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サムスン、独自のAIアシスタント「Bixby」を中軸としたスマートホーム戦略を加速
2017年9月6日 14:02
サムスン電子は、一昨年のIFAで大々的にIoT宣言をぶちかまして話題を呼んだが、その後も徐々に足場を固めつつ、今年のIFA後にはスマートホームをコンセプチュアルなものから商品として充実させていく戦略を加速させる。中心になるのは独自のAIボイスアシスタント「Bixby(ビグスビー)」だ。
Bixbyは、サムスンが独自に開発するボイスAIアシスタントであり、スマートフォンのGalaxy S8/S8+、さらには8月末に発表されたばかりのGalaxy Note 8などに搭載されている。Bixbyは当初韓国語のみの対応だったが、米国英語への対応を完了。今後は英国英語と中国語、ドイツなどヨーロッパ先進国の言語に裾野を広げていく予定だ。
今年のIFAでは、ブースのエントランス正面にスマートホーム・ツアーの特設展示スペースを構えながら、スマホと家電がつながって実現する便利な暮らしの事例を具体的に見せていた。
その仕組みは、Bixbyによるボイスコマンドを入力して、インターネット接続対応のスマート家電やIoT機器を、スマホアプリ「Samsung Connect」で管理するというもの。例えば「車で帰宅したら、ガレージの扉を自動で開けてガレージに灯りを点灯>リビングのエアコンが始動>リビングのドアを開けたらLED照明を点灯>お気に入りの音楽やテレビのチャンネルをオン」といった具合に、連続するアクションコマンドとして登録しておき、細かな操作をBixbyで都度調節するといったことが簡単にできるようになる。アメリカのクレストロンなどホームシアター向けの統合リモコンが提供するサービスの考え方に近いものがある。
同サービスにつながるのはサムスン製の冷蔵庫にエアコン、洗濯機にテレビ、ロボット掃除機をはじめとするスマート家電のプレミアムモデルや、買収後にグループ傘下としたSmartThingsブランドのIoT機器が対象となる。Bixbyの対応言語に依存する部分もあるが、基本的には今年の11月以降に配信開始を予定する「Samsung Connect」アプリをダウンロードすれば使えるようになる。またサムスンも参加するIoT・スマート家電のオープン規格を策定する団体、Open Connectivity Foundationに加盟するブランドの製品と互換性確保に向けた研究開発も進められている。
さらにもう一つ注目したいのが、サムスンのスマート冷蔵庫だ。ここまで紹介してきたBixbyとSamsung Connectアプリによる機器連携の中に、スマート冷蔵庫も加わって、スマホと同様に音声コマンド入力に対応するコントロールセンターになるというのだ。
現在サムスンは、扉に透過型のタッチパネル液晶と、OSに独自のTizenを搭載するスマート冷蔵庫「Family Hub」シリーズを発売している。ドイツでもフレンチドアタイプの「RF9500M」、シングルドアタイプの「RB7500M」が今秋以降の発売を控えているが、本機が単体でボイスコントロールに応えて、画面に料理のレシピを表示して音声で読み上げたり、Spotifyで音楽を再生する機能や、Galaxyシリーズのメモアプリで書き留めたメモをミラーリング表示して、家族みんなの伝言板として使える機能などが紹介された。
今後は新しい「Family Hub」シリーズがBixbyとSamsung Connectアプリのエコシステムに加わって、さらに近い将来に予定するソフトウェアアップデートによって宅内のスマート家電までコントロールできるようになるそうだ。しかもサムスンが自前で作り込むクラウドサービスや音声コマンドのインターフェースは、サムスンの製品を購入したユーザーであれば、別途のランニングコストは不要。無料で使うことができる。
一方で、今年のIFAで話題が巻き起こったGoogle AssistantやAmazon Alexaを搭載する「スマートスピーカー」の姿は、サムスンのブースでは1台も見かけることがなかった。当面はBixbyを中心にスマート家電まわりの機能を整理しながらまとめ上げて、後から必要であれば他社のプラットフォームとつないでいくという考え方なのかもしれない。一気に両方を作り込んでしまって、一定の機器や環境との組み合わせで使える・使えない機能の差が生まれて、結果としてユーザーに混乱を招くよりも、最終的には理にかなった仕組みができあがるかもしれない。