長期レビュー

シャープ「プラズマクラスター空気清浄機 KC-Z80」後編

~測定器で消臭効果を検証。驚くほどの静電気の除去効果も
by 藤山 哲人


「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



シャープ「プラズマクラスター空気清浄機 KC-Z80」。今回はニオイと静電気の除去効果を試してみよう

 シャープの新しい加湿空気清浄機「KC-Z80」について、昨日掲載した第1回では、おもに加湿機能とハウスダストの除去効果を見た。今回は、プラズマクラスターイオンと臭いフィルターのダブル効果による脱臭性能や、冬から春にかけてバチッ! とくる静電気の除去効果を見ていこう。


脱臭効果を見るために、新兵器「臭い測定器」を手に入れたぞ!

 まずは脱臭性能について見ていこう。人間の感覚の中でもいいかげんなのが嗅覚だ。普段は何も匂わない自宅でも、長旅から帰ってくると「ウチの匂い」を嗅ぎ取れるほど敏感に嗅ぎ取る。かと思えば、キャンプなどキナ臭いところにずっといると鼻が慣れてしまって匂いを感じなくなる。

 これまでのレビューでは、嗅覚実験を感覚に頼ったアバウトなレビューしかお伝えできなかったが、今回は新兵器を使っての実験だ。それがこの、臭いの強さを数値で見せてくれる「臭い測定器 WB-121F」(音香科学)だ!

臭いの強さを数値として見せてくれる、音香化学の「臭い測定器」。今回はこの新兵器で、脱臭性能を測定してみよう

 人間の嗅覚はいまだに未解明な部分も多く、完璧に鼻で嗅ぎ分ける臭いを測定できる機器はない。あったとしても特定のガスを検知するもので、納豆やらタバコ臭、キムチに焼き肉臭といったオールマイティーな測定器はなかなか見当たらない。

 が、この測定器は、石鹸の香りから、ゴミ、工場の悪臭まで測定できるというもの。数値が高ければ高いほど臭う、ということになる。臭いの感覚がそのまま測定できるわけではないが、客観的な指標としてはアリだろう。これで、空気清浄機で部屋での臭いがどれくらい取れるかを実験しようというわけだ。

 まずはこの臭い測定器で、部屋にあるいろいろなものを集めて測定した。というのも、表示される数値は特に単位はなく、機器独自の測定値になっている。ソレがどのくらい臭いのかわからないので、とりあえず日常生活にあるものがどれくらいかを見てみよう。


コタツの中の臭いは「272」。なお、これは外の空気の臭いを「0」とした場合の数値納豆は「246」と、コタツ並みだ!鼻を突く臭いのお酢。だけど、臭いレベルは納豆とほぼ同じ
キムチは「404」。納豆を基準とするなら「2.5納豆」となる家族に臭いと言われる灰皿。でも数値は納豆よりも低い
中学1年女子の上履きの臭いは、個人的にかなり期待したが「12」しかない……。冬だから菌が繁殖しないのか!?家族の誰もが恐れるお父さんの枕の臭い(爆笑)。臭いレベルは「1/6納豆」。こうして見れば、そんなに臭くないじゃん!
一番家族に嫌われるタバコの臭いは、煙を直接受けると「1338」!一服吸い終わった部屋は「482」となり、鼻先のキムチより臭いっ!

 結果は上の通り。今回測定した中で最も数値が高かったのが「タバコの煙」。直接測定すると「1338」で、ほぼ「5納豆」。しかも、一服吸った部屋の臭いは284で、「2納豆」となった(勘の良い人なら分かると思うけど、「5納豆」「2納豆」とは納豆の5倍、2倍という意味ね)。タバコの煙が、納豆やコタツの中の5倍以上も臭いというのには驚かされる。


ニオイもしっかり低減。それでも臭うのは人間の感覚が鋭いから

 さて、モノの臭いレベルがおおよそ掴めたところで、KC-Z80のプラズマクラスターイオンと臭いフィルターが、これらの臭いをどれだけ脱臭できるかを調べていこう。実験の舞台は、焼き肉パーティー! 個人的に肉が食べたいというのはもちろんだが、動物性の油の臭いは濃厚で、1晩経ったくらいではカンタンに抜けてくれない。焼肉中にKC-Z80を運転し続けることで、どれだけニオイが抑えられるのかを見てみよう。

と、その前に、パーティー開催前の部屋の臭いを測定すると「9」。ほとんど無臭だ。

 腹をすかせた子供たちに「よし!」の号令をかけ、いっせいに肉を焼き始める。すると、肉から立ち上る煙とともに測定値がガンガン上がり出し、数値は「353」をマーク。さっきの臭い実験と比較してみると、焼き肉パーティー中の部屋の臭いは、鼻先1cmのキムチ並みのレベルだ。

焼肉パーティー前の室内の数値は「6」。食材にはすべてラップをしていることもあり、ほぼ無臭だ煙が立ち上るやいなや、空気清浄機はニオイとハウスダスト(煙の粒子)を検知。センサーは真っ赤になった数値は「353」

 1人ふたりと夕食を終えると、だんだん臭いも薄くなってきて217。臭いセンサーは「匂わない」と判断しているものの、煙の粒子は多数あるとして、「ほこりセンサー」は真っ赤な状態だ。

 後片付けも終わった1時間後に再び臭いを測定してみると、数値は105まで下がり、数字上では70%近くの臭いを脱臭できた計算だ。

宴も終わりごろになると、数値は「217」まで薄くなった臭いセンサーは「匂わない」と判断しているものの、煙の粒子は多くあると判断しているようで、ハウスダストセンサーは未だ真っ赤な状態だ焼き肉中は「353」あったが、1時間後には約70%減となる「105」まで下がった

 と、ここで気になったのが、2階に昇っていった臭いだ。我が家のような2階建て一戸建住宅の場合、食事を終え風呂にも入って「さあ!寝よう!」というときに、鼻を刺す焼き肉臭が漂ったりする。が! 結果は意外、食事から終わって2時間後の値は38とかなり低め。感覚的にはかなり匂ったんだが、実際はちゃんと脱臭できている模様だ。

 最後に、空気清浄機を自動運転にしたまま、6時間経過したリビングのニオイを調べてみた。結果は下の写真の通り「34」。かなりのレベル以下まで脱臭できた。焼き肉中が353だったので、6時間で9割、ほどんどのニオイが脱臭できたという計算だ。

宴から1時間後、2階廊下での臭いレベルは「38」。臭いのレベルはさほど高くないのに、どことなく焼き肉臭を感じる。人間の嗅覚は不思議だ6時間経過したリビングの臭いレベルは「34」。ほとんどニオイが無くなった

 しかし、やっぱりドコとなく焼き肉臭いのは否めない。おそらくこれは「嗅覚疲労」と呼ばれるものだろう。同じ臭いをズーッと嗅いでいるとその臭いに対する嗅覚が著しく疲労して、慣れてしまう現象だ。しかし他の臭いに関しては、しばらく空けた自宅の臭いを感じるほど敏感で鈍らないという奇妙な現象。つまり焼き肉をした部屋にズーットいると焼き肉臭に慣れてしまうが、いったんお風呂に入ると石鹸やシャンプーの臭いで焼き肉臭の嗅覚がリセットされ、再び焼き肉をしていたリビングや上階の寝室に行くと、焼き肉臭を強く感じるということだ。ん~、人間って不思議。

 というわけで、場合によってはそれでもニオイが残っていると感じることがあるが、本製品を使うことで確実に脱臭効果があることは間違いないだろう。


静電気でバチッとなる“電気男/電気女”にはプラズマクラスターイオンが有効

 次に実験するのは、静電気の防止実験だ。金属を触ったときにバチッとくるのが嫌なのはもちろんだが、衣服やカーテンに花粉が付着するなんていう恐れもある。

 シャープのホームページを見ると、加湿とプラズマクラスターの運転で、静電気を除去できると謳われている。プラズマクラスターイオンだけでも効果はあるみたいだが、加湿を加えることで、加湿なしよりも静電気量が約3.5倍に抑えられるという。

 で、その実験をしたいのだが、今回の空気清浄機はデカいので、以前のプラズマクラスター発生機とは違って、大きめの実験装置を使って、より大容量の静電気に対する効果を見てみた。

 その実験装置とは、理科実験器具の通販サイト「手作り科学工房 メイトウサイエンス」が発売している、「静電高圧発生装置製作キット」というものだ。テレビの静電気の実験で、大きな金属球に手を触れていると髪の毛が逆立つ「バンデグラフ」という装置を見たことがある人もいるだろう。コイツはそのバンデグラフの小型版だ。筒がアクリル製の頑丈なものは9,800円と結構高いが、2Lペットボトルを利用して作るキットは3,780円とリーズナブルだ。

コイツが「静電高圧発生装置製作キット 2リットルタイプ PET-2」だ製作時間は1時間ほど。取っ手を回すとマイナスの電気が上部の玉に溜まって紐が逆立つ

 そもそも静電気とは、異なる物質を擦り合わすことで発生する電気のこと。下敷きで髪の毛を擦ると毛が逆立つが、これは下敷きのプラスチック樹脂と髪の毛を擦ったため、静電気が発生、毛が逆つのだ。

 今回用意したこの実験キットも、その応用でできている。取っ手側の軸についているシリコンゴムと天然ゴムを使ったベルト、そして上側にある塩ビパイプ(樹脂製の水道管)を擦り合わせることで、静電気を発生している。ここで発生した静電気は、アルミ製の棒を通り、アルミ箔を貼ったボールに溜められる。取っ手を何回も回すと銀色の玉に静電気がチャージされ、貼り付けた紐が逆立つというわけだ。

実験に使用した「静電高圧発生装置製作キット」の仕組み。まず器具下側(写真)で、シリコンゴムのローラーと天然ゴムのベルトの摩擦で静電気を発生する。シリコンゴムはプラス、天然ゴムはマイナスの電気を帯びる下側の天然ゴムから発生したマイナスの電気は、上側の集電器(写真)に集められる。ここでは、天然ゴムと塩ビパイプの摩擦で再び静電気が発生、天然ゴムがプラスに、塩ビパイプがマイナスに帯電する上側の集電器で取り出したマイナスの電気は、アルミの棒を通し、アルミ箔を貼ったボール部に溜まる。こうしてボールにはどんどんマイナスの電気が溜められ、ボールに付けたヒモが逆立つというわけだ

このムービーで、小さい玉をバンデグラフの球体部分に近づけていくとバチン! とスパークするのが見えるだろう。これが静電気の正体で、スパークした瞬間に衝撃さえ感じるほど高い電圧を持っている。雷が近くに落ちると音だけでなく、衝撃も伴うのと同じだ(とはいえこの装置では、電流がごくわずかなので、感電してケガをしたりヤケドを負うことはない)

 この装置でプラズマクラスターがどれだけ静電気を除去できるかは、バンデグラフの球の部分に付けたヒモが、元気に逆立っている時間がどのぐらい続くかを調べればいい。静電気は放置しておくと放電するので、何もしていない部屋に置いた場合と、プラズマクラスターを浴びせた場合で、ヒモの“ワサワサ”がしぼむ時間を比較しようというワケだ。

 では、いよいよ実験。プラズマクラスターを通常の1.5倍放出するという「プラズマクラスターシャワー」運転で、静電気の除去具合を調べたのが次のムービーだ。


プラズマクラスターあり

プラズマクラスターなし

 何もしていない部屋では、自然放電するまでに3分ほどかかるが、プラズマクラスターシャワーを浴びせると、10倍速再生のようにみるみるウチに放電しているのが分かるだろう。しかも両者を比べてみると、自然放電は3分経ったのに、まだ帯電しているのが分かる。この実験から、プラズマクラスターは静電気の除去に大きき影響しているのが確実ということが分かった。

 それ以上に驚いたのは、プラズマクラスターを放出させたあとは、静電気が起きにくくなるという点だ。実は前日に予備実験を行なったところ、最初にプラズマクラスターシャワーを浴びせてしまったら、手でハンドルをいくら回しても紐が逆立たなくなってしまったのだ。

 プラズマクラスターの発生機能は、通常の空気清浄運転や空気清浄加湿運転でも併用できる。しかもこの空気清浄機は加湿も行なってくれるので、冬場でもバチッ!と来ない静電気知らずになるだろう。

 ちなみに静電気には、湿度が高いと放電しやすくなる性質がある。夏はほとんどバチッ! と来ないのに、冬になると“電気女”や“電気男”になってしまうのは、湿度が低いというのが原因の1つ。また着ている衣服。夏場には、静電気の起きやすいセーターなんて着ませんからね!


ランニングコストも安くメンテも楽。いつも清潔に使える

 加湿器として十分な機能を持ち、測定器でその脱臭効果も実証された。またプラズマクラスターイオンは、今回は驚くほど静電気を除去する力を秘めていることも分かった。カビなどの繁殖を押さえる(車載用のプラズマクラスター発生機を参照)ことはあらかじめ実証済みだ。

 となれば、起きている時間は運転しておきたいというのが心情だろう。欲を言えば、人のいない夜間にも運転しておき、より空気を清浄しておきたい。

 そこで気になるのが、ランニングコスト。マニュアルによれば、24時間運転した場合は4.2~13円という。機器の大きさにより電気代は異なるが、今回利用した一番大型のKC-Z80でも最大で13円。ただしこれは、相当に臭いがきつい状態の場合で、通常はここまでかからないだろう。なお、プラズマクラスターシャワー運転は1回1円という。

給水タンクと加湿用のフィルター、吸気パネルと脱臭フィルターは、水洗いして繰り返し使える

 またメンテナンス性についても、十分考えられている。水周りやフィルター類は工具レスで分解して、水洗いでき繰り返し使えるのだ。唯一水洗いできないのは集じんフィルターだが、これは掃除機で汚れをキレイにすれば繰り返し使え、買い替えの目安も10年に一度でいい。



 というわけで、2回に渡ってシャープの「プラズマクラスターイオン空気清浄機」を紹介してきた。空気は目に見えないため効果がイマイチ分かりにくいこともあるだろうが、これらの実験機能を見れば、確実に加湿し、確実に消臭し、確実に空気中の微粒子を捉え、確実に静電気を除去する、ということが分かっていただけただろう。

 これらを踏まえて、アナタは次のリストのいくつが当てはまるだろうか?

・乾燥肌で困っているヒト(冬場)
・乾燥した空気でかぜを引きやすいヒト(冬場)
・バチッ!とくる静電気が怖いヒト(冬場)
・花粉症のヒト(春先、花粉によっては年中)
・カビ対策でお困りのヒト(梅雨時)
・赤ちゃんなどがいてハウスダストが気になるヒト(年中)
・タバコや部屋の悪臭が気になるヒト(年中)

 いくつもあるような場合は、この空気清浄加湿器を使えば、一気に解消されることを保証しよう。ボーナスの有効利用として、購入の検討をおすすめしたい。



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2011年1月6日 00:00