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身体の動きをデジタル化するジーンズなど「ウェアラブル EXPO」レポート
2018年1月18日 13:15
東京ビックサイト(東京国際展示場)で、1月17日から19日の3日間、今年で3回目となる「ウェアラブルEXPO」が開催されている。多くのウェアラブル技術がある中で、注目すべきブースを取材してきた。
会場で最も注目を集めていたのが、身体の動きをキャプチャーするセンシング素材。付けるだけ、着るだけでユーザーの身体の動きをデジタル表示するというものだ。自身の動きを第三者目線で確認することで、スポーツであれば身体運動の向上に役立てられる。VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)であれば、自身をバーチャル空間上に再現することも可能になる。
ジーパンを履くだけで下半身の動きを再現
トルコの繊維メーカー「ISKO」は、履くだけで下半身の動きを、ほぼリアルタイムにキャプチャーできるジーパンを展示していた。膝の上下2つ、両足で計4つのモーションセンサーを搭載するだけで、膝だけでなく両足全体の動きをスマートフォンアプリに再現する。
細かい仕様は非公開ながら、伸縮性に優れた生地にも搭載されていた。センサーが取得したデータは、腰の部分に備えた送信デバイスから、Bluetoothによりスマートフォンに送信されるという。またデバイスを取り外せば、生地は洗濯できるという。
ISKOブースでは、モーションセンサー搭載デニムだけでなく、タッチセンサー搭載の生地も展示されていた。生地を触ると接続されたPCの鍵盤が反応し、演奏できるようになっていた。触ってみただけでは通常のデニム生地と何が違うのかは分からなかった。ブーススタッフによれば、タッチセンサー生地を使うことで、例えばミュージックプレーヤーの再生/停止などの操作を可能にするという。またスマートフォンアプリの操作に使うことも考えられる。
ユニクロなどにも生地を供給しているISKO。今回モーションキャプチャーやタッチセンサーを搭載したデニム地をブース展開したのは、同生地を活用した製品を開発してくれるパートナーを探すためだという。
生体データを取得するためのウェアも大好評
詳細は不明だったが、ISKOのデニム地にも各センサーから送信デバイスへと、取得したデータを伝える生地が採用されているはず。そうした生地の開発をしている京都のミツフジは、会場での存在感を高めていた。
ミツフジは、導電性を備えた銀メッキ繊維「AGposs(エージーポス)」を製造販売している。そのAGpossを使ったスマートウェアシリーズとして「hamon」を展開。ウェアラブルEXPOでも大きくアピールしている。繊維自体に導電性があるため、伸縮性が高く着心地の良いウェア開発も可能。
スマートウェアを構成する「ウェア」と、ウェアで収集した生体情報を発信する「トランスミッター」、そしてユーザーが情報を確認するための「アプリ」やデータを格納するクラウド環境の大きく3つ。hamonの特徴は、これらをすべて自社で開発している点だという。
一方で、東洋紡はフィルム状導電素材「COCOMI」を展開。約0.3mmの素材には、電極と配線が施され、伸縮性に優れるため身体の動きに追随、自然で違和感のない着心地を実現できるとしている。
同社はウェアの開発に専念し、ソリューションに関してはパートナー企業と共同で行なっている。例えば、ユニオンツールと共同開発したのが「居眠り運転検知システム」。
COCOMIを採用した肌着に心拍を計測するデバイスを装着。心拍周期が特定のパターンを示した時に眠気が生じていると判断し、アラームで通知する。同システムの販売に向けて、現在は中日臨海バスで実証実験を行なっているとリリースされた。
生体情報を取得するためのスマートウェアは、前述したドライバーの居眠り運転を感知するほかにも、スポーツ選手や建設現場などで働く方たちの健康状態を遠隔から把握することが可能。熱中症などの体調管理、転倒や転落などを検知し管理者に知らせる見守り用途など、様々な分野で活用されていきそうだ。
ウェアラブルヒーターも人気
銀繊維を編み込んだ生地の活用方法は、生体情報を取得する以外に、熱の伝導性を活かしたヒーターとしての使いみちもある。
三機コンシスが信州大学繊維学部と共同で開発したのが「HOTOPIA」。銀の繊維をニット状に編み込み、柔らかい触感や高い伸縮性、通気性が特徴。会場のブースには、同生地を背中の部分に搭載したダウンベスト(税抜価格:35,800円)や、ネックウォーマー(2018年発売予定)のほか様々な製品が展示されていた。
メガネメーカーが開発するメガネ型デバイス
ウェアラブルデバイスの中で注目度の高いカテゴリーなのが、メガネ型デバイス。メガネの販売店「メガネスーパー」は、約3年前からメガネ型ディスプレイを開発しはじめ、今夏には発売する予定だ。
1,280×960ドットの解像度の映像を目の前に現出させるメガネ型ウェアラブル端末「b.g.(ビージー)」。2つの有機ELパネルを使い、両眼視できるのが特徴。同端末はあくまでもディスプレイで、スマートフォンや小型PC(Raspberry Pi)とHDMIケーブルで繋げて利用する。
「これまでのメガネ型端末は、デバイス視点で開発されてきました。対して、長年メガネに関わってきた当社のデバイスは、見え方とかけ心地にこだわっています。そのため両眼視を採用し、フレームに関してもメガネ製造で有名な福井県鯖江の技術を活用しています」
同社スタッフによれば、最も活用が期待されているのが医療現場だという。また、製造業や物流業界での需要も見込むとしている。