長期レビュー
シャープ「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」その2

~ファンヒーターと暖房対決! 寒くならない霜取り運転も検証
by 藤山 哲人
シャープの「AY-B40SX」。従来型のエアコン暖房では、頭ばかり暑くなってしまったが、本製品では足元との温度差が非常に小さく、同じくらい暖かいときすらある

 シャープの最上位モデルのエアコン「B-SXシリーズ」についてレビューするこの連載。初回では、室内機に備えられた、特徴的な超大型のルーバーにより「床暖房のような温かさ」が得られること、床上150cmでおよそ頭の位置の温度と、床上1cmの足元の温度がほぼ同じになるという、しっかりとした暖房能力を備えていることがわかった。エアコンには、気流も重要な要素の1つなのだ。

 [第1回目はこちら]

 第2回目のテーマも「暖房」だ。B-SXシリーズには、先週紹介した超大型ルーバー以外にも、まだまだ暖房に関する便利な機能が備わっている。今回取り上げるのは、以下の3項目だ。

・素早く温まりたい時のために「フルパワー運転」
・足元が暖かいガスファンヒーターと比較して、どっちが暖かい?
・霜取り運転中も暖かさが続く「ノンストップ暖房」

 個人的に注目してほしいのが、3番目の「ノンストップ暖房」だ。霜取り運転は、寒い地方だけのものと思っているアナタ! 筆者の自宅である横浜市でも、室外機にビッシリ霜が付くのを確認した。今年は例年以上に寒いので、おそらく読者の皆さんもエアコンも霜取り運転が行なわれ、一時的に部屋の温度が下がっているハズ。それがこのB-SXシリーズなら、温度を下げずに運転し続けられるのだ!


フルパワー運転で1.5倍早い暖房!! でも足元を暖めるなら通常のエコ運転モードで

リモコンにある「フルパワー」ボタンを押すと、最大パワーで暖房/冷房してくれる。ドライヤーなどにある、ターボモードのようなもの

 さて第1回目では、最近各社のリモコンについている省エネを重視した自動運転モードで、温度比較を行なった。がっ、冬の朝は超寒いっ! 布団という誘惑からなんとか脱出するのも一苦労だ。

 そこで、B-SXシリーズに搭載されている、1分・1秒でも早く部屋を暖めるためのモード「フルパワー運転」のテストしてみよう。シャープのB-SXシリーズは、リモコンに「フルパワー」なるボタンがあり、これを押すと節電を考慮せずフルパワーで暖房(冷房)する。朝の寒さは並みじゃないので、これは省エネよりもパワフルに出力するモードで、どのぐらいで部屋が暖まるのかを実証だ!

 今回の比較対象は、2年前の他社製高級エアコンだ。部屋は違うがB-SXシリーズを付けてある部屋と同じ広さなので、そこそこ参考になるだろう。

 まずは他社製エアコンのデータから見てみよう。設定温度は22℃にして、風量を最大にした結果が次のグラフだ。


2年前の他社製高級機は、送風を最大にしてもそれほど早く部屋は暖まらない。送風を最大にした際の、頭の温度が赤い線、足元がオレンジの線。自動運転の頭が上の緑線、足元が下の緑線

 ん~、フツーの運転と大差なし。自動運転モードでも運転直後はフルパワーで運転しているようで、部屋が早く温まることはなかった。

 それでは今度は、フルパワー運転を使った室内の温度変化が次のグラフだ。

シャープB-SXシリーズでの温度変化。フルパワー運転はかなり早く暖まっている。フルパワー運転した頭の温度が赤い線、足元がオレ ンジの線。自動運転の頭が上の緑の線、足元が下の緑の線

 初回で実験した「おすすめエコ運転」モードよりも、かなり早く暖まる結果となった。床上150cmが22℃に達するまでの時間は、エコ運転では41分かかっていたのに対して、フルパワー運転では28分となり、およそ1.5倍早く部屋が温まることになる。フルパワーの効果は確かにあったのだ。

 ただしこれには難点もある。まず足元との温度差が最大6℃もある点だ。ルーバーの状態を見ると分かるとおり、エコ運転では下向きになっていたルーバーは、フルパワーでは少し上向きになり、部屋全体を素早く暖めるモードになる。15分経つとルーバーは下向きに切り替わり、足元に温風を送るようになっているが、この15分間で、頭と足元に寒暖差ができてしまう。

フルパワー運転時の大型ルーバーは、最初は若干上を向いていて、部屋全体を暖める。その15分後、足元へ風を送るようになるおすすめエコ運転時の大型ルーバーは、一番下を向いていて、足元に温風を送るようにしている

 もうひとつ難点としては、室内機の運転音が凄い。フルパワーモードは、エアコンの運転音というより、掃除機に近いのだ。テレビを見るときは、ボリュームを3段階ほど上げないと聞きづらいかもしれない。もちろん、室外機の音も大きくなる。ウチは一戸建てなのでさほど問題はないが、集合住宅で深夜にフルパワー運転するのは、ちょっと気がとがめる感じだ。

 というわけで、フルパワーモードは確かに即暖性があるものの、運転音がうるさめになったり、足元がかえって寒くなる、というデメリットもある。長く使うのであれば、1回目に検証したような、頭の温度と足元の温度がほぼ同じというエアコン暖房らしからぬ足元の暖かさが味わえる、通常のエコ運転モードの方が良いだろう。

運転モードごとの運転音の違い。いずれも機器から1m離れた場所で、直接風が当たらない場所で測定している

 

足元が暖かいガスファンヒーターと勝負! どっちが暖かい?

温風の吹き出し口が床スレスレの位置にあるガスファンヒーターとの暖房性能を対決させてみよう! ちなみに使用する機種は、写真のようないたって普通のガスファンヒーターだ

 通常のエコ運転モードでも高い暖房能力が得られるB-SXシリーズだが、これだけ暖かければ、もしかすると、ほかの暖房器具よりも暖房効果が高いかもしれない。我が家にある、吹き出し口が足元にあるガスファンヒーターと、互角に勝負できるのではないか?

 そこで、「我が家のガスファンヒーター」VS「シャープ B-SXシリーズ」ということで、部屋の暖房効果の対決をしてみることにした。

 設定温度は互いに22℃。温度の測定位置は初回と同じく、ヒトの頭の位置に近い高さ150cm地点と、足元の高さ1cm地点。いずれも直接温風が当たらない場所で温度を測定した。測定場所はエアコンが設置されているのと同じ部屋だ。


ガスファンヒーターとシャープB-SXシリーズの温度変化。B-SXシリーズの頭の温度は赤の線、足元の温度はオレンジの線。ガスファンヒーターの頭の温度は上の青い線、足元は下の少し薄い青の線

 結果は上のグラフの通り。運転開始直後の10分間は、ガスファンヒーターが足元も頭上も素早く温めているのがわかる。しかし注目してほしいのは、15分を過ぎたところの、オレンジのB-SXシリーズの線。ガスファンヒーターの足元の温度を抜いてしまっている! これは予想外! 実を言うと筆者は、エアコン暖房はガスファンヒーターにかなわないと思っていた。ガスファンヒーターは床から数cmのところに吹き出し口があるから、部屋の高いところについているエアコンが勝つわけはないと思いこんでいたからだ。

 ここで床上150cmの頭上の温度変化を見てみると、ガスファンヒーターもエアコン暖房も温度差は大差なし。足元だけ変化が出ているということになる。

 そして2時間後、ガスファンヒーターは頭上と足元の温度が最大7.2℃も開いてしまった。平均でも6~7℃の差が出ている。一方のシャープは、前回の実験通り最大でも4℃程度。平均では2~3℃ほどの差しかない。第1回で調べた2年前の他社製高級機でも最大温度差は5℃だったので、ガスファンヒーターはそれ以上に足元が寒いというワケだ。

 何種類ものガスファンヒーターを調べたわけではないので、断言はできないが、とりあえず、筆者が実験前に抱いていた「ガスファンヒーターは足元が暖かそう」というのは、今回の実験に限っては幻想だったと言えそうだ。そして、今回の実験からも「シャープのB-SXシリーズは、まるで床暖房のように温かい」というのが、図らずも証明する結果となった。


寒冷地だけじゃない! 関東でも起こる室外機の霜付きと霜取り運転

 暖房機能としてもうひとつ、霜取り運転中の温度低下を防ぐ「ノンストップ暖房」についても見てみよう。

写真は、気温1℃のときに撮影した、室外機の熱交換器。薄いアルミ板でできているので、もとはシルバーだが、霜が着き真っ白になっている
 霜取り運転(除霜運転)とは、簡単に言えば室外機に発生した霜を取るために、一時的に室外機を温める運転のこと。例えば暖房運転の場合、室内機から温かい空気を出すために、室外機の「熱交換器」を冷やし、冷気を外へ吹き出している。室外機の熱交換器を外気よりも冷やすことで、外気から熱を奪い、その熱を室内機の熱交換器から、室内に放出するのだ。

 しかし、気温が低い日になると、熱交換器の温度は、水が凍る0℃以下にまで下がることもある。その場合、熱交換器の薄いアルミ板1枚1枚に、ビッシリと霜が着いてしまう。そのため、一時的に冷房運転を行なうことで、室外機の熱交換器を温め、霜を溶かしている。

 寒い地方の読者には常識かも知れないが、関東など寒さが厳しくない地方に住んでいると、なかかなソレを目にすることがなく、霜が付いていることに気付かない。室外機に霜が着くことは知っていても「これは東北地方とかの寒い地方の話でしょ?」と、他人ごとのように思っている人が多い。というか、筆者がそうだった(笑)。

 そこで筆者の住んでいる横浜でも、本当に室外機に霜が着くのかを、屋外にビデオカメラをセットして撮影したのが次のムービーだ。いやー、コレ撮影するのマジで寒かったっす。

暖房運転中の、室外機の熱交換器のようす。度々霜が発生し、そのたびに除霜運転で霜を溶かしている

 この日は雨が降ったこともあって、外気はおよそ1℃とかなり寒い。徐々に熱交換器が霜で真っ白になっていた。ビデオにも写っている通り、たくさんの霜が着いてしまうと、薄いアルミ板の間に空気が入らなくなるばかりか、霜が断熱材の役割をしてしまい、熱交換器が外気から熱を奪えなくなってしまう。そのため、どんなエアコンにも自動霜取り運転がついているのだ。

 知り合いのサービスマンに聞いたところ、関東でも5℃以下の日は、室外機に霜が着いてしまうらしい(湿度はさほど関係ないとのこと)。

 さて、この霜取り運転、一般的には以下のような運転で霜を取っている。

(1)一時的に暖房運転を停止。
(2)冷房運転に切り替え、10分ほど室外機を暖めて霜取りをする
(寒冷地仕様の場合は、室外機に電熱線を入れてヒーターで霜取りをする場合もある)
(3)冷房運転中は、室内機の送風ファンを停止する

霜取り運転をすると、付いていた霜が溶け、再びアルミの薄い板(熱交換器)が見えるようになる

 霜取り運転中は冷房運転しているものの、送風ファンが止まっているので冷風が風に乗って吹き出ることはない。しかし、徐々に冷気が漏れ出てしまう。寒さの厳しいとき、エアコン暖房をしていて定期的に寒さを覚えるようなら、それはエアコンが自動霜取り運転を行なっている間に漏れてくる冷気のせいなのだ。

 この霜取り運転中に部屋が冷えてしまうのは、エアコン暖房における、業界全体の課題のひとつ。そのため、各社がさまざまなアプローチで、できるだけ部屋が冷えないように霜取り運転をするようさまざまな機構を取り入れている。


吹き出す温風の温度にほとんど変化のないB-SXシリーズの霜取り運転

 でも、シャープのB-SXシリーズの霜取り運転は、吹き出し口から出る温風がほとんど変わらない「ノンストップ運転」となる。それは次のグラフを見れば、一目瞭然だ。

シャープB-SXシリーズと2年前の他社製高級機における、吹き出す温風の温度の比較。青が他社製のエアコンで、V時に温度が下がっている部分で霜取り運転を行なっている。シャープも時折霜取り運転を行なっているようだが、温度に変化は見られない

 青の線は、2年前の他社製高級機。定期的に温度が「V」の字のように低くなっているのが分かる。これが霜取り運転だ。その差は最大10℃で、元の温度に戻るまで最大20分ほどもかかっている。これが暖房中に「あれ? なんだか寒いな」と感じさせる原因だ。この数値は、あくまで筆者の住む横浜の場合であって、寒い地方だと、凍えるほど寒くなるという声も聞く。

 しかしオレンジ色の線で示したシャープのB-SXシリーズは、霜取り運転をしているのが分からないほど、温度が安定しているのが分かるだろう。

 B-SXシリーズの霜取り運転は、霜がビッシリと付く前に暖房運転をしながら、自動霜取り運転も行なうというアプローチを取っている。その仕組みは、熱交換器に流れ込む暖かいガス(冷媒)を、室内機と室外機に同時に送り込むというものだ。

B-SXシリーズの霜取り運転。室外機で作った温かい冷媒を、室外機と霜取り用の2つにまわすので、冷房運転に切り替わらず吹き出す温風に温度変化が少ない ※シャープのWebページより

 このやりかただと、霜が熱交換器にびっしり付いて着いてしまってからだと、なかなか霜取りできないが、霜が薄いうちに何度か霜取り運転をすれば、温風の温度を下げずに霜取りもできてしまう。部屋の掃除に例えれば、従来型の霜取りは1週間に1度まとめて掃除する方法で、1回あたりの時間はかかってしまう。一方B-SXシリーズは、毎日こまめに掃除するようなもので、こまめに何回もすることで、1回当たりの時間と労力を抑える、というものだ。

 部屋の掃除であれば、どちらの方法でも部屋のキレイさに大差はないが、エアコン暖房の霜取り運転となると、こまめに霜取りをするほうが断然優位。先のグラフからでも分かる通り、寒さを感じないまま、連続運転できるのだ。


次回は静電気を除去する「プラズマクラスター」とその美肌効果を検証!

 さて次回は、冬の寒い時期に「バチッ!」と痛い思いをする静電気を、完全に除去してしまうプラスマクラスターイオンの効果を見てみよう。またメーカーによれば、美肌効果もあるとしているが、本当に効果があるのかも実験してみたい。





2012年2月8日 00:00