大手の姿は少なめ。マイディアやTCLは出展していない。
ただしその分、スタートアップを始めとした新興メーカーが数多く出展していた。テーマのひとつでもある「ロボティクス」に関連してか、ロボット掃除機が数多く見られた。中でも「360」はCES Asia 2019のイノベーションアワードを受賞したロボット掃除機。障害物検知にレーザーを搭載。実際のデモでもぬいぐるみなどにぶつかることなく、走行していた。
上記以外にもロボット掃除機は5つ以上のブースに展示されていた。地元の方によると、中国ではまだ土足の家も多く、掃除機を持っていない家庭も多い状態で、普及自体がまだまだこれからの段階にある。そのような背景のため、最初の掃除機として、高性能なロボット掃除機やスティック型掃除機が一気に広がりはじめているようだ。
また会場には日本企業の姿も。JDIはレコードプレイヤーのようなデザインで映像と音楽、そして香りが楽しめるデバイスを出展。リビング空間などを好みの音と香りにできるという。
東大発のスタートアップであるXenoma(ゼノマ)のブースでは、乳児に装着するウェアラブル端末を展示。赤ちゃんの状態がリアルタイムで検知できる。日本ではすでに保育園などでの導入も始まっているそうだ。
子どもの見守り関連で注目したいのが日本のセキュリティメーカー・ソリトンシステムズが手がけた、子ども向けのカメラ搭載メガネ。
リアルタイムで位置情報を取得しつつ、さらにLTE回線2本を使って、カメラ映像もリアルタイムにクラウドに送信する仕組みだ。子どもの視界に入ったモノがすべて記録できる。プライバシーの問題などがあるため、まずは中国市場でテストを行なう予定だという。
CES Asia 2019は、ラスベガスで開催されている本家のCESとはまた違った出展内容で、中国市場の動向を始めとした、東アジアの状況が見える展示会だった。