ニュース

IFA 2019事前イベントがスペインで開催、スタートアップを支援する「IFA NEXT」初の公式パートナーは日本に

 ドイツ・ベルリンで開催される、世界最大級のエレクトロニクスショー・IFA2019の事前イベント「IFA Global Press Conference(グローバルプレスカンファレンス)」が、4月末にスペイン・アンダルシアにて開催。55カ国以上から300人以上のジャーナリストが参加し、「IFA2019」の見どころや、世界の市場動向が紹介された。昨年の「IFA2018」は、1,800を超える企業・団体が出展。総来場者数24.4万人以上の規模だった。

IFAGPCの会場前には大きなロゴがお出迎え

「IFA 2019」は9/6~9/11に開催

 カンファレンス1日目は、Philips・TCL・Haier・METZ・SAFERA・Hisense、計6つのメーカーが9月の予告プレゼンを実施。

 また会場には、テレビやオーディオ機器のほか、冷蔵庫や洗濯乾燥機などの展示もあり、IFAにおける生活家電の比率が高くなりつつあることを感じた。「IFA 2019」は、ドイツ・ベルリンにて、9月6日~9月11日に開催される予定。
 ▼IFA公式サイト

Philipsは、睡眠・口腔ケア・健康的な栄養補給を中心に、ソフトウェアやサービスの展開を手がけるとプレゼン。日本に上陸していない新しい製品やシステム提案に期待
Haierは、世界一の規模を誇るHaierグループ。Candy Hoover Groupを買収後初の公式会見となる今回、Candyブランドの製品を展示していた
SAFERAは、調理コンロの消し忘れを防止するシステムを提案。センサーをスマホと連携することで、AIスピーカーなどから消し忘れを知らせてくれる
Hisenseは、テレビと洗濯乾燥機を展示していた。今年はエアコンが日本でも発売されたので、今後、洗濯乾燥機も日本に入ってくるかもしれない

「IFA NEXT」初の公式パートナー国は、日本!

 IFAの中でも、最も活気があると言っても過言ではないのが「IFA NEXT」。2017年から設置され、世界各国で勢いのあるスタートアップ企業が、次の世代を担う新しいイノベーションを披露する特設エリアだ。非常に魅力あるモノからクスッと笑えるようなモノまで、実にバラエティに富んだ内容が繰り広げられ、2018年の取材でもとても印象に残る展示だった。その「IFA NEXT」のグローバル・イノベーション・パートナーとして、日本が第1回目のパートナー国として紹介された。

 日本が選ばれたのは、今までコンシューマーエレクトロニクスの発展に貢献してきた国であること。そして、再びイノベーションを起こすべくスタートアップの取り組みに力をいれようとしているためだという。「IFA NEXT」は、日本のイノベーションに期待し、サポートすることを明言していた。

日本の経済産業省 商務情報政策局長・西山 圭太氏が舞台にあがり、パートナー国として紹介された

 パートナー国代表として、3人が登壇。まず日本大手企業の代表として、100周年を迎えたパナソニックが日本らしく真面目でしっかりと、次に日本のスタートアップ代表としてUnipos(ユニポス)が洗練された英語と仕草で今時の若者らしく、それぞれの取り組みについてプレゼンした。

 そして最後は、日本の経済産業省 商務情報政策局長である西山 圭太氏のプレゼン。お役人が一番固いプレゼンをすると思っていたが、良い意味で大きく予想を裏切った。

 日本のイメージを「ワーカーホリックだけど花見が好き、どこでもお尻が洗える国、寿司はコミュニケーションというおもてなし、米に対してクレイジー」などユニークに紹介し大いに会場を沸かせた上で、日本の活気あるイノベーションを届けたいと語った。世界中のプレスが日本に期待を寄せたに違いない、見事なプレゼンだった。

日本らしい真面目なパナソニック・島田 玄一郎氏のプレゼン
洗練されたセンスと度胸を感じたスタートアップ企業のユニポス・佐藤 勇志氏
ブレゼンテーションの内容は、毎回イラストにして要約され展示される。3人のプレゼンの内容がまとめられたイラスト。

出展のチャンスは積極的アプローチで

 現地で、経済産業省・西山 圭太氏および、経産省のスタッフに取材をしたところ、今回のパートナーシップ締結について、「日本のイノベーションを世界に広く発信し、日本企業の海外展開を支援する」のが目的だと語ってくれた。そこで、出展を希望するスタートアップ企業に対する具体的な支援方法について確認したところ「出展費用を国が持つ」のだという。

 また、9月までに公募・選考をしている時間はないため、結果的に問い合わせてきたところから優先的に検討することになるだろうとの発言もあった。ベンチャー企業だけでなく大手メーカーでも、社内で埋もれているイノベーションを世に出したいという意気込みがあれば、決して対象外ではないという。

 今後具体的な応募方法が発表されると思うが、チャンスを得たい人は、積極的なアプローチをするのが良さそうだ。

 参考:経済産業省ニュースリリース
 「ドイツのコンシューマーエレクトロニクス展と初めてのパートナーシップを締結しました」

2018~19年の世界家電市場 ~GfKリポート

 2018~19年の世界家電市場の動向についてGfKからの報告もあった。テレビ・スマートフォン・PC・生活家電などそれぞれジャンル別の市場、消費者の購買行動の変化、スマートホームについてなど様々なデータが紹介された中から、生活家電に関する情報をピックアップして紹介する。

家電の世界市場の売り上げ高と製品ジャンル別比率。規模と構成比率ともに大きな変化はないが、Small Domestic Appliancesは堅調に増加している模様
2019年のスマートホームに関する世界市場予測。かなりの金額がスマートホーム関連に消費される見込みとのこと。中でもヨーロッパの額が高く、スマートホーム先進国ということがわかる
スマート家電の内訳は、AV機器などエンターテインメントが最も大きなカテゴリーだが、冷蔵庫や洗濯機などの生活家電と照明は2桁成長で今後も拡大していきそうだ
生活家電(主要アイテムおよび小型製品)の地域別市場。世界の売上高の3分の2をアジアとヨーロッパが占めている。アジア圏では中国の消費が最も大きく、世界的にも注目の市場になっている
消費者は、付加価値のついた高性能な高級製品を購入する傾向にある。日本も以前より高額な家電が支持されているように、世界的にも同じ傾向があるようだ
国別のオンラインショッピングに対する意識。いつでも利用できるサービスが必要と感じている人の率。日本は世界的にみると少なめ。中国の変化から、意識変化ののスピードが感じられる。ちなみに、オンラインでショッピングでは、スマートフォンやモバイルが最も重要なツールになってきているとのこと

エレクトロニクスのイノベーションで、日本の復権を!

 今回IFA NEXTで事務局から期待された通り、かつて日本は家電大国と技術先進国として貢献し、影響力もあった。また、アジア初の先進国としてアジア諸国をリードし、その存在感も大きかった。

 しかし最近は、リーダーとしてのパワーも市場規模としても、中国の急成長により日本の存在感は確実に薄れている。GfKの調査リポートを聞いていても、日本の市場を気にしている様子は感じられない。現在の日本の家電メーカーを見ていると、世界への影響力を発揮するどころか、追いつこうという気持ちすらないと感じる。

 スマート家電の領域においては、世界の進化を知りつつも「ニーズが無い」という理由で開発に消極的だ。消費者のニーズに応えることも大切だが、市場を牽引し消費者を育てることもメーカーの役割ではないだろうか。

 経産省・西山氏の「イノベーションを世界に積極的に発信していって欲しい」という言葉の通り、IFA NEXTの公式パートナー国になったこの機会を有効に活かし、世界の家電市場における日本の存在感を、もう一度復権して欲しいと筆者は感じている。IFA2019本番では、魅力ある発信を大いに期待したい。